183 / 248
第133.2話 最悪の一日(2)
しおりを挟む
(宰相の息子視点)
……昨日に続き、今日も最悪の一日になるとは思わなかった。しかも、全く別の意味で。
「……何故、私がこんなことに……」
一体、これはどういうことなんだ? 何故、この私がこんな目に遭うんだ?
私は今日の朝から、兵士の姿をした者達に任意同行という形で連れて行かれた。そして、逃げ出すことが不可能な部屋に連れて行かれてあれこれ質問攻めを受けることになった。
「昨日の騒ぎの元凶は?」
「以前からガンマ殿下を陥れようと?」
「何故、逃げ出した?」
同じ様な似たような質問を繰り返されるが、私はなるべく冷静を保ちながら丁寧に答えた。正確に適切で、尚且私の立場が悪くならないように答えてみせた。兵士たちも疑いようのないくらいに。
だが、後半から行き詰まってしまった。
「グロン・ギンベスのことはどうなんだ?」
「え?」
何故か、嘗ての同僚とも言えるグロン・ギンベスのことに触れたのだ。
「何故、奴のことが出るんですか?」
「実は、匿名で『グロン・ギンベスの凶行にマーク・アモウが関わっている』という報告があったのだ。グロン・ギンベス一人でレトスノム公爵への襲撃計画を考えつくはずがないとも言っていたな」
「なっ!?」
馬鹿な……何だそんな話は? 何故、そんな疑いが私にかけられるんだ!?
「そんなバカな!? まさか、私がグロンの凶行を企てたとでもいうのですか!?」
「それはこれから調べていくだけのことだ。勿論、貴殿の証言も参考にしてな。二度目の事情聴取は災難かもしれないが、一度目とは比べることがないくらい厳しいものだと覚悟してほしい」
「…………」
最悪だ。
◇
結局私は今日一日、取り調べという目的で学園にも実家にも戻れることもなかった。明日も……下手すると後数日は調べられるのだろう。
私をこんな目に遭わせる者は私の敵。私に敵対する者と言えば、数多くいる。我が家の敵対する派閥の貴族は勿論、嘗ての婚約者だったブラッド家の令嬢レイダ・ブラッド。グロンの父親の元騎士団長ヘムシンム・ギンベス。私に不信感を持っているガンマ殿下も候補に入る。
こんな巫山戯た方法を思いついて実行する者は、あの男だけ……。
「……こんなことを思いつく者は、一人しかいない」
目的は時間稼ぎだろう。それでいて理不尽で陰湿なやり方。こんな卑劣で無理があって陰湿な手段を思いつけるような男はあの男だけ!
「貴様、貴様のせいだったのだな……ローイ・ミュド!」
独房で思わず叫んでしまったが、どうでもいい。優先するべきは何としてでも早くここから出ることだけなのだ。周りに聞かれても構わない叫びだしな。
……それ以上に、悔しいという思いのほうが大きい。
「くそ。強引な手段で自滅すると思っていたが、まさか私にこんな……!」
だが私にもここまでするということは、あの二人に仕掛けてくるということだ。一体何をするつもりだ? 下手に失敗して、私の将来を潰すようなことがないことを祈るしかないのが本気で悔しい……。
……昨日に続き、今日も最悪の一日になるとは思わなかった。しかも、全く別の意味で。
「……何故、私がこんなことに……」
一体、これはどういうことなんだ? 何故、この私がこんな目に遭うんだ?
私は今日の朝から、兵士の姿をした者達に任意同行という形で連れて行かれた。そして、逃げ出すことが不可能な部屋に連れて行かれてあれこれ質問攻めを受けることになった。
「昨日の騒ぎの元凶は?」
「以前からガンマ殿下を陥れようと?」
「何故、逃げ出した?」
同じ様な似たような質問を繰り返されるが、私はなるべく冷静を保ちながら丁寧に答えた。正確に適切で、尚且私の立場が悪くならないように答えてみせた。兵士たちも疑いようのないくらいに。
だが、後半から行き詰まってしまった。
「グロン・ギンベスのことはどうなんだ?」
「え?」
何故か、嘗ての同僚とも言えるグロン・ギンベスのことに触れたのだ。
「何故、奴のことが出るんですか?」
「実は、匿名で『グロン・ギンベスの凶行にマーク・アモウが関わっている』という報告があったのだ。グロン・ギンベス一人でレトスノム公爵への襲撃計画を考えつくはずがないとも言っていたな」
「なっ!?」
馬鹿な……何だそんな話は? 何故、そんな疑いが私にかけられるんだ!?
「そんなバカな!? まさか、私がグロンの凶行を企てたとでもいうのですか!?」
「それはこれから調べていくだけのことだ。勿論、貴殿の証言も参考にしてな。二度目の事情聴取は災難かもしれないが、一度目とは比べることがないくらい厳しいものだと覚悟してほしい」
「…………」
最悪だ。
◇
結局私は今日一日、取り調べという目的で学園にも実家にも戻れることもなかった。明日も……下手すると後数日は調べられるのだろう。
私をこんな目に遭わせる者は私の敵。私に敵対する者と言えば、数多くいる。我が家の敵対する派閥の貴族は勿論、嘗ての婚約者だったブラッド家の令嬢レイダ・ブラッド。グロンの父親の元騎士団長ヘムシンム・ギンベス。私に不信感を持っているガンマ殿下も候補に入る。
こんな巫山戯た方法を思いついて実行する者は、あの男だけ……。
「……こんなことを思いつく者は、一人しかいない」
目的は時間稼ぎだろう。それでいて理不尽で陰湿なやり方。こんな卑劣で無理があって陰湿な手段を思いつけるような男はあの男だけ!
「貴様、貴様のせいだったのだな……ローイ・ミュド!」
独房で思わず叫んでしまったが、どうでもいい。優先するべきは何としてでも早くここから出ることだけなのだ。周りに聞かれても構わない叫びだしな。
……それ以上に、悔しいという思いのほうが大きい。
「くそ。強引な手段で自滅すると思っていたが、まさか私にこんな……!」
だが私にもここまでするということは、あの二人に仕掛けてくるということだ。一体何をするつもりだ? 下手に失敗して、私の将来を潰すようなことがないことを祈るしかないのが本気で悔しい……。
24
あなたにおすすめの小説
公爵令嬢は逃げ出すことにした【完結済】
佐原香奈
恋愛
公爵家の跡取りとして厳しい教育を受けるエリー。
異母妹のアリーはエリーとは逆に甘やかされて育てられていた。
幼い頃からの婚約者であるヘンリーはアリーに惚れている。
その事実を1番隣でいつも見ていた。
一度目の人生と同じ光景をまた繰り返す。
25歳の冬、たった1人で終わらせた人生の繰り返しに嫌気がさし、エリーは逃げ出すことにした。
これからもずっと続く苦痛を知っているのに、耐えることはできなかった。
何も持たず公爵家の門をくぐるエリーが向かった先にいたのは…
完結済ですが、気が向いた時に話を追加しています。
【完結】殿下、自由にさせていただきます。
なか
恋愛
「出て行ってくれリルレット。王宮に君が住む必要はなくなった」
その言葉と同時に私の五年間に及ぶ初恋は終わりを告げた。
アルフレッド殿下の妃候補として選ばれ、心の底から喜んでいた私はもういない。
髪を綺麗だと言ってくれた口からは、私を貶める言葉しか出てこない。
見惚れてしまう程の笑みは、もう見せてもくれない。
私………貴方に嫌われた理由が分からないよ。
初夜を私一人だけにしたあの日から、貴方はどうして変わってしまったの?
恋心は砕かれた私は死さえ考えたが、過去に見知らぬ男性から渡された本をきっかけに騎士を目指す。
しかし、正騎士団は女人禁制。
故に私は男性と性別を偽って生きていく事を決めたのに……。
晴れて騎士となった私を待っていたのは、全てを見抜いて笑う副団長であった。
身分を明かせない私は、全てを知っている彼と秘密の恋をする事になる。
そして、騎士として王宮内で起きた変死事件やアルフレッドの奇行に大きく関わり、やがて王宮に蔓延る謎と対峙する。
これは、私の初恋が終わり。
僕として新たな人生を歩みだした話。
【12月末日公開終了】これは裏切りですか?
たぬきち25番
恋愛
転生してすぐに婚約破棄をされたアリシアは、嫁ぎ先を失い、実家に戻ることになった。
だが、実家戻ると『婚約破棄をされた娘』と噂され、家族の迷惑になっているので出て行く必要がある。
そんな時、母から住み込みの仕事を紹介されたアリシアは……?
【完結】王妃はもうここにいられません
なか
恋愛
「受け入れろ、ラツィア。側妃となって僕をこれからも支えてくれればいいだろう?」
長年王妃として支え続け、貴方の立場を守ってきた。
だけど国王であり、私の伴侶であるクドスは、私ではない女性を王妃とする。
私––ラツィアは、貴方を心から愛していた。
だからずっと、支えてきたのだ。
貴方に被せられた汚名も、寝る間も惜しんで捧げてきた苦労も全て無視をして……
もう振り向いてくれない貴方のため、人生を捧げていたのに。
「君は王妃に相応しくはない」と一蹴して、貴方は私を捨てる。
胸を穿つ悲しみ、耐え切れぬ悔しさ。
周囲の貴族は私を嘲笑している中で……私は思い出す。
自らの前世と、感覚を。
「うそでしょ…………」
取り戻した感覚が、全力でクドスを拒否する。
ある強烈な苦痛が……前世の感覚によって感じるのだ。
「むしろ、廃妃にしてください!」
長年の愛さえ潰えて、耐え切れず、そう言ってしまう程に…………
◇◇◇
強く、前世の知識を活かして成り上がっていく女性の物語です。
ぜひ読んでくださると嬉しいです!
【完結】ずっと、ずっとあなたを愛していました 〜後悔も、懺悔も今更いりません〜
高瀬船
恋愛
リスティアナ・メイブルムには二歳年上の婚約者が居る。
婚約者は、国の王太子で穏やかで優しく、婚約は王命ではあったが仲睦まじく関係を築けていた。
それなのに、突然ある日婚約者である王太子からは土下座をされ、婚約を解消して欲しいと願われる。
何故、そんな事に。
優しく微笑むその笑顔を向ける先は確かに自分に向けられていたのに。
婚約者として確かに大切にされていたのに何故こうなってしまったのか。
リスティアナの思いとは裏腹に、ある時期からリスティアナに悪い噂が立ち始める。
悪い噂が立つ事など何もしていないのにも関わらず、リスティアナは次第に学園で、夜会で、孤立していく。
【完結】以上をもちまして、終了とさせていただきます
楽歩
恋愛
異世界から王宮に現れたという“女神の使徒”サラ。公爵令嬢のルシアーナの婚約者である王太子は、簡単に心奪われた。
伝承に語られる“女神の使徒”は時代ごとに現れ、国に奇跡をもたらす存在と言われている。婚約解消を告げる王、口々にルシアーナの処遇を言い合う重臣。
そんな混乱の中、ルシアーナは冷静に状況を見据えていた。
「王妃教育には、国の内部機密が含まれている。君がそれを知ったまま他家に嫁ぐことは……困難だ。女神アウレリア様を祀る神殿にて、王家の監視のもと、一生を女神に仕えて過ごすことになる」
神殿に閉じ込められて一生を過ごす? 冗談じゃないわ。
「お話はもうよろしいかしら?」
王族や重臣たち、誰もが自分の思惑通りに動くと考えている中で、ルシアーナは静かに、己の存在感を突きつける。
※39話、約9万字で完結予定です。最後までお付き合いいただけると嬉しいですm(__)m
【完結】「お前とは結婚できない」と言われたので出奔したら、なぜか追いかけられています
22時完結
恋愛
「すまない、リディア。お前とは結婚できない」
そう告げたのは、長年婚約者だった王太子エドワード殿下。
理由は、「本当に愛する女性ができたから」――つまり、私以外に好きな人ができたということ。
(まあ、そんな気はしてました)
社交界では目立たない私は、王太子にとってただの「義務」でしかなかったのだろう。
未練もないし、王宮に居続ける理由もない。
だから、婚約破棄されたその日に領地に引きこもるため出奔した。
これからは自由に静かに暮らそう!
そう思っていたのに――
「……なぜ、殿下がここに?」
「お前がいなくなって、ようやく気づいた。リディア、お前が必要だ」
婚約破棄を言い渡した本人が、なぜか私を追いかけてきた!?
さらに、冷酷な王国宰相や腹黒な公爵まで現れて、次々に私を手に入れようとしてくる。
「お前は王妃になるべき女性だ。逃がすわけがない」
「いいや、俺の妻になるべきだろう?」
「……私、ただ田舎で静かに暮らしたいだけなんですけど!!」
【完結】婿入り予定の婚約者は恋人と結婚したいらしい 〜そのひと爵位継げなくなるけどそんなに欲しいなら譲ります〜
早奈恵
恋愛
【完結】ざまぁ展開あります⚫︎幼なじみで婚約者のデニスが恋人を作り、破談となってしまう。困ったステファニーは急遽婿探しをする事になる。⚫︎新しい相手と婚約発表直前『やっぱりステファニーと結婚する』とデニスが言い出した。⚫︎辺境伯になるにはステファニーと結婚が必要と気が付いたデニスと辺境伯夫人になりたかった恋人ブリトニーを前に、ステファニーは新しい婚約者ブラッドリーと共に対抗する。⚫︎デニスの恋人ブリトニーが不公平だと言い、デニスにもチャンスをくれと縋り出す。⚫︎そしてデニスとブラッドが言い合いになり、決闘することに……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる