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第41話 希求
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少年が青い空の下を走っていく。
手がかりのあった場所へ、雲の影を追いかけて向かっていく。
コンクリートの海を抜けて、アスファルトの轍を駆けて、その先へたどり着く。
眼前には、知的な眼鏡の似合う彼岸花の髪色をした女がいた。
脳裏にノイズが走り、目が合った。
その女は同じ場所にいた。
少年は足下の水鏡に映り込んでその女と対面していた。
雨に混じったコンクリートの匂いがした、灰色の斜面に黒い点を敷衍して雨が染めていた。
「初めまして――いえ、お久しぶり。御園蕾くん。昨日もここに居たでしょう。きっと来るって思っていたわ」
「やっぱり、ぼくと会ったことがあるんですね」
短く長い時間が流れた、髪から滴り落ちた雨粒には長すぎたが蕾の感覚にとってはその長さは無限にも思えた。
雨粒の波紋が消えた頃、蕾は口を開いた。
「……」
開かれた口から言葉が上手く出てこなかった。
女はその様を見て、やや納得しながら歩み寄り少年の目線まで膝を落とし屈むと手を取った。
「蕾くん、おなか減ってるでしょ。一緒に行きましょう。その方が落ち着いて話せると思うわ」
「……」
手を取って、二人が歩き始めた。
きっと何も知らない人が見れば親子にさえ見えただろう。
「名前、教えてください」
「……もどる、よ。覚えやすいでしょう」
「……ぼくは」
少年が口を開くと同時に、女はそっと髪に指を沿わせて眉根を蹙めた。
「まだその話はやめておきましょう。……それより、何か食べたいものはある? なんでも言って」
「わからない、です。外食とかあまりしたことがないから」
「そう……じゃあ行きましょうか」
「行くって、どこに」
「お望みの場所に」
女は歩き出して、少年もそれに倣った。
その先に止めてある車に乗って、今まで足で歩いていた街の景色が一瞬で過ぎていくのをただ眺めていた。
「随分疲れてるみたいね。何かここに来るまであったの?」
「……ちょっとだけ。仲間とお別れしてきたんだ」
少年の脳裏にはボスや二人のことが思い浮かんでいた。けれど自分は送り出された、そのことがどういう意味かはわかっている――。
「仲間……そう。悲しいわね」
「うん……」
「礼香ちゃんとは会った?」
「いや、この数日は家の外にいたから」
「――そう」
それきり会話はなくなってしばらくの後、車は駐まった。
小さな民家があり、彼女は扉を開けた。
「少し家の中で待ってて。ちょっと買い物してくるから」
「うん」
蕾は家の中に入り、リビングにあったソファの上へ座り込んだ。
そしてただぼんやりと時間を過ごした。差し込んだ日の光に焼けて萎れた花瓶の花が妙に目に付いた。
家に植えて貰った大きな向日葵はどうなっただろう。まだ、咲いているだろうか。
リビングには洋風のエンボス加工がされた壁紙に机、そしてシースルーのリビングにインターフォン、しかし本棚もスピーカーも、着替えもゴミ袋さえも、生活感のあるものはなかった。
「お待たせ」
女はつっかけを外しつつ玄関を開けた。その手には大きなレジ袋が抱えていた。
「お家のご飯の方がいいのよね、何かメニューに希望は?」
「別に――」
「じゃあカレーにするわね。嫌いかしら」
「好きです」
「それは良かった、やっぱりあの子と一緒ね」
「?」
女はにこ、とめがねの端で笑って台所に素早く移動すると、少年は再び手持ち無沙汰になってぼんやりと向こうを眺めているしかなかった。
そうしている内に少年はテーブルの上にあった紙とペンを取って何かを書き始めた。
「蕾くん」
「……」
「この数日はどんな風だった? 仲間、って言っていたけれどお家には居なかったのね」
「うん」
「何かあったの?」
「ちょっと思うところがあって」
「どう? その思うところは解消できた?」
「……まだわからないですけど、きっとそれも今から分かるんでしょう」
少年は一瞥もくれず、目の前の紙とペンに向き合ったまま答えた。
女は台所で忙しそうにその声を聞いて、その反応に何を思うところがあるのかないのか、嫋やかな笑みだけは崩さずに料理を進めた。
「ええ。そうなるわ。けれど蕾くん。先に言っておくことがある。もし礼香ちゃんに会いたいなら――今からここを抜け出して会いに行ってらっしゃい。私から何も言えないけれど、あなたの求めているものは、あなたの求めているようなものではないかもしれない。もしそうであったら、今行かなかったことが後悔になるわ」
「……いらない」
「そう。なら、私がこれ以上言うことは何もない。随分成長したのね」
「……そうかもしれないですね」
二人の間の奇妙な緊迫はどこまでも解消されることはなかった。お互いがお互いの領域に決して踏み込まなかった。
やがて少年の手は止まり、リビングから玄関に移動した。それと同時に女も炊事に一段落付けたようでテーブルの上には食事が並んだ。
「おまちどうさま」
「ああ、うん」
少年はリビングに戻ると、手を合わせた。
「いただきます」
「ふふ、お行儀良いのね。偉いわ。いただきます」
二人は静かに食事を取り始めた。
「おいしい?」
「うん……」
少年はなぜか泣いていた。少年自身にも理由が分からなかった。けれど食べながら涙を流していた。
病院にいるオオスカや昨晩の不甲斐ない自分のことを思い出したのかと思ったけれど、どこかが違った。
脳裏に何かの感覚が戻り始めていた。どこかでこの味を知っているし、どこかでこの態度も、この経験もしたことのような気がする。
けれどそんな記憶はない。ないというのに泣いていた。ワケが分からなかった。それでも何かが酷く悲しかった。胸の中に、大きな冷たいものがあるみたいだった。
悲しくって、痛かった。
「あらあら、喉に詰めないようにゆっくり食べなさいね。まだいっぱいあるから」
「うん……」
少年が涙を流しながら食べる姿を女はただ黙って、にこやかに微笑んだまま見ていた。そうして、彼の気が済むまで給仕してやった。何度も涙を拭ってやり、頭を撫でてはその顔をのぞき込んでいた。
「満足したかしら」
「うん……」
こくりと頷いた少年を確認し、片付けながら女は言った。
「歯ブラシもあるわ。タオルもそこに。自由に使いなさい」
「ありがとう――どうして、どうしてぼくにここまでしてくれるの?」
「それはね……なんででしょうね。知っても、つまらないことよ」
女は眼鏡をかけ直す仕草をして、そのまま皿や食器を袋にしまった。
少年は歯を磨き顔を洗った。鏡には少年の顔が映っていた。金色の髪をした、御園蕾の顔をした少年が映っていた。
真っ白い陶磁の器に水滴が垂れていた。その中に映る少年もまた、全て同じ表情で全て同じ少年だった。
「おかえり、蕾くん」
「あなたは、誰だ――ぼくのことを知っているのに、ぼくはあなたのことを知らない。どこかで見たことはあるのに――どこにもあなたはいない。あなたは誰だ!」
少年が号、と声を張った。敵対、だった。
表情はどこか焦り、曇ったように眉間に皺を寄せていた。頭に霞がかったような苦しさがあった。霧の中で手を振り回しているようなのに、かならずそこにあると確信している。それが狂気に依るものなのか若しくは真実であるのか、もう既に少年は確かめる術がなかった。
気持ちが悪い。
自分が自分であることを知っている人は誰だ? 自分が自分であることを自分が知らないのにどうして自分以外が知っている? どうしてあるはずのものがないんだ? ぼくにはぼくがない。ぼくはどこにいるんだ? ぼくがどこにいるかを知っている人をぼくはなぜ知らないんだ? ぼくはなぜぼくがどこにいるのかわからないんだ?
「……怖いんでしょう。自分が何者か分からないのが」
「黙れ!!! ぼくのことを見透かしたように語るな! ぼくの聞いていることを……答えろ!」
少年は自ら自覚するほどに狼狽し困惑して前後不覚になっていた。怖い――違う、言葉では表せないのだ。心は言葉では表せない。怒りも悲しみも喜びも憎しみも――全部違う。だから少年は吼えた。女に見えた憐憫めいた視線も自分が何も知らないことも、礼香に否定されたことも、彼らに力不足で逃されたことも、目の前の女が全てを握っていることも、自分がこうして激昂していることを客観視してしまうことさえ――全てに嫌気が差した。少年は世界を憎しんでいた。
「ぼくのことを、返せッッッ!」
「御園蕾くん。――いえ、もういいでしょう。蕾くん」
「ぼくは――おまえは、ぼくは――ぼくの記憶の中にいる誰かは何者だ! 何者だ!!!」
「あなたはね。役目が終わったの。正しくは、もうその役目を遂げることが出来なくなったの。だから私が回収しに来た」
「"役目”? なんだよそれ。またぼくを煙に巻こうっていうのか!? 答えろよ、答えろ――!」
少年は怒りのままに女に近寄り、その身体へ飛び掛かった。
女は体重の制御を失って勢いのまま縺れて仰向けに倒れ込んだ。
「蕾くん、ごめんなさい。あなたには寝て貰わなくてはいけない」
次の瞬間、少年は自らの肉体が強い力で地面を跳ねたことを理解した。
「――ッぁ!」
女はゆるりと服装一つ乱れさせずに立ち上がっており、少年は怒りのままに叩きつけられた背面で飛び上がり四足に構えていた。その様は人よりも動物に近い。
「やっぱりそこそこできるわね。礼香ちゃんのお守りをして貰うためって名目だったけど、それにしてはよく出来すぎね。流石にまだ、やれるんでしょう?」
「ァ――!」
蕾は右足二歩、左足一歩の変速ステップで近づくと、上半身を大きく反らせてローリングソバットの構えを見せた。それを受けてもどるは後ろに下がる姿勢を取る。その瞬間。落ちて行く体をそのままに、蹴りは蕾の背後の地面に向かって放たれていた。上段を意識させてからの超低空からの左足払いである――。
「……」
もどるはそこまで見て、足払いに対して敢えて踏み込んだ――。足払いにはふくらはぎへの確かな直撃を感じ、そこへ少年は待っていたように右上段虎尾脚を放ち、それは確かに体重を全て乗らせて鳩尾へ突き刺さった。はずだ。明らかに、刺さっていた、はずだった。
「……ごめんなさいね」
少年は狼狽した。十分に感触もあった、絶対的に急所になり得る体重の乗った一撃だった。どうしてだ――!? その思考が脳裏に広がる前に顔は地面に叩きつけられていた。
「さて、あっさりだけどもう終わりね。大丈夫、痛みなんて全然ないし、悲しくも苦しくもないわ。少しの間、眠っていなさい」
女は少年の頭を鷲掴みにすると、そのまま頭から地面へ叩きつけた。
ゴン、ゴンと鈍い音がこだまする。少年の身体はその度に揺さぶられて、意識は粉砕されるように徐々に遠くへ流されていっていた。
もう既に意識はないだろう……それでも念入りに女は少年を叩きつけていた。彼女の自負がそうさせていた。
「ふう、一分二十秒四七……時間、押してるわね」
少年の口からは切れた舌が断面を見せて垂れ下がっていた。完全に白目を剥いて気絶している。もどるは彼の顔についた血を手早く拭き取って、頭を再び撫でてごめんなさいね、と彼の頭をそっと抱きしめた。
「さっさと回収して帰りましょう――イチくんがこの子にあげた地図っていうのも礼香ちゃんのお家から回収しないとだし、時間ないわね。アルバム入れにしまってあるって聞いたけど……どれかしらねえ……全く、骨が折れるわ」
女が手首の腕時計に視線を移し少年を解放した二、三秒間。置いた少年を小脇に抱えようとした瞬間のことだった。明らかに、動かれた。
「――!」
視線を戻すが少年はいない。狐にでもつままれたように、辺りのどこにも見当たらない。
「どこっ……」
リビングにはいない、けど玄関もいない――!? どうして? 扉の開いた音はしなかったのだし、それに彼はもう既に動けなかったはず……人間であるなら――!
とにかく外に出られていると一番マズい――それだけは避けないと。
女は玄関へ向かって走った。チェーンロックさえかけておけば音で分かるのだから後はじっくり詰めていけばいい。広い家ではないのだから、それで十分なはずだ。
チェーンを取ろうとしたその時、指先に細いビニールが触れたのが分かった。
「――? これは、何? どういうこと」
ビニールは細長い……糸状で辺りに絡まるように配置されている。
それもそこら中の突起で引っかけられて網目状になっている――。
指先へ赤い滴が垂れた。明らかに血液であることは間違いなかった。
「――そう、そういう、ことね」
もどるは納得したように天井に目線をやった。
「私の負けだわ。そこにいるのね。御薗蕾、あなたの『生存本能』が」
少年には表情がなかった。気絶している、間違いはない。動けるはずはない。けれどそこには壁面に四つ足でしがみつき、器用に糸を巻き取る少年らしきものの姿があった。
「メグセ・ヌェゥト・ゲブラー」
少年の口からその言葉が重々しく吐き出されると同時に金属の弾けるような音が辺りを埋め尽くし、玄関は赤色に染まった。
天井に張り付いていた肢体は気を失うように力を失い、地面に倒れこんだ。
そして亡霊のように立ち上がると、玄関の鍵を開けた。
外には夕暮れの赤い太陽が燃えていた。生温い風に煽られるように少年の足は夜の影に消えていった。
夕暮れの街影に融けるように一つの小さな影が走っていた。
その影は民家の塀、家の屋根を器用に飛び回って一方向に向かっている。闇黒の帳が降りようとしている三咲町に逆らって、その影の伸びる速度より早く影は駆けた。
やがて住み慣れた一軒家に帰ってくると、ポストの奥に仕舞われた鍵を取り出して玄関に入り鍵をかけた。
家の中には誰もいなかった。けれど知っている人間の残り香があった。それは甘くて優しくて、何よりも誰よりも大事な人の記憶を脳裏に思い起こさせた。
今になって思えば、どれほど幸せだったろうか。今までこの家の中でたった二人、その人と暮らしていた時間というのは。
「……」
少年は恐ろしくて泣き出してしまいそうだった。つい先刻のことだろう、目の前で起こったことは確かに自分のやったことだ。
その証拠に少年の服にはべったりと赤く鉄の匂いのする粘液が染みついていたし、記憶は震え上がるほど正確に刻まれていた。
けれど震えている暇などなかった。こんな姿を見たら彼女はきっと怖がってしまうだろう。
少年は目元を拭って廊下に上がり、アルバムのしまってある物置に向かった。
「ぼくは、人殺しだ――」
あんなに血が出てしまっていたのだ、もう既に助からないかもしれない。助からなかったらぼくはもう人殺しだ。二度とこの家には帰ってくることは出来ないだろう――けれど助かったって助からなくたって何が変わる? もどると言ったか――あの女はもう一度ぼくに会いに来るだろうか。またぼくを捕らえに来るだろうか。いや、そんなもの疑問に思う必要もない、その答えは間違いなく来るだろう。そしてぼくがこの家に居たことだって知っていた。であればもうぼくには居場所はなかった。
少年の唇の端は震えていた。
酷く傾いた西日の部屋で、少年は涙の粒を一つ、二つと落としながらアルバムを開いていた。
「……」
もう決して戻ってこない日々の欠片がそこにあった。
二人で並んでいる幸せな笑顔の写真、遡れば遡るほど少年の表情はぎこちない。
けれど徐々に表情は豊かに色付いて、その様は木偶人形が人になっていく過程にも見紛う。そう、それは、自分だ。
「ねぇ、ね」
結んだ口から解けるように言葉が零れると、少年は耐えきれずに蹲って泣いていた。
こんなにも寂しいなんて思わなかった。日常の全てが失われようとしている。ぼくの時計だけが先に早く回ってしまっている。きっとあなたは今もいつも通り、けれど少し違った日常の中でぼくを捜しているのだろう。けれどそれは二度と交わることはない。不幸にしたくない――今更こんなことを言ったっておかしいかもしれない、けれどぼくにはそうすることしかできない。
会いたい、という言葉が、さよならに変わるまでどれくらいの時間を要しただろう。
少年にとっては一瞬であったかもしれない、或いは時計の針が天を差して再び同じ場所まで落ちてきた頃かもしれない。やがて部屋は暗くなり始め、少年は歯を食いしばって最後のページをめくると女の言葉通りに地図があることを認めた。
「ねえね」
自分は今からこの地図に記された場所に行くのだ。
なんの為に行くのだろう。少年は不思議だった。ぼくにはもう何もない。けれど行かないという選択肢もないのだ。
どこまでも、どこまでも、ぼくはぼくでしかなく、ぼくはぼくであることを知らないままには生きてはいけない。
今まで言葉に表せなかった思いがようやく形になって輪郭をまとっていた。
そう――そうだ。
かつてのぼく――御園蕾である御園蕾――は、もう既にどこにも現れることが出来なくなってしまっていたのだ。
ぼくを知っている人の前で、その人の知っているぼくとして振る舞うことができなくなってしまっていたのだ。
自分の過去に疑問を持った日から、ぼくはぼくでいることを受け入れられなくなっていた。
それが気持ち悪くてぼくはきっと、家を飛び出したのだ。そして皮肉にもぼくは今――
その答えがどこにあるかを知ってしまっている。
「今まで……ありがとうございました」
少年は小さなメモに思いの丈を書き綴って、アルバムの地図があったページに挟み込んだ。
『大好きだよ、ねえね。
だから、忘れてください。
御園蕾というぼくは、きっと、あなたが知らない人になってしまうから。
けれどもし――またどこかで、
「蕾……もう一回、お願い。ねえねって、呼んで――」
会えるなら、
「待ってて、待ってて。絶対行くから」
きっとあなただけは、ぼくの知っているねえねでいてほしい』
手がかりのあった場所へ、雲の影を追いかけて向かっていく。
コンクリートの海を抜けて、アスファルトの轍を駆けて、その先へたどり着く。
眼前には、知的な眼鏡の似合う彼岸花の髪色をした女がいた。
脳裏にノイズが走り、目が合った。
その女は同じ場所にいた。
少年は足下の水鏡に映り込んでその女と対面していた。
雨に混じったコンクリートの匂いがした、灰色の斜面に黒い点を敷衍して雨が染めていた。
「初めまして――いえ、お久しぶり。御園蕾くん。昨日もここに居たでしょう。きっと来るって思っていたわ」
「やっぱり、ぼくと会ったことがあるんですね」
短く長い時間が流れた、髪から滴り落ちた雨粒には長すぎたが蕾の感覚にとってはその長さは無限にも思えた。
雨粒の波紋が消えた頃、蕾は口を開いた。
「……」
開かれた口から言葉が上手く出てこなかった。
女はその様を見て、やや納得しながら歩み寄り少年の目線まで膝を落とし屈むと手を取った。
「蕾くん、おなか減ってるでしょ。一緒に行きましょう。その方が落ち着いて話せると思うわ」
「……」
手を取って、二人が歩き始めた。
きっと何も知らない人が見れば親子にさえ見えただろう。
「名前、教えてください」
「……もどる、よ。覚えやすいでしょう」
「……ぼくは」
少年が口を開くと同時に、女はそっと髪に指を沿わせて眉根を蹙めた。
「まだその話はやめておきましょう。……それより、何か食べたいものはある? なんでも言って」
「わからない、です。外食とかあまりしたことがないから」
「そう……じゃあ行きましょうか」
「行くって、どこに」
「お望みの場所に」
女は歩き出して、少年もそれに倣った。
その先に止めてある車に乗って、今まで足で歩いていた街の景色が一瞬で過ぎていくのをただ眺めていた。
「随分疲れてるみたいね。何かここに来るまであったの?」
「……ちょっとだけ。仲間とお別れしてきたんだ」
少年の脳裏にはボスや二人のことが思い浮かんでいた。けれど自分は送り出された、そのことがどういう意味かはわかっている――。
「仲間……そう。悲しいわね」
「うん……」
「礼香ちゃんとは会った?」
「いや、この数日は家の外にいたから」
「――そう」
それきり会話はなくなってしばらくの後、車は駐まった。
小さな民家があり、彼女は扉を開けた。
「少し家の中で待ってて。ちょっと買い物してくるから」
「うん」
蕾は家の中に入り、リビングにあったソファの上へ座り込んだ。
そしてただぼんやりと時間を過ごした。差し込んだ日の光に焼けて萎れた花瓶の花が妙に目に付いた。
家に植えて貰った大きな向日葵はどうなっただろう。まだ、咲いているだろうか。
リビングには洋風のエンボス加工がされた壁紙に机、そしてシースルーのリビングにインターフォン、しかし本棚もスピーカーも、着替えもゴミ袋さえも、生活感のあるものはなかった。
「お待たせ」
女はつっかけを外しつつ玄関を開けた。その手には大きなレジ袋が抱えていた。
「お家のご飯の方がいいのよね、何かメニューに希望は?」
「別に――」
「じゃあカレーにするわね。嫌いかしら」
「好きです」
「それは良かった、やっぱりあの子と一緒ね」
「?」
女はにこ、とめがねの端で笑って台所に素早く移動すると、少年は再び手持ち無沙汰になってぼんやりと向こうを眺めているしかなかった。
そうしている内に少年はテーブルの上にあった紙とペンを取って何かを書き始めた。
「蕾くん」
「……」
「この数日はどんな風だった? 仲間、って言っていたけれどお家には居なかったのね」
「うん」
「何かあったの?」
「ちょっと思うところがあって」
「どう? その思うところは解消できた?」
「……まだわからないですけど、きっとそれも今から分かるんでしょう」
少年は一瞥もくれず、目の前の紙とペンに向き合ったまま答えた。
女は台所で忙しそうにその声を聞いて、その反応に何を思うところがあるのかないのか、嫋やかな笑みだけは崩さずに料理を進めた。
「ええ。そうなるわ。けれど蕾くん。先に言っておくことがある。もし礼香ちゃんに会いたいなら――今からここを抜け出して会いに行ってらっしゃい。私から何も言えないけれど、あなたの求めているものは、あなたの求めているようなものではないかもしれない。もしそうであったら、今行かなかったことが後悔になるわ」
「……いらない」
「そう。なら、私がこれ以上言うことは何もない。随分成長したのね」
「……そうかもしれないですね」
二人の間の奇妙な緊迫はどこまでも解消されることはなかった。お互いがお互いの領域に決して踏み込まなかった。
やがて少年の手は止まり、リビングから玄関に移動した。それと同時に女も炊事に一段落付けたようでテーブルの上には食事が並んだ。
「おまちどうさま」
「ああ、うん」
少年はリビングに戻ると、手を合わせた。
「いただきます」
「ふふ、お行儀良いのね。偉いわ。いただきます」
二人は静かに食事を取り始めた。
「おいしい?」
「うん……」
少年はなぜか泣いていた。少年自身にも理由が分からなかった。けれど食べながら涙を流していた。
病院にいるオオスカや昨晩の不甲斐ない自分のことを思い出したのかと思ったけれど、どこかが違った。
脳裏に何かの感覚が戻り始めていた。どこかでこの味を知っているし、どこかでこの態度も、この経験もしたことのような気がする。
けれどそんな記憶はない。ないというのに泣いていた。ワケが分からなかった。それでも何かが酷く悲しかった。胸の中に、大きな冷たいものがあるみたいだった。
悲しくって、痛かった。
「あらあら、喉に詰めないようにゆっくり食べなさいね。まだいっぱいあるから」
「うん……」
少年が涙を流しながら食べる姿を女はただ黙って、にこやかに微笑んだまま見ていた。そうして、彼の気が済むまで給仕してやった。何度も涙を拭ってやり、頭を撫でてはその顔をのぞき込んでいた。
「満足したかしら」
「うん……」
こくりと頷いた少年を確認し、片付けながら女は言った。
「歯ブラシもあるわ。タオルもそこに。自由に使いなさい」
「ありがとう――どうして、どうしてぼくにここまでしてくれるの?」
「それはね……なんででしょうね。知っても、つまらないことよ」
女は眼鏡をかけ直す仕草をして、そのまま皿や食器を袋にしまった。
少年は歯を磨き顔を洗った。鏡には少年の顔が映っていた。金色の髪をした、御園蕾の顔をした少年が映っていた。
真っ白い陶磁の器に水滴が垂れていた。その中に映る少年もまた、全て同じ表情で全て同じ少年だった。
「おかえり、蕾くん」
「あなたは、誰だ――ぼくのことを知っているのに、ぼくはあなたのことを知らない。どこかで見たことはあるのに――どこにもあなたはいない。あなたは誰だ!」
少年が号、と声を張った。敵対、だった。
表情はどこか焦り、曇ったように眉間に皺を寄せていた。頭に霞がかったような苦しさがあった。霧の中で手を振り回しているようなのに、かならずそこにあると確信している。それが狂気に依るものなのか若しくは真実であるのか、もう既に少年は確かめる術がなかった。
気持ちが悪い。
自分が自分であることを知っている人は誰だ? 自分が自分であることを自分が知らないのにどうして自分以外が知っている? どうしてあるはずのものがないんだ? ぼくにはぼくがない。ぼくはどこにいるんだ? ぼくがどこにいるかを知っている人をぼくはなぜ知らないんだ? ぼくはなぜぼくがどこにいるのかわからないんだ?
「……怖いんでしょう。自分が何者か分からないのが」
「黙れ!!! ぼくのことを見透かしたように語るな! ぼくの聞いていることを……答えろ!」
少年は自ら自覚するほどに狼狽し困惑して前後不覚になっていた。怖い――違う、言葉では表せないのだ。心は言葉では表せない。怒りも悲しみも喜びも憎しみも――全部違う。だから少年は吼えた。女に見えた憐憫めいた視線も自分が何も知らないことも、礼香に否定されたことも、彼らに力不足で逃されたことも、目の前の女が全てを握っていることも、自分がこうして激昂していることを客観視してしまうことさえ――全てに嫌気が差した。少年は世界を憎しんでいた。
「ぼくのことを、返せッッッ!」
「御園蕾くん。――いえ、もういいでしょう。蕾くん」
「ぼくは――おまえは、ぼくは――ぼくの記憶の中にいる誰かは何者だ! 何者だ!!!」
「あなたはね。役目が終わったの。正しくは、もうその役目を遂げることが出来なくなったの。だから私が回収しに来た」
「"役目”? なんだよそれ。またぼくを煙に巻こうっていうのか!? 答えろよ、答えろ――!」
少年は怒りのままに女に近寄り、その身体へ飛び掛かった。
女は体重の制御を失って勢いのまま縺れて仰向けに倒れ込んだ。
「蕾くん、ごめんなさい。あなたには寝て貰わなくてはいけない」
次の瞬間、少年は自らの肉体が強い力で地面を跳ねたことを理解した。
「――ッぁ!」
女はゆるりと服装一つ乱れさせずに立ち上がっており、少年は怒りのままに叩きつけられた背面で飛び上がり四足に構えていた。その様は人よりも動物に近い。
「やっぱりそこそこできるわね。礼香ちゃんのお守りをして貰うためって名目だったけど、それにしてはよく出来すぎね。流石にまだ、やれるんでしょう?」
「ァ――!」
蕾は右足二歩、左足一歩の変速ステップで近づくと、上半身を大きく反らせてローリングソバットの構えを見せた。それを受けてもどるは後ろに下がる姿勢を取る。その瞬間。落ちて行く体をそのままに、蹴りは蕾の背後の地面に向かって放たれていた。上段を意識させてからの超低空からの左足払いである――。
「……」
もどるはそこまで見て、足払いに対して敢えて踏み込んだ――。足払いにはふくらはぎへの確かな直撃を感じ、そこへ少年は待っていたように右上段虎尾脚を放ち、それは確かに体重を全て乗らせて鳩尾へ突き刺さった。はずだ。明らかに、刺さっていた、はずだった。
「……ごめんなさいね」
少年は狼狽した。十分に感触もあった、絶対的に急所になり得る体重の乗った一撃だった。どうしてだ――!? その思考が脳裏に広がる前に顔は地面に叩きつけられていた。
「さて、あっさりだけどもう終わりね。大丈夫、痛みなんて全然ないし、悲しくも苦しくもないわ。少しの間、眠っていなさい」
女は少年の頭を鷲掴みにすると、そのまま頭から地面へ叩きつけた。
ゴン、ゴンと鈍い音がこだまする。少年の身体はその度に揺さぶられて、意識は粉砕されるように徐々に遠くへ流されていっていた。
もう既に意識はないだろう……それでも念入りに女は少年を叩きつけていた。彼女の自負がそうさせていた。
「ふう、一分二十秒四七……時間、押してるわね」
少年の口からは切れた舌が断面を見せて垂れ下がっていた。完全に白目を剥いて気絶している。もどるは彼の顔についた血を手早く拭き取って、頭を再び撫でてごめんなさいね、と彼の頭をそっと抱きしめた。
「さっさと回収して帰りましょう――イチくんがこの子にあげた地図っていうのも礼香ちゃんのお家から回収しないとだし、時間ないわね。アルバム入れにしまってあるって聞いたけど……どれかしらねえ……全く、骨が折れるわ」
女が手首の腕時計に視線を移し少年を解放した二、三秒間。置いた少年を小脇に抱えようとした瞬間のことだった。明らかに、動かれた。
「――!」
視線を戻すが少年はいない。狐にでもつままれたように、辺りのどこにも見当たらない。
「どこっ……」
リビングにはいない、けど玄関もいない――!? どうして? 扉の開いた音はしなかったのだし、それに彼はもう既に動けなかったはず……人間であるなら――!
とにかく外に出られていると一番マズい――それだけは避けないと。
女は玄関へ向かって走った。チェーンロックさえかけておけば音で分かるのだから後はじっくり詰めていけばいい。広い家ではないのだから、それで十分なはずだ。
チェーンを取ろうとしたその時、指先に細いビニールが触れたのが分かった。
「――? これは、何? どういうこと」
ビニールは細長い……糸状で辺りに絡まるように配置されている。
それもそこら中の突起で引っかけられて網目状になっている――。
指先へ赤い滴が垂れた。明らかに血液であることは間違いなかった。
「――そう、そういう、ことね」
もどるは納得したように天井に目線をやった。
「私の負けだわ。そこにいるのね。御薗蕾、あなたの『生存本能』が」
少年には表情がなかった。気絶している、間違いはない。動けるはずはない。けれどそこには壁面に四つ足でしがみつき、器用に糸を巻き取る少年らしきものの姿があった。
「メグセ・ヌェゥト・ゲブラー」
少年の口からその言葉が重々しく吐き出されると同時に金属の弾けるような音が辺りを埋め尽くし、玄関は赤色に染まった。
天井に張り付いていた肢体は気を失うように力を失い、地面に倒れこんだ。
そして亡霊のように立ち上がると、玄関の鍵を開けた。
外には夕暮れの赤い太陽が燃えていた。生温い風に煽られるように少年の足は夜の影に消えていった。
夕暮れの街影に融けるように一つの小さな影が走っていた。
その影は民家の塀、家の屋根を器用に飛び回って一方向に向かっている。闇黒の帳が降りようとしている三咲町に逆らって、その影の伸びる速度より早く影は駆けた。
やがて住み慣れた一軒家に帰ってくると、ポストの奥に仕舞われた鍵を取り出して玄関に入り鍵をかけた。
家の中には誰もいなかった。けれど知っている人間の残り香があった。それは甘くて優しくて、何よりも誰よりも大事な人の記憶を脳裏に思い起こさせた。
今になって思えば、どれほど幸せだったろうか。今までこの家の中でたった二人、その人と暮らしていた時間というのは。
「……」
少年は恐ろしくて泣き出してしまいそうだった。つい先刻のことだろう、目の前で起こったことは確かに自分のやったことだ。
その証拠に少年の服にはべったりと赤く鉄の匂いのする粘液が染みついていたし、記憶は震え上がるほど正確に刻まれていた。
けれど震えている暇などなかった。こんな姿を見たら彼女はきっと怖がってしまうだろう。
少年は目元を拭って廊下に上がり、アルバムのしまってある物置に向かった。
「ぼくは、人殺しだ――」
あんなに血が出てしまっていたのだ、もう既に助からないかもしれない。助からなかったらぼくはもう人殺しだ。二度とこの家には帰ってくることは出来ないだろう――けれど助かったって助からなくたって何が変わる? もどると言ったか――あの女はもう一度ぼくに会いに来るだろうか。またぼくを捕らえに来るだろうか。いや、そんなもの疑問に思う必要もない、その答えは間違いなく来るだろう。そしてぼくがこの家に居たことだって知っていた。であればもうぼくには居場所はなかった。
少年の唇の端は震えていた。
酷く傾いた西日の部屋で、少年は涙の粒を一つ、二つと落としながらアルバムを開いていた。
「……」
もう決して戻ってこない日々の欠片がそこにあった。
二人で並んでいる幸せな笑顔の写真、遡れば遡るほど少年の表情はぎこちない。
けれど徐々に表情は豊かに色付いて、その様は木偶人形が人になっていく過程にも見紛う。そう、それは、自分だ。
「ねぇ、ね」
結んだ口から解けるように言葉が零れると、少年は耐えきれずに蹲って泣いていた。
こんなにも寂しいなんて思わなかった。日常の全てが失われようとしている。ぼくの時計だけが先に早く回ってしまっている。きっとあなたは今もいつも通り、けれど少し違った日常の中でぼくを捜しているのだろう。けれどそれは二度と交わることはない。不幸にしたくない――今更こんなことを言ったっておかしいかもしれない、けれどぼくにはそうすることしかできない。
会いたい、という言葉が、さよならに変わるまでどれくらいの時間を要しただろう。
少年にとっては一瞬であったかもしれない、或いは時計の針が天を差して再び同じ場所まで落ちてきた頃かもしれない。やがて部屋は暗くなり始め、少年は歯を食いしばって最後のページをめくると女の言葉通りに地図があることを認めた。
「ねえね」
自分は今からこの地図に記された場所に行くのだ。
なんの為に行くのだろう。少年は不思議だった。ぼくにはもう何もない。けれど行かないという選択肢もないのだ。
どこまでも、どこまでも、ぼくはぼくでしかなく、ぼくはぼくであることを知らないままには生きてはいけない。
今まで言葉に表せなかった思いがようやく形になって輪郭をまとっていた。
そう――そうだ。
かつてのぼく――御園蕾である御園蕾――は、もう既にどこにも現れることが出来なくなってしまっていたのだ。
ぼくを知っている人の前で、その人の知っているぼくとして振る舞うことができなくなってしまっていたのだ。
自分の過去に疑問を持った日から、ぼくはぼくでいることを受け入れられなくなっていた。
それが気持ち悪くてぼくはきっと、家を飛び出したのだ。そして皮肉にもぼくは今――
その答えがどこにあるかを知ってしまっている。
「今まで……ありがとうございました」
少年は小さなメモに思いの丈を書き綴って、アルバムの地図があったページに挟み込んだ。
『大好きだよ、ねえね。
だから、忘れてください。
御園蕾というぼくは、きっと、あなたが知らない人になってしまうから。
けれどもし――またどこかで、
「蕾……もう一回、お願い。ねえねって、呼んで――」
会えるなら、
「待ってて、待ってて。絶対行くから」
きっとあなただけは、ぼくの知っているねえねでいてほしい』
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