90 / 91
6章 異世界冒険譚?
15話
しおりを挟む「よしアレーシャよ、最初の任務だ」
「はっ!」
アレーシャはさらに深く頭を下げ、口元に笑みを浮かべた。
「この村の近くに、人族の街がある。そこに行って、今後1年はこの村に攻め込むな! と強く言って来い。そうだな… その宇宙船に乗って、華々しく登場すれば、より効果的だろう」
予想外の言葉だったのか、アレーシャは勢いよく頭を上げ彼を見た。
「この惑星の住人を、直接干渉するのは宜しくないか… と…」とアレーシャは、黙ってこちらを見ている兼次に、恐怖心を感じ言葉の中で詰まってしまった。そしてすぐさま頭を下げた。
「申し訳ございません。出過ぎた真似でした」
「たしか、連合の重要監視惑星になっていたな・・・」
「はい、しかし創世主様には関係ない話でした。では行ってまいります」
アレーシャは、立ち上がると兼次に一礼すると、駆け足気味で宇宙船に戻っていった。宇宙船の扉が閉まると、宇宙船はゆっくりと高度を上げた。全体が光に包まれ、周囲を明るく照らしながら上空に進んでいく。その周囲には村人が総出で、その光景を見上げていた。
「これで問題は解決したな」
兼次は振り返り麻衣を見ると、うっすらと笑みを浮かべた。
「そして麻衣よ、異世界転移前の準備が役に立つ時が来たようだな!」
「え! なに?」
「村人にスーナの実の育て方を伝授するのだ。さあ行け! Goだ!」
麻衣は、兼次の目の前に置かれている種籾の袋を見て、溜息をついた。
「さすがに地球外植物のデータは、持ってないけど?」
「まったく、肝心な時に役に立たないな。よし俺が教えてやる、スマホを右手に持て」
「なにがはじまるの?」
麻衣はポケットからスマホを取り出すと、電源を入れ兼次を見た。
「で?」
「よし! よーく聞け! ググレカス!」
「は? ぐぐれかす?」
麻衣は兼次の言葉を聞いて、首を傾げ考え始めた。そのままスマホで検索をはじめ、答えにたどり着く。検索結果を見て、過去に使われている言葉であった。
「システムメッセージ、現在は使われてない言葉です。と言うより、地球のデータにあるわけないじゃん!」
「それもそうだな… まぁ、アレーシャに任せるか」
兼次は立ち上がると、村人が集まっている方に向かって大きな声で呼びかけた。
「お前ら! 見世物じゃないぞ! 終わったから各自家に戻れ!」
しかし村人たちは戻らず、所々でひそひそ話が行われている様であった。それを見た兼次は、振り返りアディやロディに村人達を戻す様に促した。アディとロディの言葉に応じた村人達は各々の家に戻っていった。
「アディ、後は任せた!」と兼次は、種籾の袋を持ち上げアディに渡した。
「これをどうしろと?」とアディは、袋を受け取り兼次に言った。
「先ほどの女性に聞けば、いいのですかな?」とロディが、アディを補足する。
「その前に、先程の奴とはどんな関係なんだ?」とリディが兼次に問う。
「かっちゃん、お腹すいたー」とニアがお腹を擦りながら言った。
「アディ達は、さっきの女に聞け。それで食糧問題は解決する」
兼次はニアを引き寄せ、彼女のお腹に手を当てる。兼次の手にヘコンダお腹の感触が、伝わってきた。
「お腹が背中にくっつきそーだよー」とニアが、兼次の手を払いのける。
「実が育つまで、食糧問題をどうするか… 毎回狩りに行くのもなー」
そんな兼次の行動を見ていた麻衣は、次の言葉を何となく予想していた。彼女は腕を組み、右手をアゴにあてた。
「兼次は思った『しかたない、ララを呼ぶかー』」
「呼ぶよ!」と兼次は麻衣を言うと、スマホを取り出し画面を眺めた。「さて、現地は状況は…」
ニアと麻衣は、兼次の近くに寄ると、スマホの画面を見始めた。そこには横たわるレッグと、その側に座り込む瑠偉の姿が映し出された。
横たわる猛獣、仰向けで気を失っているレッグ。瑠偉は座り込み考え込んでいた。
(どうすれば・・・)
「ララさーん! 居ませんかー?」
周囲を見渡しながら瑠偉は、小声で呼びかけた。しかし静まり返った大地に、風で草木の擦れ合う音がわずかに聞こえるだけだった。溜息交じりで、正面を向くとララが見える状態で座っていた。
「ヒィ!」と瑠偉は体を仰け反らせた「だから、突然現れるのやめてくれます?」
「お嬢様、こちらをお使いください」
ララは右手を出すと、瑠偉に向けた。その手には四角く薄く白いビニールに入った物が、手に載っていた。それは中央部分が円形状に浮かび上がっていた。それを見たことないのか、瑠偉はララの手に顔を寄せ、その物体を丹念に観察し始めた。
「なにかの薬ですか?」
「避妊具です」
「なっ!」と瑠偉は驚きながら仰け反り、両手を地面に着けた「しません! って、何度も言ってるでしょ!」
瑠偉はそった体を起こし、腕を組みをしララを睨みつけるように見た。
「それ、引っ込めてください」
「残念です」とララは手を引っ込めると、その物をポケットに入れた。
「どうすれば? レッグさん、大丈夫でしょうか」と瑠偉は優しくレッグの体を眺めた。
「これは… マズい状態ですね」
ララの言葉を聞いて瑠偉は、顔を起こしララを見る。
「まず、レッグさんの服を脱がし全裸にします。そしてお嬢様も全裸になります。そして肌と肌を重ね合わせて、レッグさん体温を上げましょう」
ララの言葉を聞きながら、歯をかみしめ嫌悪な感覚を抑える。
「服濡れてないですよー!」
「っち、知ってましたか… 気絶しているだけですから、そのうち目を覚まします。触って感触を確かめるのは、今しかありませんよ?」
ララはレッグの体の方に手を向け、どうぞどうぞと言う仕草をした。
「触りませんよ? なんか、あやしですね」
瑠偉は考え込んだ、暫らくすると遠くから「おーい」と言おう声が聞こえた。瑠偉には聞き覚えのある声、ガフとクレハの声だった。そのまま声の方を振り向くと、予想通りガフとクレハが手を振りながら、こちらに近づいてくるのが見えた。
0
お気に入りに追加
3
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
誰一人帰らない『奈落』に落とされたおっさん、うっかり暗号を解読したら、未知の遺物の使い手になりました!
ミポリオン
ファンタジー
旧題:巻き込まれ召喚されたおっさん、無能で誰一人帰らない場所に追放されるも、超古代文明の暗号を解いて力を手にいれ、楽しく生きていく
高校生達が勇者として召喚される中、1人のただのサラリーマンのおっさんである福菅健吾が巻き込まれて異世界に召喚された。
高校生達は強力なステータスとスキルを獲得したが、おっさんは一般人未満のステータスしかない上に、異世界人の誰もが持っている言語理解しかなかったため、転移装置で誰一人帰ってこない『奈落』に追放されてしまう。
しかし、そこに刻まれた見たこともない文字を、健吾には全て理解する事ができ、強大な超古代文明のアイテムを手に入れる。
召喚者達は気づかなかった。健吾以外の高校生達の通常スキル欄に言語スキルがあり、健吾だけは固有スキルの欄に言語スキルがあった事を。そしてそのスキルが恐るべき力を秘めていることを。
※カクヨムでも連載しています
龍神と私
龍神369
SF
この物語は
蚕の幼虫が繭を作り龍神へ変わっていく工程に置き換え続いていきます。
蚕の一生と少女と龍神の出会い。
その後
少女に様々な超能力やテレポーテーションが現れてきます。
最後まで読んでいただきありがとうございます。
ひっそり静かに生きていきたい 神様に同情されて異世界へ。頼みの綱はアイテムボックス
於田縫紀
ファンタジー
雨宿りで立ち寄った神社の神様に境遇を同情され、私は異世界へと転移。
場所は山の中で周囲に村等の気配はない。あるのは木と草と崖、土と空気だけ。でもこれでいい。私は他人が怖いから。

超文明日本
点P
ファンタジー
2030年の日本は、憲法改正により国防軍を保有していた。海軍は艦名を漢字表記に変更し、正規空母、原子力潜水艦を保有した。空軍はステルス爆撃機を保有。さらにアメリカからの要求で核兵器も保有していた。世界で1、2を争うほどの軍事力を有する。
そんな日本はある日、列島全域が突如として謎の光に包まれる。光が消えると他国と連絡が取れなくなっていた。
異世界転移ネタなんて何番煎じかわかりませんがとりあえず書きます。この話はフィクションです。実在の人物、団体、地名等とは一切関係ありません。
あなたは異世界に行ったら何をします?~良いことしてポイント稼いで気ままに生きていこう~
深楽朱夜
ファンタジー
13人の神がいる異世界《アタラクシア》にこの世界を治癒する為の魔術、異界人召喚によって呼ばれた主人公
じゃ、この世界を治せばいいの?そうじゃない、この魔法そのものが治療なので後は好きに生きていって下さい
…この世界でも生きていける術は用意している
責任はとります、《アタラクシア》に来てくれてありがとう
という訳で異世界暮らし始めちゃいます?
※誤字 脱字 矛盾 作者承知の上です 寛容な心で読んで頂けると幸いです
※表紙イラストはAIイラスト自動作成で作っています

シーフードミックス
黒はんぺん
SF
ある日あたしはロブスターそっくりの宇宙人と出会いました。出会ったその日にハンバーガーショップで話し込んでしまいました。
以前からあたしに憑依する何者かがいたけれど、それは宇宙人さんとは無関係らしい。でも、その何者かさんはあたしに警告するために、とうとうあたしの内宇宙に乗り込んできたの。
ちょっとびっくりだけど、あたしの内宇宙には天の川銀河やアンドロメダ銀河があります。よかったら見物してってね。
内なる宇宙にもあたしの住むご町内にも、未知の生命体があふれてる。遭遇の日々ですね。
多重世界の旅人/多重世界の旅人シリーズII
りゅう
SF
とある別世界の日本でごく普通の生活をしていたリュウは、ある日突然何の予告もなく違う世界へ飛ばされてしまった。
そこは、今までいた世界とは少し違う世界だった。
戸惑いつつも、その世界で出会った人たちと協力して元居た世界に戻ろうとするのだが……。
表紙イラスト:AIアニメジェネレーターにて生成。
https://perchance.org/ai-anime-generator
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる