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205.国王視点/気の緩み
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(国王視点)
あの胃が痛くなるのを通り越して胃に穴が空きそうな王前裁判が昨日終わったばかりだというのに、朝から悪い知らせを聞いてしまった。
「何だと!? クァズ・ジューンズがいなくなった!?」
今日処刑されるはずだったクァズという男が牢から抜け出していたというのだ。やっと寂しくとも平穏が訪れると思ったというのに!
「どういうことだ!? そんな馬鹿なことがあるか! 見張りをしていた兵士は何をしていたのだ!?」
「それが、見張りの兵士も行方知らずでして………」
見張りの兵士もいなくなっただと? ついこの前から牢屋を脱走されたばかりだというのに何がどうなっているのだ? 同じことが起こらぬようにしっかり反省して改善しろとあれほど言ったというのに!
だが、今ここでそれを咎めている場合ではない。一刻も早く見つけ出さねば!
「やむを得ん、大至急クァズを捜索せよ! 騎士団を総動員だ! 見つ次第捕らえよ! 抵抗するなら切り捨てても構わん!」
「「「「「はっ!」」」」」
クァズ・ジューンズは危険人物だ。気持ちは分からなくもないが、ワカマリナに復讐するという願望のために罪を犯せるような男だ。そんな男を野放しにするわけにもいかん。できれば処刑したかったが被害が起こる前に切り捨てるのも仕方ない。
……それにしても、王宮の牢からまたしても脱走されるとは。我が国の牢屋はそんなに簡単に抜けられるものだったというのか? ワカマリナとアクサンのこともあって警備を強化せよと命じたというのに?
「……我が国はまたしても恥をかくというのか?」
アクサンのことで我が国は各国からいい笑いものとなったことだろう。外交大臣からもそのことを指摘されたばかりなのだ。……疲れ切った顔でそう言われた時は申し訳なくて仕方がなかった。
「……これは、私自身がその目で警備の仕組みを見直さねばならんな」
反省と注意を促したのにこの有様だ。どうも我が王宮を警備する兵士たちは気が緩んでいるのやもしれん。由々しきことだ。国王として見過ごすわけにもいかないと思っていたが、私自身も緩んでいたのだな。
「今すぐクァズ・ジューンズがいた牢屋を見に行く。案内せよ」
「……はっ」
しかし、一体何故あんな男が脱走できたのだ? アクサンやワカマリナと大差ない頭だと聞いていたから自力で逃げ出せたとも思えん。脱走した前後に何があったか知らなければ。
◇
「ここか」
「はい、朝昼夜で交代して見張っていたのですが……朝、交代の時間になって見てみれば夜の見張り番とクァズ・ジューンズもいなくなっておりまして」
「他になにか不審な点はないか? 見張り番に怪しい様子があるとかはなかったのか?」
こんな狭い所で脱走できるとすれば何者かの手助けが必要不可欠だ。見たところ暴れた形跡もない。現時点で怪しいのは行方のわからないという夜の見張り番だ。
「見張り番はシンクーロ公爵家から入ってきた新人の者でした。それ以外はなんとも……」
「シンクーロ公爵家だと?」
「はい。あ、今思い出しましたが、確か昨日の夕方頃にシンクーロ公爵のご子息と話をしていたような……」
「っ!」
それだけ聞いて、気づいた。いや、嫌な予感がしたと言ったほうが正しい。『シンクーロ公爵のご子息』と聞いただけで誰がクァズ・ジューンズを牢屋から出したのか分かったからだ。
それはイサッカ・シンクーロ。クァズを調査する過程で知ったことなのだが、クァズのせいで婚約を破談にされた公爵令息だった。クァズとは悪い意味で関わりのある男のはずだ。しかし、この男ならばクァズに恨みしかないだろう。もしや、牢屋から出したのは助けるためではなく復讐のためかもしれん。それなら、他の者に被害が出る可能性は低い。
しかし、こちらもメンツというものがある。罪人を勝手に出すことは許されることではない。
「シンクーロ公爵、特にその息子を問い詰めねばならんな。場合によっては降格してもらおうか」
あの胃が痛くなるのを通り越して胃に穴が空きそうな王前裁判が昨日終わったばかりだというのに、朝から悪い知らせを聞いてしまった。
「何だと!? クァズ・ジューンズがいなくなった!?」
今日処刑されるはずだったクァズという男が牢から抜け出していたというのだ。やっと寂しくとも平穏が訪れると思ったというのに!
「どういうことだ!? そんな馬鹿なことがあるか! 見張りをしていた兵士は何をしていたのだ!?」
「それが、見張りの兵士も行方知らずでして………」
見張りの兵士もいなくなっただと? ついこの前から牢屋を脱走されたばかりだというのに何がどうなっているのだ? 同じことが起こらぬようにしっかり反省して改善しろとあれほど言ったというのに!
だが、今ここでそれを咎めている場合ではない。一刻も早く見つけ出さねば!
「やむを得ん、大至急クァズを捜索せよ! 騎士団を総動員だ! 見つ次第捕らえよ! 抵抗するなら切り捨てても構わん!」
「「「「「はっ!」」」」」
クァズ・ジューンズは危険人物だ。気持ちは分からなくもないが、ワカマリナに復讐するという願望のために罪を犯せるような男だ。そんな男を野放しにするわけにもいかん。できれば処刑したかったが被害が起こる前に切り捨てるのも仕方ない。
……それにしても、王宮の牢からまたしても脱走されるとは。我が国の牢屋はそんなに簡単に抜けられるものだったというのか? ワカマリナとアクサンのこともあって警備を強化せよと命じたというのに?
「……我が国はまたしても恥をかくというのか?」
アクサンのことで我が国は各国からいい笑いものとなったことだろう。外交大臣からもそのことを指摘されたばかりなのだ。……疲れ切った顔でそう言われた時は申し訳なくて仕方がなかった。
「……これは、私自身がその目で警備の仕組みを見直さねばならんな」
反省と注意を促したのにこの有様だ。どうも我が王宮を警備する兵士たちは気が緩んでいるのやもしれん。由々しきことだ。国王として見過ごすわけにもいかないと思っていたが、私自身も緩んでいたのだな。
「今すぐクァズ・ジューンズがいた牢屋を見に行く。案内せよ」
「……はっ」
しかし、一体何故あんな男が脱走できたのだ? アクサンやワカマリナと大差ない頭だと聞いていたから自力で逃げ出せたとも思えん。脱走した前後に何があったか知らなければ。
◇
「ここか」
「はい、朝昼夜で交代して見張っていたのですが……朝、交代の時間になって見てみれば夜の見張り番とクァズ・ジューンズもいなくなっておりまして」
「他になにか不審な点はないか? 見張り番に怪しい様子があるとかはなかったのか?」
こんな狭い所で脱走できるとすれば何者かの手助けが必要不可欠だ。見たところ暴れた形跡もない。現時点で怪しいのは行方のわからないという夜の見張り番だ。
「見張り番はシンクーロ公爵家から入ってきた新人の者でした。それ以外はなんとも……」
「シンクーロ公爵家だと?」
「はい。あ、今思い出しましたが、確か昨日の夕方頃にシンクーロ公爵のご子息と話をしていたような……」
「っ!」
それだけ聞いて、気づいた。いや、嫌な予感がしたと言ったほうが正しい。『シンクーロ公爵のご子息』と聞いただけで誰がクァズ・ジューンズを牢屋から出したのか分かったからだ。
それはイサッカ・シンクーロ。クァズを調査する過程で知ったことなのだが、クァズのせいで婚約を破談にされた公爵令息だった。クァズとは悪い意味で関わりのある男のはずだ。しかし、この男ならばクァズに恨みしかないだろう。もしや、牢屋から出したのは助けるためではなく復讐のためかもしれん。それなら、他の者に被害が出る可能性は低い。
しかし、こちらもメンツというものがある。罪人を勝手に出すことは許されることではない。
「シンクーロ公爵、特にその息子を問い詰めねばならんな。場合によっては降格してもらおうか」
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