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「失礼します! コーク・ローチ隊長! 緊急の知らせです!」
「む! 何事だ!」
「ただいま入りました情報によると、第三王子トップス・ツインローズ殿下が行方不明になられたとのことです!」
「なんだと!? トップス殿下が!?」
「「ええ!? 今度はトップス殿下が行方不明になった!?」のですか!?」
第三王子トップスが行方不明と聞いてリリィとジェシカは同時に驚いた。王子が行方不明になる事件はこれで二度目だったからだ。一度目は愚か者の第一王子が暴走しただけで済んだのだが、今度は十歳の少年だ。
「はい! メイドに扮したアノマ・ティレックス伯爵夫人と思われる女性と一緒にいた目撃情報を最後に朝から姿がお見えにならないとのことです!」
「「「え!? それって…………」」」
アノマ・ティレックスとはマグーマの妻のことだ。かつてはアノマ・メアナイト男爵令嬢であり、彼女の父が逮捕されたことで貴族でいられなくなるはずだったところでマグーマへの罰ということで強制的にマグーマと結婚して今の名前と立場になった。旨味のない領地と名ばかりの地位を持ったマグーマの妻に。
「……………」
リリィもジェシカも、コーク・ローチとその部下たちも、報告に来た騎士も同じことを思った。
どう考えても、マグーマ・ティレックスが元凶に近いんじゃないか?
◇
第三王子トップス・ツインローズが姿を消して行方不明という話が広がって王宮は大混乱に陥った。残っている文官も武官も騎士も兵士も総動員して捜索に取り掛かろうという状況になっていた。そんな時に、一人の男が王家の人間しか知らない秘密の道から王宮を脱出していた。
「ふふふ、上手くいったものだ。まさか、俺を見張っている兵士が俺のよく知る者でよかった。俺が弱みを握っている奴らでなあ!」
その男は王宮を眺めながら、歪んだ笑みを浮かべる。その目には欲望だけが満ち溢れていた。
「アノマをメイドに変装させといて正解だったぜ! 王宮にいる奴らの弱みを握らせるつもりだったけど、あのガキンチョを攫える機会に恵まれるとは俺にも運が回ってきたもんだ! 後はこの俺が必死に探し出して見つけ出したと証明すれば王太子の座に戻る条件ってやつが整うはずだ! あのいけ好かないリリィにも見せつけてやるぜ! ははははは!」
その男はマグーマ・ティレックス伯爵だった。見張りの兵士は旧知の者だった事をいいことに、弱みで脅して王宮から抜け出したのだ。あれだけのことがあったのに、マグーマはまだ王太子の座を諦めていなかったのだ。
「む! 何事だ!」
「ただいま入りました情報によると、第三王子トップス・ツインローズ殿下が行方不明になられたとのことです!」
「なんだと!? トップス殿下が!?」
「「ええ!? 今度はトップス殿下が行方不明になった!?」のですか!?」
第三王子トップスが行方不明と聞いてリリィとジェシカは同時に驚いた。王子が行方不明になる事件はこれで二度目だったからだ。一度目は愚か者の第一王子が暴走しただけで済んだのだが、今度は十歳の少年だ。
「はい! メイドに扮したアノマ・ティレックス伯爵夫人と思われる女性と一緒にいた目撃情報を最後に朝から姿がお見えにならないとのことです!」
「「「え!? それって…………」」」
アノマ・ティレックスとはマグーマの妻のことだ。かつてはアノマ・メアナイト男爵令嬢であり、彼女の父が逮捕されたことで貴族でいられなくなるはずだったところでマグーマへの罰ということで強制的にマグーマと結婚して今の名前と立場になった。旨味のない領地と名ばかりの地位を持ったマグーマの妻に。
「……………」
リリィもジェシカも、コーク・ローチとその部下たちも、報告に来た騎士も同じことを思った。
どう考えても、マグーマ・ティレックスが元凶に近いんじゃないか?
◇
第三王子トップス・ツインローズが姿を消して行方不明という話が広がって王宮は大混乱に陥った。残っている文官も武官も騎士も兵士も総動員して捜索に取り掛かろうという状況になっていた。そんな時に、一人の男が王家の人間しか知らない秘密の道から王宮を脱出していた。
「ふふふ、上手くいったものだ。まさか、俺を見張っている兵士が俺のよく知る者でよかった。俺が弱みを握っている奴らでなあ!」
その男は王宮を眺めながら、歪んだ笑みを浮かべる。その目には欲望だけが満ち溢れていた。
「アノマをメイドに変装させといて正解だったぜ! 王宮にいる奴らの弱みを握らせるつもりだったけど、あのガキンチョを攫える機会に恵まれるとは俺にも運が回ってきたもんだ! 後はこの俺が必死に探し出して見つけ出したと証明すれば王太子の座に戻る条件ってやつが整うはずだ! あのいけ好かないリリィにも見せつけてやるぜ! ははははは!」
その男はマグーマ・ティレックス伯爵だった。見張りの兵士は旧知の者だった事をいいことに、弱みで脅して王宮から抜け出したのだ。あれだけのことがあったのに、マグーマはまだ王太子の座を諦めていなかったのだ。
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