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第17話 存在
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御薗蕾。
彼は……おそらくもう存在しない。
俺はそう、半分確信めいた疑念を腹に抱えていた。
そもそもとして存在そのものがあったのだろうか、それとも最初から御薗蕾という少年など存在しないのか。
昨日悠里と確認したこと、つまり昨日の三咲町のあの時間帯での電車事故がなかったこと、そして御薗宅の状況。
――『弟くんが居たらしい跡なんて。何一つなかったじゃない』
そう言った悠里の声が脳内でリフレクションする。
本来なら、こんな疑念は持つべきではないことはわかっている。
これは、疑うことだ。目の前にいる御薗礼香の精神の健常を疑うことだ。
そしてその残酷さは、普段から身に沁みて理解している。人々はみな、自分の世界こそが正しいと思っている。そしてそれは半分正しい。自身が健常であること、或いは異常であることを疑うものはいないだろう。そしてその上で自分の世界の正しさを疑うものがいるとするなら、それは"異常と健常"の境界そのものをつぶさに観測し続けるものだけだ。
俺は今から、何人も踏み入れるべきではない領域に踏み込まんとしている。彼女の世界は果たして健常であっただろうか、それとも――狂夢のものだったろうか。
曖昧であればこそ、空想は許される。それを現実とすり合わせること、それは……。
――礼香ちゃんを、ようやっと元気になり始める足がかりを掴んだこの女の子を、再び絶望の淵に叩き落とすことになりはしないだろうか。
想像する、あくまで過程の話だ。
この子の怪我はもう直に治ってしまうだろう。
ようやく弟を探そうと家に帰り、玄関を見て靴がないことを知り、部屋中を周り、弟の存在した形跡さえ無かったら――
唯一の肉親で、いなくなったことをあんなに嘆き悲しみ、あまつさえその彼のために踏切に飛び込む目にあった、その彼がそもそも存在しないことを理解してしまったら?
「……」
想像なんてできるものか。
何があってもおかしくはない、絶望に囚われて自ら死を選んでしまってもそれこそ心を壊してしまって自己を失ってしまっても。
それなら、今、伝えるべき――消去法でそうなるはずだ。今伝えなければ、彼女を助けてやることもできないじゃないか。桜庭しづる、俺は誰かを助けたくてこの仕事を選んだんだろう。なら――
「しづるさん、顔色、悪いですよ」
こつん、と額に何かが触れた。
俯いた視線を眼球だけ上に向ける。
淡い桜色の瞳がすぐ近くで俺を眺めていた。
すぐそこに仄かに色付いたきめ細やかな唇があった。少女特有の甘い香りと、俺を眺めている瞳孔に釘付けにされていた。
「――」
「動いちゃだめですよ、えへへ」
ほんの数秒のあと、額はそっと離れた。
「……どうして」
「お熱、出ちゃってないかなって……えへへ。ずっと私のために昨日も今日もほとんど眠りもせずに頑張ってるって聞いたから。さっきからずっと黙り込んじゃって俯いちゃったから。しんどくないかなって、思ったから」
「そっか……でもそれは悠里の嘘だよ。俺はいつもどおりやることをやってるだけ。礼香ちゃんの為にずっと、っていうのは言いすぎだよ。だから大丈夫」
「そんなことないですよ。だって、こんなにいっぱいいっぱい私のために頑張ってくれる人、家族以外出会ったことないもん。だから私もできること、なんでもやります。この御恩は一生忘れませんから。足が治ったら、きっとお返しいっぱいします。二倍、いや、三倍、いや、十倍……でもよく考えたら、なにをすればお返しになるんでしょう……」
ポイントカードじゃねえんだから……と突っ込みたくなった途端、膨らんだ風船は勝手に萎んでいった。
「お礼なんていいよ。俺は好きでやってるだけなんだ。それに俺は、夏休み――が終わったら帝都に戻って実習の続きがあるんだから」
――夏休みが終わる? この夏休みが終わるのだろうか。日めくりカレンダーもないのに。雪星がまた来るっていうのに。
……どうして俺は雪星がまた来るって思ったんだ? 今、自然に――
「いーやーです! 私、絶対、絶対お返しします。何が何でもお返しします! お金はあんまりないけど、学校を休んでしづるさんのお家まで行って家事でもお買い物でも、なんでもします。しづるさんがお家に帰ってきたらあったかいご飯とお風呂と、あとはえっと? 私? を用意して毎日待ってますから! あ、蕾も連れて行っていいですか……?」
「うおお!? それじゃあ俺が攫っていって軟禁してるみたいじゃん……!」
そんな犯罪っぽいことは困るっていうか、そんなの結婚だろ……! そもそも『ご飯にする? お風呂にする? それとも私?』ってネタは新妻が夫に対して夜のお誘いをする時に言うものであって、今の感じだとそれもわかってないしってよく知ってたなそもそ――
「攫っていっても構いません! それで御恩が返せるなら……!」
めっっっっっっちゃ真剣だこの子ーーーーーっ!!!
「いやだから何もいらないんだって! ほんとに! ほんとに!」
「そーれーじゃあだめなんですぅーーー!」
きゃんきゃんと子犬が吠えるみたいに礼香は喚いていた。こういう義理堅いところは悠里と全く正反対にめんどくさい。ああもう、元気になったらなったでなんなんだ全く……!
「じゃ、じゃあ、じゃあね。大人になって君が働けるようになったら俺になんか買ってくれ。それまではつけとくよ。利子なし、分割なし、期限なしの一回払いでどうだ?」
「わかりましたっ! しょにん9?で駅前一等地のマンションをプレゼントしますから!」
なんか絶妙に混じってるし……それに初任給でマンションって大統領にでもなるつもりかよ。
礼香の表情はぱっと明るくなった。ピンク色の瞳がちかちかと瞬いて、仄暗い部屋の中でも宝石みたいに輝いていた。……それは、単純に嬉しかった。俺みたいな凡人でも、誰かのことが救えるのかも知れない。取りこぼしてばかり人生の中で光る小さな希望。それが礼香の瞳映っている、この可能性の少女の中に。
「あ、しづるさん。そういえば渡さないといけないものがあったんでした」
「渡さないといけないもの?」
はて、なんだろう。想像もつかないが、また素っ頓狂なものじゃあるまいな。
「これです。封筒がなくって、生になっちゃうんですけど」
礼香は服の中身をごそごそと漁る。するとフードを引っくり返したポケットの中からくしゃくしゃになった札が転がり出てきた。服の中からなんでも出てくるな……。そんなに生活に余裕はなかったようだし、気持ちくらいのものだろう。受け取れまい。
「今はいいって。全部終わったらでいい」
「それは、してもらったことのお返しです。これはその、昨日の夜に引き出してきた入院費です……とりあえず口座の中身、全部なので足りますか?」
「いいよ。いいんだって」
「で、でも……じゃ、じゃあ一旦受け取ってください。あ、ついでにそれでジュースでも買ってきてください……つ、ついでに私にもさっきのぱちぱちしたオレンジジュースをもう一本買ってきて欲しくて――」
本当にこの子食い下がるな、それは昨日からわかってたことだけれど。
「わかったよ。じゃあ飲み物代だけもらっておくから。あとは返すよ」
札を受け取る。
とりあえず改めておくか、後で足りなかったらこっちの沽券に関わることだ。
万札から一枚、二枚三枚――ん、案外多いな。十、二十、多い。途中から千円札だったりしないか? いや、ないか。
「七八――七九……」
「学校で入院ってすごく高いって聞いて。それで一応全部持って来たんです。ひょっとして、た、足りてませんか……?」
怪訝そうな顔をした俺の表情を勘違いしたのだろう、不安そうな礼香はおずおずと見上げた。
「い、いや。むしろ多すぎるくらいだ。保険がなくってもこんなには取られないよ」
「そ、そうなんですか、よかったあ」
礼香は胸を撫で下ろしているのを横目に、俺はある疑問に駆られていた。
てっきり世間の法体制に則って慎ましやかに暮らしていると思っていたのだが、案外そうではないのかも知れない。
「礼香、少し質問したいことがあるんだ。かなり個人的な質問になるから、嫌だったら答えなくてもいい」
かなり不躾な質問になるが彼女の身元や頼れる人につながることかも知れない、聞いておくべきだろう。
「は、はい」
「お父さんは行方がわからなくって、親代わりになってる人も居ないんだよな。あとは遺産とかがあるわけじゃない」
「いません。親戚もいないから、遺産とかはありません。蕾と私の二人だけです」
「じゃあ、普段お金はどうしてるんだ?」
ここが奇妙だ。法に守られて生きているとしたら、こんなに貯金があるわけがない。どうやったって無一文に近い生活になるはずだ。けれど彼女は引っ張り出そうと思えばこうして貯金がある。しかも少額じゃない。なら、必ず誰かがお金の面倒を見ているはずだ。さっき口座から引き出したとも言っていた。ということはタンス預金にしてストックしていたわけでもないわけだ。
「二つ口座があって、一つが生活費が振り込まれる口座で、もう一つが貯金の口座です」
「振り込まれる?」
「毎月口座にお金が入ってて、それで生活してるんです。余った分は貯金の口座に戻してて」
要領を得ない。ともするとこういうことなのだろうか。
「ひょっとして振り込んでいる人について、知らないのか?」
「えっ」
「えっ」
礼香は驚いたように俺の顔を見た。理由は分からないが、何かに驚いている。ふと振り向いてみても誰も居ないし、なんだったら今はセミすらも静かに鳴いている。
「どうしたんだ。傷でも痛んだか」
「お金って、誰かが振り込んでいるものだったんですか?」
「――」
俺は少しめまいのような感情に襲われた。そうか。そもそも、知らないんだ。この子。親もあまり覚えていないようだし、お金を稼ぐ行為自体があるのは知っているし、お金が大事なことも知っているけど、その土台となる制度とかも何も知らない。まして親が働いている姿も見たことがないから、お金が誰かから誰かに振り込まれることすら知らないんだ。
「あ、ああ。そうなんだよ……。君の口座に入ってるお金は誰かが稼いだお金で、多分、国とか施設じゃなくて個人から振り込まれてるはずなんだ」
「へっ!? そうだったんですかぁ!?」
体中の産毛まで総立ちさせて、礼香はホッピングのように素っ頓狂な軌道で飛び上がった。
「そそそそそそそそそんなことととヲう゛っ」
びっくりしすぎて舌を噛んだらしい。本当に知らなかったらしい。
「いっつ……。あのぉ、じゃあ私たちが今まで生活してたお金って、誰かが私たちのために振り込んでくれてたお金なんですか」
「多分そうだ。そして俺が思うに、だからこそ知る必要がある。そこから繋がる誰かこそが、君の出自を知っているはずだ。じゃないとわざわざ子供二人で苦もなく生活できるだけのお金を毎月振り込んでいるわけがない」
「あ、あのあのあのあのあのしづるさん、しづるさん、どうしましょう。どうしましょう……ううぇ……」
礼香は急に大粒の涙をぼろぼろと流し始めた。なぜか全然わからないのだが、ここまで来ると逆に冷静になれるようになってきたな……。慣れてきている。この子のよくわからなさに――。良くない気がする。
「どうしたんだ」
「わたし、わたし、今、口座に入れてくれてたお金、全部ここに持ってきちゃったんですよぉ……。ど、どうしましょう。困ってないでしょうか、お金を口座に入れてくれてた人。お金全部なくなっちゃって、びっくりしてないでしょうか……。返しに行かなきゃ、ごめんなさいごめんなさい――」
そういうことか――。納得した。
「礼香、その件についてだけど、大丈夫だと思うぞ……。その人も稼いだお金全部礼香たちに突っ込んでたわけじゃないだろうし。稼いだお金の余った分を入れてたんだ。そういうこともないわけじゃないっていうか、その方が多いんだ。だから気にしなくて大丈夫だ」
そんな事情、知りはしないがここはくわばらくわばら。落ち着いて貰わないと。
「でもごめんなさい……きっとその人、私なんかにお金を使ってなかったら、きっともっと色んなものを買ったり、遠いところに旅に出たりできたはずなのに――」
「人の幸せってそれだけじゃないぜ。きっと礼香たちが幸せに過ごしていることを願うのが趣味だったりするかもしれない」
「そ、そうでしょうか……。でもその人にも恩返し、しないとなあ。わからないんでしょうか、振り込んでくれてた人って」
「通帳とか持ってるか? それを見せてくれたら分かるかもしれない。どこの誰かはわからないが、名前くらいはまず分かるだろう。ひょっとすると支店とかもわかるかも。手帳は家に置いてあるのか?」
「――手帳? わかりました。これですよね」
「持ってんの?」
「上着の合間に入れておいたんです」
「何でも入ってるなそこ!?」
ともかく、手帳を開く。何枚目なのだろう。かなり若いページ数に現在の振り込みが表示されている。
「振り込みには――確かに名前があるな。『イチサワシノキ』、それが振り込んでいる人の名前か」
「イチサワさんって言うんですか、私たちにお金をくれてた人の名前って」
「どうやらそうみたいだな。念の為に聞いておくけどこの名前に聞き覚えはあるか?」
「……ありません。全然聞いたことのない名前です」
「だろうな。むしろあったら簡単すぎるくらいだ」
「他に何か手がかりはありそうですか……?」
手帳をのぞき込んでみるが、特段気になる箇所はない。
「この中にはないが、これ、いつくらいから振り込まれてるんだ」
「ここに来てからずっとです。もう十年近くになるかもしれません。私が来た少し後に蕾が来たんです」
「……そうか。じゃあむしろほとんどこっちで暮らしてるようなものなんだな」
顎に手を添えて考えてみる。何か手がかりはないだろうか、銀行に問い合わせるにしても、すぐには教えてもらえないだろう。この場でできるだけ可能性を詰めておきたい。
「……そういえば、ここに来る前からその手帳って持ってたのか?」
「いえ、渡してもらったんです」
「それは、思い出せないお父さんからってことかな」
「いえ、違う人です。ちょっと不思議な人でした」
「その人のこと、教えてもらってもいいか」
「もうずいぶん前になりますから、ぼんやりとしか覚えてないんですけど――確か三、四十代くらいの男の人で……えーっと。なんだか遠いところでなにかの説明を受けたのを覚えてます。その後に手帳を貰ったんでした。甘い匂いがしたのを覚えてます。他は……あっタバコ、吸ってました。あと……あとは時々書類を持ってくる女の人がいました」
まだまだ手掛かりになるような情報はないか……それもそうだ、十年前のことなんて大して覚えているはずもない。
「お家の案内をされたのは最後でしたね。『ここはもう使わないから、君が使いなさい』って言って鍵をもらったんです。それっきり、会うこともなくなってしまったので……あの頃は私も小さかったので全然その意味を理解してなくって。でも日用品の類は時々届けられてました。あとは綺麗な赤い髪色のお姉さんが一か月に一回か二回来てくれて、優しくしてくれたんです。でもずいぶん前にもう会えなくなってしまってて……ちょうど蕾が来た時くらいからですかね。それくらいからもう会ってないです」
流石に、ダメっぽいかな。これだけの情報じゃその人がどんな職業をしてるか、どの辺に住んでいたかなどの情報は絞れなさそうだ。ただ礼香の家の前の持ち主ということはわかったし、そこについて調べることはできそうだな。いずれにせよ役所や銀行に問い合わせる必要はありそうだ。
「やっぱりすぐには難しそうだな。人探しはそんなに簡単じゃなさそうだ」
俺は椅子にもたれかかった。四角い断熱材の切り目が天井をチェス盤のように飾っている。そのマス目の間に向かって手を伸ばすと、ギシと椅子が音を立てた。同時にノックされて、俺と同じくらいに見える白衣を着た先生が立っていた。
「すいません、お加減変わりないですか」
「あ」
礼香はその姿を見るや否や、ぴたっと止まった。
「どうしたんだ礼香」
「白衣です。白衣、着てました。その人」
「白衣?」
「そうです、確かに白衣を着てたと思います」
「あ、あの、お加減は」
先生は少しまごつきながら言い、俺は大丈夫そうですと言った。礼香も肯いて、先生は何やら間が悪かったというように部屋から去った。
「お医者さんみたいな白衣です。それは覚えてます」
「白衣――綺麗な赤い髪色のお姉さん、そして名前がイチサワシノキ――だって」
それって、もしかして。
「礼香、ちょっと待ってろ」
携帯電話を片手に俺は病室を出る。
廊下に出た時、時計が目に入る。一一時五○分――もうそんなに時間が経っていたのか。
彼は……おそらくもう存在しない。
俺はそう、半分確信めいた疑念を腹に抱えていた。
そもそもとして存在そのものがあったのだろうか、それとも最初から御薗蕾という少年など存在しないのか。
昨日悠里と確認したこと、つまり昨日の三咲町のあの時間帯での電車事故がなかったこと、そして御薗宅の状況。
――『弟くんが居たらしい跡なんて。何一つなかったじゃない』
そう言った悠里の声が脳内でリフレクションする。
本来なら、こんな疑念は持つべきではないことはわかっている。
これは、疑うことだ。目の前にいる御薗礼香の精神の健常を疑うことだ。
そしてその残酷さは、普段から身に沁みて理解している。人々はみな、自分の世界こそが正しいと思っている。そしてそれは半分正しい。自身が健常であること、或いは異常であることを疑うものはいないだろう。そしてその上で自分の世界の正しさを疑うものがいるとするなら、それは"異常と健常"の境界そのものをつぶさに観測し続けるものだけだ。
俺は今から、何人も踏み入れるべきではない領域に踏み込まんとしている。彼女の世界は果たして健常であっただろうか、それとも――狂夢のものだったろうか。
曖昧であればこそ、空想は許される。それを現実とすり合わせること、それは……。
――礼香ちゃんを、ようやっと元気になり始める足がかりを掴んだこの女の子を、再び絶望の淵に叩き落とすことになりはしないだろうか。
想像する、あくまで過程の話だ。
この子の怪我はもう直に治ってしまうだろう。
ようやく弟を探そうと家に帰り、玄関を見て靴がないことを知り、部屋中を周り、弟の存在した形跡さえ無かったら――
唯一の肉親で、いなくなったことをあんなに嘆き悲しみ、あまつさえその彼のために踏切に飛び込む目にあった、その彼がそもそも存在しないことを理解してしまったら?
「……」
想像なんてできるものか。
何があってもおかしくはない、絶望に囚われて自ら死を選んでしまってもそれこそ心を壊してしまって自己を失ってしまっても。
それなら、今、伝えるべき――消去法でそうなるはずだ。今伝えなければ、彼女を助けてやることもできないじゃないか。桜庭しづる、俺は誰かを助けたくてこの仕事を選んだんだろう。なら――
「しづるさん、顔色、悪いですよ」
こつん、と額に何かが触れた。
俯いた視線を眼球だけ上に向ける。
淡い桜色の瞳がすぐ近くで俺を眺めていた。
すぐそこに仄かに色付いたきめ細やかな唇があった。少女特有の甘い香りと、俺を眺めている瞳孔に釘付けにされていた。
「――」
「動いちゃだめですよ、えへへ」
ほんの数秒のあと、額はそっと離れた。
「……どうして」
「お熱、出ちゃってないかなって……えへへ。ずっと私のために昨日も今日もほとんど眠りもせずに頑張ってるって聞いたから。さっきからずっと黙り込んじゃって俯いちゃったから。しんどくないかなって、思ったから」
「そっか……でもそれは悠里の嘘だよ。俺はいつもどおりやることをやってるだけ。礼香ちゃんの為にずっと、っていうのは言いすぎだよ。だから大丈夫」
「そんなことないですよ。だって、こんなにいっぱいいっぱい私のために頑張ってくれる人、家族以外出会ったことないもん。だから私もできること、なんでもやります。この御恩は一生忘れませんから。足が治ったら、きっとお返しいっぱいします。二倍、いや、三倍、いや、十倍……でもよく考えたら、なにをすればお返しになるんでしょう……」
ポイントカードじゃねえんだから……と突っ込みたくなった途端、膨らんだ風船は勝手に萎んでいった。
「お礼なんていいよ。俺は好きでやってるだけなんだ。それに俺は、夏休み――が終わったら帝都に戻って実習の続きがあるんだから」
――夏休みが終わる? この夏休みが終わるのだろうか。日めくりカレンダーもないのに。雪星がまた来るっていうのに。
……どうして俺は雪星がまた来るって思ったんだ? 今、自然に――
「いーやーです! 私、絶対、絶対お返しします。何が何でもお返しします! お金はあんまりないけど、学校を休んでしづるさんのお家まで行って家事でもお買い物でも、なんでもします。しづるさんがお家に帰ってきたらあったかいご飯とお風呂と、あとはえっと? 私? を用意して毎日待ってますから! あ、蕾も連れて行っていいですか……?」
「うおお!? それじゃあ俺が攫っていって軟禁してるみたいじゃん……!」
そんな犯罪っぽいことは困るっていうか、そんなの結婚だろ……! そもそも『ご飯にする? お風呂にする? それとも私?』ってネタは新妻が夫に対して夜のお誘いをする時に言うものであって、今の感じだとそれもわかってないしってよく知ってたなそもそ――
「攫っていっても構いません! それで御恩が返せるなら……!」
めっっっっっっちゃ真剣だこの子ーーーーーっ!!!
「いやだから何もいらないんだって! ほんとに! ほんとに!」
「そーれーじゃあだめなんですぅーーー!」
きゃんきゃんと子犬が吠えるみたいに礼香は喚いていた。こういう義理堅いところは悠里と全く正反対にめんどくさい。ああもう、元気になったらなったでなんなんだ全く……!
「じゃ、じゃあ、じゃあね。大人になって君が働けるようになったら俺になんか買ってくれ。それまではつけとくよ。利子なし、分割なし、期限なしの一回払いでどうだ?」
「わかりましたっ! しょにん9?で駅前一等地のマンションをプレゼントしますから!」
なんか絶妙に混じってるし……それに初任給でマンションって大統領にでもなるつもりかよ。
礼香の表情はぱっと明るくなった。ピンク色の瞳がちかちかと瞬いて、仄暗い部屋の中でも宝石みたいに輝いていた。……それは、単純に嬉しかった。俺みたいな凡人でも、誰かのことが救えるのかも知れない。取りこぼしてばかり人生の中で光る小さな希望。それが礼香の瞳映っている、この可能性の少女の中に。
「あ、しづるさん。そういえば渡さないといけないものがあったんでした」
「渡さないといけないもの?」
はて、なんだろう。想像もつかないが、また素っ頓狂なものじゃあるまいな。
「これです。封筒がなくって、生になっちゃうんですけど」
礼香は服の中身をごそごそと漁る。するとフードを引っくり返したポケットの中からくしゃくしゃになった札が転がり出てきた。服の中からなんでも出てくるな……。そんなに生活に余裕はなかったようだし、気持ちくらいのものだろう。受け取れまい。
「今はいいって。全部終わったらでいい」
「それは、してもらったことのお返しです。これはその、昨日の夜に引き出してきた入院費です……とりあえず口座の中身、全部なので足りますか?」
「いいよ。いいんだって」
「で、でも……じゃ、じゃあ一旦受け取ってください。あ、ついでにそれでジュースでも買ってきてください……つ、ついでに私にもさっきのぱちぱちしたオレンジジュースをもう一本買ってきて欲しくて――」
本当にこの子食い下がるな、それは昨日からわかってたことだけれど。
「わかったよ。じゃあ飲み物代だけもらっておくから。あとは返すよ」
札を受け取る。
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万札から一枚、二枚三枚――ん、案外多いな。十、二十、多い。途中から千円札だったりしないか? いや、ないか。
「七八――七九……」
「学校で入院ってすごく高いって聞いて。それで一応全部持って来たんです。ひょっとして、た、足りてませんか……?」
怪訝そうな顔をした俺の表情を勘違いしたのだろう、不安そうな礼香はおずおずと見上げた。
「い、いや。むしろ多すぎるくらいだ。保険がなくってもこんなには取られないよ」
「そ、そうなんですか、よかったあ」
礼香は胸を撫で下ろしているのを横目に、俺はある疑問に駆られていた。
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「礼香、少し質問したいことがあるんだ。かなり個人的な質問になるから、嫌だったら答えなくてもいい」
かなり不躾な質問になるが彼女の身元や頼れる人につながることかも知れない、聞いておくべきだろう。
「は、はい」
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「二つ口座があって、一つが生活費が振り込まれる口座で、もう一つが貯金の口座です」
「振り込まれる?」
「毎月口座にお金が入ってて、それで生活してるんです。余った分は貯金の口座に戻してて」
要領を得ない。ともするとこういうことなのだろうか。
「ひょっとして振り込んでいる人について、知らないのか?」
「えっ」
「えっ」
礼香は驚いたように俺の顔を見た。理由は分からないが、何かに驚いている。ふと振り向いてみても誰も居ないし、なんだったら今はセミすらも静かに鳴いている。
「どうしたんだ。傷でも痛んだか」
「お金って、誰かが振り込んでいるものだったんですか?」
「――」
俺は少しめまいのような感情に襲われた。そうか。そもそも、知らないんだ。この子。親もあまり覚えていないようだし、お金を稼ぐ行為自体があるのは知っているし、お金が大事なことも知っているけど、その土台となる制度とかも何も知らない。まして親が働いている姿も見たことがないから、お金が誰かから誰かに振り込まれることすら知らないんだ。
「あ、ああ。そうなんだよ……。君の口座に入ってるお金は誰かが稼いだお金で、多分、国とか施設じゃなくて個人から振り込まれてるはずなんだ」
「へっ!? そうだったんですかぁ!?」
体中の産毛まで総立ちさせて、礼香はホッピングのように素っ頓狂な軌道で飛び上がった。
「そそそそそそそそそんなことととヲう゛っ」
びっくりしすぎて舌を噛んだらしい。本当に知らなかったらしい。
「いっつ……。あのぉ、じゃあ私たちが今まで生活してたお金って、誰かが私たちのために振り込んでくれてたお金なんですか」
「多分そうだ。そして俺が思うに、だからこそ知る必要がある。そこから繋がる誰かこそが、君の出自を知っているはずだ。じゃないとわざわざ子供二人で苦もなく生活できるだけのお金を毎月振り込んでいるわけがない」
「あ、あのあのあのあのあのしづるさん、しづるさん、どうしましょう。どうしましょう……ううぇ……」
礼香は急に大粒の涙をぼろぼろと流し始めた。なぜか全然わからないのだが、ここまで来ると逆に冷静になれるようになってきたな……。慣れてきている。この子のよくわからなさに――。良くない気がする。
「どうしたんだ」
「わたし、わたし、今、口座に入れてくれてたお金、全部ここに持ってきちゃったんですよぉ……。ど、どうしましょう。困ってないでしょうか、お金を口座に入れてくれてた人。お金全部なくなっちゃって、びっくりしてないでしょうか……。返しに行かなきゃ、ごめんなさいごめんなさい――」
そういうことか――。納得した。
「礼香、その件についてだけど、大丈夫だと思うぞ……。その人も稼いだお金全部礼香たちに突っ込んでたわけじゃないだろうし。稼いだお金の余った分を入れてたんだ。そういうこともないわけじゃないっていうか、その方が多いんだ。だから気にしなくて大丈夫だ」
そんな事情、知りはしないがここはくわばらくわばら。落ち着いて貰わないと。
「でもごめんなさい……きっとその人、私なんかにお金を使ってなかったら、きっともっと色んなものを買ったり、遠いところに旅に出たりできたはずなのに――」
「人の幸せってそれだけじゃないぜ。きっと礼香たちが幸せに過ごしていることを願うのが趣味だったりするかもしれない」
「そ、そうでしょうか……。でもその人にも恩返し、しないとなあ。わからないんでしょうか、振り込んでくれてた人って」
「通帳とか持ってるか? それを見せてくれたら分かるかもしれない。どこの誰かはわからないが、名前くらいはまず分かるだろう。ひょっとすると支店とかもわかるかも。手帳は家に置いてあるのか?」
「――手帳? わかりました。これですよね」
「持ってんの?」
「上着の合間に入れておいたんです」
「何でも入ってるなそこ!?」
ともかく、手帳を開く。何枚目なのだろう。かなり若いページ数に現在の振り込みが表示されている。
「振り込みには――確かに名前があるな。『イチサワシノキ』、それが振り込んでいる人の名前か」
「イチサワさんって言うんですか、私たちにお金をくれてた人の名前って」
「どうやらそうみたいだな。念の為に聞いておくけどこの名前に聞き覚えはあるか?」
「……ありません。全然聞いたことのない名前です」
「だろうな。むしろあったら簡単すぎるくらいだ」
「他に何か手がかりはありそうですか……?」
手帳をのぞき込んでみるが、特段気になる箇所はない。
「この中にはないが、これ、いつくらいから振り込まれてるんだ」
「ここに来てからずっとです。もう十年近くになるかもしれません。私が来た少し後に蕾が来たんです」
「……そうか。じゃあむしろほとんどこっちで暮らしてるようなものなんだな」
顎に手を添えて考えてみる。何か手がかりはないだろうか、銀行に問い合わせるにしても、すぐには教えてもらえないだろう。この場でできるだけ可能性を詰めておきたい。
「……そういえば、ここに来る前からその手帳って持ってたのか?」
「いえ、渡してもらったんです」
「それは、思い出せないお父さんからってことかな」
「いえ、違う人です。ちょっと不思議な人でした」
「その人のこと、教えてもらってもいいか」
「もうずいぶん前になりますから、ぼんやりとしか覚えてないんですけど――確か三、四十代くらいの男の人で……えーっと。なんだか遠いところでなにかの説明を受けたのを覚えてます。その後に手帳を貰ったんでした。甘い匂いがしたのを覚えてます。他は……あっタバコ、吸ってました。あと……あとは時々書類を持ってくる女の人がいました」
まだまだ手掛かりになるような情報はないか……それもそうだ、十年前のことなんて大して覚えているはずもない。
「お家の案内をされたのは最後でしたね。『ここはもう使わないから、君が使いなさい』って言って鍵をもらったんです。それっきり、会うこともなくなってしまったので……あの頃は私も小さかったので全然その意味を理解してなくって。でも日用品の類は時々届けられてました。あとは綺麗な赤い髪色のお姉さんが一か月に一回か二回来てくれて、優しくしてくれたんです。でもずいぶん前にもう会えなくなってしまってて……ちょうど蕾が来た時くらいからですかね。それくらいからもう会ってないです」
流石に、ダメっぽいかな。これだけの情報じゃその人がどんな職業をしてるか、どの辺に住んでいたかなどの情報は絞れなさそうだ。ただ礼香の家の前の持ち主ということはわかったし、そこについて調べることはできそうだな。いずれにせよ役所や銀行に問い合わせる必要はありそうだ。
「やっぱりすぐには難しそうだな。人探しはそんなに簡単じゃなさそうだ」
俺は椅子にもたれかかった。四角い断熱材の切り目が天井をチェス盤のように飾っている。そのマス目の間に向かって手を伸ばすと、ギシと椅子が音を立てた。同時にノックされて、俺と同じくらいに見える白衣を着た先生が立っていた。
「すいません、お加減変わりないですか」
「あ」
礼香はその姿を見るや否や、ぴたっと止まった。
「どうしたんだ礼香」
「白衣です。白衣、着てました。その人」
「白衣?」
「そうです、確かに白衣を着てたと思います」
「あ、あの、お加減は」
先生は少しまごつきながら言い、俺は大丈夫そうですと言った。礼香も肯いて、先生は何やら間が悪かったというように部屋から去った。
「お医者さんみたいな白衣です。それは覚えてます」
「白衣――綺麗な赤い髪色のお姉さん、そして名前がイチサワシノキ――だって」
それって、もしかして。
「礼香、ちょっと待ってろ」
携帯電話を片手に俺は病室を出る。
廊下に出た時、時計が目に入る。一一時五○分――もうそんなに時間が経っていたのか。
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この満ち足りた匣庭の中で 二章―Moon of miniature garden―
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ミステリー
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出題篇PV:https://www.youtube.com/watch?v=1mjjf9TY6Io
猿の内政官 ~天下統一のお助けのお助け~
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