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第152話 悪意
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ミーヤは銀髪灰眼の青年オルフェに偶然を装ってわざとぶつかった。しかも、見方によってはミーヤから抱きついてきたように見えるように。
「いいぞ! 今のを撮ったか!?」
「ええ、勿論。ミーヤ嬢から抱きついたように見えますが、それだけでも不貞の証拠の一つにはなります」
そして、それはローイの持つ写真機で撮られた。それこそが彼らの計画。
「だからもっと大きな動きを見せてもらいましょう」
「ああ! ミーヤにアバズレぶりを発揮させてオルフェ・イーノックとかいう邪魔者を破滅させてやるんだ!」
「…………」
ミーヤにオルフェを誘惑させて、その姿を写真に撮って不貞の証拠としてミロアに、レトスノム公爵家に、多くの貴族に見せつける。それがガンマとローイの狙いなのだ。
そんな目的のために動くガンマとローイのことを男爵はどうしようもなく軽蔑した。
(ミロア嬢とレトスノム公爵家に不貞の証拠となる写真を送る。それだけでガンマ殿下との婚約が白紙になった経験のあるミロア嬢、彼女の婚約を再び白紙にするのは簡単のはず……それなのにわざわざ他の貴族にも見せつけるなど悪意以外の何物でもない……)
多くの貴族に証拠写真を見せつける動機は、ガンマたちの悪意からくるものだと男爵は考える。多くの貴族の間に『オルフェは不貞をした』と思わせてイーノック家を笑い者にしようという意図があるようにしか見えないのだ。
(イーノック侯爵令息はミロア嬢の幼馴染と聞く。幼馴染に裏切られたと思い込んだミロア嬢がどれほどの感情を抱くか分かるだろうに……。おぞましい男達に目をつけられてしまった……)
体が震えるほどの屈辱を感じる男爵だったが、ローイの考えはそれを超える悪意に満ちていた。
(ミロア様、レトスノム公爵家に証拠写真を送っても素直に『オルフェの不貞』と考えるとは思えない。考え方次第で我々の『罠』と感づく可能性もあり得る。下手をすれば寛容な考え方をして『一度の過ちなら許す』ということも……幼馴染の関係は侮れない。それならば……)
貴族の社会は情報が早い。噂が広まるのも、悪評が広まるのも早い。ローイはそれを利用したいのだ。
(貴族の社会に証拠写真とともに不貞の話を広めて、イーノック家を失墜させる。そうなれば、いかにレトスノム公爵家が大きな力をもっていても、評判が悪くなった家の令息との婚約を白紙にするしかなくなる。わざわざ疫病神を家に招くほど愚かな家ではないのだから。それが公爵家であるなら尚更……!)
貴族の社会は複雑で残酷で悪意がよく沸き起こる。その中に公爵令嬢の婚約者が不貞しているという話が証拠付きで出回ろうものなら、どうなるかは学園の生徒でも分かる。
ガンマはともかく、ローイの狙いはその悪意を利用することだった。少なくとも男爵が考えている以上にたちが悪い。
「いいぞ! 今のを撮ったか!?」
「ええ、勿論。ミーヤ嬢から抱きついたように見えますが、それだけでも不貞の証拠の一つにはなります」
そして、それはローイの持つ写真機で撮られた。それこそが彼らの計画。
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そんな目的のために動くガンマとローイのことを男爵はどうしようもなく軽蔑した。
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