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第127話 利用する
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ただ、何も思うことはないが、ローイがガンマに向ける感情は一切変わらない。いや、正確に言えば周りに対する感情に変化はないのだ。
(この馬鹿王子……本当に冷静な判断というものができないのですね。こんな愚か者がミロア様の元婚約者だったなんて……殺意しかわかないが、こんな男にも利用価値はまだある)
ローイはガンマのことは気に入らないが、ガンマの命をどうこうするよりも優先するべきことがあった。それは、今の学園で騒ぎになっている二人……ミロアとオルフェのことだ。
(ミロア様とオルフェ・イーノックを別れさせるのは賛成ですが、この馬鹿王子一人ではどうすることもできないでしょう。ならば、この僕が利用すればいいのです!)
ミロアとオルフェを別れさせたいという気持ちはローイも同じ。違いがあるとすれば、ミロアが誰の『もの』になるべきかということだけなのだ。それまでは、利害が一致する。そこに付け込めばいい。
「ガンマ殿下、言っておきますが僕もミロア様とオルフェ・イーノックなる輩が結ばれることは断じて許容できません。しかしながら、殿下だけではあの二人を引き裂くことは不可能だと断言できます」
「な、何だと……」
「あの二人は仮にも上級貴族の出自。特にレトスノム公爵家は王家に多大な貢献をした実績があるゆえに影響力も大きい。王家に反論することも意見して政治を左右することすら容易であり、勿論婚約に関しても同じこと。それは婚約して破棄されたガンマ殿下がよく知っておられるでしょう?」
「ぐぅっ! そ、それは……っ!」
ガンマは嫌な記憶を思い出されて顔を真っ赤に染めるが、怒りをローイにぶつけることはできなかった。流石のガンマもローイの言っていることは反論できないと分かるし、そもそも怒りの矛先はミロアとレトスノム家なのだ。それに、確かに身を持ってレトスノム家の影響力を味わったのも事実だ。婚約を破棄されるだけでなく、王太子の座を失ったのだから。
「イーノック家も仮にも侯爵。しかも、レトスノム家との結びつきも強いようですし、彼らを引き裂くことは王家の圧力をもってしても難しい……いやそれ以前に、殿下は国王陛下からも見放されているのでは?」
「……っ! お、お前、どうして……」
どうして知っているんだ、と口に出そうになって出なかった。ガンマにとって一番知られたくないことだっただけに、ガンマは愕然としたのだ。
(何故、そんなことをローイが……!?)
ガンマは国王に、実の父に見捨てられたも同然だと思っている。まだ多少は情が残っている気もするが、『卒業したら王籍から排除のち男爵になる』と決められた時は絶望させられた。
(ど、どこから漏れて……王宮の兵士か文官がバラしやがったのか……?)
誰がバラしたのかと思うガンマだが、実は誰もがそう思っているだけのこと。ガンマが知らないだけで、学園の少なくない人数の生徒が『王太子から外された』ということは『国王に見放された』からだと思っているのだ。
(この馬鹿王子……本当に冷静な判断というものができないのですね。こんな愚か者がミロア様の元婚約者だったなんて……殺意しかわかないが、こんな男にも利用価値はまだある)
ローイはガンマのことは気に入らないが、ガンマの命をどうこうするよりも優先するべきことがあった。それは、今の学園で騒ぎになっている二人……ミロアとオルフェのことだ。
(ミロア様とオルフェ・イーノックを別れさせるのは賛成ですが、この馬鹿王子一人ではどうすることもできないでしょう。ならば、この僕が利用すればいいのです!)
ミロアとオルフェを別れさせたいという気持ちはローイも同じ。違いがあるとすれば、ミロアが誰の『もの』になるべきかということだけなのだ。それまでは、利害が一致する。そこに付け込めばいい。
「ガンマ殿下、言っておきますが僕もミロア様とオルフェ・イーノックなる輩が結ばれることは断じて許容できません。しかしながら、殿下だけではあの二人を引き裂くことは不可能だと断言できます」
「な、何だと……」
「あの二人は仮にも上級貴族の出自。特にレトスノム公爵家は王家に多大な貢献をした実績があるゆえに影響力も大きい。王家に反論することも意見して政治を左右することすら容易であり、勿論婚約に関しても同じこと。それは婚約して破棄されたガンマ殿下がよく知っておられるでしょう?」
「ぐぅっ! そ、それは……っ!」
ガンマは嫌な記憶を思い出されて顔を真っ赤に染めるが、怒りをローイにぶつけることはできなかった。流石のガンマもローイの言っていることは反論できないと分かるし、そもそも怒りの矛先はミロアとレトスノム家なのだ。それに、確かに身を持ってレトスノム家の影響力を味わったのも事実だ。婚約を破棄されるだけでなく、王太子の座を失ったのだから。
「イーノック家も仮にも侯爵。しかも、レトスノム家との結びつきも強いようですし、彼らを引き裂くことは王家の圧力をもってしても難しい……いやそれ以前に、殿下は国王陛下からも見放されているのでは?」
「……っ! お、お前、どうして……」
どうして知っているんだ、と口に出そうになって出なかった。ガンマにとって一番知られたくないことだっただけに、ガンマは愕然としたのだ。
(何故、そんなことをローイが……!?)
ガンマは国王に、実の父に見捨てられたも同然だと思っている。まだ多少は情が残っている気もするが、『卒業したら王籍から排除のち男爵になる』と決められた時は絶望させられた。
(ど、どこから漏れて……王宮の兵士か文官がバラしやがったのか……?)
誰がバラしたのかと思うガンマだが、実は誰もがそう思っているだけのこと。ガンマが知らないだけで、学園の少なくない人数の生徒が『王太子から外された』ということは『国王に見放された』からだと思っているのだ。
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