19 / 229
19.罵詈雑言/羞恥と怒り
しおりを挟む
「黙って聞いていれば言いたい放題言ってくれるではないか、お前こそ女癖が悪い癖に!」
「え、えええ!?」
「アキエーサと婚約してたくせにワカマリナと浮気してた身でよくワカマリナのことを悪く言えるわね。女ったらし!」
「な、何ィ!?」
リーベエとフミーナが反論してきたことにクァズは動揺した。今までこんなことは無かったのにどういうことだ、と思わずにはいられないのだ。
「こっちが何も知らないままだと思ったか? ワカマリナの行方を捜す過程でお前の女癖が悪いことも知ったのだよ! しかも、婚約者がいる女に手を出したせいで多額の慰謝料も請求されていることもな!」
「しかも、公爵家の婚約をダメにしたなんてとんでもないわ! 最低なうえに取り返しのつかないことするなんて馬鹿じゃないの!?」
「な!? 何故それを!?」
リーベエとフミーナは、ワカマリナの行方を捜す過程でクァズのことも疑っていたのだ。ワカマリナがいなくなった原因の候補として。だからこそ、クァズのこともザックリ調べていたのだ。
そしてすぐに、クァズが婚約前に何をしでかしたのか判明したということだ。それを知ったイカゾノス家夫妻としては、アキエーサもワカマリナもクァズに嫁がせるわけにはいかないと判断したのだ。
だから、遠慮なく罵詈雑言も言えるのだ。
「アキエーサと婚約する以前から女遊びをしていたらしいな。挙句には公爵家と敵対とは自業自得だな。どうやら最初からアキエーサを娶ることで我が家の財産を利用する腹積もりだったのだろうな。ふん! なんて図々しい男だ」
「ぐ……ぐぬ……!」
「婚約をアキエーサからワカマリナに変えたのも、家が同じだからどっちでもよかったってことね。女を軽んじている証拠だわ。最低よ! この女の敵」
「ぐぬぬぬぬぬぬぬぬ……!」
過去の事実と罵詈雑言で羞恥と怒りで顔を真っ赤に染めるクァズは歯を食いしばる。ワカマリナのことでリーベエとフミーナを糾弾するつもりだったのに、自分に非がある事実をハッキリ言われて悔しいのだ。しかも、確かに事実でもあるのでそのことについてはうまく言い返せない。この場にいたくない、ただそう思うしかなかった。
「うるさい! うるさい! うるさーい! それが何だと言うんだ! こっちは侯爵だ! 伯爵ごときが反論なんかするんじゃないよ! もういい! ワカマリナとの婚約はなしだ! アキエーサとの婚約も今日ここで破棄してやる! お前達との縁もここまでだ! もう金輪際、僕に関わるな!」
言いたいことを思いっきり吐き捨てるように言い放ったクァズは、逃げるようにその場から出て行った。窓の外から走り去るクァズの姿が見える。そんなクァズの姿をリーベエとフミーナは冷めた目で呆れ果てた。
「なんて奴だ。あんな男が侯爵家の嫡男とは……」
「とんだハズレくじを引かされたものね。これも全部アキエーサのせいだわ」
「む? そ、そうか……」
こんな時までアキエーサのせいにするフミーナだったが、リーベエは流石に違うだろうと思っていた。どちらかと言えばクァズが全面的に悪い気がするのだが、口にすればフミーナが喚くとうるさいので黙ることにした。
「え、えええ!?」
「アキエーサと婚約してたくせにワカマリナと浮気してた身でよくワカマリナのことを悪く言えるわね。女ったらし!」
「な、何ィ!?」
リーベエとフミーナが反論してきたことにクァズは動揺した。今までこんなことは無かったのにどういうことだ、と思わずにはいられないのだ。
「こっちが何も知らないままだと思ったか? ワカマリナの行方を捜す過程でお前の女癖が悪いことも知ったのだよ! しかも、婚約者がいる女に手を出したせいで多額の慰謝料も請求されていることもな!」
「しかも、公爵家の婚約をダメにしたなんてとんでもないわ! 最低なうえに取り返しのつかないことするなんて馬鹿じゃないの!?」
「な!? 何故それを!?」
リーベエとフミーナは、ワカマリナの行方を捜す過程でクァズのことも疑っていたのだ。ワカマリナがいなくなった原因の候補として。だからこそ、クァズのこともザックリ調べていたのだ。
そしてすぐに、クァズが婚約前に何をしでかしたのか判明したということだ。それを知ったイカゾノス家夫妻としては、アキエーサもワカマリナもクァズに嫁がせるわけにはいかないと判断したのだ。
だから、遠慮なく罵詈雑言も言えるのだ。
「アキエーサと婚約する以前から女遊びをしていたらしいな。挙句には公爵家と敵対とは自業自得だな。どうやら最初からアキエーサを娶ることで我が家の財産を利用する腹積もりだったのだろうな。ふん! なんて図々しい男だ」
「ぐ……ぐぬ……!」
「婚約をアキエーサからワカマリナに変えたのも、家が同じだからどっちでもよかったってことね。女を軽んじている証拠だわ。最低よ! この女の敵」
「ぐぬぬぬぬぬぬぬぬ……!」
過去の事実と罵詈雑言で羞恥と怒りで顔を真っ赤に染めるクァズは歯を食いしばる。ワカマリナのことでリーベエとフミーナを糾弾するつもりだったのに、自分に非がある事実をハッキリ言われて悔しいのだ。しかも、確かに事実でもあるのでそのことについてはうまく言い返せない。この場にいたくない、ただそう思うしかなかった。
「うるさい! うるさい! うるさーい! それが何だと言うんだ! こっちは侯爵だ! 伯爵ごときが反論なんかするんじゃないよ! もういい! ワカマリナとの婚約はなしだ! アキエーサとの婚約も今日ここで破棄してやる! お前達との縁もここまでだ! もう金輪際、僕に関わるな!」
言いたいことを思いっきり吐き捨てるように言い放ったクァズは、逃げるようにその場から出て行った。窓の外から走り去るクァズの姿が見える。そんなクァズの姿をリーベエとフミーナは冷めた目で呆れ果てた。
「なんて奴だ。あんな男が侯爵家の嫡男とは……」
「とんだハズレくじを引かされたものね。これも全部アキエーサのせいだわ」
「む? そ、そうか……」
こんな時までアキエーサのせいにするフミーナだったが、リーベエは流石に違うだろうと思っていた。どちらかと言えばクァズが全面的に悪い気がするのだが、口にすればフミーナが喚くとうるさいので黙ることにした。
1
お気に入りに追加
863
あなたにおすすめの小説
いじめられ続けた挙げ句、三回も婚約破棄された悪役令嬢は微笑みながら言った「女神の顔も三度まで」と
鳳ナナ
恋愛
伯爵令嬢アムネジアはいじめられていた。
令嬢から。子息から。婚約者の王子から。
それでも彼女はただ微笑を浮かべて、一切の抵抗をしなかった。
そんなある日、三回目の婚約破棄を宣言されたアムネジアは、閉じていた目を見開いて言った。
「――女神の顔も三度まで、という言葉をご存知ですか?」
その言葉を皮切りに、ついにアムネジアは本性を現し、夜会は女達の修羅場と化した。
「ああ、気持ち悪い」
「お黙りなさい! この泥棒猫が!」
「言いましたよね? 助けてやる代わりに、友達料金を払えって」
飛び交う罵倒に乱れ飛ぶワイングラス。
謀略渦巻く宮廷の中で、咲き誇るは一輪の悪の華。
――出てくる令嬢、全員悪人。
※小説家になろう様でも掲載しております。
舞台装置は壊れました。
ひづき
恋愛
公爵令嬢は予定通り婚約者から破棄を言い渡された。
婚約者の隣に平民上がりの聖女がいることも予定通り。
『お前は未来の国王と王妃を舞台に押し上げるための装置に過ぎん。それをゆめゆめ忘れるな』
全てはセイレーンの父と王妃の書いた台本の筋書き通り───
※一部過激な単語や設定があるため、R15(保険)とさせて頂きます
2020/10/30
お気に入り登録者数50超え、ありがとうございます(((o(*゚▽゚*)o)))
2020/11/08
舞台装置は壊れました。の続編に当たる『不確定要素は壊れました。』を公開したので、そちらも宜しくお願いします。
【完結】選ばれなかった王女は、手紙を残して消えることにした。
曽根原ツタ
恋愛
「お姉様、私はヴィンス様と愛し合っているの。だから邪魔者は――消えてくれない?」
「分かったわ」
「えっ……」
男が生まれない王家の第一王女ノルティマは、次の女王になるべく全てを犠牲にして教育を受けていた。
毎日奴隷のように働かされた挙句、将来王配として彼女を支えるはずだった婚約者ヴィンスは──妹と想いあっていた。
裏切りを知ったノルティマは、手紙を残して王宮を去ることに。
何もかも諦めて、崖から湖に飛び降りたとき──救いの手を差し伸べる男が現れて……?
★小説家になろう様で先行更新中
お父様お母様、お久しぶりです。あの時わたしを捨ててくださりありがとうございます
柚木ゆず
恋愛
ヤニックお父様、ジネットお母様。お久しぶりです。
わたしはアヴァザール伯爵家の長女エマとして生まれ、6歳のころ貴方がたによって隣国に捨てられてしまいましたよね?
当時のわたしにとってお二人は大事な家族で、だからとても辛かった。寂しくて悲しくて、捨てられたわたしは絶望のどん底に落ちていました。
でも。
今は、捨てられてよかったと思っています。
だって、その出来事によってわたしは――。大切な人達と出会い、大好きな人と出逢うことができたのですから。
婚約者に消えろと言われたので湖に飛び込んだら、気づけば三年が経っていました。
束原ミヤコ
恋愛
公爵令嬢シャロンは、王太子オリバーの婚約者に選ばれてから、厳しい王妃教育に耐えていた。
だが、十六歳になり貴族学園に入学すると、オリバーはすでに子爵令嬢エミリアと浮気をしていた。
そしてある冬のこと。オリバーに「私の為に消えろ」というような意味のことを告げられる。
全てを諦めたシャロンは、精霊の湖と呼ばれている学園の裏庭にある湖に飛び込んだ。
気づくと、見知らぬ場所に寝かされていた。
そこにはかつて、病弱で体の小さかった辺境伯家の息子アダムがいた。
すっかり立派になったアダムは「あれから三年、君は目覚めなかった」と言った――。
平凡令嬢は婚約者を完璧な妹に譲ることにした
カレイ
恋愛
「平凡なお前ではなくカレンが姉だったらどんなに良かったか」
それが両親の口癖でした。
ええ、ええ、確かに私は容姿も学力も裁縫もダンスも全て人並み程度のただの凡人です。体は弱いが何でも器用にこなす美しい妹と比べるとその差は歴然。
ただ少しばかり先に生まれただけなのに、王太子の婚約者にもなってしまうし。彼も妹の方が良かったといつも嘆いております。
ですから私決めました!
王太子の婚約者という席を妹に譲ることを。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる