39 / 248
第30.2話 親を巻き込む
しおりを挟む
(王太子視点)
僕は大急ぎで王宮に戻った。ミロアのことを何とかしようと思ったのに状況が悪くなってしまった。だからこそ、すぐに王宮に戻って側近たちを呼んで対策を考えようとしたのに……
「ガンマ殿下、国王陛下がお呼びです。至急参上してください」
王宮に戻った直後、すぐに父上に呼び出されることになった。くそ、こっちはそれどころじゃないのに。無視することもできないから仕方なく急いで参上してやった。
「ガンマよ。よくもやってくれたな……」
「ち、父上?」
底冷えるような声で国王である父が声を出す。こういう時は相当怒っている証拠だ。メイドの件の時から嫌でも分かってしまうのだが、このタイミングで何を怒っているんだろう?
「ぼ、僕が何をしたのでしょうか?」
「とぼけるな! 今さっき、レトスノム公爵から苦情の知らせが入ったのだぞ! 貴様が勝手にレトスノム家の屋敷に約束もなく訪問した挙げ句、ミロア嬢に婚約解消を撤回させようとしたことをな!」
「な、なっ、え!?」
「しかも、その際にミロア嬢に殴りかかろうとしたともあったぞ! 一体どういうことなんだ!」
な、なんてことだ! ミロアの奴め、本当に父上に報告しやがった!
「ち、父上、落ち着いてください!」
「これが落ち着いてられるか! 我が王家に泥を塗るようなことをするとは何事だ!」
「も、申し訳ありません……」
怒りの形相で僕を叱りつける父……っていうか何で父上が知っているんだ! いくらなんでも伝わるのが早すぎるだろう! 本当にミロアからの報告なのか!?
「ち、父上、それはミロアからの報告なのですか?」
「ミロア嬢の話を聞いたレトスノム公爵からのものだ! 最初は目を丸くしたものだが、今のお前の反応で事実であると確信した。まさか、屋敷に行くとは思ってもいなかった……お前がこんな馬鹿だったとは本当に予想外だった!」
……な、何だよそれ。ミロアはまたしても父親である公爵の力を借りて、父上に告げ口しやがったのか。そして、僕の父上に伝えて僕の立場を悪くしたということか。親を巻き込むなんてなんて卑怯な女なんだ!
「お前の行動力を甘く見ていた私の落ち度だ。これでもう婚約解消とお前の廃嫡は決定したようなもの。王太子もアナーザに変えることとしよう」
「そんな! 待ってください! これはその、ミロアの方に問題があったんです! 殴りかかろうというのも、ミロアの勘違いか何かで――」
「逆上して暴力的になっただけだろう。報告書にはお前達の口にした言葉まで細かく記録されていたぞ。お前の口にしそうなこともな」
「…………」
は? なんだよそれ? そんなのまでいつの間に記録していたんだよ!?
僕は大急ぎで王宮に戻った。ミロアのことを何とかしようと思ったのに状況が悪くなってしまった。だからこそ、すぐに王宮に戻って側近たちを呼んで対策を考えようとしたのに……
「ガンマ殿下、国王陛下がお呼びです。至急参上してください」
王宮に戻った直後、すぐに父上に呼び出されることになった。くそ、こっちはそれどころじゃないのに。無視することもできないから仕方なく急いで参上してやった。
「ガンマよ。よくもやってくれたな……」
「ち、父上?」
底冷えるような声で国王である父が声を出す。こういう時は相当怒っている証拠だ。メイドの件の時から嫌でも分かってしまうのだが、このタイミングで何を怒っているんだろう?
「ぼ、僕が何をしたのでしょうか?」
「とぼけるな! 今さっき、レトスノム公爵から苦情の知らせが入ったのだぞ! 貴様が勝手にレトスノム家の屋敷に約束もなく訪問した挙げ句、ミロア嬢に婚約解消を撤回させようとしたことをな!」
「な、なっ、え!?」
「しかも、その際にミロア嬢に殴りかかろうとしたともあったぞ! 一体どういうことなんだ!」
な、なんてことだ! ミロアの奴め、本当に父上に報告しやがった!
「ち、父上、落ち着いてください!」
「これが落ち着いてられるか! 我が王家に泥を塗るようなことをするとは何事だ!」
「も、申し訳ありません……」
怒りの形相で僕を叱りつける父……っていうか何で父上が知っているんだ! いくらなんでも伝わるのが早すぎるだろう! 本当にミロアからの報告なのか!?
「ち、父上、それはミロアからの報告なのですか?」
「ミロア嬢の話を聞いたレトスノム公爵からのものだ! 最初は目を丸くしたものだが、今のお前の反応で事実であると確信した。まさか、屋敷に行くとは思ってもいなかった……お前がこんな馬鹿だったとは本当に予想外だった!」
……な、何だよそれ。ミロアはまたしても父親である公爵の力を借りて、父上に告げ口しやがったのか。そして、僕の父上に伝えて僕の立場を悪くしたということか。親を巻き込むなんてなんて卑怯な女なんだ!
「お前の行動力を甘く見ていた私の落ち度だ。これでもう婚約解消とお前の廃嫡は決定したようなもの。王太子もアナーザに変えることとしよう」
「そんな! 待ってください! これはその、ミロアの方に問題があったんです! 殴りかかろうというのも、ミロアの勘違いか何かで――」
「逆上して暴力的になっただけだろう。報告書にはお前達の口にした言葉まで細かく記録されていたぞ。お前の口にしそうなこともな」
「…………」
は? なんだよそれ? そんなのまでいつの間に記録していたんだよ!?
86
お気に入りに追加
5,465
あなたにおすすめの小説
記憶を失くした彼女の手紙 消えてしまった完璧な令嬢と、王子の遅すぎた後悔の話
甘糖むい
恋愛
婚約者であるシェルニア公爵令嬢が記憶喪失となった。
王子はひっそりと喜んだ。これで愛するクロエ男爵令嬢と堂々と結婚できると。
その時、王子の元に一通の手紙が届いた。
そこに書かれていたのは3つの願いと1つの真実。
王子は絶望感に苛まれ後悔をする。
完結 「愛が重い」と言われたので尽くすのを全部止めたところ
音爽(ネソウ)
恋愛
アルミロ・ルファーノ伯爵令息は身体が弱くいつも臥せっていた。財があっても自由がないと嘆く。
だが、そんな彼を幼少期から知る婚約者ニーナ・ガーナインは献身的につくした。
相思相愛で結ばれたはずが健気に尽くす彼女を疎ましく感じる相手。
どんな無茶な要望にも応えていたはずが裏切られることになる。
【完結】気付けばいつも傍に貴方がいる
kana
恋愛
ベルティアーナ・ウォール公爵令嬢はレフタルド王国のラシード第一王子の婚約者候補だった。
いつも令嬢を隣に侍らす王子から『声も聞きたくない、顔も見たくない』と拒絶されるが、これ幸いと大喜びで婚約者候補を辞退した。
実はこれは二回目人生だ。
回帰前のベルティアーナは第一王子の婚約者で、大人しく控えめ。常に貼り付けた笑みを浮かべて人の言いなりだった。
彼女は王太子になった第一王子の妃になってからも、弟のウィルダー以外の誰からも気にかけてもらえることなく公務と執務をするだけの都合のいいお飾りの妃だった。
そして白い結婚のまま約一年後に自ら命を絶った。
その理由と原因を知った人物が自分の命と引き換えにやり直しを望んだ結果、ベルティアーナの置かれていた環境が変わりることで彼女の性格までいい意味で変わることに⋯⋯
そんな彼女は家族全員で海を隔てた他国に移住する。
※ 投稿する前に確認していますが誤字脱字の多い作者ですがよろしくお願いいたします。
※ 設定ゆるゆるです。
愛されない皇妃~最強の母になります!~
椿蛍
ファンタジー
愛されない皇妃『ユリアナ』
やがて、皇帝に愛される寵妃『クリスティナ』にすべてを奪われる運命にある。
夫も子どもも――そして、皇妃の地位。
最後は嫉妬に狂いクリスティナを殺そうとした罪によって処刑されてしまう。
けれど、そこからが問題だ。
皇帝一家は人々を虐げ、『悪逆皇帝一家』と呼ばれるようになる。
そして、最後は大魔女に悪い皇帝一家が討伐されて終わるのだけど……
皇帝一家を倒した大魔女。
大魔女の私が、皇妃になるなんて、どういうこと!?
※表紙は作成者様からお借りしてます。
※他サイト様に掲載しております。
お飾り公爵夫人の憂鬱
初瀬 叶
恋愛
空は澄み渡った雲1つない快晴。まるで今の私の心のようだわ。空を見上げた私はそう思った。
私の名前はステラ。ステラ・オーネット。夫の名前はディーン・オーネット……いえ、夫だった?と言った方が良いのかしら?だって、その夫だった人はたった今、私の足元に埋葬されようとしているのだから。
やっと!やっと私は自由よ!叫び出したい気分をグッと堪え、私は沈痛な面持ちで、黒い棺を見つめた。
そう自由……自由になるはずだったのに……
※ 中世ヨーロッパ風ですが、私の頭の中の架空の異世界のお話です
※相変わらずのゆるふわ設定です。細かい事は気にしないよ!という読者の方向けかもしれません
※直接的な描写はありませんが、性的な表現が出てくる可能性があります
【完結】さようなら、婚約者様。私を騙していたあなたの顔など二度と見たくありません
ゆうき@初書籍化作品発売中
恋愛
婚約者とその家族に虐げられる日々を送っていたアイリーンは、赤ん坊の頃に森に捨てられていたところを、貧乏なのに拾って育ててくれた家族のために、つらい毎日を耐える日々を送っていた。
そんなアイリーンには、密かな夢があった。それは、世界的に有名な魔法学園に入学して勉強をし、宮廷魔術師になり、両親を楽させてあげたいというものだった。
婚約を結ぶ際に、両親を支援する約束をしていたアイリーンだったが、夢自体は諦めきれずに過ごしていたある日、別の女性と恋に落ちていた婚約者は、アイリーンなど体のいい使用人程度にしか思っておらず、支援も行っていないことを知る。
どういうことか問い詰めると、お前とは婚約破棄をすると言われてしまったアイリーンは、ついに我慢の限界に達し、婚約者に別れを告げてから婚約者の家を飛び出した。
実家に帰ってきたアイリーンは、唯一の知人で特別な男性であるエルヴィンから、とあることを提案される。
それは、特待生として魔法学園の編入試験を受けてみないかというものだった。
これは一人の少女が、夢を掴むために奮闘し、時には婚約者達の妨害に立ち向かいながら、幸せを手に入れる物語。
☆すでに最終話まで執筆、予約投稿済みの作品となっております☆
兄を溺愛する母に捨てられたので私は家族を捨てる事にします!
ユウ
恋愛
幼い頃から兄を溺愛する母。
自由奔放で独身貴族を貫いていた兄がようやく結婚を決めた。
しかし、兄の結婚で全てが崩壊する事になった。
「今すぐこの邸から出て行ってくれる?遺産相続も放棄して」
「は?」
母の我儘に振り回され同居し世話をして来たのに理不尽な理由で邸から追い出されることになったマリーは自分勝手な母に愛想が尽きた。
「もう縁を切ろう」
「マリー」
家族は夫だけだと思い領地を離れることにしたそんな中。
義母から同居を願い出られることになり、マリー達は義母の元に身を寄せることになった。
対するマリーの母は念願の新生活と思いきや、思ったように進まず新たな嫁はびっくり箱のような人物で生活にも支障が起きた事でマリーを呼び戻そうとするも。
「無理ですわ。王都から領地まで遠すぎます」
都合の良い時だけ利用する母に愛情はない。
「お兄様にお任せします」
実母よりも大事にしてくれる義母と夫を優先しすることにしたのだった。
身代わりの公爵家の花嫁は翌日から溺愛される。~初日を挽回し、溺愛させてくれ!~
湯川仁美
恋愛
姉の身代わりに公爵夫人になった。
「貴様と寝食を共にする気はない!俺に呼ばれるまでは、俺の前に姿を見せるな。声を聞かせるな」
夫と初対面の日、家族から男癖の悪い醜悪女と流され。
公爵である夫とから啖呵を切られたが。
翌日には誤解だと気づいた公爵は花嫁に好意を持ち、挽回活動を開始。
地獄の番人こと閻魔大王(善悪を判断する審判)と異名をもつ公爵は、影でプレゼントを贈り。話しかけるが、謝れない。
「愛しの妻。大切な妻。可愛い妻」とは言えない。
一度、言った言葉を撤回するのは難しい。
そして妻は普通の令嬢とは違い、媚びず、ビクビク怯えもせず普通に接してくれる。
徐々に距離を詰めていきましょう。
全力で真摯に接し、謝罪を行い、ラブラブに到着するコメディ。
第二章から口説きまくり。
第四章で完結です。
第五章に番外編を追加しました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる