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115.責任問題/フミーナ視点

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「それに引き換え、殿下は非常に残念です。王族であるにもかかわらず貴族の見本になれず、それどころか率先して風紀を乱すなど遺憾に堪えません。せめてワカマリナ嬢のことを最後まで見ていれば、彼女も追い詰めることもなかったでしょう。無論、罪を犯すことも……」

「「「「……」」」」

ジノンの言葉に誰もが頷いた。ワカマリナはナイフを持ってアキエーサの前に現れるその前に、ジノンに引きずられるアクサンと会っていたのだが、その際に罵詈雑言を吐き捨てられたのだ。ワカマリナの凶行の背景には、間違いなくアクサンにも原因があると言ってもいい。ジノンの口からアクサンのことを聞いたアキエーサ達はそう思った。

「……しかし、凶行に及んだのは紛れもなくワカマリナ嬢です。その処分、責任問題に関しては彼女自身とその両親に問われることになるでしょうな」

ジノンは目線をアキエーサ達の後方へと向けた。そして、顔つきもとても厳しいものに変えて、少し大きな声で口にした。



「貴方方もそう思いませんか? イカゾノス伯爵殿?」

「「「「っ!?」」」」


アキエーサ達は、ジノンの言葉に驚いて振り返ると、アキエーサ達から離れた場所で、苦虫を噛み潰したような顔で佇むイカゾノス伯爵リーベエとフミーナがいた。肝心の二人もこちらに気付かれたと思ったのか、渋々といった感じで近づいてくる。

「「…………」」

無言で近づいてくるイカゾノス伯爵夫妻は、アキエーサ達に何か言いたげにしているような悔しそうな顔で見ていたが、遂にジノンと会話できる距離までくると顔を青くしてジノンに向き直った。いや、向き直るしかないという方が正しい。伯爵と公爵では格が違いすぎる、少しでもよそ見するわけにはいかない。そんな風に思っているのだろう。


(フミーナ視点)


中庭では、ワカマリナが兵士達に捕縛されてしまっていた。私は声を張り上げそうになったが、もう少し様子を見たいという夫に手で口を塞がれる。その間にも、抵抗するワカマリナを抑えるために兵士が集まってくる。……こうしてみると尋常じゃない事態が起こっていると嫌でもわかった私も冷静になった。


そして、ワカマリナと兵士達の他に、アキエーサは婚約者の男とルカスと一緒にいる。いや、あいつらの他にベスクイン公爵令嬢まで……どういうこと?


更に困惑するのは、大柄の貴族の男が現れたことだった。その正体は、何とあのベスクイン公爵!


「「…………!」」


公爵まで現れたから驚いた。あの男は私達以上の権力を持っている。下手に関わるのは避けるべき相手……なのに、何やら実の娘と抱き合ったかと思えば、アキエーサ達に向かって頭を深く下げている……え、本当にどういうこと?


……まさかワカマリナが何か、と嫌な予感がよぎって、私達は様子を見ていたのだが遅かったみたい。実際、あの状況を見れば、その嫌な予感が的中してしまったと思わざるを得ない。


兵士達に捕縛されて連行されるワカマリナ。安心した顔をするアキエーサ達。喜んで抱き合うベスクイン公爵親子。……これだけ見れば、詳細は分からなくても『ワカマリナが何かしでかした』こと『公爵令嬢を巻き込んだ』ことまで予想できる。もちろん、非常に悪い意味で。


つまり、


「ワカマリナは……罪を犯したというの……」


最悪だ。
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