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第176話 国王との会話
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国王とミロアの最後の話は、ウォーム男爵親子の処遇に関することだった。ミロアもすでに男爵家の秘密を知らされていた。
(何かしらの事情がありそうだとは思ったけど、ちょっと複雑だったわね)
「男爵とその娘が自白したのもあって、あの親子に血の繋がりがないことが分かった。我が国の法により罰を受けてもらわねばならん」
「爵位の剥奪でしょうか?」
ドープアント王国の法律上、身分を偽って生きるのは重罪なのだ。それに加担することもまた罪。それが貴族だろうと平民だろうと同じこと。
「平民の出自の者が王家の許しもなく、手続きもないまま貴族と偽ったのだ。身分偽装の罪に当たる。それに脅されたとはいえ公爵家の婚約を潰そうとした計画に荷担したのだ。男爵家の取り潰しは免れん」
「やはりそうですか。身分偽装だけならまだ軽かったのでしょう……」
「だが、罪を犯したのは間違いない。こればかりはどうにもならん。あの男爵親子に同情はするが、相応の罰を与えねば周りの貴族に示しがつかんのでな」
国王の言うことは正しい。王家が私情に流されるわけにはいかないことは成人していなくても分かることだ。何よりも、貴族と言えども罪には罰が必要なのは当然なのだから。それを無視しては周りの貴族どころか国民に示しがつかない。
(でも、ちょっとあんまりな気がするわ。首謀者側のガンマ殿下が地方領主で、脅された男爵親子が平民落ちだなんて言うのは、救いがないというか罰に差がある………。でも、ガンマ殿下はあれでも王族なのよね……)
王族がその身分を剥奪されるだけでも、相当な罰に当たる。その重みは下級貴族が平民に落ちるのと同じ、そんなふうに考える上級貴族は多い。ただ、実際にそれが起こると疑問を抱くのがミロアなのだ。前世の記憶の影響なのか、格差には敏感になっていた。
(……やっぱり、そこだけは気にくわない………そうだわ!)
「国王陛下。一つ、お願いしたいのですが?」
「む? 何かね、ミロア嬢?」
「ウォーム男爵の娘、ミーヤ・ウォームのことなのですが……――」
ミロアの突然の提案に、国王は意外すぎて少し驚いた。
「――……構わんが、いいのか?」
「はい。是非」
◇
「――……ということがあったの」
「へえ、あのウォーム男爵令嬢にそんな温情をねえ」
今、ミロアとオルフェは同じ馬車に乗っていた。王都からレトスノム家の屋敷に戻る馬車の中で、王宮でのことを話していたのだ。ミーヤ・ウォーム男爵令嬢のことも。
「しかし、君はそれでいいのか? 仮にも婚約破棄するきっかけになった女性なのに?」
「きっかけは彼女だけど、逆に言えばきっかけにすぎないのよ。特に恨む理由があって?」
「……君がいいならいいか。思えばガンマ殿下に、というか側近の連中の暴走だしな」
オルフェはどこか複雑だった。ミロアがミーヤ・ウォームを助けるつもりでいることが。
(何かしらの事情がありそうだとは思ったけど、ちょっと複雑だったわね)
「男爵とその娘が自白したのもあって、あの親子に血の繋がりがないことが分かった。我が国の法により罰を受けてもらわねばならん」
「爵位の剥奪でしょうか?」
ドープアント王国の法律上、身分を偽って生きるのは重罪なのだ。それに加担することもまた罪。それが貴族だろうと平民だろうと同じこと。
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「やはりそうですか。身分偽装だけならまだ軽かったのでしょう……」
「だが、罪を犯したのは間違いない。こればかりはどうにもならん。あの男爵親子に同情はするが、相応の罰を与えねば周りの貴族に示しがつかんのでな」
国王の言うことは正しい。王家が私情に流されるわけにはいかないことは成人していなくても分かることだ。何よりも、貴族と言えども罪には罰が必要なのは当然なのだから。それを無視しては周りの貴族どころか国民に示しがつかない。
(でも、ちょっとあんまりな気がするわ。首謀者側のガンマ殿下が地方領主で、脅された男爵親子が平民落ちだなんて言うのは、救いがないというか罰に差がある………。でも、ガンマ殿下はあれでも王族なのよね……)
王族がその身分を剥奪されるだけでも、相当な罰に当たる。その重みは下級貴族が平民に落ちるのと同じ、そんなふうに考える上級貴族は多い。ただ、実際にそれが起こると疑問を抱くのがミロアなのだ。前世の記憶の影響なのか、格差には敏感になっていた。
(……やっぱり、そこだけは気にくわない………そうだわ!)
「国王陛下。一つ、お願いしたいのですが?」
「む? 何かね、ミロア嬢?」
「ウォーム男爵の娘、ミーヤ・ウォームのことなのですが……――」
ミロアの突然の提案に、国王は意外すぎて少し驚いた。
「――……構わんが、いいのか?」
「はい。是非」
◇
「――……ということがあったの」
「へえ、あのウォーム男爵令嬢にそんな温情をねえ」
今、ミロアとオルフェは同じ馬車に乗っていた。王都からレトスノム家の屋敷に戻る馬車の中で、王宮でのことを話していたのだ。ミーヤ・ウォーム男爵令嬢のことも。
「しかし、君はそれでいいのか? 仮にも婚約破棄するきっかけになった女性なのに?」
「きっかけは彼女だけど、逆に言えばきっかけにすぎないのよ。特に恨む理由があって?」
「……君がいいならいいか。思えばガンマ殿下に、というか側近の連中の暴走だしな」
オルフェはどこか複雑だった。ミロアがミーヤ・ウォームを助けるつもりでいることが。
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