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第48話 公爵と国王
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ミロアとオルフェが屋敷で会話している一方で、王宮では公爵と国王が話し合っていた。話の内容は互いの子供達の婚約についてだ。
「――ということで、ガンマ殿下の度重なる暴挙は目に余ります。王家の有責で婚約破棄を受け入れてくださりますな、国王陛下?」
橙色に近い薄い赤髪をオールバックにし、切れ長の黒眼と貫禄のある顔立ちの大男はバーグ・レトスノム公爵。娘ミロアのために婚約破棄を申し出るべく王宮に参上したのだ。
「……ああ、分かっておるとも。受け入れようとも、レトスノム公爵」
そんな公爵を玉座に座って眺めるのは、青い瞳と白髪混じりの黒髪に長い髭を靡かせた中肉中背の男。この男こそドープアント王国の国王ファンタム・ドープアントなのだ。それと同時にミロアの婚約者ガンマの父親だ。
公爵と国王。二人して貴族として大きな権力者であり、逞しい体つきをしているのだが、今だけは互いの子供のことを考える父親であった。婚約破棄を申し出る方は笑みを浮かべながらも心の中では怒りを抱き、婚約破棄を受け入れる方は顔も心の中も落ち込んでいる。立場など関係なく。
「我が娘ミロアは今までガンマ殿下に蔑ろにされ続けました。これにはミロアの過剰な愛情表現にも問題があったでしょう。しかし、ガンマ殿下が婚約者として向き合ってくださっていれば解決したことであることは王家もすでに存じていると思います。ましてや、他の女性にうつつを抜かすなど王族にあるまじき行為。もはや王太子でいられませぬはずでは?」
「……無論だ。我が息子ガンマにも非があり、同時に我ら王家の教育も甘かったことは否定できぬ。ガンマは政略結婚に反発して遊び呆けるばかり、ミロア嬢をないがしろにすることも目に余るものがあった。挙げ句には王宮でも学園でも他の女性を……これ以上は口にすることもあるまい。ガンマとミロア嬢の婚約は我が王家の有責で破棄とする。それと同時にガンマを王太子から外し、第二王子アナーザを新たな王太子とする。ガンマはただの王子として学園を卒業後は伯爵位でも与えよう」
ミロアとガンマの婚約破棄、そしてガンマの廃嫡まで決まった。それを国王の口から聞いたバーグは心の中でほくそ笑む。娘の望んだことが叶ったのだ。後は自身が望んだことだけ。
(やっとあの馬鹿王子との婚約が破棄できた。だが、まだ油断できん。それに私はこれだけで話を終わりにするわけにはいかない。ガンマ殿下が伯爵位を賜るのも気に入らんしな)
バーグはミロアの望みと今後の将来のために王宮に来た。それが意味することは婚約破棄だけが目的ではないことを意味しているということだ。
「――ということで、ガンマ殿下の度重なる暴挙は目に余ります。王家の有責で婚約破棄を受け入れてくださりますな、国王陛下?」
橙色に近い薄い赤髪をオールバックにし、切れ長の黒眼と貫禄のある顔立ちの大男はバーグ・レトスノム公爵。娘ミロアのために婚約破棄を申し出るべく王宮に参上したのだ。
「……ああ、分かっておるとも。受け入れようとも、レトスノム公爵」
そんな公爵を玉座に座って眺めるのは、青い瞳と白髪混じりの黒髪に長い髭を靡かせた中肉中背の男。この男こそドープアント王国の国王ファンタム・ドープアントなのだ。それと同時にミロアの婚約者ガンマの父親だ。
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「……無論だ。我が息子ガンマにも非があり、同時に我ら王家の教育も甘かったことは否定できぬ。ガンマは政略結婚に反発して遊び呆けるばかり、ミロア嬢をないがしろにすることも目に余るものがあった。挙げ句には王宮でも学園でも他の女性を……これ以上は口にすることもあるまい。ガンマとミロア嬢の婚約は我が王家の有責で破棄とする。それと同時にガンマを王太子から外し、第二王子アナーザを新たな王太子とする。ガンマはただの王子として学園を卒業後は伯爵位でも与えよう」
ミロアとガンマの婚約破棄、そしてガンマの廃嫡まで決まった。それを国王の口から聞いたバーグは心の中でほくそ笑む。娘の望んだことが叶ったのだ。後は自身が望んだことだけ。
(やっとあの馬鹿王子との婚約が破棄できた。だが、まだ油断できん。それに私はこれだけで話を終わりにするわけにはいかない。ガンマ殿下が伯爵位を賜るのも気に入らんしな)
バーグはミロアの望みと今後の将来のために王宮に来た。それが意味することは婚約破棄だけが目的ではないことを意味しているということだ。
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