公爵令嬢は豹変しました 〜走馬灯を見る過程で、前世の記憶を思い出したので悪役令嬢にはなりません〜

mimiaizu

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第93話 ヒロインのメンタル

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(まあ、ヤンデレだっていうのなら豹変して襲いかかってくる可能性もあるけど、こっちは護身術を習っている過程で剣術もできるようになったし……それ以前に専属騎士がいるもの。いざという時は対処できるはず……)

(……いざとなれば迎え撃てばいい。お嬢様はそんな顔をしている。お嬢様自身が旦那様の血筋のせいか剣術には長けているようだし……)


ミロアは護身術獲得のためにソティーに教えを受けた。ただ、ソティーの目からしてミロアは筋が良いということで正統な剣術や武術までも習っていたのだ。おそらく、今のミロアは並の騎士ほどではなくても並の学生では相手にならないだろう。


「残るはミーヤ・ウォーム男爵令嬢だけかしらね。彼女のことはどうなっているのか、今から説明してもらえる? もう私は十分休んだことだしね」

「……そうですね。今のお嬢様ならば話を続けても大丈夫でしょう。話が終わったら今後はどうするべきか明日にでも旦那様も交えて話し合いましょう」


残るのは、きっかけとなった男爵令嬢とその他諸々だけ。ミロアはもう挫けそうになかった。それは話が終わった後でもそうだった。


「ミーヤ・ウォーム男爵令嬢は今、学園を休学中です」

「ええ!? 休学!?」

「少し前に、周囲の目に耐えきれなかったことが原因で体調不良になり、しばらく休むようですね」

「ええー……」


周囲の目に耐えられない。乙女ゲームのヒロインにあるまじき弱さにミロアは呆れてしまう。


「……何してんのよヒロインなのに」

「……?」

「いや、何でもないわ。気にしないで。向こうも休学してたのに驚いただけ……」


まさか、『ヒロイン』と思っていた女がそれしきのことで休学するとは思ってもいなかった。『悪役令嬢』の最大の敵がそんなことで学園に来なくなるなど、ミロアとしては予想外だった。強敵になるかもと勝手に思っていたため、つい前世の知識を口にしてしまう。もっとも、エイルはもう気にしないのだが。


(あ、あれ~? そんな事になってたなんて……ヒロインっていうのはメンタルが強い娘がほとんどなのに、本当にどういうこと? もしかしてミーヤ・ウォームはヒロインじゃない? でも、王太子や側近達があんなに執着してたのに……執着?)


執着という単語を思い浮かべてミロアは気づいた。ガンマや側近たちの執着は別の誰かに移り変わっていることに。


(……そうか、今彼らが執着しているのは私! だから、本来のヒロインがメンタル弱いのか!)


ヒロインとは必ずしも最初から精神的に強いわけではない。攻略対象と共に過ごしていくことで精神面が成長していくパターンが有るのだ。しかし、この状況はそんなことになっていない。ヒロインと思われるミーヤはもうガンマたちと距離をおいている状況だ。
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