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第155話 元騎士団長
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男爵に声をかけてくる貴族が現れたのだ。
「失礼。ウォーム男爵ではありませんか?」
「「っ!?」」
「え!? あ、はい、その通りですが……貴方は?」
男爵は訝しげに聞くが、ガンマとローイは目を疑った。その男には見覚えがあったのだ。それも王宮で。
「私はヘムシンム・ギンベス。騎士団の分隊長を務める騎士の端くれです」
「なっ!?」
「騎士団長殿!?」
「ギンベス騎士団長!? 何故ここに!?」
男爵もガンマもローイも驚くしかなかった。ヘムシンム・ギンベス、濃い茶髪でいかつい顔に髭をはやした壮年の男の名を貴族で知らぬものはいないからだ。ましてや王族とその関係者であれば顔もよく知っていることだろう。
「これはこれはガンマ殿下にローイ殿。ご無沙汰しております。私のことを覚えておいでで喜ばしいことですが、ただ一つ間違っておられます。私は愚息の責任を取る形で騎士団長から分隊長に降格された身の上なので、どうか覚えていただきたく存じます」
「う、うむ……」
「ど、どうも……」
今は騎士団長から分隊長に降格……それでも、ガンマもローイも、ここにいないマークですら目の前の男に対して頭が上がらない。たとえ降格したとしても剣術を始めとするあらゆる分野でこの男には勝てないし、この男の厳しさに恐怖していたことすらあったのだ。
(こ、この御方がヘムシンム・ギンベス伯爵! 元騎士団長が何故ここに!?)
(そ、そんな馬鹿な! 何故、ギンベス騎士団……元騎士団長がここにいるんだよ!? ひょっとして不味いんじゃないか!?)
(こ、こんな偶然ありえない……いや偶然だとしても非常に不味い! 我々の組み合わせといい服装といい状況的に疑われる理由がありすぎる!?)
三人とも動揺を隠せない。特に不味いのは、ガンマとローイのこの二人。何しろ、本来貴族の学生が学園にいる時間帯で、貴族街で男爵と行動を共にしているだけでなく、明らかに変装目的で従者の格好をしているのだ。何かしら良からぬことを企んでいる可能性を疑うなという方が無理だ。
(こ、こんなお方に出会うということは……ミーヤをこの男達から開放できるかも……)
(くそ! 一度ここから離れて別の場所からやり直さないと……!)
(ちっ、何としてでも逃げなければ!)
「皆様方が一緒にいるのは妙な組み合わせですな。逃げ出さずにじっくりとその理由をお聞かせ願いたいものです」
「「「………」」」
伯爵は冷たくて鋭い眼差しを向けたまま微笑を見せる。目が笑っていないことくらい誰が見ても分かる。それだけで伝わりもする『絶対に逃さない』と。
「勿論、我々の部隊の騎士と一緒に楽しく会話しましょう。貴方方の状況はあまりに尋常ではありませんからな」
「「「え!?」」」
我々の部隊。それはつまり騎士団の一部隊ということにほかならない。周りを見ると、一般貴族に扮した騎士たちに囲まれていることに気付かされた。
「何だこいつら!? 騎士でもないくせに王子のこの僕を!?」
違った。ガンマだけは状況が未だに飲み込めていなかった。
「失礼。ウォーム男爵ではありませんか?」
「「っ!?」」
「え!? あ、はい、その通りですが……貴方は?」
男爵は訝しげに聞くが、ガンマとローイは目を疑った。その男には見覚えがあったのだ。それも王宮で。
「私はヘムシンム・ギンベス。騎士団の分隊長を務める騎士の端くれです」
「なっ!?」
「騎士団長殿!?」
「ギンベス騎士団長!? 何故ここに!?」
男爵もガンマもローイも驚くしかなかった。ヘムシンム・ギンベス、濃い茶髪でいかつい顔に髭をはやした壮年の男の名を貴族で知らぬものはいないからだ。ましてや王族とその関係者であれば顔もよく知っていることだろう。
「これはこれはガンマ殿下にローイ殿。ご無沙汰しております。私のことを覚えておいでで喜ばしいことですが、ただ一つ間違っておられます。私は愚息の責任を取る形で騎士団長から分隊長に降格された身の上なので、どうか覚えていただきたく存じます」
「う、うむ……」
「ど、どうも……」
今は騎士団長から分隊長に降格……それでも、ガンマもローイも、ここにいないマークですら目の前の男に対して頭が上がらない。たとえ降格したとしても剣術を始めとするあらゆる分野でこの男には勝てないし、この男の厳しさに恐怖していたことすらあったのだ。
(こ、この御方がヘムシンム・ギンベス伯爵! 元騎士団長が何故ここに!?)
(そ、そんな馬鹿な! 何故、ギンベス騎士団……元騎士団長がここにいるんだよ!? ひょっとして不味いんじゃないか!?)
(こ、こんな偶然ありえない……いや偶然だとしても非常に不味い! 我々の組み合わせといい服装といい状況的に疑われる理由がありすぎる!?)
三人とも動揺を隠せない。特に不味いのは、ガンマとローイのこの二人。何しろ、本来貴族の学生が学園にいる時間帯で、貴族街で男爵と行動を共にしているだけでなく、明らかに変装目的で従者の格好をしているのだ。何かしら良からぬことを企んでいる可能性を疑うなという方が無理だ。
(こ、こんなお方に出会うということは……ミーヤをこの男達から開放できるかも……)
(くそ! 一度ここから離れて別の場所からやり直さないと……!)
(ちっ、何としてでも逃げなければ!)
「皆様方が一緒にいるのは妙な組み合わせですな。逃げ出さずにじっくりとその理由をお聞かせ願いたいものです」
「「「………」」」
伯爵は冷たくて鋭い眼差しを向けたまま微笑を見せる。目が笑っていないことくらい誰が見ても分かる。それだけで伝わりもする『絶対に逃さない』と。
「勿論、我々の部隊の騎士と一緒に楽しく会話しましょう。貴方方の状況はあまりに尋常ではありませんからな」
「「「え!?」」」
我々の部隊。それはつまり騎士団の一部隊ということにほかならない。周りを見ると、一般貴族に扮した騎士たちに囲まれていることに気付かされた。
「何だこいつら!? 騎士でもないくせに王子のこの僕を!?」
違った。ガンマだけは状況が未だに飲み込めていなかった。
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