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第53話 往訪
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『司祭も憲兵も善良だ。私が娘を連れ去ってほしいと言った時、彼らは涙を一滴流したと思う。
これですんだ。これからは毅然としなければならない。
死刑執行人、荷馬車、憲兵、橋や河岸や建物の窓辺で待ち構えている群衆、切り落とされた首が敷き詰められているようなあの不吉なグレーヴ広場で、私のためにわざわざ準備されているものについて、私はしっかり考えなければならない。
そうしたことへの覚悟を決めるため、私にはまだ一時間残されていると思う』――ヴィクトル・ユゴー『死刑囚最後の日』
しづるがいなくなった理科室の中、一木は悠里のベッドの際まで寄ってやるとその吸い付くような雪の肌に手を触れた。
近い未来、この肉体はいずれであろうと目覚めるだろう。
計画が成功すれば、この呆けた寝顔のまま瞳を潤ませて寝覚めにわがままの一つや二つ言い放ってくれる――しかし失敗すれば全ての意志を奪われ、カリナの作る運命の傀儡として永遠を彷徨い続けることになる。それは彼女だけではない。それはしづるも、もどるも、みながみなそうであった。自分だけを除いて。
一木の身体は震慴《しんしょう》していた。それだけは避けなければならない、愛する者たちをそんな死すら生温い拷問にかけさせるわけにはいかない。無限の時間を自覚無く、ただ今までの軌跡をなぞり続ける慰み者にしてはならない。
全てを賭しても、死を、死の先にある安寧さえを賭けても。我が誇りを賭けても、我が存在をすべて投げうってでも必ずややり遂げねばならない。
薄明かりに頬を照らす冷暗色の月は既に窓の外が星の海になっていることを告げていた。
予定した時刻までもう少しだけ時間があったが、一木は先ほどからドアの隙間からこちらを伺っている視線がなくなっていることに気が付いていた。
「……すまないね」
君の明日の為に必要なことだ、とは口が裂けても言えなかっただろう。
幼い頃に愛着を持つ人を失う喪失の深さは、あらゆる痛みを黙らせてしまうほどの渇望を遺し留まり続けることを理解していた。
時が来れば痛みも癒える、誰かが言っていた言葉は嘘だった。時が流れども痛みは消えない。消えていくのは指先に残った血の暖かさと冷たくなっていく肉体を抱く重みだけだ。
あらゆる場所に痛みは偏在している、けれどそれは決して一様でない。レイカは自ら記憶を封じることを選んだ。けれどもう一度思い出すなら、その罪悪感に彼女は耐えられるだろうか。
わかっている。その責任は自分にある。いいや、あの日たった一人で少女を抱え下山した自分にしかないのだ。
激しい音を立ててドアが開いた。
「おじさん! 礼香がどこかに行ったみたいだ、さっきの話を聞かれてたみたいで……」
肩から息をするしづるは相当焦っているのだろう、動揺しきって狼狽えていた。
けれど一木はむしろ落ち着き払ってしづるに緩やかな言葉を返した。
「しづるくん、彼女は恐らく廃教会に向かっているのだと思う。先に向かってくれ。ぼくは悠里を連れて向かうよ」
「俺は……どう伝えればいい」
「……しづるくん。ぼくは彼女も救いたい。けれど、ぼくじゃ彼女を匡翼することはできないだろう。……まだ彼女になんと言ってやればいいか、わからないんだ。ずっとね。間違いなくぼくのことを恨んでいるだろう、烈しく、何よりもきっと憎んでいる。だから……お願いがある。救ってやってくれないか。彼女のことも」
一木の言葉を受け取り切る前に、しづるの踵を返す音が聞こえた。
理由を聞く必要はない、背中で語るのは悲しい承認だった。
「おじさん、最後に少しだけ、いいかな」
「なんだい」
礼香の件について、しづるは一木に不信感があった。理由は聞いた、事情も了解した。
けれどそれでも、どうしても二人がなんの懐疑も煩悶もなく笑う未来があったような気がしてならなかった。
「最初からさ、礼香は俺に任せるつもりだったのかだけ、聞かせてくれ」
「ああ……そうだ。君なら、ぼくよりも正しく優れた答えが出せる、そう信じていた。ぼくには出来なかったことを」
一木はとみに思う。
ぼくと彼女は近すぎた。彼女の父母を間接的に死に追いやったぼくがそう思うのは傲慢だろうか。
レイカはぼくにとって大きすぎる軛だった。彼女の生い立ちはぼくと同じだ。異端を両親に持ち、失い、異端狩りに命を救われてようやく日常に生きる道を与えられた。
彼女は水に映った映し身だった。だからこそ、同じになってほしくなかった。一緒にいれば、いつかは必ず異端狩りになってしまう。そんな予感があった。
それを彼女が生きる道として受け入れられるならいい。でもそんな確証はどこにもなく、もし彼女がその先でもし絶望してしまったら? ぼくと同じようになってしまったら?
そうはさせたくなかった。幸か不幸か、彼女は極度のストレスで多くの記憶を失っていた。それがぼくを決断させるに僥倖だと思わせる材料だったのは間違いない。
朝になる度に父の名を呼びながら水を汲みにどこかへ駆けていこうとするレイカを見る度に、一人で部屋に籠もっていた頃の自分を追想した。
――そして、それがぼくの心をいつも締め付けて憎らしかった。カリナという悪鬼から産まれた彼女は生きていてはならなかったのかもしれない、そんな傲慢に異常な熱を帯びた悪寒が腹の底にあった。
しかしそれは、『わかっている』。
この驕ったような見透かしたような思考は、あの日何度も堂々巡りに通過した自分に向けた言葉に他ならないのだから。
ぼくは自分が産まれるべきではなかった後悔を彼女に投影している――それだけのことだ。理解していた。底の浅い正義感が自分を燃やし尽くしているだけだ。妻を殺した男の娘、それもまたただぼくが彼女を恨みたいだけのレッテルだった。だというのに、ぼくにはそれを振り払うだけの心の強さはなかった。それが、ただ彼女に向かって他害の感情になっているだけのこと――それだけのことだった。
だから、彼女のことを後回しにし続けた。そうして、今もまたこうして逃げている。向かい合えないまま、全てが終わろうとしている。
「ごめんね、しづるくん……ぼくは本当に、頼りにならない人間だ」
うなだれて頭を垂れたその姿に、しづるの影は止まった。
「いいんだ。もう安心したから」
背中でそう言うと、踵を響かせ歩み始めた。
「おじさん……俺が持っていくよ。辛かったんだろ、その……腹の中にある気持ち。だから、今から俺が代わりに背負うよ。いいんだ。おじさん、人間は――別に全部できなくてもいいんだ。それでもいい」
「できなくてもいい――」
しづるの足音が遠く響いていく、その背中は小さく遠くなっていくのに、一木には強大な逞しい背中に見えた。
一木はその言葉に殴られたような衝撃を受けて、釘付けになっていた。
『できなくても、いい』――?
「できなくても、いいのかい。例えそれで大切な誰かを救いきれなかったとしても、それで一生悔いても足りない咎を背負い続けることになっても。……例えば、悠里を失うことになっても」
「良くない。全然良くない。当たり前だろ」
「なら、どうして――」
「一人なら、ずっと戦わなきゃいけない。けど、今目の前には、俺がいるだろ」
暗く長い坂道に、隣で歩く子供がいた。
手に収まるほど小さな手が、いつの間にかぼくの手を握ってくれていた。
光はあそこだ、指を差し空を見上げている。
初めて見た坂道の向こう側は、暗い崖がある。方々に吹く風に乗って空には鳥達が空を泳ぐ。
光なんて無い暗闇の彼岸、それでもこの子は指を差し光をそこに光がある、と告げる。
そこでぼくは、初めて気が付いた。
「できなくってもいい。
俺が礼香を救う。おじさんができないなら、俺がやる。大丈夫。俺が守る。
みんなは無理でも、俺が出来ること――悠里も、礼香も、俺が救うよ。
俺に時計の針は戻せない。けど、俺でしか世界は救えない。
だからいいんだ、できない者同士が協力すればさ。きっと、そしたら明日を迎えられる――」
ぼくには見えない光でも、この子は光を教えてくれる。
そこにない光でも、幽かに漏れ出た燐光でも、それでも。
「ぼくは信じている、しづるくん。君のことを。本当に、君たちに会えてよかった」
しづるの足音はすぐに聞こえなくなった。エンジン音がして、彼が去ったことを一木は理解すると、背後で衣擦れの気配があった。
「ふふん、おじさん――あたしたちも行こっか」
昏く闇に沈み込んだ部屋に、三日月を喰み、雲に微笑む声が響いた。
これですんだ。これからは毅然としなければならない。
死刑執行人、荷馬車、憲兵、橋や河岸や建物の窓辺で待ち構えている群衆、切り落とされた首が敷き詰められているようなあの不吉なグレーヴ広場で、私のためにわざわざ準備されているものについて、私はしっかり考えなければならない。
そうしたことへの覚悟を決めるため、私にはまだ一時間残されていると思う』――ヴィクトル・ユゴー『死刑囚最後の日』
しづるがいなくなった理科室の中、一木は悠里のベッドの際まで寄ってやるとその吸い付くような雪の肌に手を触れた。
近い未来、この肉体はいずれであろうと目覚めるだろう。
計画が成功すれば、この呆けた寝顔のまま瞳を潤ませて寝覚めにわがままの一つや二つ言い放ってくれる――しかし失敗すれば全ての意志を奪われ、カリナの作る運命の傀儡として永遠を彷徨い続けることになる。それは彼女だけではない。それはしづるも、もどるも、みながみなそうであった。自分だけを除いて。
一木の身体は震慴《しんしょう》していた。それだけは避けなければならない、愛する者たちをそんな死すら生温い拷問にかけさせるわけにはいかない。無限の時間を自覚無く、ただ今までの軌跡をなぞり続ける慰み者にしてはならない。
全てを賭しても、死を、死の先にある安寧さえを賭けても。我が誇りを賭けても、我が存在をすべて投げうってでも必ずややり遂げねばならない。
薄明かりに頬を照らす冷暗色の月は既に窓の外が星の海になっていることを告げていた。
予定した時刻までもう少しだけ時間があったが、一木は先ほどからドアの隙間からこちらを伺っている視線がなくなっていることに気が付いていた。
「……すまないね」
君の明日の為に必要なことだ、とは口が裂けても言えなかっただろう。
幼い頃に愛着を持つ人を失う喪失の深さは、あらゆる痛みを黙らせてしまうほどの渇望を遺し留まり続けることを理解していた。
時が来れば痛みも癒える、誰かが言っていた言葉は嘘だった。時が流れども痛みは消えない。消えていくのは指先に残った血の暖かさと冷たくなっていく肉体を抱く重みだけだ。
あらゆる場所に痛みは偏在している、けれどそれは決して一様でない。レイカは自ら記憶を封じることを選んだ。けれどもう一度思い出すなら、その罪悪感に彼女は耐えられるだろうか。
わかっている。その責任は自分にある。いいや、あの日たった一人で少女を抱え下山した自分にしかないのだ。
激しい音を立ててドアが開いた。
「おじさん! 礼香がどこかに行ったみたいだ、さっきの話を聞かれてたみたいで……」
肩から息をするしづるは相当焦っているのだろう、動揺しきって狼狽えていた。
けれど一木はむしろ落ち着き払ってしづるに緩やかな言葉を返した。
「しづるくん、彼女は恐らく廃教会に向かっているのだと思う。先に向かってくれ。ぼくは悠里を連れて向かうよ」
「俺は……どう伝えればいい」
「……しづるくん。ぼくは彼女も救いたい。けれど、ぼくじゃ彼女を匡翼することはできないだろう。……まだ彼女になんと言ってやればいいか、わからないんだ。ずっとね。間違いなくぼくのことを恨んでいるだろう、烈しく、何よりもきっと憎んでいる。だから……お願いがある。救ってやってくれないか。彼女のことも」
一木の言葉を受け取り切る前に、しづるの踵を返す音が聞こえた。
理由を聞く必要はない、背中で語るのは悲しい承認だった。
「おじさん、最後に少しだけ、いいかな」
「なんだい」
礼香の件について、しづるは一木に不信感があった。理由は聞いた、事情も了解した。
けれどそれでも、どうしても二人がなんの懐疑も煩悶もなく笑う未来があったような気がしてならなかった。
「最初からさ、礼香は俺に任せるつもりだったのかだけ、聞かせてくれ」
「ああ……そうだ。君なら、ぼくよりも正しく優れた答えが出せる、そう信じていた。ぼくには出来なかったことを」
一木はとみに思う。
ぼくと彼女は近すぎた。彼女の父母を間接的に死に追いやったぼくがそう思うのは傲慢だろうか。
レイカはぼくにとって大きすぎる軛だった。彼女の生い立ちはぼくと同じだ。異端を両親に持ち、失い、異端狩りに命を救われてようやく日常に生きる道を与えられた。
彼女は水に映った映し身だった。だからこそ、同じになってほしくなかった。一緒にいれば、いつかは必ず異端狩りになってしまう。そんな予感があった。
それを彼女が生きる道として受け入れられるならいい。でもそんな確証はどこにもなく、もし彼女がその先でもし絶望してしまったら? ぼくと同じようになってしまったら?
そうはさせたくなかった。幸か不幸か、彼女は極度のストレスで多くの記憶を失っていた。それがぼくを決断させるに僥倖だと思わせる材料だったのは間違いない。
朝になる度に父の名を呼びながら水を汲みにどこかへ駆けていこうとするレイカを見る度に、一人で部屋に籠もっていた頃の自分を追想した。
――そして、それがぼくの心をいつも締め付けて憎らしかった。カリナという悪鬼から産まれた彼女は生きていてはならなかったのかもしれない、そんな傲慢に異常な熱を帯びた悪寒が腹の底にあった。
しかしそれは、『わかっている』。
この驕ったような見透かしたような思考は、あの日何度も堂々巡りに通過した自分に向けた言葉に他ならないのだから。
ぼくは自分が産まれるべきではなかった後悔を彼女に投影している――それだけのことだ。理解していた。底の浅い正義感が自分を燃やし尽くしているだけだ。妻を殺した男の娘、それもまたただぼくが彼女を恨みたいだけのレッテルだった。だというのに、ぼくにはそれを振り払うだけの心の強さはなかった。それが、ただ彼女に向かって他害の感情になっているだけのこと――それだけのことだった。
だから、彼女のことを後回しにし続けた。そうして、今もまたこうして逃げている。向かい合えないまま、全てが終わろうとしている。
「ごめんね、しづるくん……ぼくは本当に、頼りにならない人間だ」
うなだれて頭を垂れたその姿に、しづるの影は止まった。
「いいんだ。もう安心したから」
背中でそう言うと、踵を響かせ歩み始めた。
「おじさん……俺が持っていくよ。辛かったんだろ、その……腹の中にある気持ち。だから、今から俺が代わりに背負うよ。いいんだ。おじさん、人間は――別に全部できなくてもいいんだ。それでもいい」
「できなくてもいい――」
しづるの足音が遠く響いていく、その背中は小さく遠くなっていくのに、一木には強大な逞しい背中に見えた。
一木はその言葉に殴られたような衝撃を受けて、釘付けになっていた。
『できなくても、いい』――?
「できなくても、いいのかい。例えそれで大切な誰かを救いきれなかったとしても、それで一生悔いても足りない咎を背負い続けることになっても。……例えば、悠里を失うことになっても」
「良くない。全然良くない。当たり前だろ」
「なら、どうして――」
「一人なら、ずっと戦わなきゃいけない。けど、今目の前には、俺がいるだろ」
暗く長い坂道に、隣で歩く子供がいた。
手に収まるほど小さな手が、いつの間にかぼくの手を握ってくれていた。
光はあそこだ、指を差し空を見上げている。
初めて見た坂道の向こう側は、暗い崖がある。方々に吹く風に乗って空には鳥達が空を泳ぐ。
光なんて無い暗闇の彼岸、それでもこの子は指を差し光をそこに光がある、と告げる。
そこでぼくは、初めて気が付いた。
「できなくってもいい。
俺が礼香を救う。おじさんができないなら、俺がやる。大丈夫。俺が守る。
みんなは無理でも、俺が出来ること――悠里も、礼香も、俺が救うよ。
俺に時計の針は戻せない。けど、俺でしか世界は救えない。
だからいいんだ、できない者同士が協力すればさ。きっと、そしたら明日を迎えられる――」
ぼくには見えない光でも、この子は光を教えてくれる。
そこにない光でも、幽かに漏れ出た燐光でも、それでも。
「ぼくは信じている、しづるくん。君のことを。本当に、君たちに会えてよかった」
しづるの足音はすぐに聞こえなくなった。エンジン音がして、彼が去ったことを一木は理解すると、背後で衣擦れの気配があった。
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