公爵令嬢は豹変しました 〜走馬灯を見る過程で、前世の記憶を思い出したので悪役令嬢にはなりません〜

mimiaizu

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第113話 親子揃って

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バーグはニヤついた顔のまま、その後のことを語る。


「そういえば、ハトロイはあれから女性不信になったのだったな。スターナのことがすっかりトラウマになったせいで女性と距離を置くようになり、見かねた奴の弟がトラウマを克服するために一肌脱いだらしい。そういう意味では弟の方は苦労人でまともな男だったな。戦死したのが惜しいくらいだ」

「そうなのですか。でも、今は当主となって面倒な息子がいるようですが……?」


懐かしそうに語り続けるバーグだが、ミロアとしては『今』の方を優先してほしい。だから、『現在』の話になるように聞いてみた。


「女性に対するトラウマを克服したというわけだろうな。まあ、時折私やスターナに対する陰口を言ってはいたが気にするほどの内容でもなかった。『バーグとスターナは野蛮で最悪だ』とか『バーグにスターナは我が国の病原菌』だなどと意味不明なことを言うものだから相手にするだけ無駄だと判断したわけだ。我ら夫婦も周りもな」

「……ローイ・ミュドはそういう話を知らないのでしょうね」

「ハトロイはあれでプライドの高い男だったからな。自分の惨めな思い出など息子に話したくなかったのだろう。結果的に親子で似てしまったわけだ。愛情表現も我が家に関わってくることも迷惑でしかないというのに……」


バーグは心底嫌そうな顔になる。バーグもまさか、子供の世代にまで迷惑をかけられることになるとは思ってもいなかったのだ。自分の娘に嫌いな男の息子が惚れてしまうなんて悪夢でしかない。


「まったく……親子揃って面倒なことを……。奴らとこれ以上付き合わされるわけにはいかん。すぐにでもミロアとオルフェとの婚約を確定させねばならんな」

「はい。そういうことですので今すぐにイーノック家に行って婚約の打診をしなければならないのですが……」

「そうするつもりだ。お前のためにも少し常識外れをしても気にしてはいられんからな。ましてや、状況も面倒なことこの上ない。事情を言えば、オルペウスも分かってくれるだろうしな。そもそも、お前も同じことを考えたのではないか?」

「お父様……!」


ミロアはバーグに手紙を見せたが、作戦まで口にしてはいない。それなのに、バーグが目的を言い当てしまった。父の洞察力にミロアは驚かざるを得ない。


(流石は英雄と言われただけのことはあるわけね。本当にいい父を持ったわ)

「はい、その通りです。お父様ならそのように動いてもらえると思いましたのです。お恥ずかしいことに……」

「いや、賢明な判断だ。だからお前も支度をしなさい。勿論、しっかり護衛を付けたうえでな」


二人は、すぐに外出時の支度を始めた。準備ができ次第、ダスターとスタードをはじめとした騎士たちとともに、ミロアとバーグは親子揃って馬車に乗ってイーノック家へと向かうのであった。


ちょうどその頃のイーノック家は、親子揃って屋敷にいた。ミロアとバーグは運が良かったかもしれない。




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