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112.度肝を抜く/ルカス視点
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「離せ! 離せー! お姉様を、その女を殺すのー!」
恐ろしいことを喚き続けるワカマリナだが、もちろん彼女を手を掴むルカスとテールは離す気はない。むしろ、危険が無くなるまで押さえつけようという魂胆だった。
「ワカマリナ、もう諦めなさい。貴女以外に私の死を望む者などいないのです」
「ふざけないで! わたくしは望んでいますの! だからお姉様は死んでよ! わたくしとアクサン様のために!」
もう何を言っても聞き入れないというワカマリナだが、アキエーサはとある確認のためにワカマリナに質問を始めた。
「ワカマリナ、アクサン殿下はそんなことを望んでいますか?」
「はぁ!? 当たり前でしょうが!」
「それでは、アクサン殿下がワカマリナに私を殺すように指示したということでしょうか?」
「「「っ!?」」」
アキエーサの質問にエリザとルカスとテールも度肝を抜かれた気分になった。アキエーサが言うように『アクサン殿下が指示した』となった場合、王族が罪なき国民を亡き者にしようとした、ということになってしまうからだ。
アキエーサの質問は、今後の王族の威信にかかわることでもあるのだ。しかし、見過ごすというわけにもいかないのも事実。もしも、そんなことが事実であったら……。その可能性が頭をよぎると、その場にいる全員がワカマリナの返答に対して緊張感が高まった。
そして、肝心のワカマリナの返答は正直なものだった。
「……はぁ? 何を言っていますの? わたくしのお優しいアクサン様がそんなことを言うはずがありませんわ。お姉さまはそんなことも分からないのです?」
「「「「…………ホッ……」」」」
「え? 何ですか、その態度は? え?」
実の姉に対して相当上から目線な返答であり、本来なら苛立つような言い方だったのだが、アキエーサ達はホッと安心した。
◇
(ルカス視点)
ワカマリナの返答に俺はホッと安心した。それでも、この馬鹿の腕を離すわけにはいかないがな。いやしかし、今度ばかりはひやひやしたな。突然ワカマリナが現れたことも、王家に関わるアキエーサの質問も、寿命が縮むんじゃないかと思うほど衝撃的だったな。
……いや、こんなことで寿命が縮みそうとか、俺も老いたな。だが、流石のアクサンも殺人までには関わっていなくて安心はしたな。アクサンは典型的な馬鹿貴族だ。自分の都合の悪い者を始末してしまおうと考えてもおかしくはない。正直、俺もアクサンが関わっているんじゃないかと疑っていたが、そうでなくてよかった。
「ねえ、そんな事よりも、離してくださらない?」
まだ言うのか、諦めの悪いことだな。状況がまだ分かっていないから、本当に面倒だな。この馬鹿女も馬鹿王子も。
「おい、そこで何している!」
「「「「「っ!」」」」」
どうやら、やっと兵士の連中が来たみたいだな。やれやれ、いいタイミングで来てくれるじゃねえか
「怪しいや……こ、これはイムラン侯爵閣下ではありませんか!? な、何故、ここに!?」
「ちょうどよかった、今すぐわたく、」
「ああ、とんでもない不届き者がいたんだ。俺の義理の娘を殺そうとした馬鹿がいてな。今、そいつを取り押さえているところなんだ。お前らに引き渡すから後は頼んだ」
「ちょっと! 勝手なことを言わないでよ!」
馬鹿なことを言い出すから遮っただけだ。まあ、兵士も馬鹿じゃないからこの状況を見れば察しが付くだろうけどな。
「は、はぁ……あの、この人、アクサン殿下の婚約者の方では?」
「殺人未遂でとっ捕まえておけ。証拠は、」
「わたくしはわたくし自身とアクサン殿下の未来のためにお姉さまを殺そうとしただけよ!」
……あ、先に言われてしまった。こいつ、自分の言葉の意味すら分かってないのか?
「……本人が自白した通りだ」
「……分かりました。後はお任せください」
……ここまで馬鹿だとは、もう関わりたくもねえ。まあ、これからは関わることがないだろうがな。
恐ろしいことを喚き続けるワカマリナだが、もちろん彼女を手を掴むルカスとテールは離す気はない。むしろ、危険が無くなるまで押さえつけようという魂胆だった。
「ワカマリナ、もう諦めなさい。貴女以外に私の死を望む者などいないのです」
「ふざけないで! わたくしは望んでいますの! だからお姉様は死んでよ! わたくしとアクサン様のために!」
もう何を言っても聞き入れないというワカマリナだが、アキエーサはとある確認のためにワカマリナに質問を始めた。
「ワカマリナ、アクサン殿下はそんなことを望んでいますか?」
「はぁ!? 当たり前でしょうが!」
「それでは、アクサン殿下がワカマリナに私を殺すように指示したということでしょうか?」
「「「っ!?」」」
アキエーサの質問にエリザとルカスとテールも度肝を抜かれた気分になった。アキエーサが言うように『アクサン殿下が指示した』となった場合、王族が罪なき国民を亡き者にしようとした、ということになってしまうからだ。
アキエーサの質問は、今後の王族の威信にかかわることでもあるのだ。しかし、見過ごすというわけにもいかないのも事実。もしも、そんなことが事実であったら……。その可能性が頭をよぎると、その場にいる全員がワカマリナの返答に対して緊張感が高まった。
そして、肝心のワカマリナの返答は正直なものだった。
「……はぁ? 何を言っていますの? わたくしのお優しいアクサン様がそんなことを言うはずがありませんわ。お姉さまはそんなことも分からないのです?」
「「「「…………ホッ……」」」」
「え? 何ですか、その態度は? え?」
実の姉に対して相当上から目線な返答であり、本来なら苛立つような言い方だったのだが、アキエーサ達はホッと安心した。
◇
(ルカス視点)
ワカマリナの返答に俺はホッと安心した。それでも、この馬鹿の腕を離すわけにはいかないがな。いやしかし、今度ばかりはひやひやしたな。突然ワカマリナが現れたことも、王家に関わるアキエーサの質問も、寿命が縮むんじゃないかと思うほど衝撃的だったな。
……いや、こんなことで寿命が縮みそうとか、俺も老いたな。だが、流石のアクサンも殺人までには関わっていなくて安心はしたな。アクサンは典型的な馬鹿貴族だ。自分の都合の悪い者を始末してしまおうと考えてもおかしくはない。正直、俺もアクサンが関わっているんじゃないかと疑っていたが、そうでなくてよかった。
「ねえ、そんな事よりも、離してくださらない?」
まだ言うのか、諦めの悪いことだな。状況がまだ分かっていないから、本当に面倒だな。この馬鹿女も馬鹿王子も。
「おい、そこで何している!」
「「「「「っ!」」」」」
どうやら、やっと兵士の連中が来たみたいだな。やれやれ、いいタイミングで来てくれるじゃねえか
「怪しいや……こ、これはイムラン侯爵閣下ではありませんか!? な、何故、ここに!?」
「ちょうどよかった、今すぐわたく、」
「ああ、とんでもない不届き者がいたんだ。俺の義理の娘を殺そうとした馬鹿がいてな。今、そいつを取り押さえているところなんだ。お前らに引き渡すから後は頼んだ」
「ちょっと! 勝手なことを言わないでよ!」
馬鹿なことを言い出すから遮っただけだ。まあ、兵士も馬鹿じゃないからこの状況を見れば察しが付くだろうけどな。
「は、はぁ……あの、この人、アクサン殿下の婚約者の方では?」
「殺人未遂でとっ捕まえておけ。証拠は、」
「わたくしはわたくし自身とアクサン殿下の未来のためにお姉さまを殺そうとしただけよ!」
……あ、先に言われてしまった。こいつ、自分の言葉の意味すら分かってないのか?
「……本人が自白した通りだ」
「……分かりました。後はお任せください」
……ここまで馬鹿だとは、もう関わりたくもねえ。まあ、これからは関わることがないだろうがな。
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