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第6話② カーテン越しの羞恥
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「オアーーーッ!!! おい! ぜってえなんか違うことしようとしてる!」
「昨日よりいい身体~……雄の身体だわ~☆ 芸術的……これを触っていいなんて、やっぱり医者になってよかった……」
「後に予定閊えてる! 閊えてるよ!」
「確かに筋肉がデカすぎてストレッチャーに閊えてるわね~」
「そっちじゃねえ~」
濡れたタオルで丹念に身体を拭き上げた洋華は、真新しい傷を消毒しつつ筋肉の塊をほぐすように触診しはじめた。指の腹押したり撫でたり、今度はつねってみたり――何度も何度も触られるうちに、ゴッ太郎の身体は掻痒感を発するようになり、身体は芯から熱くなり始めていた。
「ちょ、くふはっ。おまっ……せんせっやばこれ……めっちゃくすぐったい! びりびりするんだけど!」
腫れ上がった両腕から始まり、胸筋、広背筋、上腕と進んでいく内に、ゴッ太郎は肉体の奥から湧き上がってくる微かな快感が徐々に高まっているのを感じていた。洋華の手技が肉体を癒やしているのはわかるのだが、あまりにもわかりやすい快楽が肉体の奥をプッシュしてくるせいで、気が変になりそうなのだ。
指圧は何度も下腹部に甘い刺激を送り、気が付けばゴッ太郎は声が漏れそうになっていた。
「ふんっ、ふんっ。いい感じにほぐれてきたわね。気持ちいい?」
洋華の顔がゴッ太郎の眼の前に近付いた。派手すぎないながらに整った顔に、女を見せつけるような豊かな胸。触れられるだけで甘い刺激が脳を焼くゴッ太郎にとって、ほんのり香るムスクのオトナのヴェールは、大自然の理をプッシュするのに十分だった。
「先生、正面はいいんで、そろそろ背中やってもらっていいすか――」
ゴッ太郎は身を捩ってうつ伏せになろうとしたところを、洋華はそっと首元を撫でた。瞬間、ゴッ太郎の意識は宇宙まで飛んだ。ゴッ太郎アライブインスペース。
「ひぁっ」
意識を宇宙まで飛ばされた肉体は制御を失って、ゴッ太郎は情けなくストレッチャーに落ちた。
「ん~? どうしたの、オトコノコ☆ もうギブアップ?」
耳元で呟いた洋華は豊満な身体をゴッ太郎に押し付けながら、蠱惑的に耳元で囁いた。
「ギブ! ギブ! あかん! あかん! 年齢制限がかかる!」
「大丈夫、これはマッサージだもん☆」
「おおおおおおおん! おおん! おおおおおおん!」
首、耳、うなじ、既にゴッ太郎の感度はどこまでも上り詰めて、空気の流れでさえ敏感に感じ取っている。何気なく洋華の白衣が擦れただけで、ゴッ太郎は意識を失いそうになった。
「あかん! 快感の三店方式! 怖い! これ俺知らない! 知らんやつ! やばい! 先生! これ以上は死を覚悟する!」
「うふふ……ふふ……」
ゴッ太郎が懇願し続けても、洋華の手は止まらない。意識の点滅が始まったゴッ太郎は、命乞いをするように必死の形相で洋華と視線を合わせようと目を追っていた。洋華の眼球が真っ直ぐとこちらをむいた時、ゴッ太郎は必死に視線で限界を訴えた。
一秒、二秒――目線が合い続ける。しかし手は止まらない。心臓の動悸音はどんどん早くなっていく。
「せん、せんせ……せ……! おおおおおおおん! なんか目ェ座ってんだけど! なんでこんな顔眼の前にあるのに目線合わないんだよ! 何見てんの!?」
洋華の瞳は、もう既に何も映していなかった。美しい筋肉に魅せられて、筋肉との対話だけに意識が割かれたトランス状態に近かった。今彼女に聞こえるのは、筋肉の歓喜の声だけだ。
「……いいわね。最高。若いっていいな……こんな被験体いっぱいほしいな……☆」
「ウワアーッ! 死ぬゥ! マジで死んじゃう! 先生! 気持ち良すぎて死ぬ! これ以上は俺テクノブレイクしちゃう! やめて! あーッ!!! 逝ってまう!!! すんません逝く!!! オアアアアアアアアーーーッ」
ゴッ太郎の意識が徐々に靄がかって消え始める。脳から出力される快楽が肉体の許容量を上回り、脳を焼き尽くして爆発する。既にあちら側はすぐそこに迫っていた。
眼の前には猫の目のように広がる、原初の渦――すなわちブラックホールが見える。徐々に引き寄せられていく。こんな事切れ、誰が想像しただろう。しかし――これもまた一つの芸術なのかもしれない。ありがとう世界、ありがとう……今までの、全て。
ゴッ太郎の冒険は、ここで終わってしま――
「二人共、なにしてんだァーーーーーーッ゙!!!」
隣のベッドのカーテンが勢いよく開く。
「あ?」
「は?」
ゴッ太郎と洋華はその音で急激に熱が下がっていくのを感じて、視線は一箇所に集まった。ベッドの上には、鼻血を垂らしながらこちらを見つめる零春が居た。
「昨日よりいい身体~……雄の身体だわ~☆ 芸術的……これを触っていいなんて、やっぱり医者になってよかった……」
「後に予定閊えてる! 閊えてるよ!」
「確かに筋肉がデカすぎてストレッチャーに閊えてるわね~」
「そっちじゃねえ~」
濡れたタオルで丹念に身体を拭き上げた洋華は、真新しい傷を消毒しつつ筋肉の塊をほぐすように触診しはじめた。指の腹押したり撫でたり、今度はつねってみたり――何度も何度も触られるうちに、ゴッ太郎の身体は掻痒感を発するようになり、身体は芯から熱くなり始めていた。
「ちょ、くふはっ。おまっ……せんせっやばこれ……めっちゃくすぐったい! びりびりするんだけど!」
腫れ上がった両腕から始まり、胸筋、広背筋、上腕と進んでいく内に、ゴッ太郎は肉体の奥から湧き上がってくる微かな快感が徐々に高まっているのを感じていた。洋華の手技が肉体を癒やしているのはわかるのだが、あまりにもわかりやすい快楽が肉体の奥をプッシュしてくるせいで、気が変になりそうなのだ。
指圧は何度も下腹部に甘い刺激を送り、気が付けばゴッ太郎は声が漏れそうになっていた。
「ふんっ、ふんっ。いい感じにほぐれてきたわね。気持ちいい?」
洋華の顔がゴッ太郎の眼の前に近付いた。派手すぎないながらに整った顔に、女を見せつけるような豊かな胸。触れられるだけで甘い刺激が脳を焼くゴッ太郎にとって、ほんのり香るムスクのオトナのヴェールは、大自然の理をプッシュするのに十分だった。
「先生、正面はいいんで、そろそろ背中やってもらっていいすか――」
ゴッ太郎は身を捩ってうつ伏せになろうとしたところを、洋華はそっと首元を撫でた。瞬間、ゴッ太郎の意識は宇宙まで飛んだ。ゴッ太郎アライブインスペース。
「ひぁっ」
意識を宇宙まで飛ばされた肉体は制御を失って、ゴッ太郎は情けなくストレッチャーに落ちた。
「ん~? どうしたの、オトコノコ☆ もうギブアップ?」
耳元で呟いた洋華は豊満な身体をゴッ太郎に押し付けながら、蠱惑的に耳元で囁いた。
「ギブ! ギブ! あかん! あかん! 年齢制限がかかる!」
「大丈夫、これはマッサージだもん☆」
「おおおおおおおん! おおん! おおおおおおん!」
首、耳、うなじ、既にゴッ太郎の感度はどこまでも上り詰めて、空気の流れでさえ敏感に感じ取っている。何気なく洋華の白衣が擦れただけで、ゴッ太郎は意識を失いそうになった。
「あかん! 快感の三店方式! 怖い! これ俺知らない! 知らんやつ! やばい! 先生! これ以上は死を覚悟する!」
「うふふ……ふふ……」
ゴッ太郎が懇願し続けても、洋華の手は止まらない。意識の点滅が始まったゴッ太郎は、命乞いをするように必死の形相で洋華と視線を合わせようと目を追っていた。洋華の眼球が真っ直ぐとこちらをむいた時、ゴッ太郎は必死に視線で限界を訴えた。
一秒、二秒――目線が合い続ける。しかし手は止まらない。心臓の動悸音はどんどん早くなっていく。
「せん、せんせ……せ……! おおおおおおおん! なんか目ェ座ってんだけど! なんでこんな顔眼の前にあるのに目線合わないんだよ! 何見てんの!?」
洋華の瞳は、もう既に何も映していなかった。美しい筋肉に魅せられて、筋肉との対話だけに意識が割かれたトランス状態に近かった。今彼女に聞こえるのは、筋肉の歓喜の声だけだ。
「……いいわね。最高。若いっていいな……こんな被験体いっぱいほしいな……☆」
「ウワアーッ! 死ぬゥ! マジで死んじゃう! 先生! 気持ち良すぎて死ぬ! これ以上は俺テクノブレイクしちゃう! やめて! あーッ!!! 逝ってまう!!! すんません逝く!!! オアアアアアアアアーーーッ」
ゴッ太郎の意識が徐々に靄がかって消え始める。脳から出力される快楽が肉体の許容量を上回り、脳を焼き尽くして爆発する。既にあちら側はすぐそこに迫っていた。
眼の前には猫の目のように広がる、原初の渦――すなわちブラックホールが見える。徐々に引き寄せられていく。こんな事切れ、誰が想像しただろう。しかし――これもまた一つの芸術なのかもしれない。ありがとう世界、ありがとう……今までの、全て。
ゴッ太郎の冒険は、ここで終わってしま――
「二人共、なにしてんだァーーーーーーッ゙!!!」
隣のベッドのカーテンが勢いよく開く。
「あ?」
「は?」
ゴッ太郎と洋華はその音で急激に熱が下がっていくのを感じて、視線は一箇所に集まった。ベッドの上には、鼻血を垂らしながらこちらを見つめる零春が居た。
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