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133.容赦は不要/厳重に注意
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国王は手段も生死も問わないと口にした。つまり、実の息子とその恋人に一切の容赦はしないことを決めたのだ。もう、捕らえる過程で死んでしまっても構わない、そう公言したも同然だ。
「あやつらの脱走に協力したであろう者共も同じだ。アクサンの元側近の連中は文武にも優れておるゆえ彼らにも容赦は不要だ。よいな」
「は!」
ワカマリナの脱走を手引きした者達はアクサンの元側近だと分かったが、彼らはワカマリナほど大きな罪を犯したわけではない。しかし、国王の言う通り文武に優れており、特に騎士団長の息子はすでに並の兵士を凌駕すると言われている。打ち取る気で立ち向かう方がちょうどいいくらいなのだ。
その旨を部下たちや兵士たちにも伝えた後、王として真に守るべき民のことを考えた。特に、問題の二人に睨まれる人物について……。
「アキエーサ嬢にも早急に伝えねばならん。無論、イムラン侯爵にもだ。アキエーサ嬢はワカマリナの義姉であり、その命を狙われたばかりだ。ワカマリナが血迷えば再び同じことが起こるやもしれん。アクサンも彼女に求婚して断られた経緯がある。そのことを逆恨みして行動することもあり得る。……親として情けない話だがな」
「陛下………」
「そういう意味ではアキエーサ嬢達が王宮に留まらなくてよかったかもしれんな。アクサンたちが脱走するなど誰が予想しようか?」
今、アキエーサもその義父の公爵も王宮にはいない。二人とも昨日の事件の被害者側なのだが、アキエーサを心配した侯爵の提案で事情聴取は後日という話で終わったのだ。
もしも事情聴取という理由で朝まで王宮に留まっていたら、本当に逆恨みで狙われたかもしれない。その可能性を考えただけで国王は最悪の事態だけは免れたのかもしれないと思った。しかし、油断もできない。
「今、アキエーサ嬢もイムラン侯爵も王都に構える屋敷にいるのだな」
「さようです陛下。それにベスクイン公爵父娘も同様にございます。彼らにもお伝えしましょう」
「そうだな。その通り……ん、父娘?」
「陛下、どうされ……あ!」
父娘と聞いて国王はハッとした。ワカマリナの関係者には忘れてはならない者がまだ二人いることに気付いたのだ。肝心のワカマリナの両親がまだ事情聴取の途中なのだ。
「イカゾノス伯爵夫妻! あの二人はいまだ王宮にいるのであったな。もしやワカマリナのことで何か分かるのではないか?」
「すでに尋問を開始しておりますが、有力な情報はまだですね。どうもあの夫妻は娘に対して放任主義であったようですから、期待できる情報は微妙ですね」
「……だろうな」
国王の声は冷たかった。イカゾノス伯爵夫妻が娘を顧みなかったことは『友人』の伝手で国王の耳にも入っていたのだ。姉妹揃って放任したことが遠因で昨日の事件が起こったと言っても過言ではないくらいには。
「とりあえず、早急に昨日の関係者全員に伝えるのだ。アクサンとワカマリナが元側近らの力を借りて王宮から逃亡したことを。そして危害を及ぼす可能性が高いとして厳重に注意せよと!」
「は!」
国王の命によって直ちに部下たちが兵士たちが動き出す。そして、昨日の関係者たちの屋敷に向けて王宮から早馬が出された。もちろん、問題児二人の脱走とその危険性を伝えるためだった。
しかし、国王たちが予想していたよりもずっと『アクサン側』の動きは速かった。
「あやつらの脱走に協力したであろう者共も同じだ。アクサンの元側近の連中は文武にも優れておるゆえ彼らにも容赦は不要だ。よいな」
「は!」
ワカマリナの脱走を手引きした者達はアクサンの元側近だと分かったが、彼らはワカマリナほど大きな罪を犯したわけではない。しかし、国王の言う通り文武に優れており、特に騎士団長の息子はすでに並の兵士を凌駕すると言われている。打ち取る気で立ち向かう方がちょうどいいくらいなのだ。
その旨を部下たちや兵士たちにも伝えた後、王として真に守るべき民のことを考えた。特に、問題の二人に睨まれる人物について……。
「アキエーサ嬢にも早急に伝えねばならん。無論、イムラン侯爵にもだ。アキエーサ嬢はワカマリナの義姉であり、その命を狙われたばかりだ。ワカマリナが血迷えば再び同じことが起こるやもしれん。アクサンも彼女に求婚して断られた経緯がある。そのことを逆恨みして行動することもあり得る。……親として情けない話だがな」
「陛下………」
「そういう意味ではアキエーサ嬢達が王宮に留まらなくてよかったかもしれんな。アクサンたちが脱走するなど誰が予想しようか?」
今、アキエーサもその義父の公爵も王宮にはいない。二人とも昨日の事件の被害者側なのだが、アキエーサを心配した侯爵の提案で事情聴取は後日という話で終わったのだ。
もしも事情聴取という理由で朝まで王宮に留まっていたら、本当に逆恨みで狙われたかもしれない。その可能性を考えただけで国王は最悪の事態だけは免れたのかもしれないと思った。しかし、油断もできない。
「今、アキエーサ嬢もイムラン侯爵も王都に構える屋敷にいるのだな」
「さようです陛下。それにベスクイン公爵父娘も同様にございます。彼らにもお伝えしましょう」
「そうだな。その通り……ん、父娘?」
「陛下、どうされ……あ!」
父娘と聞いて国王はハッとした。ワカマリナの関係者には忘れてはならない者がまだ二人いることに気付いたのだ。肝心のワカマリナの両親がまだ事情聴取の途中なのだ。
「イカゾノス伯爵夫妻! あの二人はいまだ王宮にいるのであったな。もしやワカマリナのことで何か分かるのではないか?」
「すでに尋問を開始しておりますが、有力な情報はまだですね。どうもあの夫妻は娘に対して放任主義であったようですから、期待できる情報は微妙ですね」
「……だろうな」
国王の声は冷たかった。イカゾノス伯爵夫妻が娘を顧みなかったことは『友人』の伝手で国王の耳にも入っていたのだ。姉妹揃って放任したことが遠因で昨日の事件が起こったと言っても過言ではないくらいには。
「とりあえず、早急に昨日の関係者全員に伝えるのだ。アクサンとワカマリナが元側近らの力を借りて王宮から逃亡したことを。そして危害を及ぼす可能性が高いとして厳重に注意せよと!」
「は!」
国王の命によって直ちに部下たちが兵士たちが動き出す。そして、昨日の関係者たちの屋敷に向けて王宮から早馬が出された。もちろん、問題児二人の脱走とその危険性を伝えるためだった。
しかし、国王たちが予想していたよりもずっと『アクサン側』の動きは速かった。
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