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第3話④ 許嫁と責任と
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眉間を顰めたゴッ太郎は、苦い顔をしながらハムエッグを一息に頬張った。香ばしい胡椒とハムの香りが鼻を抜け、黄身の滑らかさが喉越しに変わる。いつもなら笑顔で御鈴波に美味しいと伝え、それに御鈴波がほんの少し微笑みながら答えるのが通例なのだが、今日は流石に違った。
「まさか、じゃあ、丁子を処理するっていうのは――」
「ええ。そのまさか。技研の技術が勝手に使われて、それが流布する前に決着を付けなければ、この先どうなるか予想もつかないことになる。彼を押さえつけるために、ある意味見せしめの為に、妹を使うのよ」
「……そんな」
ゴッ太郎の手からはフォークが音を立てて落ち、皿とぶつかって高い音を鳴らした。俯いたゴッ太郎は、自ら聞いたその背景を忘れたいとさえ思っていた。これでは丁子が救われなさすぎる――ふと、脳裏に名案が浮かぶ。ゴッ太郎は御鈴波の顔を覗いた。
「でも御鈴波、よく考えれば兄の方をなんとか処分しちまえばよお、丁子は関係ないじゃねえか。丁子と家族は可哀想だけどよ、本人さえなんとかできれば丁子は助かる!」
「七兆円」
「は?」
急に聞き慣れない数字が目の前に出され、ゴッ太郎はなんとも言えない顔になってしまった。御鈴波の表情は一切変わらない。そのままこちらを見て、冷たい表情のまま留まっている。
「彼の成功に辿り着くまでにかかった総コスト。処分したら、ゼロから始めることになる。あなたが責任者として、それが選べるかしら」
「――それは……流石に」
「となれば、小狡い方法を取るしかない、というのが現経営者、つまりお父様の考えよ。それに、処分も一度は考えた方法。でも、できなかった」
「……できなかった?」
「ええ。殺せなかったの。彼、天才だから」
「おいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおい」
今まで何人もの人間を葬ってきた御鈴波とその処理班が、ただの子供一人を殺せないなんてことがあるはずがない。自社の技術研究部に出入りさせているなら、当然囲むこともできるし、最悪発砲だって可能だろう。
実際に今までそうやって人を処分してきたのを、ゴッ太郎は目の前で見てきたのだ。それが子供一人にできないなんてありえない。
「そんなバカなことがあるっかっつーの。人間なら飯も食えば風呂も入る、クソもするしセックスもする! ってことは当然寝るし、当然隙も生まれるだろ!? なんで『天才だから』なんて理由でなんとかなるんだよ、おかしいっつの!」
「じゃあ、試してみる? ゴッ太郎。彼の居場所を教えてあげてもいいわ。もっとも、今のあなたが行っても無駄死にするだけだろうけど」
「……?」
「彼はね、ゴッ太郎や上海と一緒なの。わかるかしら」
「まさか、いや、まさかな――」
ゴッ太郎の脳裏には、もう一つの可能性が浮かんだ。技研が生んだ天才――それがもし、丁子のようなゴッ太郎よりも強い存在を生み出しているとするならば。
「丁子の兄も、能力持ちってわけか」
「ええ。それも、とびっきりのインチキパワー持ち。わたしの持つ処理班の力を結集すればゴッ太郎くらいはワケなく殺せるでしょうが、彼は無理。弾丸が通らないわ」
「……スーパーマンかよ」
「ええ、うちの技研が産んだスーパーマンよ」
どこか誇らしげな御鈴波は、瞼を閉じて背筋を伸ばした。
「でも、もう制御不能のスーパーマンなんだろ」
「いえ、そうでもないわ。ちゃんと技研に貢献してくれるし、データも収集させてくれる。でも、それを一番活かしてるのは、彼自身。半ば自分のアップグレードの為にうちの技研は使われているようなものよ」
「……そういうの、なんか言葉あったよな。ロマンシング・サーガみたいなやつ」
「全然違うわ。シンギュラリティね」
「つまり俺の仕事っていうのは」
「そのスーパーマンの妹を殺して、スーパーマンを脅す役目。そして、怒ったスーパーマンがわたしを報復に殺しに来たら、守る盾になる役目」
けっ、とゴッ太郎は首を振りつつ滴る冷や汗を拭った。今までの話を聞いて、全然守れる気がしない。
「サイコーだぜ。お嬢様」
「わかるかしら。だから、『スーパーマンの妹程度』に負けるあなたじゃ駄目なのよ。もっと強くなって。その為に人も呼んであるから。とびっきりの先生を」
「最終着地点は?」
「スーパーマンに匹敵するくらい強くなってもらうわ。できれば殺せるくらい。わたしの夫になるなら当然よね」
高い壁だらけで、ゴッ太郎はどこかげんなりする気持ちを抑え込むために、天井を見上げて一気に珈琲を煽った。苦味と香ばしさと熱が喉を焼く。けれどそんな痛みさえ気にならないほど、ゴッ太郎の意識は丁子の兄に向いていた。
「ゴッ太郎」
御鈴波の声が頭越しに聞こえる。目線を下げると、御鈴波は目の前に立っていた。ブラウスのボタンに手をかけると、一つずつボタンを外していく。ブラウスの間からは陶磁のようなきめ細かい肌と、柔らかな膨らみが覗いていた。
昨日見たそれよりも大きく熟れて、しっとりとした質感がある。纏う下着は口紅のような紅色で、ゴッ太郎の中の本能のスイッチはばちりと音を立てて切り替わった。
「あ――」
そのまままっすぐと手を伸ばした御鈴波は、ゴッ太郎の頭を掴み、胸の間に挟んでいく。視線に近寄ってくる深い谷間に、ゴッ太郎はどこまでも自由落下していく。幸福、というには単純過ぎるその肉体的な刺激に、ゴッ太郎思わず飛び込んでいた。
腕を回して抱きしめ返すと、御鈴波の体にいっぱい体を押し付けて、犬のように擦り寄った。御鈴波はその体をひしと支えて自由にさせてやっていた。胸の中で赤ん坊のように暴れる大きな子供に、慈愛の微笑みを以てあやしていた。
――甘い香りがする。御鈴波の匂いだ。御鈴波の匂いは落ち着く。好きだ。御鈴波が、好きだ。
本能から聞こえる声に、ゴッ太郎は反抗の意志を失っていた。
「守ってね。この体は、あなたの妻になる女なのよ」
耳元で囁かれたその一言に、ゴッ太郎の脳には甘い刺激が何度も電撃を伴って走った。誰にもこれを渡さない、誰にもこれを壊させはしない――簡単な人間だとわかりつつも、その本能に逆らうことができない。そしてそれが、ゴッ太郎は幸せだと感じていた。
「御鈴波は、大丈夫。俺が守るよ」
胸の中で呟いた言葉を聞いて、御鈴波はくすりと笑んだ。
「そうして。はい。じゃあ今日はもうおしまい。そろそろお迎えが来るから」
離れていく胸を名残惜しそうに見つめるゴッ太郎に対して、御鈴波は手早く服装を直して玄関に向かった。その辺りで丁度インターフォンが鳴った。
「来たみたい。じゃあ、また学校か、夕方にね。許嫁くん」
玄関が開いて、朝の日差しの中に消えていく御鈴波を眺めながら、ゴッ太郎は鼻に熱いものが滴るのを感じていた。拳の裏でこすると、赤い染みができていた。
知ってしまったら、逃れられない。戦いは始まっている。強くならねば。でなければ、守れない。何も。
「まさか、じゃあ、丁子を処理するっていうのは――」
「ええ。そのまさか。技研の技術が勝手に使われて、それが流布する前に決着を付けなければ、この先どうなるか予想もつかないことになる。彼を押さえつけるために、ある意味見せしめの為に、妹を使うのよ」
「……そんな」
ゴッ太郎の手からはフォークが音を立てて落ち、皿とぶつかって高い音を鳴らした。俯いたゴッ太郎は、自ら聞いたその背景を忘れたいとさえ思っていた。これでは丁子が救われなさすぎる――ふと、脳裏に名案が浮かぶ。ゴッ太郎は御鈴波の顔を覗いた。
「でも御鈴波、よく考えれば兄の方をなんとか処分しちまえばよお、丁子は関係ないじゃねえか。丁子と家族は可哀想だけどよ、本人さえなんとかできれば丁子は助かる!」
「七兆円」
「は?」
急に聞き慣れない数字が目の前に出され、ゴッ太郎はなんとも言えない顔になってしまった。御鈴波の表情は一切変わらない。そのままこちらを見て、冷たい表情のまま留まっている。
「彼の成功に辿り着くまでにかかった総コスト。処分したら、ゼロから始めることになる。あなたが責任者として、それが選べるかしら」
「――それは……流石に」
「となれば、小狡い方法を取るしかない、というのが現経営者、つまりお父様の考えよ。それに、処分も一度は考えた方法。でも、できなかった」
「……できなかった?」
「ええ。殺せなかったの。彼、天才だから」
「おいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおい」
今まで何人もの人間を葬ってきた御鈴波とその処理班が、ただの子供一人を殺せないなんてことがあるはずがない。自社の技術研究部に出入りさせているなら、当然囲むこともできるし、最悪発砲だって可能だろう。
実際に今までそうやって人を処分してきたのを、ゴッ太郎は目の前で見てきたのだ。それが子供一人にできないなんてありえない。
「そんなバカなことがあるっかっつーの。人間なら飯も食えば風呂も入る、クソもするしセックスもする! ってことは当然寝るし、当然隙も生まれるだろ!? なんで『天才だから』なんて理由でなんとかなるんだよ、おかしいっつの!」
「じゃあ、試してみる? ゴッ太郎。彼の居場所を教えてあげてもいいわ。もっとも、今のあなたが行っても無駄死にするだけだろうけど」
「……?」
「彼はね、ゴッ太郎や上海と一緒なの。わかるかしら」
「まさか、いや、まさかな――」
ゴッ太郎の脳裏には、もう一つの可能性が浮かんだ。技研が生んだ天才――それがもし、丁子のようなゴッ太郎よりも強い存在を生み出しているとするならば。
「丁子の兄も、能力持ちってわけか」
「ええ。それも、とびっきりのインチキパワー持ち。わたしの持つ処理班の力を結集すればゴッ太郎くらいはワケなく殺せるでしょうが、彼は無理。弾丸が通らないわ」
「……スーパーマンかよ」
「ええ、うちの技研が産んだスーパーマンよ」
どこか誇らしげな御鈴波は、瞼を閉じて背筋を伸ばした。
「でも、もう制御不能のスーパーマンなんだろ」
「いえ、そうでもないわ。ちゃんと技研に貢献してくれるし、データも収集させてくれる。でも、それを一番活かしてるのは、彼自身。半ば自分のアップグレードの為にうちの技研は使われているようなものよ」
「……そういうの、なんか言葉あったよな。ロマンシング・サーガみたいなやつ」
「全然違うわ。シンギュラリティね」
「つまり俺の仕事っていうのは」
「そのスーパーマンの妹を殺して、スーパーマンを脅す役目。そして、怒ったスーパーマンがわたしを報復に殺しに来たら、守る盾になる役目」
けっ、とゴッ太郎は首を振りつつ滴る冷や汗を拭った。今までの話を聞いて、全然守れる気がしない。
「サイコーだぜ。お嬢様」
「わかるかしら。だから、『スーパーマンの妹程度』に負けるあなたじゃ駄目なのよ。もっと強くなって。その為に人も呼んであるから。とびっきりの先生を」
「最終着地点は?」
「スーパーマンに匹敵するくらい強くなってもらうわ。できれば殺せるくらい。わたしの夫になるなら当然よね」
高い壁だらけで、ゴッ太郎はどこかげんなりする気持ちを抑え込むために、天井を見上げて一気に珈琲を煽った。苦味と香ばしさと熱が喉を焼く。けれどそんな痛みさえ気にならないほど、ゴッ太郎の意識は丁子の兄に向いていた。
「ゴッ太郎」
御鈴波の声が頭越しに聞こえる。目線を下げると、御鈴波は目の前に立っていた。ブラウスのボタンに手をかけると、一つずつボタンを外していく。ブラウスの間からは陶磁のようなきめ細かい肌と、柔らかな膨らみが覗いていた。
昨日見たそれよりも大きく熟れて、しっとりとした質感がある。纏う下着は口紅のような紅色で、ゴッ太郎の中の本能のスイッチはばちりと音を立てて切り替わった。
「あ――」
そのまままっすぐと手を伸ばした御鈴波は、ゴッ太郎の頭を掴み、胸の間に挟んでいく。視線に近寄ってくる深い谷間に、ゴッ太郎はどこまでも自由落下していく。幸福、というには単純過ぎるその肉体的な刺激に、ゴッ太郎思わず飛び込んでいた。
腕を回して抱きしめ返すと、御鈴波の体にいっぱい体を押し付けて、犬のように擦り寄った。御鈴波はその体をひしと支えて自由にさせてやっていた。胸の中で赤ん坊のように暴れる大きな子供に、慈愛の微笑みを以てあやしていた。
――甘い香りがする。御鈴波の匂いだ。御鈴波の匂いは落ち着く。好きだ。御鈴波が、好きだ。
本能から聞こえる声に、ゴッ太郎は反抗の意志を失っていた。
「守ってね。この体は、あなたの妻になる女なのよ」
耳元で囁かれたその一言に、ゴッ太郎の脳には甘い刺激が何度も電撃を伴って走った。誰にもこれを渡さない、誰にもこれを壊させはしない――簡単な人間だとわかりつつも、その本能に逆らうことができない。そしてそれが、ゴッ太郎は幸せだと感じていた。
「御鈴波は、大丈夫。俺が守るよ」
胸の中で呟いた言葉を聞いて、御鈴波はくすりと笑んだ。
「そうして。はい。じゃあ今日はもうおしまい。そろそろお迎えが来るから」
離れていく胸を名残惜しそうに見つめるゴッ太郎に対して、御鈴波は手早く服装を直して玄関に向かった。その辺りで丁度インターフォンが鳴った。
「来たみたい。じゃあ、また学校か、夕方にね。許嫁くん」
玄関が開いて、朝の日差しの中に消えていく御鈴波を眺めながら、ゴッ太郎は鼻に熱いものが滴るのを感じていた。拳の裏でこすると、赤い染みができていた。
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