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165.クァズ視点/裏帳簿
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(クァズ視点)
悔しがっている場合じゃない。金庫は開けたのだから、僕は金と必要な書類、それに父上が無くしたら困るであろう物を持ち運べる限り持ち去らなければならない。例えば、この裏帳簿とかいいかもしれない。
「……父上も僕と似たようなもんじゃないか」
裏帳簿。簡単に言えば不正な金を使ったという証拠だ。こんなものがあるってことは、国に治めるお金を誤魔化して私的に使ったというわけだ。……なんだ、父上もろくのことしてないじゃないか。
「王太子の調査……? 人を雇って王家の弱みを探っていたのか?」
王太子を調査して王家の弱みを探る。何だこれは? 確かに今の王太子アクサンは相当馬鹿だが、こんなことをしていたとバレると痛いだろうな。父上は謀反を起こすつもりだったのか? 何のために?
「だけど、これは利用させてもらえるな」
今更、父上の目論んでいたこと等どうでもいい。今は僕の望む未来が叶えればいい。どれだけだ。だからこの書類は取引相手にくれてやるんだ。
「……もう、いいかな」
もうここには用はない。必要な分だけの金と物資。それに取引にしてはおつりが来そうな重要な書類も手に入った。後は侵入されたとバレないように去るだけだ。
こうして僕は、かつて住んでいた屋敷に不法侵入し、使用人の誰にもバレずに、父上の書斎に入って金と書類を手に入れて去っていったのだ。
◇
クァズがジューンズ侯爵の屋敷に侵入してから三日後。
「どういうことだこれは!?」
ジューンズ侯爵は久しぶりに屋敷に戻って自身の書斎に入ったとたんに驚愕した。何故なら、明らかに金庫の位置がずれていたのだ。嫌な予感がして金庫の中を開けてみれば、顔を青褪めることになった。
「な、ない! 書類に裏帳簿、それに金が一部無くなっているではないか!」
侯爵が屋敷に戻ったのは、明後日の王太子主催のパーティーに出席する準備を整えるためだった。本心では行きたくないのだが断るのも悪いので渋々だが行く決断をして屋敷に戻ったのだ。そうしたら、このありさまだ。屋敷に残った者達からは『特に異常はありませんでした』などと言われたばかりだというのに。
「……な、何ということだ。あんなものを盗まれたのだとしたら……」
金庫の中にしまっていた書類には、王家に知られてはマズい内容が記載されていたのだ。それは王太子アクサンの目に余る行動はもちろん、今の国王やその親類に至るまで勝手に探りを入れて弱みを探し続けていたことまでを記された書類。決して王族やその派閥に与する貴族に知られたくはないものであった。
「いや、裏帳簿まで……」
それだけではない。ジューンズ侯爵家の裏の帳簿まで失われてしまった。それもまた、ジューンズ侯爵家を失墜させるには十分すぎる代物。そんなものまで無くなってしまった事実に侯爵は頭を抱えるしかない。
「な、何故こんな時にこのような……明後日のパーティーに出席どころの話ではない……」
明後日のパーティーは欠席しよう。その空いた時間を盗まれた書類と裏帳簿のために充てるのだ。侯爵はそれだけはすぐに決断できた。だてに『侯爵』ほどの思い身分でいるわけではないのだ。
「おのれぇ……どこの馬鹿がやったかは知らんが何としてでもみつっけ出さねば我が家は終わりだ……!」
侯爵はすぐに行動に出る。王宮にパーティーを欠席するように伝え、信頼できる側近を集めて怪しいものを片っ端から調べさせようとした。屋敷にいた者達から、己を恨む者まで全て調べ上げ始めたのだ。
勿論、追放したクァズのことまで。
悔しがっている場合じゃない。金庫は開けたのだから、僕は金と必要な書類、それに父上が無くしたら困るであろう物を持ち運べる限り持ち去らなければならない。例えば、この裏帳簿とかいいかもしれない。
「……父上も僕と似たようなもんじゃないか」
裏帳簿。簡単に言えば不正な金を使ったという証拠だ。こんなものがあるってことは、国に治めるお金を誤魔化して私的に使ったというわけだ。……なんだ、父上もろくのことしてないじゃないか。
「王太子の調査……? 人を雇って王家の弱みを探っていたのか?」
王太子を調査して王家の弱みを探る。何だこれは? 確かに今の王太子アクサンは相当馬鹿だが、こんなことをしていたとバレると痛いだろうな。父上は謀反を起こすつもりだったのか? 何のために?
「だけど、これは利用させてもらえるな」
今更、父上の目論んでいたこと等どうでもいい。今は僕の望む未来が叶えればいい。どれだけだ。だからこの書類は取引相手にくれてやるんだ。
「……もう、いいかな」
もうここには用はない。必要な分だけの金と物資。それに取引にしてはおつりが来そうな重要な書類も手に入った。後は侵入されたとバレないように去るだけだ。
こうして僕は、かつて住んでいた屋敷に不法侵入し、使用人の誰にもバレずに、父上の書斎に入って金と書類を手に入れて去っていったのだ。
◇
クァズがジューンズ侯爵の屋敷に侵入してから三日後。
「どういうことだこれは!?」
ジューンズ侯爵は久しぶりに屋敷に戻って自身の書斎に入ったとたんに驚愕した。何故なら、明らかに金庫の位置がずれていたのだ。嫌な予感がして金庫の中を開けてみれば、顔を青褪めることになった。
「な、ない! 書類に裏帳簿、それに金が一部無くなっているではないか!」
侯爵が屋敷に戻ったのは、明後日の王太子主催のパーティーに出席する準備を整えるためだった。本心では行きたくないのだが断るのも悪いので渋々だが行く決断をして屋敷に戻ったのだ。そうしたら、このありさまだ。屋敷に残った者達からは『特に異常はありませんでした』などと言われたばかりだというのに。
「……な、何ということだ。あんなものを盗まれたのだとしたら……」
金庫の中にしまっていた書類には、王家に知られてはマズい内容が記載されていたのだ。それは王太子アクサンの目に余る行動はもちろん、今の国王やその親類に至るまで勝手に探りを入れて弱みを探し続けていたことまでを記された書類。決して王族やその派閥に与する貴族に知られたくはないものであった。
「いや、裏帳簿まで……」
それだけではない。ジューンズ侯爵家の裏の帳簿まで失われてしまった。それもまた、ジューンズ侯爵家を失墜させるには十分すぎる代物。そんなものまで無くなってしまった事実に侯爵は頭を抱えるしかない。
「な、何故こんな時にこのような……明後日のパーティーに出席どころの話ではない……」
明後日のパーティーは欠席しよう。その空いた時間を盗まれた書類と裏帳簿のために充てるのだ。侯爵はそれだけはすぐに決断できた。だてに『侯爵』ほどの思い身分でいるわけではないのだ。
「おのれぇ……どこの馬鹿がやったかは知らんが何としてでもみつっけ出さねば我が家は終わりだ……!」
侯爵はすぐに行動に出る。王宮にパーティーを欠席するように伝え、信頼できる側近を集めて怪しいものを片っ端から調べさせようとした。屋敷にいた者達から、己を恨む者まで全て調べ上げ始めたのだ。
勿論、追放したクァズのことまで。
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