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第149話 裏をかく
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ミロアが目覚めてから二十六日目。ついに決行の日が来た。
「……今日、問題児共が動き出す。準備はいいか?」
「はい。問題ありませんわ」
早朝から出かける準備を始めるミロアとバーグの親子。そして家臣たち。ただ、彼らは屋敷の門からではなく全く別の出入り口から外に出るつもりだった。
「旦那様。お嬢様。地下通路の準備も出来ております」
「ご苦労、それでは参ろうか。私はともかくミロアは初めてだから案内を頼むよ」
「お任せください。このエイルが旦那様のお手を煩わせることなくお嬢様をご案内しましょう」
彼らが向かうのは屋敷の地下にある秘密の通路。レトスノム家は、いざというときの備えて秘密裏に屋敷の外に出ていく備えをしていたのだ。ミロアも前日、初めて知った。
(秘密の通路……こんなのが本当にあるなんて! こういうのって空想特撮系統の話で見たことがあるから新鮮というか感傷的な感じがするわね!)
前世の記憶の中でも非現実的な物語として知っていたために、知られざる地下通路の存在に少し興奮するミロア。その様子に気づいたバーグは苦笑してしまう。
「ミロア。もう一度いうが、これは遊びに行くためのものではないんだ。非常事態のために、屋敷の周りに問題があるような時のために建国時から造られた秘密の通路なんだ。昨日今日でミロアに教えたのは、もうミロアに子供でいてもらうわけにはいかないからであり、」
「面倒な連中を欺くためでしょう?」
「……そういうことだ」
面倒な連中というのは、屋敷の周りに配置されている間者の様な者達のことだ。彼らは間違いなくガンマかローイ・ミュドの手先のものであり、レトスノム家に動きがないか見張る役割なのだろう。
「オルフェを陥れるために我が家を警戒するか。これは馬鹿な王子ではなく、利用している方の男の策略だな。素人に毛が生えた程度の連中のようだが些か人数が多い」
「我が家の優秀な衛兵や騎士の皆を総出で出せば蹴散らせるのではないですか?」
レトスノム家には、ダスターとスタードを筆頭にした多くの衛兵や騎士が勢ぞろいしている。ミロアの専属騎士の一人ソティー・アーツノウンも若いが相当な実力者だ。屋敷を見張る者達の掃討など容易いはず。
「それもいいが、万が一にもガンマ王子達に伝われば警戒して計画を止める可能性が高い。それなら、外の連中にはそのまま屋敷を見張ってもらうほうがいい。下手なことをして、こちらの計画まで駄目になってはかなわんからな」
「つまり、裏をかくということですね」
「ああ、奴らももう少し味方をつけるべきだったな。敵が多いということが頭から抜けているから、裏をかかれることを想定できんのだろう。仮にも王族と上級貴族の令息といっても所詮は若造ということだ」
ミロアとバーグは談笑しながら地下通路を進んでいった。
「……今日、問題児共が動き出す。準備はいいか?」
「はい。問題ありませんわ」
早朝から出かける準備を始めるミロアとバーグの親子。そして家臣たち。ただ、彼らは屋敷の門からではなく全く別の出入り口から外に出るつもりだった。
「旦那様。お嬢様。地下通路の準備も出来ております」
「ご苦労、それでは参ろうか。私はともかくミロアは初めてだから案内を頼むよ」
「お任せください。このエイルが旦那様のお手を煩わせることなくお嬢様をご案内しましょう」
彼らが向かうのは屋敷の地下にある秘密の通路。レトスノム家は、いざというときの備えて秘密裏に屋敷の外に出ていく備えをしていたのだ。ミロアも前日、初めて知った。
(秘密の通路……こんなのが本当にあるなんて! こういうのって空想特撮系統の話で見たことがあるから新鮮というか感傷的な感じがするわね!)
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「ミロア。もう一度いうが、これは遊びに行くためのものではないんだ。非常事態のために、屋敷の周りに問題があるような時のために建国時から造られた秘密の通路なんだ。昨日今日でミロアに教えたのは、もうミロアに子供でいてもらうわけにはいかないからであり、」
「面倒な連中を欺くためでしょう?」
「……そういうことだ」
面倒な連中というのは、屋敷の周りに配置されている間者の様な者達のことだ。彼らは間違いなくガンマかローイ・ミュドの手先のものであり、レトスノム家に動きがないか見張る役割なのだろう。
「オルフェを陥れるために我が家を警戒するか。これは馬鹿な王子ではなく、利用している方の男の策略だな。素人に毛が生えた程度の連中のようだが些か人数が多い」
「我が家の優秀な衛兵や騎士の皆を総出で出せば蹴散らせるのではないですか?」
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「つまり、裏をかくということですね」
「ああ、奴らももう少し味方をつけるべきだったな。敵が多いということが頭から抜けているから、裏をかかれることを想定できんのだろう。仮にも王族と上級貴族の令息といっても所詮は若造ということだ」
ミロアとバーグは談笑しながら地下通路を進んでいった。
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