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第143話 心の闇
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アギアに続いてレイダも寂しそうに言葉を吐く。
「アギア様、私も同じ気持ちです……。ミロア様には多くの味方がおられます。父君も家臣の方々もミロア様のことを思って行動されて……」
「……?」
(え? ど、どうしたのよこの二人? もしかして、『心の闇』みたいなのを引き出しちゃった感じ?)
アギアもレイダも明らかに自嘲している。どうやら彼女達の暗い部分を刺激してしまったようだ。そんなことになって欲しいと思わなかったミロアは、少し焦った。
(不味いわね。なんだか私と自分を比較して私が羨ましいって感じになってるわね。ここは遠回しにでも二人を慰めないと。上手く行けば友達にもなれそうだし……まずは、学園の話から脱線するけど二人の事情を聞いて……ってその前に謝罪しないと……!)
ミロアは公爵令嬢でレイダもアギアも伯爵令嬢。立場が上級貴族令嬢にもかかわらず、ミロアは結構声を張り上げたり感情的になっていた。公爵令嬢にあるまじき行為だ。
「レイダ様、アギア様……! お見苦しいところをお見せして申し訳ありません」
「え、あ……気になさらないでください! ミロア様の婚約に関わることなのですから当然の反応ですわ」
「そ、そうですよ! 殿下達がそんな酷いことをしているなんて……!」
(よし、二人はさっきのことを気にしてない)
若干引いた顔をしそうになった気がするが、伯爵令嬢の二人はさほど気にしてはいない(?)ようだった。
「お詫びとしてはなんですが、お二人が悩んでいることがあれば私のできる最善を尽くして微力ながら力になりましょう。本当に友人! としてできる限りのことですが」
「「!」」
『友人』という言葉をやや力強く口にして微笑むミロアにレイダもアギアも反応した。若干目を見開いた程度だが、それだけでミロアは上手く話に持ち込めそうだと思った。
(……思ったよりも心の闇は深い感じかしら? 友人という言葉よりも『力になる』って言葉に反応してる。学園の不安を払拭する話から脱線しすぎるかも……)
その一方で、本当に力になってやれるのか不安にも思った。
◇
「―――…………――…………」
「―――…………――…………」
レイダもアギアもミロアに悩みを打ち明けた。しかも、二人の悩みというのはほとんど似たようなものだった。
「――……そういうことでしたか」
レイダの悩み。それは周りの者達のことが信じられなくなったというものだった。レイダがあのマーク・アモウとの婚約を破棄しようと父に頼んでみたところ、父親はすぐに『穏便に婚約を解消』する形にしようと決めてしまったことが許せなかった。家柄のことを誇りに思っていたレイダは父に反発して家臣たちを味方につけようとしたところ、ほとんどの家臣が父である主人が正しいとしてレイダに味方しなかった。
「……父は言っておりました。アモウ家は王家の遠縁、そんな家と敵対しようものなら我がブラッド家が名門と言えどもただでは済まないと。父の言うことは分からなくもありませんが……それ以来、私は今まで誇っていた自分の家柄を、それ以上に両親と家臣たちのことを信用できなくなってしまったのです」
「アギア様、私も同じ気持ちです……。ミロア様には多くの味方がおられます。父君も家臣の方々もミロア様のことを思って行動されて……」
「……?」
(え? ど、どうしたのよこの二人? もしかして、『心の闇』みたいなのを引き出しちゃった感じ?)
アギアもレイダも明らかに自嘲している。どうやら彼女達の暗い部分を刺激してしまったようだ。そんなことになって欲しいと思わなかったミロアは、少し焦った。
(不味いわね。なんだか私と自分を比較して私が羨ましいって感じになってるわね。ここは遠回しにでも二人を慰めないと。上手く行けば友達にもなれそうだし……まずは、学園の話から脱線するけど二人の事情を聞いて……ってその前に謝罪しないと……!)
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「そ、そうですよ! 殿下達がそんな酷いことをしているなんて……!」
(よし、二人はさっきのことを気にしてない)
若干引いた顔をしそうになった気がするが、伯爵令嬢の二人はさほど気にしてはいない(?)ようだった。
「お詫びとしてはなんですが、お二人が悩んでいることがあれば私のできる最善を尽くして微力ながら力になりましょう。本当に友人! としてできる限りのことですが」
「「!」」
『友人』という言葉をやや力強く口にして微笑むミロアにレイダもアギアも反応した。若干目を見開いた程度だが、それだけでミロアは上手く話に持ち込めそうだと思った。
(……思ったよりも心の闇は深い感じかしら? 友人という言葉よりも『力になる』って言葉に反応してる。学園の不安を払拭する話から脱線しすぎるかも……)
その一方で、本当に力になってやれるのか不安にも思った。
◇
「―――…………――…………」
「―――…………――…………」
レイダもアギアもミロアに悩みを打ち明けた。しかも、二人の悩みというのはほとんど似たようなものだった。
「――……そういうことでしたか」
レイダの悩み。それは周りの者達のことが信じられなくなったというものだった。レイダがあのマーク・アモウとの婚約を破棄しようと父に頼んでみたところ、父親はすぐに『穏便に婚約を解消』する形にしようと決めてしまったことが許せなかった。家柄のことを誇りに思っていたレイダは父に反発して家臣たちを味方につけようとしたところ、ほとんどの家臣が父である主人が正しいとしてレイダに味方しなかった。
「……父は言っておりました。アモウ家は王家の遠縁、そんな家と敵対しようものなら我がブラッド家が名門と言えどもただでは済まないと。父の言うことは分からなくもありませんが……それ以来、私は今まで誇っていた自分の家柄を、それ以上に両親と家臣たちのことを信用できなくなってしまったのです」
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