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王宮でのパーティーの中、一人の貴族、それも顔つきも体つきもやせ細っている青年が壇上に立って叫びだした。
「ははははは! リリィ・プラチナム公爵令嬢! 私、王太子ことトライセラ・ツインローズ第二王子との婚約を破棄させてもらう!」
「「「「「っっ!!??」」」」」
貴族のパーティー中に高らかに婚約破棄を宣言するのは、ツインローズ王国第二王子にして王太子トライセラ・ツインローズだ。目の下にクマがあり、やつれた顔つきという王族らしくない特徴の顔はこのパーティーにいる誰もがよく知っている。
そして、その隣には誰もいない。『前の王太子』とは違って。
だからこそ、パーティーに出席している誰もが耳を疑った。
「……婚約破棄ですか。なにゆえそのような話を、いまここで? このパーティーのあとではいけませんの?」
「理由によっては斬りますよ? 王太子といえど……」
本気で困惑した様子で質問するのは、王太子の婚約者のはずの公爵令嬢リリィ・プラチナム。彼女は婚約破棄と宣言されたのにもかかわらず、一切動揺することなく冷静に分析しようとしている。以前にも王太子から婚約破棄されたことがあるからこそ、取り乱すことはないのだろう。
もしくは、婚約者にあまり関心がないのかもしれない。ただ、リリィの傍に控えるジェシカ・シアターは警戒心を抱きながらトライセラを睨む。
「り、理由を聞きたいのですね?」
「そうですね。是非お聞かせください」
リリィの方から聞かせてほしいと言われて、王太子トライセラは笑みを浮かべた。ただ、その瞳は心から笑っている者の目ではない。例えるなら死んだ魚のような瞳だった。
「婚約破棄の理由! それは…………」
「…………」
トライセラは少し間をおいてから大きな声でに宣言した。
「それは、貴女と婚約してから私の仕事量が倍以上に増えたからだ!!」
「「「「「…………え??」」」」」
「もう一度いう! 貴女と婚約してから私の仕事量が倍以上に増えたからだ!!」
「…………はい?」
パーティーに出席している誰もが再び耳を疑った。理解するのが遅れるほどに。それは婚約者のリリィも例外ではない。真面目な性格のトライセラにしては『仕事量が倍以上に増えた』という理由で婚約破棄を望むとは思えなかったのだ。ましてや、そんなことを二回も叫ぶように宣言するなんて。
「あ、あの王太子殿下? 詳しく話していただけますか?」
誰もが困惑する中で、今まさに婚約破棄を受けたリリィが理由を尋ねる。
「ははははは! リリィ・プラチナム公爵令嬢! 私、王太子ことトライセラ・ツインローズ第二王子との婚約を破棄させてもらう!」
「「「「「っっ!!??」」」」」
貴族のパーティー中に高らかに婚約破棄を宣言するのは、ツインローズ王国第二王子にして王太子トライセラ・ツインローズだ。目の下にクマがあり、やつれた顔つきという王族らしくない特徴の顔はこのパーティーにいる誰もがよく知っている。
そして、その隣には誰もいない。『前の王太子』とは違って。
だからこそ、パーティーに出席している誰もが耳を疑った。
「……婚約破棄ですか。なにゆえそのような話を、いまここで? このパーティーのあとではいけませんの?」
「理由によっては斬りますよ? 王太子といえど……」
本気で困惑した様子で質問するのは、王太子の婚約者のはずの公爵令嬢リリィ・プラチナム。彼女は婚約破棄と宣言されたのにもかかわらず、一切動揺することなく冷静に分析しようとしている。以前にも王太子から婚約破棄されたことがあるからこそ、取り乱すことはないのだろう。
もしくは、婚約者にあまり関心がないのかもしれない。ただ、リリィの傍に控えるジェシカ・シアターは警戒心を抱きながらトライセラを睨む。
「り、理由を聞きたいのですね?」
「そうですね。是非お聞かせください」
リリィの方から聞かせてほしいと言われて、王太子トライセラは笑みを浮かべた。ただ、その瞳は心から笑っている者の目ではない。例えるなら死んだ魚のような瞳だった。
「婚約破棄の理由! それは…………」
「…………」
トライセラは少し間をおいてから大きな声でに宣言した。
「それは、貴女と婚約してから私の仕事量が倍以上に増えたからだ!!」
「「「「「…………え??」」」」」
「もう一度いう! 貴女と婚約してから私の仕事量が倍以上に増えたからだ!!」
「…………はい?」
パーティーに出席している誰もが再び耳を疑った。理解するのが遅れるほどに。それは婚約者のリリィも例外ではない。真面目な性格のトライセラにしては『仕事量が倍以上に増えた』という理由で婚約破棄を望むとは思えなかったのだ。ましてや、そんなことを二回も叫ぶように宣言するなんて。
「あ、あの王太子殿下? 詳しく話していただけますか?」
誰もが困惑する中で、今まさに婚約破棄を受けたリリィが理由を尋ねる。
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