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38.リーベエ視点/再婚

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シュラウラは元々体の強くない女だった。両親もそんなに体が強い方ではなかったため、彼らの死因も病死だった。まあ、私は体の強い方だから病気で死ぬということが理解できなかった。幸いというのか、アキエーサは私に似て体が強い方だったがな。



シュラウラを死に追いやったのは結構重い病気だと医師からは聞いていた。助かる見込みがないことは、シュラウラが寝たきりになった時から覚悟はしていた。シュラウラが死ぬと思うと私は不安で仕方がなかった。私一人で娘を育てるのも貴族の仕事も領地経営もできるのだろうか、そう思うと自信がないからだ。



シュラウラは死ぬ間際にこんなことを言いだした。『アキエーサをお願い。どうかあの子を見捨てないで』と。その言葉がそのままシュラウラの最後の言葉となった。



……残された私は、屋敷で喪失感を感じた。シュラウラのことは気が合うことは無かったのだが、失って初めて彼女が私の中で大きな存在なのだと実感した。だが、気が付いた時にはもう遅かったようだ。何故、もっと関わってこなかったんだと後悔した。だからせめて、シュラウラの忘れ形見であり彼女と私の間に生まれたアキエーサのことはシュラウラの最後の言葉通りに見捨てないと決めた。もっとも、我が家の娘なのだから貴族同士の縁結びのための駒として大切な存在なのだから見捨てるはずがないのだが。



シュラウラの葬式の後で、私はフミーナにシュラウラが死んだことを告げた。最初のうちはシュラウラを失った私を慰めてくれたフミーナ。しかし、後になって自分と再婚してほしいと言いだした。妻を失ってやつれてしまった私のことが気がかりで仕方がないから、すぐそばにい続けたいと言ってくれたのだ。



フミーナが再婚を望んだその言葉を聞いた私は素直に喜んだが、すぐに首を縦に振ることはできなかった。妻を失った後にすぐ再婚するなど、周囲は私を薄情者だと噂するだろうし、要らぬ邪推もするかもしれない。貴族の世界は残酷なものなのだ。フミーナのことを悪く言われるのは目に見えていた。



だから、私はここは慎重に行こうと思い、シュラウラの死から一年後にフミーナと結婚しようと約束した。フミーナは不満そうだったが、最終的に渋々といった感じで納得してくれた。没落貴族の出自として、貴族社会の残酷さくらいは分かっているのだろう。



そして、シュラウラの死から約一年後。周囲の反対を押し切って、私はめでたくフミーナと再婚した。愛人から正式な妻となったフミーナは、初めて踏み入れるのに堂々とイカゾノス家の屋敷に入っていった。もちろん、娘のワカマリナと共に。ワカマリナも正式な娘として嬉しそうに屋敷に踏み入れた。



この時が、フミーナとワカマリナ、アキエーサの初の顔合わせになったのだ。彼女たちは複雑な気持ちで顔合わせをしたことだろう。前妻の娘と継母の親子。それぞれ、ぎこちない笑みを浮かべながら、挨拶するだけでろくに会話しなかったのだ。



……いや、フミーナが時折冷たい目をしていた気がする。あの時は気のせいだったと思って気にも留めなかったけど……今思えば、この時の顔合わせが失敗だったのかもしれないな。
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