86 / 229
86.アクサン視点/今更
しおりを挟む
(アクサン視点)
パーティー会場から走り去った私は、疲れてきたところで立ち止まって休んでいた。
「はぁ、はぁ……くそっ! パーティーなんかもう滅茶苦茶だ!」
父上にパーティーを成功させろと言われたが、もう失敗だと決まったも同然だ。パーティーの不出来な仕様、ワカマリナの暴走、そして……私の醜態、これで成功させろという方が無理だ。
「それもこれも……パーティーの準備を任せてやったあいつらとワカマリナが悪い!」
パーティーの使用を先月のものとそのまま同じものにするなんて適当すぎるだろうが! せっかく父上に内緒で先月の二倍の費用を使ったのに、無駄じゃないか! そのうち半分は私のお小遣いにしてしたけどな! 無能な部下を持つと苦労するのは主である私だ! あいつら皆クビにしてやる!
「特に……ワカマリナも酷すぎる!」
この一か月の間で金を使い続けてぶくぶく太りやがって! せっかく恵まれた容姿をしていたのに自分で台無しにするなよな! それ以上に、信じられないくらい散財しやがったから周りから嫌そうな目で見られるしまつ! 正直、婚約して二週間くらいで愛想尽きかけてたが、もううんざりだ! 不敬罪で処罰してやる。
「ああくそ! どうすればいいんだ!」
父上は失敗したと判断するに決まっている。このままでは私は王族から除籍……そんなの嫌だ! 婚約者というのは、見た目だけでなく性格も重視しなければならなかったわけか。ワカマリナとの婚約は本当に失敗したな。あの女との婚約は無理だ。誰が何と言おうともだ。
……そういう意味では、前の婚約者のエリザはまともだったのかもしれない。性格は厳しくて口うるさかったけど、美人だったし金遣いは荒くなど無かった。それに公爵令嬢だから身分もいい。厳しいところを我慢すれば理想的な婚約者だったのかもしれない。そう思うと惜しいことをしたなぁと思ってしまう。……今更だけどな。
だがしかし、エリザが婚約者に戻れば父上による私の王族除籍は免れるかもしれない。私が口説けばもしかしたらあるいは……いや、無いか。最後に見たエリザは本当に私との婚約が無くなって嬉しそうにしていた。今更、婚約し治してくれと言っても断られるかも。
「……やはり、アキエーサしかないな」
そうだ、アキエーサを口説くしかない。彼女はあのダブール商会の会長だという。年若い貴族令嬢が革新的な商品を売る商会の会長だと聞いて半信半疑であったが、彼女の自己紹介や商会に関する演説を聞いてみると、あのエリザにも勝るとも劣らないような不思議な魅力を感じざるを得なかった。
見た目しか取り柄がなかったワカマリナにはない魅力。それに心を奪われた私はその場で求婚してしまったのだ。ただ、今思えばよくあんな状況で求婚なんかしたものだと反省する。しかも、もう婚約者がいると言われて断られてしまったから悔しさもある。
……だが、婚約者がいるからと言って、王太子である私の求婚を断るなど許されるはずがないじゃないか。元からいる婚約者なんて捨てればいいじゃないか。私のような美男子で優秀な王子を選ぶべきじゃないか。そう思うと、やはりアキエーサは許せん。
しかし、冷静になった私は寛容だ。もう一度求婚してやろうじゃないか。今度は、ロマンチックさを出すために二人になれる時と場所を選んでな。もう今更後戻りできないし。
パーティー会場から走り去った私は、疲れてきたところで立ち止まって休んでいた。
「はぁ、はぁ……くそっ! パーティーなんかもう滅茶苦茶だ!」
父上にパーティーを成功させろと言われたが、もう失敗だと決まったも同然だ。パーティーの不出来な仕様、ワカマリナの暴走、そして……私の醜態、これで成功させろという方が無理だ。
「それもこれも……パーティーの準備を任せてやったあいつらとワカマリナが悪い!」
パーティーの使用を先月のものとそのまま同じものにするなんて適当すぎるだろうが! せっかく父上に内緒で先月の二倍の費用を使ったのに、無駄じゃないか! そのうち半分は私のお小遣いにしてしたけどな! 無能な部下を持つと苦労するのは主である私だ! あいつら皆クビにしてやる!
「特に……ワカマリナも酷すぎる!」
この一か月の間で金を使い続けてぶくぶく太りやがって! せっかく恵まれた容姿をしていたのに自分で台無しにするなよな! それ以上に、信じられないくらい散財しやがったから周りから嫌そうな目で見られるしまつ! 正直、婚約して二週間くらいで愛想尽きかけてたが、もううんざりだ! 不敬罪で処罰してやる。
「ああくそ! どうすればいいんだ!」
父上は失敗したと判断するに決まっている。このままでは私は王族から除籍……そんなの嫌だ! 婚約者というのは、見た目だけでなく性格も重視しなければならなかったわけか。ワカマリナとの婚約は本当に失敗したな。あの女との婚約は無理だ。誰が何と言おうともだ。
……そういう意味では、前の婚約者のエリザはまともだったのかもしれない。性格は厳しくて口うるさかったけど、美人だったし金遣いは荒くなど無かった。それに公爵令嬢だから身分もいい。厳しいところを我慢すれば理想的な婚約者だったのかもしれない。そう思うと惜しいことをしたなぁと思ってしまう。……今更だけどな。
だがしかし、エリザが婚約者に戻れば父上による私の王族除籍は免れるかもしれない。私が口説けばもしかしたらあるいは……いや、無いか。最後に見たエリザは本当に私との婚約が無くなって嬉しそうにしていた。今更、婚約し治してくれと言っても断られるかも。
「……やはり、アキエーサしかないな」
そうだ、アキエーサを口説くしかない。彼女はあのダブール商会の会長だという。年若い貴族令嬢が革新的な商品を売る商会の会長だと聞いて半信半疑であったが、彼女の自己紹介や商会に関する演説を聞いてみると、あのエリザにも勝るとも劣らないような不思議な魅力を感じざるを得なかった。
見た目しか取り柄がなかったワカマリナにはない魅力。それに心を奪われた私はその場で求婚してしまったのだ。ただ、今思えばよくあんな状況で求婚なんかしたものだと反省する。しかも、もう婚約者がいると言われて断られてしまったから悔しさもある。
……だが、婚約者がいるからと言って、王太子である私の求婚を断るなど許されるはずがないじゃないか。元からいる婚約者なんて捨てればいいじゃないか。私のような美男子で優秀な王子を選ぶべきじゃないか。そう思うと、やはりアキエーサは許せん。
しかし、冷静になった私は寛容だ。もう一度求婚してやろうじゃないか。今度は、ロマンチックさを出すために二人になれる時と場所を選んでな。もう今更後戻りできないし。
1
お気に入りに追加
863
あなたにおすすめの小説
記憶がないので離縁します。今更謝られても困りますからね。
せいめ
恋愛
メイドにいじめられ、頭をぶつけた私は、前世の記憶を思い出す。前世では兄2人と取っ組み合いの喧嘩をするくらい気の強かった私が、メイドにいじめられているなんて…。どれ、やり返してやるか!まずは邸の使用人を教育しよう。その後は、顔も知らない旦那様と離婚して、平民として自由に生きていこう。
頭をぶつけて現世記憶を失ったけど、前世の記憶で逞しく生きて行く、侯爵夫人のお話。
ご都合主義です。誤字脱字お許しください。
婚約破棄ですか???実家からちょうど帰ってこいと言われたので好都合です!!!これからは復讐をします!!!~どこにでもある普通の令嬢物語~
tartan321
恋愛
婚約破棄とはなかなか考えたものでございますね。しかしながら、私はもう帰って来いと言われてしまいました。ですから、帰ることにします。これで、あなた様の口うるさい両親や、その他の家族の皆様とも顔を合わせることがないのですね。ラッキーです!!!
壮大なストーリーで奏でる、感動的なファンタジーアドベンチャーです!!!!!最後の涙の理由とは???
一度完結といたしました。続編は引き続き書きたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
舞台装置は壊れました。
ひづき
恋愛
公爵令嬢は予定通り婚約者から破棄を言い渡された。
婚約者の隣に平民上がりの聖女がいることも予定通り。
『お前は未来の国王と王妃を舞台に押し上げるための装置に過ぎん。それをゆめゆめ忘れるな』
全てはセイレーンの父と王妃の書いた台本の筋書き通り───
※一部過激な単語や設定があるため、R15(保険)とさせて頂きます
2020/10/30
お気に入り登録者数50超え、ありがとうございます(((o(*゚▽゚*)o)))
2020/11/08
舞台装置は壊れました。の続編に当たる『不確定要素は壊れました。』を公開したので、そちらも宜しくお願いします。
【完結】選ばれなかった王女は、手紙を残して消えることにした。
曽根原ツタ
恋愛
「お姉様、私はヴィンス様と愛し合っているの。だから邪魔者は――消えてくれない?」
「分かったわ」
「えっ……」
男が生まれない王家の第一王女ノルティマは、次の女王になるべく全てを犠牲にして教育を受けていた。
毎日奴隷のように働かされた挙句、将来王配として彼女を支えるはずだった婚約者ヴィンスは──妹と想いあっていた。
裏切りを知ったノルティマは、手紙を残して王宮を去ることに。
何もかも諦めて、崖から湖に飛び降りたとき──救いの手を差し伸べる男が現れて……?
★小説家になろう様で先行更新中
お父様お母様、お久しぶりです。あの時わたしを捨ててくださりありがとうございます
柚木ゆず
恋愛
ヤニックお父様、ジネットお母様。お久しぶりです。
わたしはアヴァザール伯爵家の長女エマとして生まれ、6歳のころ貴方がたによって隣国に捨てられてしまいましたよね?
当時のわたしにとってお二人は大事な家族で、だからとても辛かった。寂しくて悲しくて、捨てられたわたしは絶望のどん底に落ちていました。
でも。
今は、捨てられてよかったと思っています。
だって、その出来事によってわたしは――。大切な人達と出会い、大好きな人と出逢うことができたのですから。
【完結】子供が出来たから出て行けと言われましたが出ていくのは貴方の方です。
珊瑚
恋愛
夫であるクリス・バートリー伯爵から突如、浮気相手に子供が出来たから離婚すると言われたシェイラ。一週間の猶予の後に追い出されることになったのだが……
平凡令嬢は婚約者を完璧な妹に譲ることにした
カレイ
恋愛
「平凡なお前ではなくカレンが姉だったらどんなに良かったか」
それが両親の口癖でした。
ええ、ええ、確かに私は容姿も学力も裁縫もダンスも全て人並み程度のただの凡人です。体は弱いが何でも器用にこなす美しい妹と比べるとその差は歴然。
ただ少しばかり先に生まれただけなのに、王太子の婚約者にもなってしまうし。彼も妹の方が良かったといつも嘆いております。
ですから私決めました!
王太子の婚約者という席を妹に譲ることを。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる