上 下
151 / 229

151.戦闘中/ショウ・トゥアーロ

しおりを挟む
ならず者たち相手に、フィルは一人で戦っているわけではない。むしろ相方のショウの方が派手に戦っているのだ。なにしろ見るからに強うそうな雰囲気を見せるショウのほうが警戒されるのは当然だ。だからこそ彼女を取り囲んでくる男の数が多い。つまり、犠牲になる男もそれだけいるということだ。

「おらあっ!」

「どぅあっ!?」

戦闘中で、女性が発するとは思えない豪快な声でショウは、掴みかかろうとした男の顔に飛び蹴りをくらわした。

「もう一丁!」

「ぶぅっ!?」

そして更に、瞬時に反対側の足でもう一発蹴りをくらわすという器用な技を見せつける。蹴られたのは男の右耳の上のあたり、脳震盪を起こしたのか気絶させてしまった。

「くそが! 切り刻んでやらあ!」

「複数で囲め! ただ者じゃねえ!」

「おう! 油断しねえ!」

ナイフを持った男たちが迫ってくるが、ショウはむしろその男たちの中の一人に突撃していく。まるで何かを狙うかのように。

「死にに来たか!」

「違う。本命はこっち」

ショウが向かってきたことに驚きつつも男はナイフで刺す姿勢で突撃する。ナイフをショウに刺すつもりだったのだが、ショウは前でかわし、その勢いを逆手にとって男のナイフを持った手を掴んでそのまま背負い投げを決めた。

「るぼっ!?」

「蹴りもやる!」

「ぶだっ!?」

「ナイフはもらう!」

背負い投げされた男の頭を蹴り飛ばしてみごとに気絶させる。気絶した男のナイフが転がるのを確認して拾い上げ、他に向かってくる敵にショウは笑顔で突撃する。

「ははは、弱い弱い! こんなんじゃアタシは止められねえよ!」

「クソ! 調子に乗りやがって!」

「身ぐるみはいでやらあ!」

ショウがナイフを手にしてことによって、ならず者たちの危機感は更に強くなった。もはや『女』を相手にしているのではないという気持ちさえ芽生え、武器を握り締めるその手が強くなる。殺す気で立ち向かう気になったのだ。



しかし、それだけの覚悟を決めてもショウは強すぎた。


「だあらっしゃあっ!」


ショウはナイフを剣のように両手で持って戦いに臨む。その構え、その姿は、まるで騎士を彷彿させるようなものであった。

「ぐっああああああ!!」

「ぎゃあああああ!!」

「てっ、手がああああああ!!」

武器を持った男達を優先して打ち倒していくショウ。両手にナイフを持った男でも、槍を持った男でも、斧を持った男でも、ショウは剣技を振るうかのようにナイフを器用に駆使して戦った。

その途中で、剣を扱う男が現れる。

「テメエ、まるで騎士みてえに戦いやがるな……」

「へえ、分かるのかい?」

剣を持った男は、床に転がる有象無象の男達のように汚い身なりであったが、どこか少しだけ雰囲気が違うようだった。剣の構え方が雑ではない。ショウのように型のはまったような構え方なのだ。

「もしかして、お前騎士になろうとしてたの? それなのに今はならず者?」

「黙れ! 昔色々あったんだよ! テメエこそその戦い方は騎士のそれじゃねえのかよ!」

「まあ、親父がそうだったからアタシも戦い方はこうなったんだ。詳しいことが言うつもりはねえ。だから尋常に勝負と行こうぜ!」

「ちっ! くそが、男の意地を見せてやらあ!」

剣を持った男がショウに立ち向かう。男の方は長剣で、ショウは短めのナイフ。これだとショウの方がかなり不利であるが、ショウは剣技で勝負した。

「これはどう! はあっ!」

「ちいっ! なんて早く……!」

武器の有利性と体格差に力量、そういう差をショウは磨き上げた剣技と持ち前の身軽さと素早さで覆す。男には反撃する隙すら見せない実力を見せつけるのだ。

「く、この俺が……こんな……っ!」

「しまいにしようか!」

「何!?」

ショウの動きが更に早くなる。それに追いつけなかった男は隙をつかれて剣を叩き落とされた。剣を失った男は無防備を晒し、そのまま何もできずにショウに首元を蹴り飛ばされる。

「~~~~~っ!?」

「へへへ、剣士との戦いは御無沙汰だったから結構楽しかったぜ!」

これでショウの周りには敵はいなくなった。残りもフィルが片付けてしまった。十数人ほどの男達が立った二人の女性に倒されてしまったというわけだ。
しおりを挟む
感想 91

あなたにおすすめの小説

駆け落ちから四年後、元婚約者が戻ってきたんですが

影茸
恋愛
 私、マルシアの婚約者である伯爵令息シャルルは、結婚を前にして駆け落ちした。  それも、見知らぬ平民の女性と。  その結果、伯爵家は大いに混乱し、私は婚約者を失ったことを悲しむまもなく、動き回ることになる。  そして四年後、ようやく伯爵家を前以上に栄えさせることに成功する。  ……駆け落ちしたシャルルが、女性と共に現れたのはその時だった。

今更、いやですわ   【本編 完結しました】

朝山みどり
恋愛
執務室で凍え死んだわたしは、婚約解消された日に戻っていた。 悔しく惨めな記憶・・・二度目は利用されない。

金の王太子、銀の王太子、クズの王太子

ウマノホネ
恋愛
パーティの最中、あろうことか王太子ベルナルドは、婚約者である公爵令嬢ロミーナに向かって、事前の根回しも何もないまま、勢いに任せて婚約破棄を高らかに宣言した。 周囲がドン引きの中、王太子ベルナルド、男爵令嬢ブリジッタの二人はすっかり有頂天になり、自分たちが何をしでかしてしまったのか、全く理解できていない。 王国内に波紋がすぐに広まった。 この前代未聞の出来事に、ロミーナの父、王弟カルロ公爵は激怒。王太子の廃嫡を兄でもあるパオロ王に迫り、パオロ王は男系の伝統を守ろうと、一人息子の処分を頑なに拒む。 こう着状態の中、全ての問題解決が公爵令嬢ロミーナに託された。 そして、彼女が出した結論は…… 伝説の泉にベルナルド王太子を投げ込むことだった。

お父様お母様、お久しぶりです。あの時わたしを捨ててくださりありがとうございます

柚木ゆず
恋愛
 ヤニックお父様、ジネットお母様。お久しぶりです。  わたしはアヴァザール伯爵家の長女エマとして生まれ、6歳のころ貴方がたによって隣国に捨てられてしまいましたよね?  当時のわたしにとってお二人は大事な家族で、だからとても辛かった。寂しくて悲しくて、捨てられたわたしは絶望のどん底に落ちていました。  でも。  今は、捨てられてよかったと思っています。  だって、その出来事によってわたしは――。大切な人達と出会い、大好きな人と出逢うことができたのですから。

そう言うと思ってた

mios
恋愛
公爵令息のアランは馬鹿ではない。ちゃんとわかっていた。自分が夢中になっているアナスタシアが自分をそれほど好きでないことも、自分の婚約者であるカリナが自分を愛していることも。 ※いつものように視点がバラバラします。

婚約破棄ですか???実家からちょうど帰ってこいと言われたので好都合です!!!これからは復讐をします!!!~どこにでもある普通の令嬢物語~

tartan321
恋愛
婚約破棄とはなかなか考えたものでございますね。しかしながら、私はもう帰って来いと言われてしまいました。ですから、帰ることにします。これで、あなた様の口うるさい両親や、その他の家族の皆様とも顔を合わせることがないのですね。ラッキーです!!! 壮大なストーリーで奏でる、感動的なファンタジーアドベンチャーです!!!!!最後の涙の理由とは??? 一度完結といたしました。続編は引き続き書きたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

我慢してきた令嬢は、はっちゃける事にしたようです。

和威
恋愛
侯爵令嬢ミリア(15)はギルベルト伯爵(24)と結婚しました。ただ、この伯爵……別館に愛人囲ってて私に構ってる暇は無いそうです。本館で好きに過ごして良いらしいので、はっちゃけようかな?って感じの話です。1話1500~2000字程です。お気に入り登録5000人突破です!有り難うございまーす!2度見しました(笑)

今更気付いてももう遅い。

ユウキ
恋愛
ある晴れた日、卒業の季節に集まる面々は、一様に暗く。 今更真相に気付いても、後悔してももう遅い。何もかも、取り戻せないのです。

処理中です...