銀色の雲

火曜日の風

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6章 異世界冒険譚?

12話 それぞれの思惑 3

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 通信の受信音が響き渡る宇宙船の船内、アレーシャは目線の先にある点滅するボタンを見て、ララに言われた最後の言葉を思い返していた。

 (まさかと思うが、故郷のシステムにも侵入していないよな? 通信網は連合とつながっているが… 私が拒否できなくなる? 何が起きるんだ? )

 アレーシャはゆっくりと歩み始め、機器類が並ぶ操作パネルの前に立った。両手を操作盤に付くと、長い髪が操作パネルに垂れかかった。

「はい、アレーシャです」
『ラールス・モンサントだ、急な要件である』
「へ、陛下かぁぁ!」

 ラールス・モンサントは、アレーシャの住む惑星の統治者である。その身分ゆえアレーシャでさえ会話したことすらなかった。アレーシャは惑星の代表として、連合の本部に勤務してる数百名の末端に過ぎず。アレーシャ自身も映像で見た事しかない、そんな雲の上の存在であった。
 アレーシャは驚きのあまり、両膝を床に付け緊張のあまり手が震え始めていた。

『よいよい、気楽に聞きたまえ。じゃが、内密の話じゃぞ?』
「は、はい。お話しできて光栄であります」
『事情は教団の潜入諜報員から聞いた。そこでだ、我ら一族は早急に動こうと思うておる』
「動く、と申しますと?」
『うむ、銀河連合から脱退することに決めた』
「だ、だっ、脱退ですかっ!」

 アレーシャは脱退と聞いて、思考をフル回転させて考え始めた。銀河連合は、超高度文明が暴走しない様に、お互いに見張るための組織である。そう簡単に脱退できるはずがない、仮に脱退できたとしても、他の連合惑星から危険視され監視される立場に変わる可能性がある。そうなれば、この宇宙での行動が、かなり制限されてしまう。場合によっては、粛清対象にされかねない。

「陛下、脱退してしまうと危険ではありませんか?」
『案ずるな、まだ先の話じゃ。まずは外堀を埋めてからじゃな』
「そのような重要な話を、なぜ私になさるのでしょうか?」
『創世主様と接触したと聞いてな。ないより、そちが一番近くにおる。そこでじゃ、教団本体がつく前に、創世主様と懇意になってもらう』
「私がですか? しかし、私は・・・ 去れ! と言われてしまっています」
『よいか、教団本体が着く前に接触しろ。ここが重要じゃ、そして懇意になり周りを固めるのだ。そうなれば、この銀河においての我々の地位も、かなり向上する。そちも連合内部で、嫌な思いをした事が何度もあるじゃろう? よいな? これは命令じゃ、そちも両親と仲良く暮らしたいじゃろ?』

 アレーシャは、陛下が言った最後の言葉をかみしめ、黙り込んだ。遠回しの言葉。アレーシャは、今断れば両親が人質になると考えた。

 (なるほど、断れない… か。あいつは、どこまで関与している? この銀河を支配するつもりなのか? しかし、今はそんな事を考える余裕はない。これからの事を考えなくては…)

『心配するな。そち一人にまかせるつもりはない、優秀な人材を送る。好きに使え』
「はい。ですが陛下、創世主様と懇意とは、どの状態まで進めればいいのでしょうか?」
『一族全員配下に加わると宣言するがよい。儂も準備を整えそちらに向かう、そこで改めて儂が膝をつき配下に加わると言おう』
「はい、分かりました。最善を尽くします」
『うむ、頼んだぞ』
「はっ!」

 通信が途切れるとアレーシャは、全身の力が抜け床に座り込んだ。金属製の床、その冷たさがアレーシャの下半身に伝わってくるのを感じていた。顔を上げ窓から差し込む星々の光を眺め始める。

「哺乳類至上主義… そっか… 陛下も気にしてんだ… ふふふっ」

 アレーシャは、陛下と話が出来た事。そして一族全員が少なからず、気にしていた事が、陛下自身も感じていたという事実。それが彼女の心に染みわたるのを、自身で感じ取っていた。アレーシャは直ぐに行動しなくては、と考え立ち上がった。緊張が解かれたことによる脱力感で、ふらつきながら中央のモニターの前まで歩き始めた。

「ん! そち一人?」

 突然浮かんだ言葉にアレーシャは、つい声が出てしまった。そう一人である。ヴィタリーが居ない事になっているのに、始めて気が付いた。

 (教団諜報員の人が、何とかしてくれたのかな? いや、一応は言い訳を考えておくか)

 モニターの前に来たアレーシャは、腕を組み兼次達を観察し始めた。

 (さて、どうやって接触すればいい? 貢物を持っていけばいいのか? そうなると、私の一番大事なあれだが… 問題は接触するために、下に降りなくてはならない。私の存在を知っている、創世主様は問題ない。しかし他の住民が、パニックになるな… そうなると… どうする? )

 アレーシャは数分考えたが、なかなか良案が浮かばなかった。それでも考え悩んでいると、前にララと会話していた内容を思い出した。

 (あいつ、通信機を改造したと言っていたな。聞いているはずだな、確信は無いが…)

 アレーシャは、大きく息を吸い込み大声で話し始めた。

「おい! 聞いているんだろう? どうやって接触すればいい? それとも、手引きしてくれるのか?」

 聞いているであろうララに向かって問いかけるアレーシャ、黙り込み返答を待ち続ける。アレーシャは、その数十秒がとても長く感じていた。




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