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178.クァズ視点/病んでる女って怖い
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(クァズ視点)
遂にこの時が来た。僕の人生をどん底に落としやがった憎き女に復讐するこの時が!
悪の元凶・ワカマリナに復讐するという目的を、今日ここで果たしてやるのだ!
この僕を誑かし弄び、次期侯爵という輝かしい未来すらも奪って、最底辺の平民に落とされた屈辱を晴らしてやるのだ!
……思い返せば、屋敷を追い出された後は失意の日々を送らされたものだった。プライドが邪魔して仕事が上手くいかないし、元貴族と言うだけでろくでもない連中に目をつけられて苛められる日々、仕事を転々として野宿の日々……悪夢の日々だった。
そんな僕にも運命を変える出会いがあった。他国からのスパイにして僕の偽物になってくれた男、弟を失って復讐者となったジンダ・エヌエイ。こいつらと手を組んでやっとここまでこぎつけたのだ。
◇
「へえ、弟をねえ……」
「そうよ。あの女のせいで……!」
ジンダ・エヌエイ。確か金持ちの辺境伯の家だと聞いたことがある。それに息子の方が王太子の側近だったらしいが、そいつもワカマリナに誑かされて破滅したわけか。しかも、自らの意思で命を絶つとは難儀なことだ。
いいや、それもワカマリナが悪いんだろうな。現に僕もあの女に騙されたんだし。
「あの女が憎い! あいつのせいでゲンダは死んだ! 殺されたも同然なのよ!」
「お前の気持ちも弟の気持ちもよく分かる。僕もあの女に騙されて破滅したんだ!」
あの女に誑かされなければ、こんなところにいるはずがないんだ。下手をすれば死んでいたかもしれないと思うと、目の前のこの女のことは同情的になる。
「……協力してくれる?」
「ああ、ワカマリナに復讐できるなら喜んで!」
こういう女ほど怖いものだ。心が病んでる女ほど恐ろしいことを考えられるってよく知っているからな。
◇
――ということもあって、遂にワカマリナをこの手で牢屋に入れることができたんだ。まさか、双子の弟に成りすまして馬鹿王子の元側近共をけしかけるなんて考えたもんだな。しかも、辺境伯の別荘におびき寄せるだなんて随分うまく考えられたものだ。
……やっぱり、病んでる女って怖いな。
まあ、それはいいや。これでじっくりワカマリナを嬲ることができるんだ!
「久しぶりだね。ワカマリナ」
「……えっ!?」
目の前にして久方ぶりに眺めるワカマリナは、かつての美貌を失っていた。とてつもなく太っていたのだ。最後に見た時の二倍くらいかな? 王子に甘やかされたのか、本性が露わになった結果になったのか分からないが、これは嬲りやすくなったものだ!
そんなことを思っていたのだが、この女は予想外の言葉を吐きやがった。
「貴方……誰?」
「「え?」」
「どこかで聞いた声だと思いましてたけど、初対面ですわよね? 何者ですか!?」
……言葉を失うとはこういうことか? っていうか、こいつ本気で言ってんのか? これでも元婚約者だった男なんだぞ! お前の! この僕がだ!
「な、何を言っているんだ? 本気でそんなことを口にしてるんじゃないだろうな!? 僕はお前の婚約者だった男なんだぞ!?」
「はぁ!? そっちこそ何を戯言をほざいておりますの!? わたくしの婚約者と言えば我が国の王太子にして次期国王のアクサン様ですわ!」
「…………?」
く、くそ~! こいつはマジだ! マジで言ってやがるぞ! こいつ本気で僕のことを覚えていないみたいじゃないか! こんな簡単に付き合うどころか婚約者の顔をわすれるやつがあんのか!? 顔ならこの別荘で整え直したから覚えていたら分かるはずだが、この反応は忘れてやがる証拠だ! ふざけやがって! ジンダも困惑してるしむかつくなこいつ!
「こ、このくそ女が! 僕はクァズ! クァズ・ジューンズ様だ! アクサン殿下の前の婚約者様だぞ! これだけ言えばお前も分かるだろうが!」
「え? ええ!?」
やっと気づいたか! イライラさせやがって!
「そんなはずがありませんわ!」
「「はぁ!?」」
ええー!? 今度は何を言い出すんだ!? どうなってんだよこいつの頭は!?
遂にこの時が来た。僕の人生をどん底に落としやがった憎き女に復讐するこの時が!
悪の元凶・ワカマリナに復讐するという目的を、今日ここで果たしてやるのだ!
この僕を誑かし弄び、次期侯爵という輝かしい未来すらも奪って、最底辺の平民に落とされた屈辱を晴らしてやるのだ!
……思い返せば、屋敷を追い出された後は失意の日々を送らされたものだった。プライドが邪魔して仕事が上手くいかないし、元貴族と言うだけでろくでもない連中に目をつけられて苛められる日々、仕事を転々として野宿の日々……悪夢の日々だった。
そんな僕にも運命を変える出会いがあった。他国からのスパイにして僕の偽物になってくれた男、弟を失って復讐者となったジンダ・エヌエイ。こいつらと手を組んでやっとここまでこぎつけたのだ。
◇
「へえ、弟をねえ……」
「そうよ。あの女のせいで……!」
ジンダ・エヌエイ。確か金持ちの辺境伯の家だと聞いたことがある。それに息子の方が王太子の側近だったらしいが、そいつもワカマリナに誑かされて破滅したわけか。しかも、自らの意思で命を絶つとは難儀なことだ。
いいや、それもワカマリナが悪いんだろうな。現に僕もあの女に騙されたんだし。
「あの女が憎い! あいつのせいでゲンダは死んだ! 殺されたも同然なのよ!」
「お前の気持ちも弟の気持ちもよく分かる。僕もあの女に騙されて破滅したんだ!」
あの女に誑かされなければ、こんなところにいるはずがないんだ。下手をすれば死んでいたかもしれないと思うと、目の前のこの女のことは同情的になる。
「……協力してくれる?」
「ああ、ワカマリナに復讐できるなら喜んで!」
こういう女ほど怖いものだ。心が病んでる女ほど恐ろしいことを考えられるってよく知っているからな。
◇
――ということもあって、遂にワカマリナをこの手で牢屋に入れることができたんだ。まさか、双子の弟に成りすまして馬鹿王子の元側近共をけしかけるなんて考えたもんだな。しかも、辺境伯の別荘におびき寄せるだなんて随分うまく考えられたものだ。
……やっぱり、病んでる女って怖いな。
まあ、それはいいや。これでじっくりワカマリナを嬲ることができるんだ!
「久しぶりだね。ワカマリナ」
「……えっ!?」
目の前にして久方ぶりに眺めるワカマリナは、かつての美貌を失っていた。とてつもなく太っていたのだ。最後に見た時の二倍くらいかな? 王子に甘やかされたのか、本性が露わになった結果になったのか分からないが、これは嬲りやすくなったものだ!
そんなことを思っていたのだが、この女は予想外の言葉を吐きやがった。
「貴方……誰?」
「「え?」」
「どこかで聞いた声だと思いましてたけど、初対面ですわよね? 何者ですか!?」
……言葉を失うとはこういうことか? っていうか、こいつ本気で言ってんのか? これでも元婚約者だった男なんだぞ! お前の! この僕がだ!
「な、何を言っているんだ? 本気でそんなことを口にしてるんじゃないだろうな!? 僕はお前の婚約者だった男なんだぞ!?」
「はぁ!? そっちこそ何を戯言をほざいておりますの!? わたくしの婚約者と言えば我が国の王太子にして次期国王のアクサン様ですわ!」
「…………?」
く、くそ~! こいつはマジだ! マジで言ってやがるぞ! こいつ本気で僕のことを覚えていないみたいじゃないか! こんな簡単に付き合うどころか婚約者の顔をわすれるやつがあんのか!? 顔ならこの別荘で整え直したから覚えていたら分かるはずだが、この反応は忘れてやがる証拠だ! ふざけやがって! ジンダも困惑してるしむかつくなこいつ!
「こ、このくそ女が! 僕はクァズ! クァズ・ジューンズ様だ! アクサン殿下の前の婚約者様だぞ! これだけ言えばお前も分かるだろうが!」
「え? ええ!?」
やっと気づいたか! イライラさせやがって!
「そんなはずがありませんわ!」
「「はぁ!?」」
ええー!? 今度は何を言い出すんだ!? どうなってんだよこいつの頭は!?
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