33 / 229
33.父/情けない
しおりを挟む
だが、そんなことはアキエーサが許さない。
「お父様、言っておきますがお父様に対する言葉でもあるのですよ。まるで他人事のように聞いておられますが、ご自身は無関係などだとは思っていないでしょうね?」
「な、何!?」
突然話を振られてリーベエは驚いた。フミーナがアキエーサに暴力を振るっていたことに、アキエーサが怒りを露わにしていた衝撃的すぎて、リーベエは自分は蚊帳の外だと錯覚していた。アキエーサの屋敷での境遇のことを考えれば、そんなはずはないというのに。
「当然でしょう。ワカマリナのことはお父様も同じではありませんか。義母様のように溺愛するばかりが印象的でしたよ」
「……それは、その……」
「それ以上に、お父様も私の扱いのことは知っていたのに何も言わないし、お金のこともワカマリナの好きにさせてきたではないですか。『お金のことは気にしなくていいよ』などと優しい顔でワカマリナにささやいていたことをお忘れですか?」
「あ!」
アキエーサに言われてリーベエはハッとした。アキエーサの言うように、ワカマリナにそういうことを言った覚えがあったからだ。
「そんなことではワカマリナが調子に乗って散財するのも当然です。あの子は単純で考え無しでもありますからね。そういう意味では、お父様も親として情けない限りではないですか」
「ぐっ……それは……」
リーベエはアキエーサの言うことを否定することができなかった。確かにリーベエ自身もワカマリナを溺愛していたため、彼女に金をいくら使ってもいいと言ってしまったことがある。その言葉を信じたワカマリナは金遣いが荒くなったのかもしれない。そして、その結果がイカゾノス家の財政危機に繋がった。そのことに関しては否定できなかった。
しかし、リーベエに対するアキエーサの追及はまだ収まらない。それは親としての側面だけではなく、貴族としての側面だった。
「それどころか、お父様はイカゾノス家の当主でありながら滅多に屋敷に戻って執務をなさらないとはどういうことですか? しかも、屋敷でできる仕事の全てを使用人達に任せっきりだなんて……貴族としてあるまじき行いではありませんか!」
「っ!? そ、それは……いや、それは、その……社交での仕事が忙しくて、屋敷に戻れないんだ……」
仕事のことまで言及されたリーベエは驚き、そして焦り始めた。屋敷に戻らないで使用人に任せっきりなのも紛れもなく事実だからだ。ただ、言い訳で社交が忙しいなどと口にしたが、本当はそれだけではないのだ。本当の理由だけは流石に口に出すことはできない。貴族として恥ずかしいからだ。
「そ、そのことに、ついては反省している………本当に申し訳なく、」
「社交で忙しいだと? 本当にそれだけか? リーベエ、今も若い頃のように遊び歩いているから、の間違いじゃないのか?」
「な!? 兄上! 何を言うんだ! ち、違う! 違うんだ!」
「お父様、言っておきますがお父様に対する言葉でもあるのですよ。まるで他人事のように聞いておられますが、ご自身は無関係などだとは思っていないでしょうね?」
「な、何!?」
突然話を振られてリーベエは驚いた。フミーナがアキエーサに暴力を振るっていたことに、アキエーサが怒りを露わにしていた衝撃的すぎて、リーベエは自分は蚊帳の外だと錯覚していた。アキエーサの屋敷での境遇のことを考えれば、そんなはずはないというのに。
「当然でしょう。ワカマリナのことはお父様も同じではありませんか。義母様のように溺愛するばかりが印象的でしたよ」
「……それは、その……」
「それ以上に、お父様も私の扱いのことは知っていたのに何も言わないし、お金のこともワカマリナの好きにさせてきたではないですか。『お金のことは気にしなくていいよ』などと優しい顔でワカマリナにささやいていたことをお忘れですか?」
「あ!」
アキエーサに言われてリーベエはハッとした。アキエーサの言うように、ワカマリナにそういうことを言った覚えがあったからだ。
「そんなことではワカマリナが調子に乗って散財するのも当然です。あの子は単純で考え無しでもありますからね。そういう意味では、お父様も親として情けない限りではないですか」
「ぐっ……それは……」
リーベエはアキエーサの言うことを否定することができなかった。確かにリーベエ自身もワカマリナを溺愛していたため、彼女に金をいくら使ってもいいと言ってしまったことがある。その言葉を信じたワカマリナは金遣いが荒くなったのかもしれない。そして、その結果がイカゾノス家の財政危機に繋がった。そのことに関しては否定できなかった。
しかし、リーベエに対するアキエーサの追及はまだ収まらない。それは親としての側面だけではなく、貴族としての側面だった。
「それどころか、お父様はイカゾノス家の当主でありながら滅多に屋敷に戻って執務をなさらないとはどういうことですか? しかも、屋敷でできる仕事の全てを使用人達に任せっきりだなんて……貴族としてあるまじき行いではありませんか!」
「っ!? そ、それは……いや、それは、その……社交での仕事が忙しくて、屋敷に戻れないんだ……」
仕事のことまで言及されたリーベエは驚き、そして焦り始めた。屋敷に戻らないで使用人に任せっきりなのも紛れもなく事実だからだ。ただ、言い訳で社交が忙しいなどと口にしたが、本当はそれだけではないのだ。本当の理由だけは流石に口に出すことはできない。貴族として恥ずかしいからだ。
「そ、そのことに、ついては反省している………本当に申し訳なく、」
「社交で忙しいだと? 本当にそれだけか? リーベエ、今も若い頃のように遊び歩いているから、の間違いじゃないのか?」
「な!? 兄上! 何を言うんだ! ち、違う! 違うんだ!」
1
お気に入りに追加
863
あなたにおすすめの小説
記憶がないので離縁します。今更謝られても困りますからね。
せいめ
恋愛
メイドにいじめられ、頭をぶつけた私は、前世の記憶を思い出す。前世では兄2人と取っ組み合いの喧嘩をするくらい気の強かった私が、メイドにいじめられているなんて…。どれ、やり返してやるか!まずは邸の使用人を教育しよう。その後は、顔も知らない旦那様と離婚して、平民として自由に生きていこう。
頭をぶつけて現世記憶を失ったけど、前世の記憶で逞しく生きて行く、侯爵夫人のお話。
ご都合主義です。誤字脱字お許しください。
婚約破棄ですか???実家からちょうど帰ってこいと言われたので好都合です!!!これからは復讐をします!!!~どこにでもある普通の令嬢物語~
tartan321
恋愛
婚約破棄とはなかなか考えたものでございますね。しかしながら、私はもう帰って来いと言われてしまいました。ですから、帰ることにします。これで、あなた様の口うるさい両親や、その他の家族の皆様とも顔を合わせることがないのですね。ラッキーです!!!
壮大なストーリーで奏でる、感動的なファンタジーアドベンチャーです!!!!!最後の涙の理由とは???
一度完結といたしました。続編は引き続き書きたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
舞台装置は壊れました。
ひづき
恋愛
公爵令嬢は予定通り婚約者から破棄を言い渡された。
婚約者の隣に平民上がりの聖女がいることも予定通り。
『お前は未来の国王と王妃を舞台に押し上げるための装置に過ぎん。それをゆめゆめ忘れるな』
全てはセイレーンの父と王妃の書いた台本の筋書き通り───
※一部過激な単語や設定があるため、R15(保険)とさせて頂きます
2020/10/30
お気に入り登録者数50超え、ありがとうございます(((o(*゚▽゚*)o)))
2020/11/08
舞台装置は壊れました。の続編に当たる『不確定要素は壊れました。』を公開したので、そちらも宜しくお願いします。
【完結】選ばれなかった王女は、手紙を残して消えることにした。
曽根原ツタ
恋愛
「お姉様、私はヴィンス様と愛し合っているの。だから邪魔者は――消えてくれない?」
「分かったわ」
「えっ……」
男が生まれない王家の第一王女ノルティマは、次の女王になるべく全てを犠牲にして教育を受けていた。
毎日奴隷のように働かされた挙句、将来王配として彼女を支えるはずだった婚約者ヴィンスは──妹と想いあっていた。
裏切りを知ったノルティマは、手紙を残して王宮を去ることに。
何もかも諦めて、崖から湖に飛び降りたとき──救いの手を差し伸べる男が現れて……?
★小説家になろう様で先行更新中
お父様お母様、お久しぶりです。あの時わたしを捨ててくださりありがとうございます
柚木ゆず
恋愛
ヤニックお父様、ジネットお母様。お久しぶりです。
わたしはアヴァザール伯爵家の長女エマとして生まれ、6歳のころ貴方がたによって隣国に捨てられてしまいましたよね?
当時のわたしにとってお二人は大事な家族で、だからとても辛かった。寂しくて悲しくて、捨てられたわたしは絶望のどん底に落ちていました。
でも。
今は、捨てられてよかったと思っています。
だって、その出来事によってわたしは――。大切な人達と出会い、大好きな人と出逢うことができたのですから。
平凡令嬢は婚約者を完璧な妹に譲ることにした
カレイ
恋愛
「平凡なお前ではなくカレンが姉だったらどんなに良かったか」
それが両親の口癖でした。
ええ、ええ、確かに私は容姿も学力も裁縫もダンスも全て人並み程度のただの凡人です。体は弱いが何でも器用にこなす美しい妹と比べるとその差は歴然。
ただ少しばかり先に生まれただけなのに、王太子の婚約者にもなってしまうし。彼も妹の方が良かったといつも嘆いております。
ですから私決めました!
王太子の婚約者という席を妹に譲ることを。
私がいなくなった部屋を見て、あなた様はその心に何を思われるのでしょうね…?
新野乃花(大舟)
恋愛
貴族であるファーラ伯爵との婚約を結んでいたセイラ。しかし伯爵はセイラの事をほったらかしにして、幼馴染であるレリアの方にばかり愛情をかけていた。それは溺愛と呼んでもいいほどのもので、そんな行動の果てにファーラ伯爵は婚約破棄まで持ち出してしまう。しかしそれと時を同じくして、セイラはその姿を伯爵の前からこつぜんと消してしまう。弱気なセイラが自分に逆らう事など絶対に無いと思い上がっていた伯爵は、誰もいなくなってしまったセイラの部屋を見て…。
※カクヨム、小説家になろうにも投稿しています!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる