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4.面倒/書類
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◇
「――――と言う感じにワカマリナが自慢してくれたのですよ。今からちょうど三か月前ですね」
「「「…………」」」
アキエーサの語った事実を聞いた三人に気まずい空気が流れた。三人とも同じことを思ったからだ。ワカマリナなら確かに自慢話にしたがるはずだ、あり得るだろうと。
ただ、腑に落ちないのはワカマリナが計画を知っていることだ。気になったリーベエとフミーナは困惑する。
「……な、何故、ワカマリナが知っていたのだ?」
「わ、私は言ってないわよ!」
混乱してまた騒がれても面倒だと思ったアキエーサは婚約者を見て両親の疑問に答えを教えた。
「クァズ様からワカマリナに楽しそうに話したらしいですよ」
「「「っっっ!?」」」
だからこそ、両親の目がその婚約者に向けられる。
「クァズ君……どういうことだ? 君の方からワカマリナに話してしまっていたのか?」
「私達三人のサプライズじゃなかったの?」
「し、仕方がないじゃないか! あの時は可愛いワカマリナと結婚できるんだと思って浮かれて、つい話してしまったんだよ! まさかその日のうちにワカマリナの方からアキエーサに話してしまうなんて思わなかったんだ!」
三か月前と言えば、確かにクァズはワカマリナに話した覚えがあるだけに否定できなかった。アキエーサの説明も細かくて正確だっただけに否定しても無駄だった。
「はぁ? 何だそれは? それでサプライズになるというのか?」
「貴方のせいで台無しじゃない! アキエーサに偉そうに説明されるなんて屈辱だわ!」
「ぐ……ぐぬぅ……」
忌々しげな顔で弁明するクァズは両親から目をそらす。まさか自分が責められるとは思っていなかっただけに、今になってワカマリナに話してしまったことを後悔する。しかし、クァズはここで見過ごせない事実に気付いた。
「いや、おかしいだろ! アキエーサは僕らの計画をあの時に知ったのに、何故僕に言い寄ってこないんだよ! 僕という婚約者に捨てられると分かっていてどうして縋ってこなかったんだ!」
「「!」」
クァズの覚えている限り、アキエーサが自分を振り向かせるような行動を今までしたことがなかったはずだった。いつも小言を言ったり細かいことを咎めたりするばかりで可愛げがなかったのだ。女のくせに自分を立てることを一切しないことが気にいらなくて仕方がなかった。
だからこそ、アキエーサの義妹のワカマリナに目移りして、その両親と共に婚約破棄と新たな婚約を計画したのだ。アキエーサが悔しがり泣き叫ぶ姿を楽しみにしながら。
「この私が貴方のような猿みたいな男に未練があるはずがないでしょう?」
「さ、猿!?」
「私の妹を含めて多くの女と遊び歩くような安い男に私から言い寄ることはありません」
「な、何ーっ!?」
「「っ!?」」
アキエーサを見ていた三人は驚愕した。は聞き捨てならない言葉を口にしたからだ。婚約者のクァズにとっては知られたくないことであり、両親のリーベエとフミーナにとっては知らなければならないことだった。
「な、何だって!? それは本当か!?」
「多くの女と遊び歩くですって!?」
両親が驚く中、クァズは顔を真っ赤にしてアキエーサに怒りを露わにする。
「き、貴様ぁ……何を言うんだ! 義父上、義母上、こいつの言っていることを鵜呑みにしないでください! そんなのはデタラメですから!」
アキエーサに怒りを吐き捨てながらも、両親に対して必死に嘘だと口にするクァズだが、アキエーサは懐からある書類を提示する。
「デタラメではないでしょう。これが証拠ですよ。貴方が私に代わりに払えと言って差し出した領収書や請求書がここにあるじゃないですか。ここに記されている内容を見れば丸分かりです」
「あっ! そ、それは!」
「見せろ!」
リーベエは乱暴に請求書を取り上げる。そして内容を見て理解するとワナワナと震えだした。
「――――と言う感じにワカマリナが自慢してくれたのですよ。今からちょうど三か月前ですね」
「「「…………」」」
アキエーサの語った事実を聞いた三人に気まずい空気が流れた。三人とも同じことを思ったからだ。ワカマリナなら確かに自慢話にしたがるはずだ、あり得るだろうと。
ただ、腑に落ちないのはワカマリナが計画を知っていることだ。気になったリーベエとフミーナは困惑する。
「……な、何故、ワカマリナが知っていたのだ?」
「わ、私は言ってないわよ!」
混乱してまた騒がれても面倒だと思ったアキエーサは婚約者を見て両親の疑問に答えを教えた。
「クァズ様からワカマリナに楽しそうに話したらしいですよ」
「「「っっっ!?」」」
だからこそ、両親の目がその婚約者に向けられる。
「クァズ君……どういうことだ? 君の方からワカマリナに話してしまっていたのか?」
「私達三人のサプライズじゃなかったの?」
「し、仕方がないじゃないか! あの時は可愛いワカマリナと結婚できるんだと思って浮かれて、つい話してしまったんだよ! まさかその日のうちにワカマリナの方からアキエーサに話してしまうなんて思わなかったんだ!」
三か月前と言えば、確かにクァズはワカマリナに話した覚えがあるだけに否定できなかった。アキエーサの説明も細かくて正確だっただけに否定しても無駄だった。
「はぁ? 何だそれは? それでサプライズになるというのか?」
「貴方のせいで台無しじゃない! アキエーサに偉そうに説明されるなんて屈辱だわ!」
「ぐ……ぐぬぅ……」
忌々しげな顔で弁明するクァズは両親から目をそらす。まさか自分が責められるとは思っていなかっただけに、今になってワカマリナに話してしまったことを後悔する。しかし、クァズはここで見過ごせない事実に気付いた。
「いや、おかしいだろ! アキエーサは僕らの計画をあの時に知ったのに、何故僕に言い寄ってこないんだよ! 僕という婚約者に捨てられると分かっていてどうして縋ってこなかったんだ!」
「「!」」
クァズの覚えている限り、アキエーサが自分を振り向かせるような行動を今までしたことがなかったはずだった。いつも小言を言ったり細かいことを咎めたりするばかりで可愛げがなかったのだ。女のくせに自分を立てることを一切しないことが気にいらなくて仕方がなかった。
だからこそ、アキエーサの義妹のワカマリナに目移りして、その両親と共に婚約破棄と新たな婚約を計画したのだ。アキエーサが悔しがり泣き叫ぶ姿を楽しみにしながら。
「この私が貴方のような猿みたいな男に未練があるはずがないでしょう?」
「さ、猿!?」
「私の妹を含めて多くの女と遊び歩くような安い男に私から言い寄ることはありません」
「な、何ーっ!?」
「「っ!?」」
アキエーサを見ていた三人は驚愕した。は聞き捨てならない言葉を口にしたからだ。婚約者のクァズにとっては知られたくないことであり、両親のリーベエとフミーナにとっては知らなければならないことだった。
「な、何だって!? それは本当か!?」
「多くの女と遊び歩くですって!?」
両親が驚く中、クァズは顔を真っ赤にしてアキエーサに怒りを露わにする。
「き、貴様ぁ……何を言うんだ! 義父上、義母上、こいつの言っていることを鵜呑みにしないでください! そんなのはデタラメですから!」
アキエーサに怒りを吐き捨てながらも、両親に対して必死に嘘だと口にするクァズだが、アキエーサは懐からある書類を提示する。
「デタラメではないでしょう。これが証拠ですよ。貴方が私に代わりに払えと言って差し出した領収書や請求書がここにあるじゃないですか。ここに記されている内容を見れば丸分かりです」
「あっ! そ、それは!」
「見せろ!」
リーベエは乱暴に請求書を取り上げる。そして内容を見て理解するとワナワナと震えだした。
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