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第173話 保留
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しかし、絶望ばかりでもなかったようだ。国王から意外な声がかかったのだ。
「ガンマよ……思っていたよりも罪悪感を感じているようだな。以前のお前には考えられなかったのだが、何かあったな」
「え……?」
国王の目からして、ガンマは変わったように見えた。以前のガンマのままなら、こういう時は必ず人のせいにしていた。しかし、今はどう見ても自分のせいだと思って悲痛な顔つきをしている。そもそも、先程の言動から男爵親子のことを気にかけていたとしか思えないのだ。
(……ミロア嬢からの報告を聞いた時はまさかとは思っていたが、これは本当に改心したやもしれん……)
実は、ミロアからも伝言と一緒に書状で報告をもらっていたのだ。その内容は先程のガンマの説明に『ミロアがガンマに謝罪したことでガンマの心境に変化があった』というものだ。長い間、ガンマの精神面のことで悩まされた国王としては非常に気になるところであった。
(それと、『返事』か……。これはガンマの処分を考え直さなくてはならんな。だが、もう少し今のこやつの内面を知らねばならん)
「ガンマ。ミロア嬢がお前に謝ったと聞いているが真か?」
「……! はい……あの場で謝罪をされました。ミロアに……」
「それでお前はどう思った?」
「……謝罪されたと理解した時、いろんな感情が湧き上がってきました。その中でも、僕自身に対する怒りが大きかったです……」
「何故、己に対して怒りを?」
「……」
何故と問われて、ガンマは少し間をおいてから答えた。自分なりに心の整理をつけたのだ。
「ミロアの、嘗ての婚約者の思いもよらぬ行動を見せつけられて、僕はいつまでも変わらない自分が本気で恥ずかしくなったんです。僕はミロアが嫌いです。彼女の過激な行動が本当に嫌でしたし、何よりあらゆることで上をいかれることが悔しくて、劣等感も抱いていました。……その時、気づいたんです。僕は自分の意地でミロアと距離をおき続けて向き合うのを拒んできたんだと」
「……」
「僕とミロアは根本的に変わらないだろうとも思っていました。勝手なことです。しかし、ミロアは変わった。きちんと自分の非を認めて頭を下げてくれました。その姿を見せつけられて、自分だけが変わらない事実を……目をそらしてきた事実を突きつけられた気分になったんです。……僕は、本当に自分が嫌になった」
「……」
ガンマは自分の口で言葉として出していくうちに、その時の感情が湧き起こる思いだった。胸のそこから負の感情が溢れ出そうな錯覚を感じて、少しずつ息が荒くなる。
「僕も、その……か、変わりたい……いつまでも最低なままでいたくないんです!」
「! さようか……」
ガンマの体が震えている。そのうえで国王に顔を向けて真剣に語っている。それを見ただけで、国王はガンマの処分を考え直した。
「それならば、まずはミロア嬢に答えを聞かせねばな」
「……はい!」
ガンマの処分は今一度保留となった。
「ガンマよ……思っていたよりも罪悪感を感じているようだな。以前のお前には考えられなかったのだが、何かあったな」
「え……?」
国王の目からして、ガンマは変わったように見えた。以前のガンマのままなら、こういう時は必ず人のせいにしていた。しかし、今はどう見ても自分のせいだと思って悲痛な顔つきをしている。そもそも、先程の言動から男爵親子のことを気にかけていたとしか思えないのだ。
(……ミロア嬢からの報告を聞いた時はまさかとは思っていたが、これは本当に改心したやもしれん……)
実は、ミロアからも伝言と一緒に書状で報告をもらっていたのだ。その内容は先程のガンマの説明に『ミロアがガンマに謝罪したことでガンマの心境に変化があった』というものだ。長い間、ガンマの精神面のことで悩まされた国王としては非常に気になるところであった。
(それと、『返事』か……。これはガンマの処分を考え直さなくてはならんな。だが、もう少し今のこやつの内面を知らねばならん)
「ガンマ。ミロア嬢がお前に謝ったと聞いているが真か?」
「……! はい……あの場で謝罪をされました。ミロアに……」
「それでお前はどう思った?」
「……謝罪されたと理解した時、いろんな感情が湧き上がってきました。その中でも、僕自身に対する怒りが大きかったです……」
「何故、己に対して怒りを?」
「……」
何故と問われて、ガンマは少し間をおいてから答えた。自分なりに心の整理をつけたのだ。
「ミロアの、嘗ての婚約者の思いもよらぬ行動を見せつけられて、僕はいつまでも変わらない自分が本気で恥ずかしくなったんです。僕はミロアが嫌いです。彼女の過激な行動が本当に嫌でしたし、何よりあらゆることで上をいかれることが悔しくて、劣等感も抱いていました。……その時、気づいたんです。僕は自分の意地でミロアと距離をおき続けて向き合うのを拒んできたんだと」
「……」
「僕とミロアは根本的に変わらないだろうとも思っていました。勝手なことです。しかし、ミロアは変わった。きちんと自分の非を認めて頭を下げてくれました。その姿を見せつけられて、自分だけが変わらない事実を……目をそらしてきた事実を突きつけられた気分になったんです。……僕は、本当に自分が嫌になった」
「……」
ガンマは自分の口で言葉として出していくうちに、その時の感情が湧き起こる思いだった。胸のそこから負の感情が溢れ出そうな錯覚を感じて、少しずつ息が荒くなる。
「僕も、その……か、変わりたい……いつまでも最低なままでいたくないんです!」
「! さようか……」
ガンマの体が震えている。そのうえで国王に顔を向けて真剣に語っている。それを見ただけで、国王はガンマの処分を考え直した。
「それならば、まずはミロア嬢に答えを聞かせねばな」
「……はい!」
ガンマの処分は今一度保留となった。
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