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16.商人/契約破棄
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多くの店等からの苦情や損害賠償の書類もあったのだ。しかも、そのほとんどが取引先の店だった。それを知った時のリーベエは焦り、すぐに支払い・謝罪等を済ませなければならないと思ったのだが、ちょうどそんなときに今、商人達に苦情を言われる状況になったのだ。
「だ、だが、私達との関係を失った後どうするというのだ! 我が祖父の代からの契約なのだぞ!」
「我らはもう本当にイカゾノス家に愛想をつかしました。貴方の代になってから随分とイカゾノス家も変わってしまったと思います。悪い意味でですが。特にワカマリナ様が現れてからはひどくなりました」
「そんな……!」
自分に代になってからイカゾノス家が悪い方に変わってしまった。下に見ていた商人達にそんなことを言われたリーベエは愕然とした。更にそこで追い打ちを掛けられる。
「今の我々はダブール商会と新たに契約を結び直したので、これから先は安泰ですから御心配には及びません」
「ダブール商会! 半年ほど前に急成長したあの商会のことか……!」
ダブール商会とは、最近成り上がり始めた商会のことであり、様々な新商品を売り出して成功し続けていることで有名なのだ。リーベエもその噂を耳にしていたため、どこか納得してしまった。何しろ、リーベエもダブール商会の店の商品を購入したことがあるからだ。その商品の出来栄えにリーベエも満足していた。
「確かに、彼らの商品は革新的だが……できたばかりの勢力ではないか。それに、その代表の人物は姿をほとんど見せないという噂があるのだぞ? そんな連中に、」
「期待できますよ。ダブール商会とその会長も。それでは本日をもって私達とイカゾノス家との契約を破棄させていただきます。正式な書類は後日送られてきますので、それには必ず目を通してください。ごきげんよう」
商人達は後は要は無い、という体でその場を去ろうとする。
「ああ、待ってくれ! 行かないでくれ!」
「もしも、書類にサインしていただけないようでしたら裁判を起こすこともできるので忘れずに。ワカマリナ様はそれだけのことをしておいでなので」
「…………裁判?」
「ワカマリナ様による店の損害賠償の件で裁判にできるということです。その封筒の中を見ていただければご理解できると思いますが?」
「そんな、そんな……お前達がいなくなったら私は、イカゾノス家は……!」
その後、リーベエが何を言っても商人たちは振り返りもしないで去って行ってしまった。一人残されたリーベエはその場で崩れ落ちた。
「な、何ということだ……ワカマリナがそこまでの迷惑をかけていたなんて……屋敷に届いた請求額だけでも借金をしなければならないかもしれないというのに……」
リーベエは金の工面のために商人達から金を借りることも視野に入れていたのだ。しかし、肝心の商人たちはイカゾノス家と手を切ってしまった。これでは金を借りれる相手は限られてしまう。現時点では金を支払わなければならない相手が増えただけだ。
「これから、イカゾノス家は……私は……どうすればいいのだ……。こんなことになるなんて……」
それどころか、イカゾノス家の強みが失われてしまったも同然だ。何しろ、商人達の繋がりこそがイカゾノス家の財産にも等しかったのだ。リーベエがイカゾノス家の当主となった後からは。
「これも全て……アキエーサの……せいなの、か……?」
もはや金の工面だけの問題ではなくなってしまった。この時点でようやくアキエーサではなくワカマリナが悪いとリーベエは思い始めるのだった。正直、思い始めるのが遅すぎると言っていいだろう。リーベエ自身にも問題があると気付くことも含めては。
「だ、だが、私達との関係を失った後どうするというのだ! 我が祖父の代からの契約なのだぞ!」
「我らはもう本当にイカゾノス家に愛想をつかしました。貴方の代になってから随分とイカゾノス家も変わってしまったと思います。悪い意味でですが。特にワカマリナ様が現れてからはひどくなりました」
「そんな……!」
自分に代になってからイカゾノス家が悪い方に変わってしまった。下に見ていた商人達にそんなことを言われたリーベエは愕然とした。更にそこで追い打ちを掛けられる。
「今の我々はダブール商会と新たに契約を結び直したので、これから先は安泰ですから御心配には及びません」
「ダブール商会! 半年ほど前に急成長したあの商会のことか……!」
ダブール商会とは、最近成り上がり始めた商会のことであり、様々な新商品を売り出して成功し続けていることで有名なのだ。リーベエもその噂を耳にしていたため、どこか納得してしまった。何しろ、リーベエもダブール商会の店の商品を購入したことがあるからだ。その商品の出来栄えにリーベエも満足していた。
「確かに、彼らの商品は革新的だが……できたばかりの勢力ではないか。それに、その代表の人物は姿をほとんど見せないという噂があるのだぞ? そんな連中に、」
「期待できますよ。ダブール商会とその会長も。それでは本日をもって私達とイカゾノス家との契約を破棄させていただきます。正式な書類は後日送られてきますので、それには必ず目を通してください。ごきげんよう」
商人達は後は要は無い、という体でその場を去ろうとする。
「ああ、待ってくれ! 行かないでくれ!」
「もしも、書類にサインしていただけないようでしたら裁判を起こすこともできるので忘れずに。ワカマリナ様はそれだけのことをしておいでなので」
「…………裁判?」
「ワカマリナ様による店の損害賠償の件で裁判にできるということです。その封筒の中を見ていただければご理解できると思いますが?」
「そんな、そんな……お前達がいなくなったら私は、イカゾノス家は……!」
その後、リーベエが何を言っても商人たちは振り返りもしないで去って行ってしまった。一人残されたリーベエはその場で崩れ落ちた。
「な、何ということだ……ワカマリナがそこまでの迷惑をかけていたなんて……屋敷に届いた請求額だけでも借金をしなければならないかもしれないというのに……」
リーベエは金の工面のために商人達から金を借りることも視野に入れていたのだ。しかし、肝心の商人たちはイカゾノス家と手を切ってしまった。これでは金を借りれる相手は限られてしまう。現時点では金を支払わなければならない相手が増えただけだ。
「これから、イカゾノス家は……私は……どうすればいいのだ……。こんなことになるなんて……」
それどころか、イカゾノス家の強みが失われてしまったも同然だ。何しろ、商人達の繋がりこそがイカゾノス家の財産にも等しかったのだ。リーベエがイカゾノス家の当主となった後からは。
「これも全て……アキエーサの……せいなの、か……?」
もはや金の工面だけの問題ではなくなってしまった。この時点でようやくアキエーサではなくワカマリナが悪いとリーベエは思い始めるのだった。正直、思い始めるのが遅すぎると言っていいだろう。リーベエ自身にも問題があると気付くことも含めては。
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