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188.ワカマリナ視点/『ざまぁ』
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(ワカマリナ視点)
世界の宝が……失われた。わたくしの……美しい顔が……崩壊したのです。もう……絶望しかありません……。
「お~い、フィル~!」
……何か……イラっと来る陽気な女の声がする……お姉さまの声……がする?
……近くにいますの?
「お姉様?」
頭をあげると……満面の笑みでこちらに手を振る女…………お姉様……らしき女性が……見える。
「どうして……お姉さまが笑っておりますの? わたくしが……こんな目に遭っている時に……」
あの髪の色と目の色……からして間違いありません。きっと、わたくしの姉……つまり、わたくしをこんな目に遭わせた元凶……お姉様なのですわ!
「許せない…………許せない!」
わたくしを……わたくしの顔を見て笑ってる! わたくしがブサイクになって笑うなんて、なんて醜悪な女! わたくしを苦しめてそんなに楽しいというのですか! 悪女め!
「うああああああああああああああああああああ!!」
わたくしを掴む野蛮人の足を踏みつけて、わたくしは自由になった。そのスキをついてわたくしは駆け出す。悪しき姉のもとに!
「お姉様ああああああああああああああああ!!」
わたくしは力の限り走り出す。体中が痛くて、靴が無いから足も痛い。それでも走り出せるのは、この世で最も憎い女がいるから。憎むべきお姉様が笑っているのが許せないから! 痛みなんか気にしてられない!
「お姉様のせいでえええええええ! 全部全部お姉様のせいでえええええええ! あああああああああああああああああ!!」
お姉様もこっちに気付いた。わたくしが迫ってくるのを見ると険しい顔になったけど、そんなことはどうでもいいのですの。黙って、いや許しを請いながらわたくしに殴り殺されればいいのですの!
「……ふんっ」
……何を思ったのか、お姉様は険しい顔つきのままゆっくりとこちらに歩いてきます。ふざけておりますの? どうしてそんなに堂々と近づいて来られるのです? やはりお姉様は愚か者ですわ。そのくせ人の邪魔ばかりして!
「お姉様あああああああああああ! 死ねええええええええ!!」
わたくしのお姉様、前々から、多分出会った時から気に入らなかった。愛されていないくせに、姉だからと言って上目遣いで偉そうで、マナーがどうとかで小言がうるさくて、お金を遊ぶことにもけち臭くて、本当に大嫌い。お姉様のせいでアクサン様と離され牢屋に入れられて、挙句の果てにわたくしの美貌まで奪われたのです!
だから、わたくしがお姉様を殴り殺してやりますの!
「っ!?」
殴ろうとしたのに避けられた! なんて嫌な女! 悪者なんだから避けないで……ってあれ? お姉様ってこんな顔でしたっけ?
あれ?
「なにが『お姉様』だ。この頭のおかしいイカれ女が、お前の罪を思い知れやぁっ!」
え?
え?
お姉様が!? あのお姉様が荒々しい口調で!?
しかも、翻ってお姉様が拳を――
「ぐっへえっ!?」
お腹に強烈な衝撃が起こって、わたくしは吐いてしまいました。
わたくしは……殴られましたの? よりにもよってお姉様ごときに!?
お、お腹が、痛い。お姉様になんか殴られるなんて屈辱です、わ……。
「けっ、こういうのを『ざまぁ』って言うんだな」
…………な、なにそれ? ざ、ざまぁ? お姉様が、そんなことを言う……あ、この人、おねえさま、じゃ……
世界の宝が……失われた。わたくしの……美しい顔が……崩壊したのです。もう……絶望しかありません……。
「お~い、フィル~!」
……何か……イラっと来る陽気な女の声がする……お姉さまの声……がする?
……近くにいますの?
「お姉様?」
頭をあげると……満面の笑みでこちらに手を振る女…………お姉様……らしき女性が……見える。
「どうして……お姉さまが笑っておりますの? わたくしが……こんな目に遭っている時に……」
あの髪の色と目の色……からして間違いありません。きっと、わたくしの姉……つまり、わたくしをこんな目に遭わせた元凶……お姉様なのですわ!
「許せない…………許せない!」
わたくしを……わたくしの顔を見て笑ってる! わたくしがブサイクになって笑うなんて、なんて醜悪な女! わたくしを苦しめてそんなに楽しいというのですか! 悪女め!
「うああああああああああああああああああああ!!」
わたくしを掴む野蛮人の足を踏みつけて、わたくしは自由になった。そのスキをついてわたくしは駆け出す。悪しき姉のもとに!
「お姉様ああああああああああああああああ!!」
わたくしは力の限り走り出す。体中が痛くて、靴が無いから足も痛い。それでも走り出せるのは、この世で最も憎い女がいるから。憎むべきお姉様が笑っているのが許せないから! 痛みなんか気にしてられない!
「お姉様のせいでえええええええ! 全部全部お姉様のせいでえええええええ! あああああああああああああああああ!!」
お姉様もこっちに気付いた。わたくしが迫ってくるのを見ると険しい顔になったけど、そんなことはどうでもいいのですの。黙って、いや許しを請いながらわたくしに殴り殺されればいいのですの!
「……ふんっ」
……何を思ったのか、お姉様は険しい顔つきのままゆっくりとこちらに歩いてきます。ふざけておりますの? どうしてそんなに堂々と近づいて来られるのです? やはりお姉様は愚か者ですわ。そのくせ人の邪魔ばかりして!
「お姉様あああああああああああ! 死ねええええええええ!!」
わたくしのお姉様、前々から、多分出会った時から気に入らなかった。愛されていないくせに、姉だからと言って上目遣いで偉そうで、マナーがどうとかで小言がうるさくて、お金を遊ぶことにもけち臭くて、本当に大嫌い。お姉様のせいでアクサン様と離され牢屋に入れられて、挙句の果てにわたくしの美貌まで奪われたのです!
だから、わたくしがお姉様を殴り殺してやりますの!
「っ!?」
殴ろうとしたのに避けられた! なんて嫌な女! 悪者なんだから避けないで……ってあれ? お姉様ってこんな顔でしたっけ?
あれ?
「なにが『お姉様』だ。この頭のおかしいイカれ女が、お前の罪を思い知れやぁっ!」
え?
え?
お姉様が!? あのお姉様が荒々しい口調で!?
しかも、翻ってお姉様が拳を――
「ぐっへえっ!?」
お腹に強烈な衝撃が起こって、わたくしは吐いてしまいました。
わたくしは……殴られましたの? よりにもよってお姉様ごときに!?
お、お腹が、痛い。お姉様になんか殴られるなんて屈辱です、わ……。
「けっ、こういうのを『ざまぁ』って言うんだな」
…………な、なにそれ? ざ、ざまぁ? お姉様が、そんなことを言う……あ、この人、おねえさま、じゃ……
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