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第6話③ 眠り姫のトラジックコメディー
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すったもんだの喧騒から漸く解放されたゴッ太郎は、まっすぐと教室に向かった。緩やかに夜に差し掛かる二年の教室には、もうほとんどの生徒が残っていない。
何室かは自習の為に残っているが、ほとんどの教室の電灯が消えていた。流石に丁子も帰っただろうか――。少々不安になりながら、ゴッ太郎は教室に辿り着くと、教室はまだ明るかった。
「……」
随分待たせただろう――悪いことをしたなあと思いつつ教室のドアに手をかけたところで、ゴッ太郎は止まった。教室の端っこに佇む丁子は椅子に座ったまま、こくりとこくりと長いまつげを揺らして船を漕いでいる。薄い体が小さく揺れ、黒波のような髪がふわりふわりと水に浮かぶ絹のように揺蕩っていた。
ゴッ太郎はドアの凹みにそっと指を掛け直し、静かに教室内に侵入した。別にやましい気持ちはないのだが、こうも足音を殺して侵入すると悪いことをしているような気がする。
近付いていくと、丁子の安らかな寝息が聞こえた。随分よく眠っているせいで、起こすことすら罪悪感に狩られる。そもそも、急に起こしたしたらびっくりしないだろうか――ゴッ太郎は、おそらく同世代の男子に比べれば女慣れしている方だ。
毎日御鈴波や上海と顔を合わせ、時折一緒に風呂に入ったり寝たりもする。しかしながら、同世代の『普通の女の子』となるとこれは未知数だった。ゴッ太郎には普通の女がわからぬ。ゴッ太郎は路地裏の住人であった。しかし『怒られ』に対しては、人一倍敏感であった。
ゴッ太郎は悩んでいる間に、丁子の船漕ぎはもっと大きくなった。どうも今日の海は荒れているらしい。とりあえず額をぶつけるのも可哀想なので、ゴッ太郎は丁子の身体を支えてわざと前かがみにした。
するとメトロノームのように一定の周期で揺れていた丁子の身体は遂に支えを失って、低空飛行するように机に沈み込んでいった。
「……すぴ」
丁子の呼吸は先程よりもゆっくりと、そして大きなものに変わった。安心したのだろう。そして困ったのは、ゴッ太郎であった。しまった。起こすべきだったのに、完全に寝かせてしまった。
「どうするかなあ……」
――ゴッ太郎の経験から言って、『怒られ』が発生する可能性は九割を超えていた。後山田家の女は、みな寝起きが最悪だ。
ゴッ太郎はいつも同じ時間に目覚めるから、もし御鈴波や上海が寝坊すると起こす役に回るのだが、この二人の寝起きの性格は地獄のように悪い。御鈴波は起こすと『わたしが悪いことしたかしら』というような目でゴッ太郎を見つめた後、そのまま不機嫌そうに見つめたままぐずり、ねちねちと言葉責めを繰り出してくる。
酷い時はその辺にあったバットで殴られたことさえある。ゴッ太郎は何度『このバカイヌ』と寝起きの御鈴波に罵られたか数えきれない。
一方上海は眠ったまま起きない、絶対眠り姫である。あまりにひどい時などは、眠ったまま食事を取らせ、着替えさせ、歯を磨いてゴッ太郎が学校まで運搬する時さえある。勿論、途中で目覚めたらものすごく怒るし、怒るとすごい股間を狙って攻撃してくる。
理不尽ながら――女とはそういうものだ。世間の女がどうかは知らぬ。しかしゴッ太郎はそういう常識のもと生きてきた。故にこの眼の前で愛らしく眠る若君も同じで、目覚めたら何をするかわからない。コワイ!
「……ん」
丁子の机の上で、携帯端末のバイブレーションが鳴った。誰かからの連絡が来たらしい。吸い寄せられた視線は、端末を悪気なく覗いていた。その宛先は――『お兄ちゃん』。
ゴッ太郎の背筋が凍る。ゴッ太郎の顔は、ムンクの叫びのように絶望の色を帯びた。殺されるのではないだろうか。こんな化け物の妹を起こしてしまったら。
「……」
ほんの数十秒後、端末は更に二度震えた。
『丁子、帰りが遅いね。大丈夫?』
『兄ちゃんが迎えに行こうか? 家帰ったら駅前に向かうから、もしなにかあったらすぐに言って。七時までは駅で待ってるけど、連絡がなかったら学校へ迎えに行くから、見たら返してほしい』
ゴッ太郎の視線は時計に吸い寄せられる。現在は六時二十分。丁子の最寄りまでは三十分――まずい。額に冷たい汗が滴り落ちて、ゴッ太郎は二重で死を覚悟した。
丁子を起こして死か、丁子を起こさずに学校に来た玄明が丁子に事情を聞いて死――二つに一つ、多分前者の方がマシな気はしないでもないのだが、今までの経験の記憶が鎌首を擡げて、ゴッ太郎は誰も見ていない教室の中で悲痛な面持ちでフリーズした。
丁子の方に視線を戻す。机の上には細くて癖のない、煌めく黒髪がぺたりとお辞儀でもするみたいに張り付いている。寝息の度合いから見るに、しっかり寝ている。気絶といって差し支えないだろう。
「……どうする?」
業腹ながら、ゴッ太郎は前者を選ばるを得なかった。そっと手を伸ばし、丁子の身体を軽く揺する。
「お~い、丁子、起きてくれ~」
「……すぴ~」
更に力を入れて揺するが、身体に反応はない。本当に眠っているだけなのだろうか――そう心配になるほどの爆睡だ。
「おい、おいおいおいおいおい! 起きてくれって、今日で俺何回死にかけるんだよ! せっかく必死に生き残ったって言うのに! 頼むう! 起きてくれえ!」
喚きながら、丁子の上体を持ち上げたり耳元で名前を呼んでみたり歌を歌ってみたりするものの、丁子からはなんの反応もない。取るべき方策を全て取ったものの全て手応えはなく空振り――となると、残念ながら――。
「この場合は、自動的に玄明にぶっ殺される方が死因になるっぽいな」
諦めの境地に達したゴッ太郎は、机の上にあぐらをかいたまま冷静に現状を俯瞰していた。時計は六時半を回る。もう学校を出なければ間に合わない。
いや、流石に納得できなくないか……? ゴッ太郎は頭を抱える。自分が遅れてきたのが悪いと言えばそれまでではあるのだが、それが死因になるのは流石に……流石に――!
「い、嫌だぁ! それは格好悪すぎる! なんとかしなきゃ!」
ゴッ太郎の脳裏には、第三の選択肢が浮かびつつあった。しかしうまくいくだろうか、保証はどこにもない。だが、動かなければ死、あるのみ。戦場では足を止めたものから死ぬのだ。それはどこに行っても変わらない。であれば、足を止めている時間はない。
文面から読み解くに、七時まで玄明は丁子の家の最寄りに待っているらしい。であれば――一か八かだが、この策が通るんじゃないか? ゴッ太郎は震える手で丁子の力の抜けた肢体の間に手を差し入れる。そして身体をおんぶの形に背負いあげると、丁子のカバンと自らのカバンを首輪のように引っ掛けて学校の外へ歩みだした。
既に校舎の中からは人気が消えていて、幸いにも校門を出る際にも誰にも見つからなかった。ゴッ太郎は祈りながら駅前へ歩いていく。途中で起きてくれればそれが一番なのだが、祈っている間に改札に着いてしまった。定期入れの場所がわからないのでチケットをわざわざ買い、定期を通しつつチケットを入れる。
周りの人間の特異の目に耐え忍び、ゴッ太郎はほとんど泣きそうになりながら電車に乗り込んだ。
――笑うなら、笑え。生きるための努力とは、得てしてだっせえものなのだ。
なんとか七時までに間に合う電車に乗り込めたゴッ太郎は、座席に眠ったままの丁子を座らせると、ようやく隣に座った。変な人間卒業、と言いたいところだが、まだまだ変な人間にならないといけないタイミングは控えている。
目的地までの十数分の間、ゴッ太郎は夜闇に包まれたガラスの向こう側を眺めていた。真っ黒い水面に、歪んだ月が浮かんでいる。ここまで来ればこれ以上の波乱はあるまい――もしあったとしても、もう底は見えている。
必要以上に取り乱す必要もない。俺はやりきったのだ。達成感に包まれて、ゴッ太郎は大きな欠伸を一つした。そして、その時は突然来た。
何室かは自習の為に残っているが、ほとんどの教室の電灯が消えていた。流石に丁子も帰っただろうか――。少々不安になりながら、ゴッ太郎は教室に辿り着くと、教室はまだ明るかった。
「……」
随分待たせただろう――悪いことをしたなあと思いつつ教室のドアに手をかけたところで、ゴッ太郎は止まった。教室の端っこに佇む丁子は椅子に座ったまま、こくりとこくりと長いまつげを揺らして船を漕いでいる。薄い体が小さく揺れ、黒波のような髪がふわりふわりと水に浮かぶ絹のように揺蕩っていた。
ゴッ太郎はドアの凹みにそっと指を掛け直し、静かに教室内に侵入した。別にやましい気持ちはないのだが、こうも足音を殺して侵入すると悪いことをしているような気がする。
近付いていくと、丁子の安らかな寝息が聞こえた。随分よく眠っているせいで、起こすことすら罪悪感に狩られる。そもそも、急に起こしたしたらびっくりしないだろうか――ゴッ太郎は、おそらく同世代の男子に比べれば女慣れしている方だ。
毎日御鈴波や上海と顔を合わせ、時折一緒に風呂に入ったり寝たりもする。しかしながら、同世代の『普通の女の子』となるとこれは未知数だった。ゴッ太郎には普通の女がわからぬ。ゴッ太郎は路地裏の住人であった。しかし『怒られ』に対しては、人一倍敏感であった。
ゴッ太郎は悩んでいる間に、丁子の船漕ぎはもっと大きくなった。どうも今日の海は荒れているらしい。とりあえず額をぶつけるのも可哀想なので、ゴッ太郎は丁子の身体を支えてわざと前かがみにした。
するとメトロノームのように一定の周期で揺れていた丁子の身体は遂に支えを失って、低空飛行するように机に沈み込んでいった。
「……すぴ」
丁子の呼吸は先程よりもゆっくりと、そして大きなものに変わった。安心したのだろう。そして困ったのは、ゴッ太郎であった。しまった。起こすべきだったのに、完全に寝かせてしまった。
「どうするかなあ……」
――ゴッ太郎の経験から言って、『怒られ』が発生する可能性は九割を超えていた。後山田家の女は、みな寝起きが最悪だ。
ゴッ太郎はいつも同じ時間に目覚めるから、もし御鈴波や上海が寝坊すると起こす役に回るのだが、この二人の寝起きの性格は地獄のように悪い。御鈴波は起こすと『わたしが悪いことしたかしら』というような目でゴッ太郎を見つめた後、そのまま不機嫌そうに見つめたままぐずり、ねちねちと言葉責めを繰り出してくる。
酷い時はその辺にあったバットで殴られたことさえある。ゴッ太郎は何度『このバカイヌ』と寝起きの御鈴波に罵られたか数えきれない。
一方上海は眠ったまま起きない、絶対眠り姫である。あまりにひどい時などは、眠ったまま食事を取らせ、着替えさせ、歯を磨いてゴッ太郎が学校まで運搬する時さえある。勿論、途中で目覚めたらものすごく怒るし、怒るとすごい股間を狙って攻撃してくる。
理不尽ながら――女とはそういうものだ。世間の女がどうかは知らぬ。しかしゴッ太郎はそういう常識のもと生きてきた。故にこの眼の前で愛らしく眠る若君も同じで、目覚めたら何をするかわからない。コワイ!
「……ん」
丁子の机の上で、携帯端末のバイブレーションが鳴った。誰かからの連絡が来たらしい。吸い寄せられた視線は、端末を悪気なく覗いていた。その宛先は――『お兄ちゃん』。
ゴッ太郎の背筋が凍る。ゴッ太郎の顔は、ムンクの叫びのように絶望の色を帯びた。殺されるのではないだろうか。こんな化け物の妹を起こしてしまったら。
「……」
ほんの数十秒後、端末は更に二度震えた。
『丁子、帰りが遅いね。大丈夫?』
『兄ちゃんが迎えに行こうか? 家帰ったら駅前に向かうから、もしなにかあったらすぐに言って。七時までは駅で待ってるけど、連絡がなかったら学校へ迎えに行くから、見たら返してほしい』
ゴッ太郎の視線は時計に吸い寄せられる。現在は六時二十分。丁子の最寄りまでは三十分――まずい。額に冷たい汗が滴り落ちて、ゴッ太郎は二重で死を覚悟した。
丁子を起こして死か、丁子を起こさずに学校に来た玄明が丁子に事情を聞いて死――二つに一つ、多分前者の方がマシな気はしないでもないのだが、今までの経験の記憶が鎌首を擡げて、ゴッ太郎は誰も見ていない教室の中で悲痛な面持ちでフリーズした。
丁子の方に視線を戻す。机の上には細くて癖のない、煌めく黒髪がぺたりとお辞儀でもするみたいに張り付いている。寝息の度合いから見るに、しっかり寝ている。気絶といって差し支えないだろう。
「……どうする?」
業腹ながら、ゴッ太郎は前者を選ばるを得なかった。そっと手を伸ばし、丁子の身体を軽く揺する。
「お~い、丁子、起きてくれ~」
「……すぴ~」
更に力を入れて揺するが、身体に反応はない。本当に眠っているだけなのだろうか――そう心配になるほどの爆睡だ。
「おい、おいおいおいおいおい! 起きてくれって、今日で俺何回死にかけるんだよ! せっかく必死に生き残ったって言うのに! 頼むう! 起きてくれえ!」
喚きながら、丁子の上体を持ち上げたり耳元で名前を呼んでみたり歌を歌ってみたりするものの、丁子からはなんの反応もない。取るべき方策を全て取ったものの全て手応えはなく空振り――となると、残念ながら――。
「この場合は、自動的に玄明にぶっ殺される方が死因になるっぽいな」
諦めの境地に達したゴッ太郎は、机の上にあぐらをかいたまま冷静に現状を俯瞰していた。時計は六時半を回る。もう学校を出なければ間に合わない。
いや、流石に納得できなくないか……? ゴッ太郎は頭を抱える。自分が遅れてきたのが悪いと言えばそれまでではあるのだが、それが死因になるのは流石に……流石に――!
「い、嫌だぁ! それは格好悪すぎる! なんとかしなきゃ!」
ゴッ太郎の脳裏には、第三の選択肢が浮かびつつあった。しかしうまくいくだろうか、保証はどこにもない。だが、動かなければ死、あるのみ。戦場では足を止めたものから死ぬのだ。それはどこに行っても変わらない。であれば、足を止めている時間はない。
文面から読み解くに、七時まで玄明は丁子の家の最寄りに待っているらしい。であれば――一か八かだが、この策が通るんじゃないか? ゴッ太郎は震える手で丁子の力の抜けた肢体の間に手を差し入れる。そして身体をおんぶの形に背負いあげると、丁子のカバンと自らのカバンを首輪のように引っ掛けて学校の外へ歩みだした。
既に校舎の中からは人気が消えていて、幸いにも校門を出る際にも誰にも見つからなかった。ゴッ太郎は祈りながら駅前へ歩いていく。途中で起きてくれればそれが一番なのだが、祈っている間に改札に着いてしまった。定期入れの場所がわからないのでチケットをわざわざ買い、定期を通しつつチケットを入れる。
周りの人間の特異の目に耐え忍び、ゴッ太郎はほとんど泣きそうになりながら電車に乗り込んだ。
――笑うなら、笑え。生きるための努力とは、得てしてだっせえものなのだ。
なんとか七時までに間に合う電車に乗り込めたゴッ太郎は、座席に眠ったままの丁子を座らせると、ようやく隣に座った。変な人間卒業、と言いたいところだが、まだまだ変な人間にならないといけないタイミングは控えている。
目的地までの十数分の間、ゴッ太郎は夜闇に包まれたガラスの向こう側を眺めていた。真っ黒い水面に、歪んだ月が浮かんでいる。ここまで来ればこれ以上の波乱はあるまい――もしあったとしても、もう底は見えている。
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