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第59話 落ち着かない
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ミロアが目覚めてから十九日目、ミロアは屋敷でソワソワし始めた。何しろ、明日には父バーグが帰ってくるだろうと聞かされたからだ。というよりも、ミロア自身もそんな気がしていたからだ。オルフェの手紙からバーグが王宮に着いた日にちを逆算することで、屋敷に戻る日も大体推測できていたのだ。
「遂に明日帰ってくるのよね……」
「はい、おそらく明日の正午のすぎくらいに戻られると思われます。その際に婚約破棄ができたかどうかも聞けるでしょう」
「ええ、それも大事だけどお父様が無事で、その後から義母様と義妹の子と会えるかどうかとかも……!」
見るからに落ち着かなくなったミロアをエイルは微笑ましく見守る。心の中では不安を抱えていてもだ。
(お嬢様がこんなに家族のことで心を取り乱されるなんて……本当にあの王子への恋心が無くなってよかった。まあ、婚約破棄になっているのは間違いないだろうけど、義母様親子との関係がどうなるかはまだわからないのよね。それに、ガンマ殿下のこの後の動向も……明日の夕方に私がいち早く分かるけどね)
エイルの脳裏には元『陰』のゴウルの顔が浮かんでいた。今頃はどんな結果になっているのかエイルは気になって仕方がない。そのゴウルは今、学園の詳しい状況を知るために、スマートブレイブ学園の学園長の屋敷に潜入しようとしていた。
◇
スマートブレイブ学園の設立者とされるヤミズーク・マスカレード。表向きは伯爵位の貴族ということになっているため、上級貴族の端くれということになっている。そのうえスマートブレイブ学園の学園長という重い肩書を持ち、更に結構な堅物と言われているらしい。
しかし、裏の顔は王家の元『陰』の一人であり、時として王家や上級貴族と情報交換をしているという。そもそも、スマートブレイブ学園の設立に関わったのは、『陰』のような裏の専門からの見方から建設に関する助言をもらうことで侵入者を受け入れないような学園を築くのが目的だった。その立役者でもあるのだ。
「……そのような大先輩の屋敷に忍び込み、本人と直接交渉……随分と試されたことですな」
ゴウルは今、ヤミズーク・マスカレード伯爵の屋敷の前にいる。屋敷は上級貴族にしては少し小さいくらいで、門番や衛兵が見当たらない。それでいて、とても不気味だった。
「エイル殿はすでに手紙と交渉材料を送っているという。後は小生が屋敷に入り込み、本人に会うだけ……嫌でも落ち着かない気分にさせられますな」
おそらく、屋敷の中は外部からの侵入者に対する罠が張り巡らされているか『陰』のような番人などが待ち構えていることだろう。下手をすればヤミズーク・マスカレード本人とも戦うことも想定しなければならない。そんなことを想像しただけでゴウルは武者震いしてしまう。
「……ふっ、流石にそうとも限らないかもしれませぬが……背後や上下からの奇襲には気をつけましょうか」
ゴウルは意を決して屋敷への潜入を開始する。
「遂に明日帰ってくるのよね……」
「はい、おそらく明日の正午のすぎくらいに戻られると思われます。その際に婚約破棄ができたかどうかも聞けるでしょう」
「ええ、それも大事だけどお父様が無事で、その後から義母様と義妹の子と会えるかどうかとかも……!」
見るからに落ち着かなくなったミロアをエイルは微笑ましく見守る。心の中では不安を抱えていてもだ。
(お嬢様がこんなに家族のことで心を取り乱されるなんて……本当にあの王子への恋心が無くなってよかった。まあ、婚約破棄になっているのは間違いないだろうけど、義母様親子との関係がどうなるかはまだわからないのよね。それに、ガンマ殿下のこの後の動向も……明日の夕方に私がいち早く分かるけどね)
エイルの脳裏には元『陰』のゴウルの顔が浮かんでいた。今頃はどんな結果になっているのかエイルは気になって仕方がない。そのゴウルは今、学園の詳しい状況を知るために、スマートブレイブ学園の学園長の屋敷に潜入しようとしていた。
◇
スマートブレイブ学園の設立者とされるヤミズーク・マスカレード。表向きは伯爵位の貴族ということになっているため、上級貴族の端くれということになっている。そのうえスマートブレイブ学園の学園長という重い肩書を持ち、更に結構な堅物と言われているらしい。
しかし、裏の顔は王家の元『陰』の一人であり、時として王家や上級貴族と情報交換をしているという。そもそも、スマートブレイブ学園の設立に関わったのは、『陰』のような裏の専門からの見方から建設に関する助言をもらうことで侵入者を受け入れないような学園を築くのが目的だった。その立役者でもあるのだ。
「……そのような大先輩の屋敷に忍び込み、本人と直接交渉……随分と試されたことですな」
ゴウルは今、ヤミズーク・マスカレード伯爵の屋敷の前にいる。屋敷は上級貴族にしては少し小さいくらいで、門番や衛兵が見当たらない。それでいて、とても不気味だった。
「エイル殿はすでに手紙と交渉材料を送っているという。後は小生が屋敷に入り込み、本人に会うだけ……嫌でも落ち着かない気分にさせられますな」
おそらく、屋敷の中は外部からの侵入者に対する罠が張り巡らされているか『陰』のような番人などが待ち構えていることだろう。下手をすればヤミズーク・マスカレード本人とも戦うことも想定しなければならない。そんなことを想像しただけでゴウルは武者震いしてしまう。
「……ふっ、流石にそうとも限らないかもしれませぬが……背後や上下からの奇襲には気をつけましょうか」
ゴウルは意を決して屋敷への潜入を開始する。
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