73 / 80
2章 地球激闘編
22話 怪我、無いですか?
しおりを挟む俺と麻衣は、超高速飛行で浮遊島に戻ってきた。途中で空力加熱によって生まれた熱で、隕石落下のように強烈に発光していたが、海の上を飛んでいたので、誰にも見られていないだろう。
麻衣は、ブラのホックが完全に壊れた様で、飛行中はずっと腕で押さえていた。部屋に付くなり、置いてあったカバンから、替えのブラを握りしめトイレに駆け込んでいった。
部屋には、テナを含め全員が揃っていて、全員が俺に注目している。
「誰ですか?」
「織田さんなの?」
予想通り瑠偉と美憂が、俺を見て質問してきた。ララは俺の姿を見たが、何事もなかったように、いつも通りに俺の右後方まで歩いてきて静止した。テナも俺を見ているが、いつもの無表情で、何を考えているか分からない。
「その通り、俺が織田兼次だ。惚れんなよ?」
「兼次様、全てを思い出したようですね。では早急に祝言を挙げましょう」
夜巳か・・・そんな約束したな。しかし、まだ子供である、無理だな・・・
腰に手を当て不敵な笑みをしている夜巳に近づいた。右手で夜巳の顔を握る、それと同時にアゴを固定し声を出せなくする。
「この前も言ったが、子供に興味はない。あと8年待て、その後で考えてやる。
今は話がややこしくなるので、天井で静かにしていろ」
夜巳を浮かせ天井に大の字に張り付ける、目が合った時に何やら言いたかったようだが、アゴを固定させているので、何を言っているかは分からない。
夜巳の相手は後でするとして、まずは・・・
「ララ、中条をここに呼んでくれ。まとめて話そうと思う」
「了解しました」
俺はテーブルまで移動し腰かける、まだ瑠偉と美憂は黙って俺を見ている。
そこに、ようやく着替え終えた麻衣がトイレから出てきた。何故か視線を下げて、ゆっくり俺の側まで歩いきた。俺の側まで来ると、俺の左袖を摘まんで引っ張る。
「あのー・・・け、け、け、げが・・・な、な、な、無いんだけど?」
麻衣は、下を見ながら肩を左右に振り、小さな声で俺に言って来た。どうやら用を足した時に、気が付いたようだ。このモジモジしている態度の麻衣は、新鮮で意外と可愛い。
ならば焦らすと、どんな態度を見せてくれるのだろう?
「何を言っている。怪我は、治してやっただろ?」
「う、うん・・・ありがとう。いや、そうじゃなくて。毛が無いの」
麻衣は少し声量を上げ、俺の左袖を引いていた手を戻した。両手は拳を握っていて、力が入っているのか、少し震えていた。
「2回も言わせるな、怪我は治ってるだろ?」
「だからぁー・・・けが、じゃなくて、け! け…が…な…い…の!」
麻衣は、ちょっとキレ気味で、一文字一文字区切って、大きな声で言ってきた。
俺は立ち上がり、麻衣の頭に手を置いた。
髪の毛を触りながら「あるけど?」と更に焦らしてみた。
「兼次ちゃんのバカァーーーーー!」
麻衣は首を左右に振り、俺の手を振りほどく。後ろを向くと「うぁぁぁぁぁ」と叫びながら、トイレに向かって走って行き、引き籠ってしまった。
「お、織田さん。何したの?」
「ムダ毛処理を手伝っただけだぞ?
美憂もどうだ? 痛み無しの永久脱毛だぞ、しかも一瞬で終わるからな」
「永久脱毛か・・・痛みもない。ならワキをお願いしようかな」
「じゃあ、後でな」
瑠偉が美憂を心配そうに見ている。そして俺が瑠偉に話しかけようとした時「私は遠慮します」と先に言われた。
「ところで、本当に若返りが出来たんですね。正直、疑ってました」
「瑠偉もどうだ? 俺と関係を持つなら考えてやってもいいが」
「遠慮します。まだ成長したいので・・・」
人によっては二十歳まで成長すると言われている。若干の童顔と小さな胸が、大人へと成長する事を、期待しているのだろう。
今のままでも、十分いいと思うのだが・・・
「凝視しないでもらえますか? 視姦罪ですよ」
「残念だが、俺は前を見ていただけだ。偶然に視界に入っている。それだけだ」
瑠偉は溜息交じりに、俺から視線を外し窓の外を見始めた。
トイレの扉が開く音がして麻衣が出てきた、諦めたのか扉の前で溜息をして、ゆっくり歩いてきた。力なく俺の隣の椅子を引くと、そのまま座る。
座ると同時に、俺の裾を引っ張り「あとで話が」と小声で言った。
「マスター、中条さんが来る前に、被害報告をお知らせします」
「一応聞いておこうか」
「気象衛星が1機、街の家屋3軒が破壊されました、幸い人的被害はありませんでした。
被害総額は推定400億円となります」
「破壊した犯人は麻衣なので、麻衣に請求書を回しておいてくれ」
「了解しました」
「ちょっと、まったー! ありえないから、おかしいから! 400億も持ってないから。
てか、私の全財産はこれよ!」
そう言いながら麻衣は、ポケットから25円を出し、その手をテーブルに出した。
「冗談だよ、本気にするなよ」
「随分、賑やかじゃの?」
中条の声が聞こえると同時に、テーブルの近くに出現した。
「揃ったな、では報告と今後について会議をしようか」
━━━━━
※空力加熱:空気中を超音速で飛行する時、空気の圧縮などで発生する熱で加熱されて、温度上昇が起きる現象。
0
お気に入りに追加
69
あなたにおすすめの小説
貧乏冒険者で底辺配信者の生きる希望もないおっさんバズる~庭のFランク(実際はSSSランク)ダンジョンで活動すること15年、最強になりました~
喰寝丸太
ファンタジー
おっさんは経済的に、そして冒険者としても底辺だった。
庭にダンジョンができたが最初のザコがスライムということでFランクダンジョン認定された。
そして18年。
おっさんの実力が白日の下に。
FランクダンジョンはSSSランクだった。
最初のザコ敵はアイアンスライム。
特徴は大量の経験値を持っていて硬い、そして逃げる。
追い詰められると不壊と言われるダンジョンの壁すら溶かす酸を出す。
そんなダンジョンでの15年の月日はおっさんを最強にさせた。
世間から隠されていた最強の化け物がいま世に出る。
いつか日本人(ぼく)が地球を救う
多比良栄一
SF
この小説にはある仕掛けがある。
読者はこの物語を読み進めると、この作品自体に仕掛けられた「前代未聞」のアイデアを知ることになる。
それは日本のアニメやマンガへ注がれるオマージュ。
2次創作ではない、ある種の入れ子構造になったメタ・フィクション。
誰もがきいたことがある人物による、誰もみたことがない物語がいま幕を開ける。
すべてのアニメファンに告ぐ!! 。隠された謎を見抜けるか!!。
------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------
25世紀後半 地球を襲った亜獣と呼ばれる怪獣たちに、デミリアンと呼ばれる生命体に搭乗して戦う日本人少年ヤマトタケル。なぜか日本人にしか操縦ができないこの兵器に乗る者には、同時に、人類を滅ぼすと言われる「四解文書」と呼ばれる極秘文書も受け継がされた。
もしこれを人々が知れば、世界は「憤怒」し、「恐怖」し、「絶望」し、そして「発狂」する。
かつてそれを聞いた法皇がショック死したほどの四つの「真理」。
世界でたった一人、人類を救えも、滅ぼしもできる、両方の力を手に入れた日本人少年ヤマトタケル。
彼は、世界100億人全員から、救いを求められ、忌み嫌われ、そして恐れられる存在になった。
だが彼には使命があった。たとえ人類の半分の人々を犠牲にしても残り11体の亜獣を殲滅すること、そして「四解文書」の謎を誰にも知られずに永遠に葬ることだった。
異世界に追放されました。二度目の人生は辺境貴族の長男です。
ファンタスティック小説家
ファンタジー
科学者・伊介天成(いかい てんせい)はある日、自分の勤める巨大企業『イセカイテック』が、転移装置開発プロジェクトの遅延を世間にたいして隠蔽していたことを知る。モルモットですら実験をしてないのに「有人転移成功!」とうそぶいていたのだ。急進的にすすむ異世界開発事業において、優位性を保つために、『イセカイテック』は計画を無理に進めようとしていた。たとえ、試験段階の転移装置にいきなり人間を乗せようとも──。
実験の無謀さを指摘した伊介天成は『イセカイテック』に邪魔者とみなされ、転移装置の実験という名目でこの世界から追放されてしまう。
無茶すぎる転移をさせられ死を覚悟する伊介天成。だが、次に目が覚めた時──彼は剣と魔法の異世界に転生していた。
辺境貴族アルドレア家の長男アーカムとして生まれかわった伊介天成は、異世界での二度目の人生をゼロからスタートさせる。
借金背負ったので死ぬ気でダンジョン行ったら人生変わった件 やけくそで潜った最凶の迷宮で瀕死の国民的美少女を救ってみた
羽黒 楓
ファンタジー
旧題:借金背負ったので兄妹で死のうと生還不可能の最難関ダンジョンに二人で潜ったら瀕死の人気美少女配信者を助けちゃったので連れて帰るしかない件
借金一億二千万円! もう駄目だ! 二人で心中しようと配信しながらSSS級ダンジョンに潜った俺たち兄妹。そしたらその下層階で国民的人気配信者の女の子が遭難していた! 助けてあげたらどんどんとスパチャが入ってくるじゃん! ってかもはや社会現象じゃん! 俺のスキルは【マネーインジェクション】! 預金残高を消費してパワーにし、それを自分や他人に注射してパワーアップさせる能力。ほらお前ら、この子を助けたければどんどんスパチャしまくれ! その金でパワーを女の子たちに注入注入! これだけ金あれば借金返せそう、もうこうなりゃ絶対に生還するぞ! 最難関ダンジョンだけど、絶対に生きて脱出するぞ! どんな手を使ってでも!
魔法学院の階級外魔術師
浅葱 繚
ファンタジー
魔力の色によって使える魔法が決まる世界。魔法学院に入学した主人公ルーシッド・リムピッドの魔力の色は何と『無色』。色が無いゆえに一切の魔法が使えないルーシッド。しかし、実は無色の魔力には彼女だけが知っているある秘密があって…
魔法が絶対の世界は、たった一人の魔術師によって大きく動き出す。
日本国転生
北乃大空
SF
女神ガイアは神族と呼ばれる宇宙管理者であり、地球を含む太陽系を管理して人類の歴史を見守ってきた。
或る日、ガイアは地球上の人類未来についてのシミュレーションを実施し、その結果は22世紀まで確実に人類が滅亡するシナリオで、何度実施しても滅亡する確率は99.999%であった。
ガイアは人類滅亡シミュレーション結果を中央管理局に提出、事態を重くみた中央管理局はガイアに人類滅亡の回避指令を出した。
その指令内容は地球人類の歴史改変で、現代地球とは別のパラレルワールド上に存在するもう一つの地球に干渉して歴史改変するものであった。
ガイアが取った歴史改変方法は、国家丸ごと転移するもので転移する国家は何と現代日本であり、その転移先は太平洋戦争開戦1年前の日本で、そこに国土ごと上書きするというものであった。
その転移先で日本が世界各国と開戦し、そこで起こる様々な出来事を超人的な能力を持つ女神と天使達の手助けで日本が覇権国家になり、人類滅亡を回避させて行くのであった。
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
フリーター転生。公爵家に転生したけど継承権が低い件。精霊の加護(チート)を得たので、努力と知識と根性で公爵家当主へと成り上がる
SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
400倍の魔力ってマジ!?魔力が多すぎて範囲攻撃魔法だけとか縛りでしょ
25歳子供部屋在住。彼女なし=年齢のフリーター・バンドマンはある日理不尽にも、バンドリーダでボーカルからクビを宣告され、反論を述べる間もなくガッチャ切りされそんな失意のか、理不尽に言い渡された残業中に急死してしまう。
目が覚めると俺は広大な領地を有するノーフォーク公爵家の長男の息子ユーサー・フォン・ハワードに転生していた。
ユーサーは一度目の人生の漠然とした目標であった『有名になりたい』他人から好かれ、知られる何者かになりたかった。と言う目標を再認識し、二度目の生を悔いの無いように、全力で生きる事を誓うのであった。
しかし、俺が公爵になるためには父の兄弟である次男、三男の息子。つまり従妹達と争う事になってしまい。
ユーサーは富国強兵を掲げ、先ずは小さな事から始めるのであった。
そんな主人公のゆったり成長期!!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる