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193.複雑な心境/罪
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ワカマリナたちの捕縛に成功した知らせは、ショウによってアキエーサ達の耳にも入れられた。ショウの説明は分かりにくいこともあり、多くの質問がされたため、結構な時間もかかった。
「……そうですか。ワカマリナは見つかっても無事では済まなくて、あのクァズ・ジューンズやジンダ・エヌエイ嬢も捕まったと……」
「そうっす、アッキー。他には、馬鹿王子の元側近とかも寝てたので捕らえたみたいっす。そいつらの姿を見た騎士団の奴らは拍子抜けしたみたいっすよ」
アキエーサは複雑な心境だった。どんな反応をすればいいかもよく分からない。何せ義妹ワカマリナと彼女を憎むジンダ・エヌエイ、それに元婚約者だったクァズやその他の男達まで捕まったと聞かされても何だか素直に喜べないし、だからと言って悲しむ気も一切ないのだ。
「あ、アタシはワカマリナの腹に一発食らわしてやっただけなんで酷いことはしてねえっす」
「ショウを私と間違えて襲い掛かってくるなんて……目も悪かったのかしら……?」
そして、ワカマリナがショウをアキエーサと勘違いして襲い掛かってみたら返り討ちにされたと知っても同情もできないでいる。ただ、困惑するだけだ。
「テール様、エリザ様。私はどう反応すればいいのでしょう?」
思っていた以上に早く捕まり、思っていた以上に色々あったようで、そして数日の間で思ってもいないことが起きすぎて、流石のアキエーサも頭がまとまらない。何しろ、ショウから「ワカマリナをわざと逃がそうとした騎士団は怪しいかも……」とまで聞かされてしまったのだ。複雑でそこそこ多い情報量、それにショウの下手な説明のせいで頭の整理がつかない。
「ああ、そうだな……これはまず喜ぶべきことだと思うよ? ジンダ嬢とは一切面識がなかったし、ワカマリナもクァズも君を苦しめた者達だから捕まったのなら嬉しいと思ってもいいはずだ」
「そうですね。義妹だったワカマリナ・イカゾノスが負傷したことにアキエーサ様が複雑な気持ちを抱くのは仕方がないと思います。ですが、その他の方々については特に同情しなくてもいいと思いますよ。ただ、ジンダ嬢のことは憐れむ理由はありますが」
「…………」
ジンダの名を聞いて、アキエーサ達の話が変わる。アキエーサ達もジンダ・エヌエイの事情については聞いていた。彼女の弟の最期がどういうもので、しかもワカマリナが原因だということも。
「私はワカマリナもクァズも捕まって罪を償うべきだと思っています。しかし、ジンダ・エヌエイ、彼女は情状酌量の余地は認められる可能性は……難しいですね」
「そうだな。弟のことで同情されるだろうが、ジンダ嬢は他国のスパイと手を組んでしまったようだ。売国行為として重罪とみなされるだろうな」
「それでもアクサン殿下ほど重い罰を受けるということは無いでしょうが、死刑にならずとも最悪終身刑も考慮されるでしょう」
終身刑。それだけでも貴族令嬢どころか人としては相当重い罰だ。弟の復讐のために行動を起こしてしまっただけに、アキエーサたちは救いようがないのではと思わずにはいられない。アキエーサたちもワカマリナやアクサンに迷惑を掛けられてきたのだから。
「ジンダ嬢の父君はどうされるでしょうか?」
「娘のために捜索隊を出したくらいだから減刑を求めるかもしれないな。ただでさえ実の息子を亡くされたばかりだし、そのうえ娘まで失うのは耐えられないだろう」
「しかし、いくら減刑を求めても我が国で売国行為は重罪に値します。ジンダ嬢は大きな罰を受けるでしょう。王宮からワカマリナを連れ去って、別荘で暴行……親以外に味方はいないでしょう」
その通りだった。ジンダはすでに味方と言えるものは親族しかいないのだ。今は。
「……そうですか。ワカマリナは見つかっても無事では済まなくて、あのクァズ・ジューンズやジンダ・エヌエイ嬢も捕まったと……」
「そうっす、アッキー。他には、馬鹿王子の元側近とかも寝てたので捕らえたみたいっす。そいつらの姿を見た騎士団の奴らは拍子抜けしたみたいっすよ」
アキエーサは複雑な心境だった。どんな反応をすればいいかもよく分からない。何せ義妹ワカマリナと彼女を憎むジンダ・エヌエイ、それに元婚約者だったクァズやその他の男達まで捕まったと聞かされても何だか素直に喜べないし、だからと言って悲しむ気も一切ないのだ。
「あ、アタシはワカマリナの腹に一発食らわしてやっただけなんで酷いことはしてねえっす」
「ショウを私と間違えて襲い掛かってくるなんて……目も悪かったのかしら……?」
そして、ワカマリナがショウをアキエーサと勘違いして襲い掛かってみたら返り討ちにされたと知っても同情もできないでいる。ただ、困惑するだけだ。
「テール様、エリザ様。私はどう反応すればいいのでしょう?」
思っていた以上に早く捕まり、思っていた以上に色々あったようで、そして数日の間で思ってもいないことが起きすぎて、流石のアキエーサも頭がまとまらない。何しろ、ショウから「ワカマリナをわざと逃がそうとした騎士団は怪しいかも……」とまで聞かされてしまったのだ。複雑でそこそこ多い情報量、それにショウの下手な説明のせいで頭の整理がつかない。
「ああ、そうだな……これはまず喜ぶべきことだと思うよ? ジンダ嬢とは一切面識がなかったし、ワカマリナもクァズも君を苦しめた者達だから捕まったのなら嬉しいと思ってもいいはずだ」
「そうですね。義妹だったワカマリナ・イカゾノスが負傷したことにアキエーサ様が複雑な気持ちを抱くのは仕方がないと思います。ですが、その他の方々については特に同情しなくてもいいと思いますよ。ただ、ジンダ嬢のことは憐れむ理由はありますが」
「…………」
ジンダの名を聞いて、アキエーサ達の話が変わる。アキエーサ達もジンダ・エヌエイの事情については聞いていた。彼女の弟の最期がどういうもので、しかもワカマリナが原因だということも。
「私はワカマリナもクァズも捕まって罪を償うべきだと思っています。しかし、ジンダ・エヌエイ、彼女は情状酌量の余地は認められる可能性は……難しいですね」
「そうだな。弟のことで同情されるだろうが、ジンダ嬢は他国のスパイと手を組んでしまったようだ。売国行為として重罪とみなされるだろうな」
「それでもアクサン殿下ほど重い罰を受けるということは無いでしょうが、死刑にならずとも最悪終身刑も考慮されるでしょう」
終身刑。それだけでも貴族令嬢どころか人としては相当重い罰だ。弟の復讐のために行動を起こしてしまっただけに、アキエーサたちは救いようがないのではと思わずにはいられない。アキエーサたちもワカマリナやアクサンに迷惑を掛けられてきたのだから。
「ジンダ嬢の父君はどうされるでしょうか?」
「娘のために捜索隊を出したくらいだから減刑を求めるかもしれないな。ただでさえ実の息子を亡くされたばかりだし、そのうえ娘まで失うのは耐えられないだろう」
「しかし、いくら減刑を求めても我が国で売国行為は重罪に値します。ジンダ嬢は大きな罰を受けるでしょう。王宮からワカマリナを連れ去って、別荘で暴行……親以外に味方はいないでしょう」
その通りだった。ジンダはすでに味方と言えるものは親族しかいないのだ。今は。
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