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99.国王視点/頭と胃が痛い

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(国王視点)

――私は逃げ出してしまったバカ息子に代わり、パーティーを仕切ることになった。そうでもしなければ、我が国が醜態を晒すままに終わってしまうからだ。万が一のことを考えて控室で待機していたのだが、このような形でそれが助けになるとは……思った通りのことになってしまった。


「……バカ息子め、本当にここまで愚か者だったとはな」


鏡を見ただけでも私は自分がやつれていると分かるのだが、国王としてこの場を何とか切り抜けなくてはならない。たとえ、この件で自らに罰を与えなくてはならなくてもだ。私ももう精神的にきつい。


壇上に上がれば、当初の予定にはなかった多くの諸外国の要人達が私の目に入る。友好国からそうでもない国の要人たちまで様々だ。正直、よくこんなパーティーに足を運んだものだと呆れるし、何故こんなに来たんだと不思議に思う。こんなことで姿を見せた私を憐れむ者や嘲笑う者、もしくは真剣に見つめる者や無表情で見る者、本当によくこんなに集まってきたものだ。


いくらワカマリナとかいう馬鹿女が学園で吹聴していたとはいえ、各国にそこまで広まるのだろうか? 確かに学園には多くの留学生がいるから彼らが母国に報告したと思えば不思議ではないが、流石にこの人数はおかしい。何だか別の勢力からの干渉があったと思わずにはいられない。


……そうなると三大公爵家、特にベスクイン公爵家が怪しい。アクサンの元婚約者はあの家の娘だ。名はエリザ・ベスクイン。あの堅物で大男のベスクイン公爵に溺愛されると聞く。彼女がアクサンを陥れるためにわざわざ多くの要人が来るように公爵家の力で情報操作したとすれば、ありえん話でもない。


しかし、エリザ嬢はアクサンのことを婚約していた頃から嫌っていたはず。それに婚約破棄となった時はよろこんでいたという報告があった。それでも、ベスクイン公爵家に関しては目を光らせていたのだ……が、あのジノンのことだ。それにも気づいていただろうな。それにたとえそうだとしても、アクサンのことは王家の落ち度だ。証拠もないし文句も言える立場ではない。


それに、怪しいのはベスクイン公爵家だけではない。他の公爵家も王家に干渉したいという動機があればおかしい話ではないのだ。他の公爵家にはシンクーロ公爵家とナーマクラ公爵家がある。いや、シンクーロ公爵家はお家騒動でそれどころではないだろう。怪しいのは、ナーマクラ公爵家か。


ナーマクラ公爵家は今の当主が野心が強い傾向がある。だが、その当主が大した人物ではないのだ。気が利かないというわけではないし目ざといが、頭がいいというわけではなく、どちらかと言うと残念の人物なのだ。何と表現すればいいか、小物らしい思考の持ち主なのだ。


……いや、それだと我が王家はおろか他の貴族も怪しい動きがあれば気付くだろう。今のところ、ナーマクラ公爵家に妙な動きはないと聞くし、今もジノンやシンクーロ公爵家当主、それにイムラン侯爵家のルカスに媚を売ろうと躍起になっているしな。あれは関係ないか。


やはり留学生から情報が漏れたのか? いや待てよ。そう言えば、留学生の中にはアクサンに無理矢理側近にされそうになった少年がいたな。しかもその留学生は貴族の嫡男の立場にあったと聞く。名前は忘れたが確かかの国の王家に近い立場だとも聞いたような……それが原因か?


だとするとやはりアクサンのせいということに……ああ、頭と胃が痛い。


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