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131.アクサン視点/復讐
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(アクサン視点)
「復讐だと?」
「はい。僕の未来はもう閉ざされてしまったので。侯爵家の嫡男の立場も、その当主の座も。貴族として輝かしい未来の全てをね! あの姉妹のせいで、あの姉妹のせいで!」
語気を荒くして語ってくるこいつの目は狂気すら見えてくる。『あの姉妹のせいで』と二回も口にして強調する様子から、ワカマリナとアキエーサに対する憎悪は尋常ではないのだろうな。
「そ、それは確かに、あの姉妹のせいにはなるが、私は、」
「関係あるでしょう! ワカマリナに魅了されたせいで王族から除籍されそうになるのですからね! それを阻止するためにアキエーサを婚約者に変えようとしても断られる。それほど虚仮にされた貴方もあの姉妹の犠牲者だ!」
「…………!」
何だかカチンとくるような言い方だな。しかし、こいつは私のことをある程度知っているようだが、さっきの口ぶりから平民になってしまったはずだ。それなのにそんなことをどうやって知りえたんだろう? 王宮の兵士の格好になれるのも変だ。
そんな疑問を抱いたのだが、それを考える暇はなかった。
「できれば貴方にも僕の復讐に協力してもらいたいのです。見返りも準備してます」
「! だから助け出してくれた、と?」
見返り、と聞いて興味を持ったわけではない。協力と聞いて気になったんだ。もちろん見返りも欲しい。
「その通りです。僕も貴方もあの姉妹に人生を狂わされた同志ではないですか。このままで終わりたいとも思わないはずです。あの姉妹に復讐したいと思わないはずがない! 違いますか!?」
「……そうだ、その通りだ。ワカマリナに出会わなければ王太子の座を失うことは無かった。アキエーサにも虚仮にされることもなかったんだ」
「そうです。本来、貴方のようなお方がそんな目に遭うはずはなかったのです。あの姉妹の存在が理不振に将来を奪ったのです!」
「そう、そうなんだ……そうだ! その通りだ! それなら、私は……!」
何だか都合のいいように言いくるめられた気もしないではないが、私もあの姉妹が許せない気持ちもある。ここまで落ちぶれるほど虚仮にされた屈辱を晴らせずにはいられなかった。……正直、こいつが絡んできたこと事態できすぎた話な気もするのだが、復讐とやらに協力することにした。
「分かった、協力しよう」
「そう言ってくれると思っていました!」
ニッコリと笑って感謝の気持ちを見せてくるがどこか不気味に見える。しかし、どうせ私の人生も終ったようなものだしな、どうでもいい………。
だからこそ、見返りとやらも気になる。せめて平民にならなくてもいいような、お金持ちになれるような内容ならいいのだが……。
「それで、具体的には何をするつもりなんだ? 復讐と言うからには、あの姉妹を殺したりするのか?」
願わくばあの姉妹には必ず死んでほしい。惨たらしく屈辱的な死を望む。だが、この手を汚すようなことはしたくない。情けない話、血を見るのに抵抗があるからな。本当に私は優しすぎる。そんな優しさにつけこまれて今に至るんだけどな。
「もちろん最終的には口封じに死んでもらいますよ。アキエーサから聞きたいことを聞き出した後でね」
「聞きたいこと?」
「商会のことですよ。ダブール商会の会長なのでしょう? あの地味でいけ好かないアキエーサがね……」
うわぁ、あからさまな憎しみに満ちた顔に変わりやがった。私でも恐怖を感じる。あのアキエーサという女は男にここまでの憎しみを抱かせるほどの心の冷たい女だったということか。求婚しなきゃよかったな。
「ダブール商会の、あの画期的な商品情報。その情報全てを、アキエーサを楽しく拷問して聞き出します。その情報を手土産に他国に亡命するのですよ。……ふふふふふ、僕と貴方でね。見返りというのは他国での安定した地位になりますね」
「……………………!」
それだけ聞いて、私は背筋が凍った。この男は女性を拷問するつもりのようだ。どうしようもなく恐ろしくもあるが、他国に亡命して貴族かそれに近い地位を得られると聞いて、心の底から喜ぶ自分がいた。
「復讐だと?」
「はい。僕の未来はもう閉ざされてしまったので。侯爵家の嫡男の立場も、その当主の座も。貴族として輝かしい未来の全てをね! あの姉妹のせいで、あの姉妹のせいで!」
語気を荒くして語ってくるこいつの目は狂気すら見えてくる。『あの姉妹のせいで』と二回も口にして強調する様子から、ワカマリナとアキエーサに対する憎悪は尋常ではないのだろうな。
「そ、それは確かに、あの姉妹のせいにはなるが、私は、」
「関係あるでしょう! ワカマリナに魅了されたせいで王族から除籍されそうになるのですからね! それを阻止するためにアキエーサを婚約者に変えようとしても断られる。それほど虚仮にされた貴方もあの姉妹の犠牲者だ!」
「…………!」
何だかカチンとくるような言い方だな。しかし、こいつは私のことをある程度知っているようだが、さっきの口ぶりから平民になってしまったはずだ。それなのにそんなことをどうやって知りえたんだろう? 王宮の兵士の格好になれるのも変だ。
そんな疑問を抱いたのだが、それを考える暇はなかった。
「できれば貴方にも僕の復讐に協力してもらいたいのです。見返りも準備してます」
「! だから助け出してくれた、と?」
見返り、と聞いて興味を持ったわけではない。協力と聞いて気になったんだ。もちろん見返りも欲しい。
「その通りです。僕も貴方もあの姉妹に人生を狂わされた同志ではないですか。このままで終わりたいとも思わないはずです。あの姉妹に復讐したいと思わないはずがない! 違いますか!?」
「……そうだ、その通りだ。ワカマリナに出会わなければ王太子の座を失うことは無かった。アキエーサにも虚仮にされることもなかったんだ」
「そうです。本来、貴方のようなお方がそんな目に遭うはずはなかったのです。あの姉妹の存在が理不振に将来を奪ったのです!」
「そう、そうなんだ……そうだ! その通りだ! それなら、私は……!」
何だか都合のいいように言いくるめられた気もしないではないが、私もあの姉妹が許せない気持ちもある。ここまで落ちぶれるほど虚仮にされた屈辱を晴らせずにはいられなかった。……正直、こいつが絡んできたこと事態できすぎた話な気もするのだが、復讐とやらに協力することにした。
「分かった、協力しよう」
「そう言ってくれると思っていました!」
ニッコリと笑って感謝の気持ちを見せてくるがどこか不気味に見える。しかし、どうせ私の人生も終ったようなものだしな、どうでもいい………。
だからこそ、見返りとやらも気になる。せめて平民にならなくてもいいような、お金持ちになれるような内容ならいいのだが……。
「それで、具体的には何をするつもりなんだ? 復讐と言うからには、あの姉妹を殺したりするのか?」
願わくばあの姉妹には必ず死んでほしい。惨たらしく屈辱的な死を望む。だが、この手を汚すようなことはしたくない。情けない話、血を見るのに抵抗があるからな。本当に私は優しすぎる。そんな優しさにつけこまれて今に至るんだけどな。
「もちろん最終的には口封じに死んでもらいますよ。アキエーサから聞きたいことを聞き出した後でね」
「聞きたいこと?」
「商会のことですよ。ダブール商会の会長なのでしょう? あの地味でいけ好かないアキエーサがね……」
うわぁ、あからさまな憎しみに満ちた顔に変わりやがった。私でも恐怖を感じる。あのアキエーサという女は男にここまでの憎しみを抱かせるほどの心の冷たい女だったということか。求婚しなきゃよかったな。
「ダブール商会の、あの画期的な商品情報。その情報全てを、アキエーサを楽しく拷問して聞き出します。その情報を手土産に他国に亡命するのですよ。……ふふふふふ、僕と貴方でね。見返りというのは他国での安定した地位になりますね」
「……………………!」
それだけ聞いて、私は背筋が凍った。この男は女性を拷問するつもりのようだ。どうしようもなく恐ろしくもあるが、他国に亡命して貴族かそれに近い地位を得られると聞いて、心の底から喜ぶ自分がいた。
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