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45.フミーナ視点/結婚

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私はまず、仕事を探すことにしたけど苦労させられた。使用人がするような仕事なんてやったことがないし、姉や両親のせいで人間不信になっていたから、上手く人と話すこともでなかった。お腹がすいて途方にくれているところを通りすがりの女の人に助けられて、女性専門の風俗店で働くことにならなけれ死んでいただろう。幸い、私は見栄えがいいから、多くの男の客を取ることができて何と衣食住を確保できた。


だけど、仕事の内容はいい気はしなかった。いくらお金がもらえるからと言って、顔が美形でもないような男と遊ぶのは嬉しくない。それに酷く醜い男や汚い男もいるから本当に嫌だ。お金は結構たまってから気晴らしに遊びに行けるのはいいけど、貴族の暮らしが恋しくてたまらなかった。


そんな生活をしているうちに、ふとしたきっかけでリーベエに出会ったのだ。あの頃のリーベエは屋敷で居場所がないらしく、妻とも良好な関係ではないという。私はこれは利用できるかもしれないと思った。この男と関係を続ければ、愛人として養ってくれるかもしれないと思ったのだ。


その予想は当たった。まず、リーベエと恋人関係に、愛人となってからは、暮らしが豊かになった。欲しいものが手に入りやすくなり、そこそこ顔もいいリーベエと遊べる時間は楽しかった。私が子を身籠り、産んだ時も大喜びで抱きしめてくれた。産んだ子供の名前はワカマリナと名付けてくれた。……もっとも、本当にリーベエの子供かは分からないけどね。


ワカマリナが物心がつく頃に、願ってもいないチャンスが舞い込んだ。なんとリーベエの妻だったシュラウラとかいう女が病死したのだ。その時のリーベエは精神的に不安定にもなっていたから、私が後妻になれるに違いないと思って都合のいい言葉をかけてやった。リーベエは身近な人の言葉に影響されやすいから簡単だと思った。


そして、一年の期間を経て、私はリーベエはと結婚した。貴族としての人生を取り戻したのだ。しかも、伯爵夫人として迎えられた。子爵家から伯爵家に成り上がったのだからこれほどの逆転は無いだろう。私は舞い上がるほど喜んだものだ。


ただ、前妻の娘のアキエーサが気に入らなかった。前妻に似たのか、美形だがどうにも地味で可愛げがなかった。それに子供の割に大人びていてしっかり者のような感じでますます気に入らなかった。だから私は適当に扱った。どうせ前妻の娘に過ぎないならリーベエも愛情などないだろうと思って粗雑に扱った。


アキエーサは、せいぜいワカマリナの引き立て役くらいにしかならない。私はずっとそう思ってきた。






……アキエーサはワカマリナのために何もしなかった。ワカマリナは少し見ないだけで我儘で考えの足らない娘になってしまっていた。それをアキエーサは私のせいだという。それも、今まで見せてこなかった激情とともに言い放ったのだ。


……アキエーサのことは気に入らない。それは変わらないどころか、その思いが一層深まった。だけど、アキエーサの言うことを否定できない自分がいる。冷静になって考えてみれば、確かに私は伯爵夫人になってから育児も教育もおろそかにしていた。貴族に戻ったのをいいことに散財とまではいかないが調子に乗り過ぎていた気もしないではない。


悔しいけど、ワカマリナのことは一理ある。確かに私は貴族の人生を謳歌するばかりでワカマリナのことを見ていなかったんだ。そのせいでワカマリナに対して不安な気持ちしか湧かない。人づてに聞いた話では、ワカマリナはどうやら昔の私と姉の悪いところに似てしまった気がするから。


はぁ……。どうしてこんなことになったんだろう……。こんな不安を抱くはずじゃなかったのに……。

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