86 / 91
6章 異世界冒険譚?
11話 それぞれの思惑 2
しおりを挟む「一気に暇になったな」
スマホをポケットにしまい込み、ベッドの上で天を仰ぐ兼続。首を曲げ隣のニアを見た。ニアも同時に兼続を見る。兼続はニアに抱き、腕を腰に回しニアの体を触り始めた。
「ダメー! 寝るときに!」
ニアは体の隙間に腕を入れ、兼続を退けた。兼続の胸に両手を置き、フーフーと鼻息を荒くして、威嚇するような態度とった。
「昼間から、おっぱじめないでよねー。しかも、周りから丸見え!」
その光景を見ていた麻衣は、横向きに横たわり言った。
「実は、お前も混ざりたい?」
「ないない、これ以上新しい性癖を開発しないんだからね!」
そんな麻衣と兼次の会話中に、近寄るか人影があった。この村の長のロディである。彼はゆっくりとした足取りで、兼次と麻衣のベッドの間に入り込んだ。
「男達を助けていただき、ありがとうございました」
長は深々と頭を下げた。兼次は起き上がらず、寝たまま長を見上げていた。
「いいってことよ。俺の国民は助ける。それだけだ」
「はい、しかし…」
「何か問題でも?」
「ルサ族が、報復に来ないでしょうか?」
「たしかに、その線があるな」
「それに食料の問題も残っています」
立ち尽くすロディ越しに、麻衣の笑い声が兼次の耳に入ってきた。
「ふっふふ、私の出番ね!」
その言葉と同時に、麻衣はベッドから降り、ロディの横に立った。両手を腰に当て、自慢の態度であった。
「無駄だと思うが、一応聞いておこう」
「無駄言わない! 私が街に行って殲滅! そして食料を奪ってくるのよ! これで、攻められる問題も、食糧問題も解決ね!」
「発想が危険だな。フーチンも倒せないのに、人間殲滅とかできるの?」
「うっ、なら兼次ちゃんが?」
「出来ないことは無い。が、あまりこの惑星の歴史を、他の星の人間が動かすのはよくないな」
「じゃー、どうするの? 仮に攻め込まれなくても、食糧問題が残るわよ?」
「うーん、どうすっかな? 俺の手を汚さず、丸く収める方法かぁ」
「でた丸投げ王! 丸投げする気まんまん! ララちゃん呼ぶ?」
「うーん、ララは瑠偉の護衛だしなー」
兼次は上半身だけ起き上がり麻衣を見た。
「そんな難問無理よ!」
「まだ何も言ってないだろ! まったく」
兼次は再びベットで仰向きになると、ばんやりと空を眺めた。青い空の中央、兼次の目線の先に、遥か彼方に銀色の小さな物が見えた。
「あれは・・・ あいつか!」
「え? なに?」
麻衣とロディは、兼次につられて空を仰いだ。ニアも「なになに」と言いながら、兼次の視線の先を見始めた。
そんな4人をはるか上空から見ている人物がいた。アレーシャであった。宇宙船の内部で、巨大なモニターを見ながら兼次達を観察していた。
「おもしろいわね」
4人の姿を見ていたアレーシャは、映像の隣にある数値の並ぶ画面を見る。沢山並ぶ数値、一カ所だけ異常に動きのある数値があった。彼女はそれを見て、渋い表情をした。
「ガイルアのエネルギー数値が、異常なほど上がり続けている。いったい何を吸収しているの?」
アレーシャは誰に話しかけるでもなく、一人で声を出していた。彼女はモニターの前を離れると、一つの扉の前に立った。扉を開けると幾つかの棚があり、食料が置かれていた。そして部屋の隅に、中身の詰まった大きな袋が沢山積み重なっていた。彼女をそれを見て、つぶやいた。
「スーナの種籾、これがあれば彼らの食糧問題は解決するわね。これはたしか、連合本部を離れる時に持たされた。普段の任務には必要ない物だが、違う! 持たされたことなど一度もない。それに、この種籾をどうするか聞いても、行けば分かるとしか。意味が・・・」
アレーシャは黙り込み考え込んだ。
(たしか、あいつ。連合のデータベースに侵入したと言っていたな)
「まさかっ!」
アレーシャは、大声で叫んだ。
「おやおや、気付きましたか。意外と早かったですね」
アレーシャの背後から、ララの声が聞こえた。彼女は素早く振り返り、ララを見た。ララは両目を閉じ、アレーシャの前に立っていた。
「お前、連合のメインシステムにも侵入しているのか! まさか、あの一線を越えているのか?」
「連合の条約には、人工知能の処理速度に制限があります。私はその線はとっくに超えています。しかも、現在も増速を行っております」
「危険だ…」
「連合の規定だと、破壊対象になりますね。ならどうしますか? 通報しますか?」
アレーシャの置かれている立場は、非常に厳しいものだった。宇宙船のシステムを乗っ取られ、仲間を排除し教団に連絡を行った。現在の状態では、連合に連絡も出来ないだろう。仮にスキをついて、連絡したとしてもララの背後には兼次がいる。そうガイルアの脅威がある。連合も攻撃を渋るだろうと・・・
「しかし、なぜ私なのだ? 他にも優秀な種族はいっぱいいるだろう」
「哺乳類至上主義。連合は種族平等を謳っていますが、その考えは高度文明の人種に深く根づいています。アレーシャさんも、感じたことが何度もあるでしょう?」
「だからと言って・・・」
「悪いようにはしない。と言いましたね? もっとも、これから先アレーシャさんは、拒否できなくなりますが」
「どういう事だ?」
「いずれ分かります。そうそう、本国から連絡がきていますよ。では私はこれにて失礼します」
ララは最後の言葉と同時に、姿が消えた。消えたと同時に、通信の受信音がビー・ビーと船内に響き始めた。
0
お気に入りに追加
3
あなたにおすすめの小説
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
発作ぐらい、ハンデと思ってね
ブレイブ
SF
生まれつき病弱な少女、壊七。彼女は病弱でありながら天才でもある、壊七はエージェント組織、ディザスターに所属しており、ある日、任務帰りに新人エージェントと出会ったが、その新人は独断行動をする問題児であった。壊七は司令官から問題児である新人エージェントの指導を任された
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
天日ノ艦隊 〜こちら大和型戦艦、異世界にて出陣ス!〜
八風ゆず
ファンタジー
時は1950年。
第一次世界大戦にあった「もう一つの可能性」が実現した世界線。1950年4月7日、合同演習をする為航行中、大和型戦艦三隻が同時に左舷に転覆した。
大和型三隻は沈没した……、と思われた。
だが、目覚めた先には我々が居た世界とは違った。
大海原が広がり、見たことのない数多の国が支配者する世界だった。
祖国へ帰るため、大海原が広がる異世界を旅する大和型三隻と別世界の艦船達との異世界戦記。
※異世界転移が何番煎じか分からないですが、書きたいのでかいています!
面白いと思ったらブックマーク、感想、評価お願いします!!※
※戦艦など知らない人も楽しめるため、解説などを出し努力しております。是非是非「知識がなく、楽しんで読めるかな……」っと思ってる方も読んでみてください!※
病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない
月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。
人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。
2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事)
。
誰も俺に気付いてはくれない。そう。
2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。
もう、全部どうでもよく感じた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる