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21.夫婦喧嘩/ルカス視点
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「鞭打ちなど冗談じゃない! お前はアキエーサにそんなことまでしていたのか!? そんなことまで私は許容した覚えはないぞ!」
珍しくアキエーサのために怒りを露わにするリーベエ。だが、フミーナはそんなことは気にもしない。
「いいじゃない! どうせアキエーサがもう婚約なんかできるはずないし!」
「良くないわ! お前、なんてことしてくれたんだ! あれでも顔はいいしスタイルもいい方なんだぞ! それを親であるお前が傷つけたとなれば我が家の評判に関わるではないか!」
リーベエの言うことはもっともだ。自分のことも棚に上げているとはいえ、親に身を傷つけられたとなれば貴族社会では醜聞もいいところだと理解できる。しかし、フミーナはそれでもワカマリナのことが可愛いらしい。前妻の子供と自分が産んだ子供、どちらが可愛いかは分かり切ったことだ。
「はあ!? それが何よ! ワカマリナがいるからいいでしょ!」
「あれだけ不祥事を起こした娘だぞ! アキエーサの方が我が家のためになるわ!」
「何ですって!? あなたまで私やワカマリナのことを馬鹿にするの!?」
「実際馬鹿だろ! 散財ばかりしおって! 頭悪すぎるわ!」
ワカマリナのことで、リーベエとフミーナは遂に夫婦喧嘩を起こしてしまった。屋敷の中で繰り広げられる喧嘩は多くの使用人達の耳にも聞こえたため、何事かと思われた。それは持っている王家の使者も同じだったことには屋敷にいる者達には気付かない。だが、このままではいけないと思う者もいたのが幸いだった。
「旦那様、奥様! 今、言い争っている場合ではありませんぞ!」
「「はぁ、はぁ……」」
執事に大声で言われて喧嘩する二人はハッとなって静まった。お互いににらみ合うリーベエとフミーナだったが、確かにこんなことをしている場合ではないのだ。
「……とりあえず王宮からは私が対応する。お前は待っておれ」
「……分かったわよ、ふん!」
リーベエは使者を招くため、フミーナは自室に戻って待つため、それぞれ逆方向に歩いていった。その様子を冷めた目で眺める執事は深くため息をついたことに、誰も気づくことは無かった。
◇
(ルカス視点)
今になってようやくワカマリナが問題児だと分かったようだな。ただ、リーベエは思い知ったようだがフミーナの方は凝りてないかもしれんな。
「……イムラン侯爵。ここまで聞こえてきた声は、もしや……」
「そうですね。イカゾノス伯爵夫妻、我が愚弟とその妻の口喧嘩の声です。王家の使者に対し、聞くに堪えないものを耳に入れてしまい申し訳ありません」
今、俺はとある目的でイカゾノス家の屋敷にきたところ、王家の使者の方々と偶然鉢合わせしたのだ。王家が出てくるとなれば話が長くなるのは必然と思い、出直していこうと思ったところ、あの馬鹿共の夫婦喧嘩が始まったのだ。リーベエの実の兄として情けない。兄の立場もあるため、俺は王家の使者に対して謝罪せねばなるまい。
「い、いえ……イムラン侯爵が謝罪することではありません。我々が来ていることはイカゾノス伯爵もご存じですから、すぐに収まるでしょう……」
「そう願いたいものですな。では伯爵が迎えに出る前に私は日を改めて出直すとしましょう。私がいると伯爵も落ち着けないでしょうし」
「? 侯爵も伯爵に用事があったのですか?」
「ええ、まあ大したことではないので王家の使者の皆様のお邪魔にならないように失礼いたします」
……やれやれ、遂に王家まで動き出したか。アキエーサは大変な義妹を持ったものだ。
それに、王家も大変な王子を産んでしまったものだな。はぁ、しっかりした子供が苦労する世の中は本当につらい!
珍しくアキエーサのために怒りを露わにするリーベエ。だが、フミーナはそんなことは気にもしない。
「いいじゃない! どうせアキエーサがもう婚約なんかできるはずないし!」
「良くないわ! お前、なんてことしてくれたんだ! あれでも顔はいいしスタイルもいい方なんだぞ! それを親であるお前が傷つけたとなれば我が家の評判に関わるではないか!」
リーベエの言うことはもっともだ。自分のことも棚に上げているとはいえ、親に身を傷つけられたとなれば貴族社会では醜聞もいいところだと理解できる。しかし、フミーナはそれでもワカマリナのことが可愛いらしい。前妻の子供と自分が産んだ子供、どちらが可愛いかは分かり切ったことだ。
「はあ!? それが何よ! ワカマリナがいるからいいでしょ!」
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ワカマリナのことで、リーベエとフミーナは遂に夫婦喧嘩を起こしてしまった。屋敷の中で繰り広げられる喧嘩は多くの使用人達の耳にも聞こえたため、何事かと思われた。それは持っている王家の使者も同じだったことには屋敷にいる者達には気付かない。だが、このままではいけないと思う者もいたのが幸いだった。
「旦那様、奥様! 今、言い争っている場合ではありませんぞ!」
「「はぁ、はぁ……」」
執事に大声で言われて喧嘩する二人はハッとなって静まった。お互いににらみ合うリーベエとフミーナだったが、確かにこんなことをしている場合ではないのだ。
「……とりあえず王宮からは私が対応する。お前は待っておれ」
「……分かったわよ、ふん!」
リーベエは使者を招くため、フミーナは自室に戻って待つため、それぞれ逆方向に歩いていった。その様子を冷めた目で眺める執事は深くため息をついたことに、誰も気づくことは無かった。
◇
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今になってようやくワカマリナが問題児だと分かったようだな。ただ、リーベエは思い知ったようだがフミーナの方は凝りてないかもしれんな。
「……イムラン侯爵。ここまで聞こえてきた声は、もしや……」
「そうですね。イカゾノス伯爵夫妻、我が愚弟とその妻の口喧嘩の声です。王家の使者に対し、聞くに堪えないものを耳に入れてしまい申し訳ありません」
今、俺はとある目的でイカゾノス家の屋敷にきたところ、王家の使者の方々と偶然鉢合わせしたのだ。王家が出てくるとなれば話が長くなるのは必然と思い、出直していこうと思ったところ、あの馬鹿共の夫婦喧嘩が始まったのだ。リーベエの実の兄として情けない。兄の立場もあるため、俺は王家の使者に対して謝罪せねばなるまい。
「い、いえ……イムラン侯爵が謝罪することではありません。我々が来ていることはイカゾノス伯爵もご存じですから、すぐに収まるでしょう……」
「そう願いたいものですな。では伯爵が迎えに出る前に私は日を改めて出直すとしましょう。私がいると伯爵も落ち着けないでしょうし」
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「ええ、まあ大したことではないので王家の使者の皆様のお邪魔にならないように失礼いたします」
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