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64.テール視点/あれ?
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(テール視点)
――そして、今に至るのだ。
伯爵令息でありながら遅れてきたことに会場の受付係に苦笑されて、ちょっと恥ずかしかったがアキエーサのことを思えばさして苦ではない。
「テール様」
「アキエーサ、ドレスよく似合ってるな! まるで女神だ!」
「ふふふ、ご冗談を。本物の女神を見たこともないのに女神と言われても困りますわ」
「ははは、それもそうか」
会場で合流を果たした俺とアキエーサは軽く言葉を交わす。ほとんど誉め言葉だけどな。
それにしても、アキエーサはイムラン侯爵の養女になってから、より一層奇麗になったと思う。イカゾノス家では冷遇されていたから気付かない人も多かったみたいだが、アキエーサは本当に美人だ。何て言うか、俺なんかと婚約してよかったのかなと思うくらいの美貌に、しっかりした良識のある女性。それがアキエーサ・イムランなんだ。
それに比べ、そんな彼女を虐げたイカゾノス夫妻もワカマリナとかいう女も許し難い存在だ。できることなら俺の手で奴らを裁いてやりたかったが、肝心のアキエーサには何もしなくていいと言われている。たとえワカマリナという馬鹿が王太子妃という立場になってもだ。……そう思ってパーティーの主役が登場する方を睨もうとして振り返ってみたのだが、王太子もその婚約者もいない?
何やら様子がおかしい。パーティーの人々はあまり活気がないように見える。どちらかと言うと不満を募らせている感じだ。どういうことだ?
「アキエーサ、パーティーはどうなっているんだ? 遅れてきた俺でも、不満げな人が多いことがよく分かるんだけど?」
「そうなのです。どうも主催者側に問題があったみたいです」
「主催者側が?」
「ええ、それに――」
アキエーサは人々の不満の理由を正確に説明してくれた。彼女に比べて頭が足りない俺でもすぐに分かるように懇切丁寧に。
◇
「――なるほど、それでこのありさまか」
何てことをする王太子何だろう。招待客が他国から来てくださった方もいるのに、先月と同じ仕様にするなんてあんまりじゃないか。しかも、主催者のくせにいまだに現れないとは本当にどういうつもりだ?
「序盤でこの始末ですから、王太子殿下もワカマリナも未来が見える気がしません」
「まったくだ。王宮のパーティーを舐めているんじゃないか? 今度の王太子はこうしてる間にも自分の首を絞めているって分かっていないのか?」
「問題なのは王太子殿下ではなくワカマリナの方なのかもしれませんが、どちらにしても遅れている時点で大問題ですからね。諸外国との関係が悪化する懸念を考えると、我が国は少しばかり危うくなるかも……」
アキエーサの言う通りだ。例の二人のせいで国際問題にもなれば俺達貴族も笑い事ではない。なんて迷惑な奴らなんだ!
「イムラン侯爵はどうお考えなのだ? 嫡男を連れてこなかったことを考えると、アキエーサもわざわざ来なくてもよかったんじゃないのか? こんなパーティーになるくらいな、」
俺が口にした愚痴を遮るかのように、事態が動いた。
「皆さん! ご静粛に! これより、王太子アクサン・フーシャ殿下と次期王太子妃ワカマリナ・イカゾノスがおなりになられます!」
「「っ!」」
やっと出てくるそうだ。問題児二人が。悪名高い王子とその婚約者。婚約者の女ワカマリナは、王太子が侯爵令嬢を捨ててしまうほど可愛いなどと言われているが、俺はそんなものに騙されん。
俺は見たことないがワカマリナという義妹は庇護欲を抱くような可愛さを持つらしい。だが、その本性は、アキエーサを虐げる最低最悪な傍若無人女なのだ。そんな女が、たとえ王太子妃になったとしても俺はアキエーサを守って見せる!
……という気持ちでアキエーサを庇うようにして身構える俺は、王太子と共に現れた女を見て「あれ?」と思った。なんか、聞いていたよりも随分と体形が違うような……少なくとも、可愛くもなければ庇護欲もわかないな。どっちかと言うとイラっと来る感じだ。
――そして、今に至るのだ。
伯爵令息でありながら遅れてきたことに会場の受付係に苦笑されて、ちょっと恥ずかしかったがアキエーサのことを思えばさして苦ではない。
「テール様」
「アキエーサ、ドレスよく似合ってるな! まるで女神だ!」
「ふふふ、ご冗談を。本物の女神を見たこともないのに女神と言われても困りますわ」
「ははは、それもそうか」
会場で合流を果たした俺とアキエーサは軽く言葉を交わす。ほとんど誉め言葉だけどな。
それにしても、アキエーサはイムラン侯爵の養女になってから、より一層奇麗になったと思う。イカゾノス家では冷遇されていたから気付かない人も多かったみたいだが、アキエーサは本当に美人だ。何て言うか、俺なんかと婚約してよかったのかなと思うくらいの美貌に、しっかりした良識のある女性。それがアキエーサ・イムランなんだ。
それに比べ、そんな彼女を虐げたイカゾノス夫妻もワカマリナとかいう女も許し難い存在だ。できることなら俺の手で奴らを裁いてやりたかったが、肝心のアキエーサには何もしなくていいと言われている。たとえワカマリナという馬鹿が王太子妃という立場になってもだ。……そう思ってパーティーの主役が登場する方を睨もうとして振り返ってみたのだが、王太子もその婚約者もいない?
何やら様子がおかしい。パーティーの人々はあまり活気がないように見える。どちらかと言うと不満を募らせている感じだ。どういうことだ?
「アキエーサ、パーティーはどうなっているんだ? 遅れてきた俺でも、不満げな人が多いことがよく分かるんだけど?」
「そうなのです。どうも主催者側に問題があったみたいです」
「主催者側が?」
「ええ、それに――」
アキエーサは人々の不満の理由を正確に説明してくれた。彼女に比べて頭が足りない俺でもすぐに分かるように懇切丁寧に。
◇
「――なるほど、それでこのありさまか」
何てことをする王太子何だろう。招待客が他国から来てくださった方もいるのに、先月と同じ仕様にするなんてあんまりじゃないか。しかも、主催者のくせにいまだに現れないとは本当にどういうつもりだ?
「序盤でこの始末ですから、王太子殿下もワカマリナも未来が見える気がしません」
「まったくだ。王宮のパーティーを舐めているんじゃないか? 今度の王太子はこうしてる間にも自分の首を絞めているって分かっていないのか?」
「問題なのは王太子殿下ではなくワカマリナの方なのかもしれませんが、どちらにしても遅れている時点で大問題ですからね。諸外国との関係が悪化する懸念を考えると、我が国は少しばかり危うくなるかも……」
アキエーサの言う通りだ。例の二人のせいで国際問題にもなれば俺達貴族も笑い事ではない。なんて迷惑な奴らなんだ!
「イムラン侯爵はどうお考えなのだ? 嫡男を連れてこなかったことを考えると、アキエーサもわざわざ来なくてもよかったんじゃないのか? こんなパーティーになるくらいな、」
俺が口にした愚痴を遮るかのように、事態が動いた。
「皆さん! ご静粛に! これより、王太子アクサン・フーシャ殿下と次期王太子妃ワカマリナ・イカゾノスがおなりになられます!」
「「っ!」」
やっと出てくるそうだ。問題児二人が。悪名高い王子とその婚約者。婚約者の女ワカマリナは、王太子が侯爵令嬢を捨ててしまうほど可愛いなどと言われているが、俺はそんなものに騙されん。
俺は見たことないがワカマリナという義妹は庇護欲を抱くような可愛さを持つらしい。だが、その本性は、アキエーサを虐げる最低最悪な傍若無人女なのだ。そんな女が、たとえ王太子妃になったとしても俺はアキエーサを守って見せる!
……という気持ちでアキエーサを庇うようにして身構える俺は、王太子と共に現れた女を見て「あれ?」と思った。なんか、聞いていたよりも随分と体形が違うような……少なくとも、可愛くもなければ庇護欲もわかないな。どっちかと言うとイラっと来る感じだ。
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