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第114.2話 公爵としての

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(公爵視点)


我が娘ミロアとオルフェ・イーノックとの婚約が決まった。これで初期段階は迎えたわけだ。


ミロアには言ってはいないが、オルフェとの婚約はすでに計画されていたことだったのだ。あのガンマ殿下との婚約を白紙にしなければならないと感じた時に、新たな婚約者としてオルフェが有力候補になっていたのだ。


「……少しばかり計算違いもあったが、計画は順調というところか」


後はオルフェと良好な関係を保ち、目障りな障害を排除していくだけ。ミロアの邪魔になる者達とレトスノム公爵家の邪魔になる危険分子をだ。


「ミロアを利用する形にもなってしまうが、それも我が公爵家のため……ミロアも貴族令嬢であるゆえ、その運命には抗えん、仕方がないか……」


ミロアの学園復帰は、間違いなく学園を騒がしくするだろう。何しろ、一ヶ月も閉鎖的な学園を休学した公爵令嬢なのだ。良からぬことを企む者やただの愚か者からしたら格好の的になる。


ミロアを利用して我がレトスノム家と近づきたい者も多くいるだろう。逆に我が家に敵対する者にはミロアを脅迫したり攫って人質にしようと考えるものもいるはずだろう。そういう考えの者達をミロアのもとに集めて一気に力を削ぐということがレトスノム公爵としての私の目論見なのだ。


「……我ながら嫌になるが、それも国で唯一の公爵家としての義務に似たようなもの。立場を守るためとはいえ、自己嫌悪を拭えん」


公爵家といえど、油断していると思わぬ痛手を追うこともあるのが貴族の世界。だからこそ私は父としてミロアを最大限守る一方で、公爵家の当主としてミロアを利用する。矛盾しているようだが『公爵』という立場を守ることは、『公爵』としてミロアを守ることに繋がる。やはり、やむを得んことなのだ。


「……ふん、それも言い訳と言えば言い訳に過ぎん。それでも、私は……!」

「旦那様、『陰』でこざいます」


……来たか、タイミングが微妙な時に出てきおって。


「まずは、ミロアお嬢様とオルフェ様の婚約をお祝いいたしまする」

「それはいい、それよりゴウルはどうだ? 怪我の具合は?」

「はい、思っていたよりも治りが早くて復帰も少し早くできそうです」

「そうか、それなら安心だ」


ミロアの護衛騎士に『陰』の者は必須だ。早めに復帰できるのなら何よりだ。つまりは……


「それならばミロアに迫る者や我が家に害をなす者を成敗できるな?」

「はい」


ミロアにも我が家にも害をなす存在は容赦しない。それが馬鹿王子でも他の貴族でもだ。
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