58 / 84
第58話 翠黛
しおりを挟む
廃教会の丘。
この場所は特殊な力場が存在している。かつての文明の遺産が、このお椀をひっくり返したような土塊の下に眠り続けている。
車を降りると、星屑を両手いっぱいに集めてばらまいたような空が拡がっていた。今度こそ眠りこけた姪を背負って、舗装されていない砂利と土くれの道を踏みしめていく。
足下には既に三つの足跡があった。向かう方向は同じだった。
「……断頭台への道、か。こう見れば錆び付いた暗いだけの道だ。ぼくは、ずっとこんなものを怖がっていたのか」
左右に覆い被しリースのような木々の間を抜けて、拓けた平地に出る。
そこには新しくやってきた一木以外の影が既に二つあった。
「おじさん……! 悠里も」
「――篠沢、さん」
礼香は相変わらず一木を訝るようにオーバーサイズの端を指先でも握り込んで睨み付けていた。
一木は一つため息をつき二人に近付くと、ポケットに入れてきた飴を差し出した。
「緊張してるね、レモンキャンディはどうだい。甘い味覚と爽やかな香りは人間をリラックスさせてくれる」
「いい。もうちょっとピリピリしてたい」
「……要りません」
「つれないな」
一木はわざとらしく首を振ると、促すように口を開いた。
「では移動しようか、タイムマシンのある場所に」
「待ってください」
幼い体躯が一木の前を遮った。
その瞳は何かを訴えるように赤く煌めいて峻厳な趣を放っていた。
「お父さんは、本当に悪人だったのでしょうか」
「……君はこの世界が今どうなってるか、しづるくんに聞かなかったわけじゃないだろう。それを聞いてもそう思うのかい」
「思います」
礼香は断言し、舌鋒鋭く言葉を続けた。
「お父さんは、そんな人じゃなかったから――! あなたたちは知らないでしょうけど、お父さんは――」
礼香は言葉にする度錆び付いた錠前で閉じられた記憶の扉に罅が入り、懐かしい触覚と目の当たりにした光景が閉じられたアルバムを開くように湧き戻ってくるのを感じていた。
毎日手を繋いで湖畔を散歩したこと、一緒に魚釣りをして糸を絡ませたこと、夜中に空を見上げてお祈りをしたこと――そのどの光景も、カリナは静かに微笑んでいた。幼い礼レイカの手を引いて、抱きしめて愛と祈りの言葉を囁きながら、決して豊かではなかったなりに必死で愛してくれていた。そしてその父のことを最も愛していたのは礼香だった。
「家族を愛した人だったんです、物静かだったですけど、私もお母さんも――誰よりも大事にしてくれてた。村に置いてきてしまった友人のことをずっと心配してた! そんな人が、そんな人が世界を滅ぼすなんて、できるわけがない、ないじゃないですか……!」
嗚咽混じりに言葉を繋いで、その瞳は敵意で一木を睨み付けていた。一木は礼香を睥睨し、その表情から何かが揺れた痕跡は読み取れなかった。
「おじさん、一つ、策があるんだ。聞いてくれないか」
「……なんだい、しづるくん」
「タイムマシンの先で、カリナと話をしてみようと思ってる」
「しづるくん、抗うための力を持っていない君では真正面からいくのは余りにも危険すぎる。容認できない」
「違うんだ。逆なんだ」
しづるには職業的直感があった。
状況は煩雑だ。とても片面的な対処は求めるべくもない。しかし聞くに、そのカリナという人はそも適切な社会性を獲得しているのだろうか――?
まずしづるが立ち戻ったのが、そこであった。彼は少年時代を孤児院で暮らし、そして託される形で森に隠れ、礼香の母親と結婚し礼香を成した。そして運悪く戦いが起こり、その関係性も無に帰した――。
……その後、彼は憎しみから世界を滅ぼそうと画策する。自分の娘は殺されたと思い込んでいるのだろう――。
彼に会わずに彼を観察することはできないが、経歴からどのようなものが欠乏していたかを推測することは難しくない。
「例えば――『力を持っていないこと』の方が重要だと思うんだ。その頃の彼は、湖と住処を焼かれて、礼香と妻を失った頃なんだろ? じゃあむしろ、力のあるものが近付けば攻撃してしまう可能性が高い。穏便に話し合いができるとすれば――」
「力がなく、ヤツのやろうとしている計画も既に知っている――君たちのような存在が適格だと言いたいのだね」
「……ああ、わからないわけじゃないだろ? それにさ、多分。これは俺の予想だけど、カリナは恐らく何かしらの社会的関係性を求めてる。ターニングポイントは、推測するにここまで三つ。何かがカリナを変えたんだ」
「……続けたまえ」
堂に入った語りはじめに、一木はしづるに大きな気付きが現れていることを悟った。それは“変化”を予期させるものであることは間違いなく、それも今まではなかった可能性に言及するものであるに違いない。出尽くしたはずの可能性に対する考察である。耳を傾けるに値するだろう。
「これはまず一つ目、カリナの親が居なかったということ。これがなければまず孤児院に入っていなかったから未来は違ってた。同時に大人――抑圧する者――に対しての不信感の根底になる出来事である可能性が極めて高い」
「ふむ」
「そして二つ目は、友人達を犠牲に村から逃げ延びたこと。これは庇護してくれていた大人に対しての決定的な不信を確固たるものにしたはずだ。ただ幸運なことに、さっきの礼香の言葉を聞くに、カリナは最後まで友人達がどうされたかを知ることはなかったということだ――」
「最後は?」
「ああ、三つ目は言うまでもなくおじさんの率いる部隊に襲撃され、娘と妻を失ったこと。間違いなく組織の人間は彼の目に外部の人間の指標として映ったはずだ。じゃあ、彼の目に世界はどう見えているだろうか……と俺は考えるわけだ」
「……なるほど、彼は今も外の世界の人間全てが自分を攻撃するものだと思っており、娘も妻も失った自分には誰も味方がいない、と」
「そういうこと。なら、味方――操れる他人と同じ意味になっている可能性も大きいが――を作るにはどうすればいい?」
「世界をまるごと操ることができれば、か。確かに筋としては通っているね」
「ああ、だからこそ俺はカリナと話がしたい。もし彼の痛みを癒やしてやることができるなら、それは礼香だけだ。俺達の中で彼の世界を傷付けなかった属性を持っているのは子供で、更に実の娘である礼香だけなんだ。だから俺はカリナと話がしたいし、できると思っている」
しづるの右手は、礼香の左手を掴んだ。
驚いて視線を向けた礼香にしづるはこくりと頷いた。
「それにおじさん。俺は礼香も幸せにしてやりたい。寂しかったって思うんだ。だから勝てる確率が1%もない賭けに出て、最後は礼香が悲しまなきゃいけない未来より、俺は――誰も悲しまずに済む未来に賭けてみたい」
「誰も悲しまずに済む、未来か」
「ああ、未知数の未来。誰も予測できなかった、遠くて近い未来を」
逡巡するように空を見上げ、これまでの長い道のりを想う。
全てはカリナに奪われたものを取り戻すため、この子達の未来を繋ぐため。
そう思い続けていたはずだった。誰もが助けられる未来を、僕だって望み続けていたはずだった。
その為の道だったはずだった。
だから、疑うこともなかった。ただ進むことが出来た。
カリナを殺す。完膚なきまでに上回り、今度こそカリナの息の根を止める。連鎖する禍根の輪は僕が断つ――。
それでしか雪げない。
カリナは僕の映し身だ。両親を失い、世界との繋がりを失い、異端に身を擁されて立ち、大切なものを失った。
きっとどちらも鳥の目から見れば蠱毒の瓶をのたうち回る毛虫に過ぎないのだろう。蝶にも蛹にもなれず、地を這い回り太り続けるだけの。
蠱毒の中で引き合えば食らい合い、またどこかから生まれ食らい合う。どこまでも無間地獄だと解りながら、それでも、それしか知らなかったから。ただ、殺し合った。
「僕の負けだ、しづるくん」
――ああ、そうか。
ぼくは可能性を収斂させ続けて結果を求め続けたけれど。
――これが、僕の求めていた可能性というものか。
違ったのかもしれない。無限に拡がるものにこそ、求めていた答えはあったのかもしれない。
「ありがとう。きっとおじさんなら解ってくれるって思ってたんだ」
この場所は特殊な力場が存在している。かつての文明の遺産が、このお椀をひっくり返したような土塊の下に眠り続けている。
車を降りると、星屑を両手いっぱいに集めてばらまいたような空が拡がっていた。今度こそ眠りこけた姪を背負って、舗装されていない砂利と土くれの道を踏みしめていく。
足下には既に三つの足跡があった。向かう方向は同じだった。
「……断頭台への道、か。こう見れば錆び付いた暗いだけの道だ。ぼくは、ずっとこんなものを怖がっていたのか」
左右に覆い被しリースのような木々の間を抜けて、拓けた平地に出る。
そこには新しくやってきた一木以外の影が既に二つあった。
「おじさん……! 悠里も」
「――篠沢、さん」
礼香は相変わらず一木を訝るようにオーバーサイズの端を指先でも握り込んで睨み付けていた。
一木は一つため息をつき二人に近付くと、ポケットに入れてきた飴を差し出した。
「緊張してるね、レモンキャンディはどうだい。甘い味覚と爽やかな香りは人間をリラックスさせてくれる」
「いい。もうちょっとピリピリしてたい」
「……要りません」
「つれないな」
一木はわざとらしく首を振ると、促すように口を開いた。
「では移動しようか、タイムマシンのある場所に」
「待ってください」
幼い体躯が一木の前を遮った。
その瞳は何かを訴えるように赤く煌めいて峻厳な趣を放っていた。
「お父さんは、本当に悪人だったのでしょうか」
「……君はこの世界が今どうなってるか、しづるくんに聞かなかったわけじゃないだろう。それを聞いてもそう思うのかい」
「思います」
礼香は断言し、舌鋒鋭く言葉を続けた。
「お父さんは、そんな人じゃなかったから――! あなたたちは知らないでしょうけど、お父さんは――」
礼香は言葉にする度錆び付いた錠前で閉じられた記憶の扉に罅が入り、懐かしい触覚と目の当たりにした光景が閉じられたアルバムを開くように湧き戻ってくるのを感じていた。
毎日手を繋いで湖畔を散歩したこと、一緒に魚釣りをして糸を絡ませたこと、夜中に空を見上げてお祈りをしたこと――そのどの光景も、カリナは静かに微笑んでいた。幼い礼レイカの手を引いて、抱きしめて愛と祈りの言葉を囁きながら、決して豊かではなかったなりに必死で愛してくれていた。そしてその父のことを最も愛していたのは礼香だった。
「家族を愛した人だったんです、物静かだったですけど、私もお母さんも――誰よりも大事にしてくれてた。村に置いてきてしまった友人のことをずっと心配してた! そんな人が、そんな人が世界を滅ぼすなんて、できるわけがない、ないじゃないですか……!」
嗚咽混じりに言葉を繋いで、その瞳は敵意で一木を睨み付けていた。一木は礼香を睥睨し、その表情から何かが揺れた痕跡は読み取れなかった。
「おじさん、一つ、策があるんだ。聞いてくれないか」
「……なんだい、しづるくん」
「タイムマシンの先で、カリナと話をしてみようと思ってる」
「しづるくん、抗うための力を持っていない君では真正面からいくのは余りにも危険すぎる。容認できない」
「違うんだ。逆なんだ」
しづるには職業的直感があった。
状況は煩雑だ。とても片面的な対処は求めるべくもない。しかし聞くに、そのカリナという人はそも適切な社会性を獲得しているのだろうか――?
まずしづるが立ち戻ったのが、そこであった。彼は少年時代を孤児院で暮らし、そして託される形で森に隠れ、礼香の母親と結婚し礼香を成した。そして運悪く戦いが起こり、その関係性も無に帰した――。
……その後、彼は憎しみから世界を滅ぼそうと画策する。自分の娘は殺されたと思い込んでいるのだろう――。
彼に会わずに彼を観察することはできないが、経歴からどのようなものが欠乏していたかを推測することは難しくない。
「例えば――『力を持っていないこと』の方が重要だと思うんだ。その頃の彼は、湖と住処を焼かれて、礼香と妻を失った頃なんだろ? じゃあむしろ、力のあるものが近付けば攻撃してしまう可能性が高い。穏便に話し合いができるとすれば――」
「力がなく、ヤツのやろうとしている計画も既に知っている――君たちのような存在が適格だと言いたいのだね」
「……ああ、わからないわけじゃないだろ? それにさ、多分。これは俺の予想だけど、カリナは恐らく何かしらの社会的関係性を求めてる。ターニングポイントは、推測するにここまで三つ。何かがカリナを変えたんだ」
「……続けたまえ」
堂に入った語りはじめに、一木はしづるに大きな気付きが現れていることを悟った。それは“変化”を予期させるものであることは間違いなく、それも今まではなかった可能性に言及するものであるに違いない。出尽くしたはずの可能性に対する考察である。耳を傾けるに値するだろう。
「これはまず一つ目、カリナの親が居なかったということ。これがなければまず孤児院に入っていなかったから未来は違ってた。同時に大人――抑圧する者――に対しての不信感の根底になる出来事である可能性が極めて高い」
「ふむ」
「そして二つ目は、友人達を犠牲に村から逃げ延びたこと。これは庇護してくれていた大人に対しての決定的な不信を確固たるものにしたはずだ。ただ幸運なことに、さっきの礼香の言葉を聞くに、カリナは最後まで友人達がどうされたかを知ることはなかったということだ――」
「最後は?」
「ああ、三つ目は言うまでもなくおじさんの率いる部隊に襲撃され、娘と妻を失ったこと。間違いなく組織の人間は彼の目に外部の人間の指標として映ったはずだ。じゃあ、彼の目に世界はどう見えているだろうか……と俺は考えるわけだ」
「……なるほど、彼は今も外の世界の人間全てが自分を攻撃するものだと思っており、娘も妻も失った自分には誰も味方がいない、と」
「そういうこと。なら、味方――操れる他人と同じ意味になっている可能性も大きいが――を作るにはどうすればいい?」
「世界をまるごと操ることができれば、か。確かに筋としては通っているね」
「ああ、だからこそ俺はカリナと話がしたい。もし彼の痛みを癒やしてやることができるなら、それは礼香だけだ。俺達の中で彼の世界を傷付けなかった属性を持っているのは子供で、更に実の娘である礼香だけなんだ。だから俺はカリナと話がしたいし、できると思っている」
しづるの右手は、礼香の左手を掴んだ。
驚いて視線を向けた礼香にしづるはこくりと頷いた。
「それにおじさん。俺は礼香も幸せにしてやりたい。寂しかったって思うんだ。だから勝てる確率が1%もない賭けに出て、最後は礼香が悲しまなきゃいけない未来より、俺は――誰も悲しまずに済む未来に賭けてみたい」
「誰も悲しまずに済む、未来か」
「ああ、未知数の未来。誰も予測できなかった、遠くて近い未来を」
逡巡するように空を見上げ、これまでの長い道のりを想う。
全てはカリナに奪われたものを取り戻すため、この子達の未来を繋ぐため。
そう思い続けていたはずだった。誰もが助けられる未来を、僕だって望み続けていたはずだった。
その為の道だったはずだった。
だから、疑うこともなかった。ただ進むことが出来た。
カリナを殺す。完膚なきまでに上回り、今度こそカリナの息の根を止める。連鎖する禍根の輪は僕が断つ――。
それでしか雪げない。
カリナは僕の映し身だ。両親を失い、世界との繋がりを失い、異端に身を擁されて立ち、大切なものを失った。
きっとどちらも鳥の目から見れば蠱毒の瓶をのたうち回る毛虫に過ぎないのだろう。蝶にも蛹にもなれず、地を這い回り太り続けるだけの。
蠱毒の中で引き合えば食らい合い、またどこかから生まれ食らい合う。どこまでも無間地獄だと解りながら、それでも、それしか知らなかったから。ただ、殺し合った。
「僕の負けだ、しづるくん」
――ああ、そうか。
ぼくは可能性を収斂させ続けて結果を求め続けたけれど。
――これが、僕の求めていた可能性というものか。
違ったのかもしれない。無限に拡がるものにこそ、求めていた答えはあったのかもしれない。
「ありがとう。きっとおじさんなら解ってくれるって思ってたんだ」
0
お気に入りに追加
4
あなたにおすすめの小説
四次元残響の檻(おり)
葉羽
ミステリー
音響学の権威である変わり者の学者、阿座河燐太郎(あざかわ りんたろう)博士が、古びた洋館を改装した音響研究所の地下実験室で謎の死を遂げた。密室状態の実験室から博士の身体は消失し、物証は一切残されていない。警察は超常現象として捜査を打ち切ろうとするが、事件の報を聞きつけた神藤葉羽は、そこに論理的なトリックが隠されていると確信する。葉羽は、幼馴染の望月彩由美と共に、奇妙な音響装置が残された地下実験室を訪れる。そこで葉羽は、博士が四次元空間と共鳴現象を利用した前代未聞の殺人トリックを仕掛けた可能性に気づく。しかし、謎を解き明かそうとする葉羽と彩由美の周囲で、不可解な現象が次々と発生し、二人は見えない恐怖に追い詰められていく。四次元残響が引き起こす恐怖と、天才高校生・葉羽の推理が交錯する中、事件は想像を絶する結末へと向かっていく。
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子
ちひろ
恋愛
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子の話。
Fantiaでは他にもえっちなお話を書いてます。よかったら遊びに来てね。
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
この欠け落ちた匣庭の中で 終章―Dream of miniature garden―
至堂文斗
ミステリー
ーーこれが、匣の中だったんだ。
二〇一八年の夏。廃墟となった満生台を訪れたのは二人の若者。
彼らもまた、かつてGHOSTの研究によって運命を弄ばれた者たちだった。
信号領域の研究が展開され、そして壊れたニュータウン。終焉を迎えた現実と、終焉を拒絶する仮想。
歪なる領域に足を踏み入れる二人は、果たして何か一つでも、その世界に救いを与えることが出来るだろうか。
幻想、幻影、エンケージ。
魂魄、領域、人類の進化。
802部隊、九命会、レッドアイ・オペレーション……。
さあ、あの光の先へと進んでいこう。たとえもう二度と時計の針が巻き戻らないとしても。
私たちの駆け抜けたあの日々は確かに満ち足りていたと、懐かしめるようになるはずだから。
【毎日20時更新】アンメリー・オデッセイ
ユーレカ書房
ミステリー
からくり職人のドルトン氏が、何者かに殺害された。ドルトン氏の弟子のエドワードは、親方が生前大切にしていた本棚からとある本を見つける。表紙を宝石で飾り立てて中は手書きという、なにやらいわくありげなその本には、著名な作家アンソニー・ティリパットがドルトン氏とエドワードの父に宛てた中書きが記されていた。
【時と歯車の誠実な友、ウィリアム・ドルトンとアルフレッド・コーディに。 A・T】
なぜこんな本が店に置いてあったのか? 不思議に思うエドワードだったが、彼はすでにおかしな本とふたつの時計台を巡る危険な陰謀と冒険に巻き込まれていた……。
【登場人物】
エドワード・コーディ・・・・からくり職人見習い。十五歳。両親はすでに亡く、親方のドルトン氏とともに暮らしていた。ドルトン氏の死と不思議な本との関わりを探るうちに、とある陰謀の渦中に巻き込まれて町を出ることに。
ドルトン氏・・・・・・・・・エドワードの親方。優れた職人だったが、職人組合の会合に出かけた帰りに何者かによって射殺されてしまう。
マードック船長・・・・・・・商船〈アンメリー号〉の船長。町から逃げ出したエドワードを船にかくまい、船員として雇う。
アーシア・リンドローブ・・・マードック船長の親戚の少女。古書店を開くという夢を持っており、謎の本を持て余していたエドワードを助ける。
アンソニー・ティリパット・・著名な作家。エドワードが見つけた『セオとブラン・ダムのおはなし』の作者。実は、地方領主を務めてきたレイクフィールド家の元当主。故人。
クレイハー氏・・・・・・・・ティリパット氏の甥。とある目的のため、『セオとブラン・ダムのおはなし』を探している。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる