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26.藁にも縋る/ルカス視点

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ワカマリナの購入した品々の請求と商人や貴族たちからの慰謝料の支払いを求められるイカゾノス家。それらはもはや一貴族が支払える金額を軽く超えてしまっていた。借金を覚悟したが、信用できる商人達との関係はすでに失われてしまっていた。他に頼れそうな貴族との縁もリーベエが当主になってからは限られている。

「……こうなっては仕方がない。兄上を頼らざるを得んな」

「そうね。そこに期待するしか……」

リーベエとフミーナは親戚にあたるルカス・イムランに金を借りることにした。ルカスはリーベエの兄にあたるが兄弟仲は良好とは言い難い。子供の頃のリーベエにとって優秀な兄であるルカスは目の上のたんこぶだった。成長するにつれて、それが目に見えて分かるようになり、互いに貴族の家の当主になってからはほとんど合わなくなっていた。ワカマリナが行方知らずにでもならなければ、連絡すらしなかったほどに。

しかし、財政的に追い詰められたイカゾノスとしては、もう頼れる相手は選んではいられなかった。ルカスは侯爵家の当主だ。今のイカゾノス家の借金を返すためにも、大金を用意できるはずだ。藁にも縋る思いだった二人は恥をかく覚悟を決めた。

「兄上は渋るだろうが必死にお願いすれば少しくらいは貸してくれるかもしれん。気は進まないが頭も下げるしかない。何より兄上のもとにはアキエーサもいるしな」

「そうね。あの娘をどこかの金持ちの家に嫁がせないと。クァズがダメになったしね」

「……ああ」

二人は本当に気が進まない。フミーナもリーベエと同じくルカスのことは苦手だった。ルカスは強面だけではなく厳しくて几帳面な性格なのだ。正反対の性格とも言えるフミーナには受け入れがたい。だが、流石にフミーナもルカスを頼るしかないことは理解はできていた。

「あの男に頼るのは本当に悔しいわ……。さっさとアキエーサを使って元の生活を取り戻さないと」

「……」

アキエーサを『駒』とするのはリーベエも理解できる。ただ、フミーナがアキエーサに対して偉そうにするのは何か違う気がするとリーベエは思い始めた。ただ、それをここで口にしていれば状況が変わったのかもしれない。





(ルカス視点)

イカゾノス家に例の話を切り出そうと思ったが、王家の使者と鉢合わせしてしまい、一旦屋敷に戻った。その経緯をアキエーサにも愚痴……説明する。


「――ということで例の話は日を改めて、ということになる。まあ、向こうから来るなら、その時でも話してみるけどな」

「そうですか。それは近日中になりますよね?」


流石はアキエーサだ。あいつらのことをよく分かっている。


「そうだな。多分、これからすぐにでも俺から金を借りるために向こうからやってくるだろうな。あの二人は傲慢なくせに弱った時に強い者に頼ろうとするだろうしな」


いくらリーベエでも、今の王太子には頼らないし、他に味方の貴族も少ない。嫌でも格上で縁のある我が家を頼る選択をするだろう。


本当に図々しい。


「お父様は私達の提案を聞いたら、どうするのでしょうね?」

「そうだな。まあ、最終的にお前の願い通りになると思うぞ? 傍にはあの女がいるんだしな」

「そうですね。是非受け入れてもらいたいものですね」


……例の話について談笑するアキエーサ。その姿を見ると、我が弟が本当に親に向いていないことが分かる。どうしてそうなったんだろうな。なあ、リーベエ?
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