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6章 異世界冒険譚?
6話 ピクニック 1
しおりを挟む街から出た瑠偉とレッグを乗せた馬車は、草原地帯を抜け森林地帯に入っていた。レッグの話によると、男女のデートスポットとして人気の場所であり。馬車の通る道に沿って、木が刈り込んで整備されていた。
「レッグさん、あとどれくらいですか? (そろそろ、限界… 足伸ばしたい)」
「まだ、半分も進んでないですよ」
「そうですか…」
軽く息を吐き、両腕を上げ背筋を上し始めた瑠偉。それを見たレッグは、彼女が疲れているのだろうと感じ取った。
「この先に小さな川と広場があります。そこで休憩しましょう」
「そうですね。ありがとうございます」
馬車はしばらく進むと、先に川幅1mほどの川があった。川には馬車幅の木の橋が、架けられていた。その橋の側に、開けた場所があった。所々に火を起こした形跡のある、黒い炭が残った土が点在していた。馬車は、その広場に入ると川の近くで止まった。
「はい、降りていいですよ。私は先にアルパに、水を飲ませます」
レッグは先に降りると、瑠偉の乗っているところまで回ると彼女に手を差し伸べた。瑠偉は、レッグの手を取ると馬車から降りた。
「ありがとうございます」
「ルイさん、あちらにあります」
「あちら?」
レッグは、広場の先の物陰を手でさした。瑠偉は、その方向を見るが、少し背丈の高い草が生い茂っているだけで、特に何もなさそうであった。
えっ? なにがあるの? と、少し考え込んだ瑠偉は、レッグの方を見る。彼は瑠偉から離れ、アルパの手綱を外す作業を始めていた。
(私にかまわず、一人で離れて作業を始めたけど… そうか! トイレに行けと、言う事かな? 一応は、気が利きますね。だからと言って、惚れませんが…)
状況を察した瑠偉は、その物陰に移動した。草木をかき分け、その場所を見ると、人が一人座れる状態の空間があった。地面には穴が掘られていて、明らかに誰かが日常的に使っている雰囲気が出ていた。
(誰かの足跡がある… なるほどね、トイレも用意されてるわけね。囲いが草だけで、周囲から丸見なのが気になるけど…)
事を済ませた瑠偉は、馬車の場所まで戻ると。レッグは川で、アルパに水を飲ませていた。瑠偉は広場の中央付近にある、手ごろな石の上に腰かけレッグの姿を眺め始めた。
(なにも、する事がない… レッグさんの見ている前で、スマホを出すわけにはいかないし。退屈だなぁー… これが恋人同士なら、楽しいのかなぁー? )
瑠偉は漠然と、アルパに水を飲ませているレッグを眺めていた。ぼんやりとしていた瑠偉は、視界の片隅に不自然に動く草木を見つけた。
(なんだろう? 風にしては、一部分だけ動いているし…)
瑠偉は立ち上がると、その不自然な場所に近寄った。
「か、かわいいー。なにこれ…」
その場所を見た瑠偉は、思わず声を上げた。そこには草の緑色に溶け込んだ、緑色の毛を携えた目の紅い、ウサギに似た様な動物いた。その動物は、草を口に含み小刻みに口を動かしていた。
(ウサギにしては、耳が短い。リスにしては、大きすぎる。なにより、保護色の緑の毛。地球には居ないタイプね)
瑠偉は、その動物に振れようと手を伸ばした。瑠偉の手に、柔らかい毛の感触が届いた。その動物は、瑠偉に触られても気にすることなく、一所懸命に草を食べ続けていた。
(なにこれ! ミンクファーを超える触り心地、フカフカすぎ! )
「はぁー… 気持ちいいー 一生触っていたい」
瑠偉は、その場に座り込んだ。その小動物を抱え上げると、自信の膝に乗せ、頭から背中に向かって優しく撫ぜ始める。その小動物は、小刻みに震え脅えている様だった。
(えへへ、こわくないですよー)
「へー、珍しいですね」
突然レッグに声をかけられた瑠偉は「わぁっ!」と驚き、レッグを見た。
「すいません、驚かせてしまいました。それですよ、滅多にお目に掛かれない動物です。まず肉は美味しいです。そして、その毛皮は色鮮やかで、触り心地もよく、とても人気です」
「そ… そうですか(あぁ… この星の人間は、ペットと言う概念がないのかな? 食料としてしか動物を、見れないんですね…)
「持ち帰って、今日の夕食にでもしますか?」
「そ、それはちょっと… 可哀想かな…」
これを食べる? と瑠偉は考えながら、その動物を膝に置き丁寧に撫で始める。手に伝わる動物の体温を感じながら、この星での食事についてお思い描いていた。
(タンパク源として、必要なんだけど。こうやって、生きている姿を見るとねー)
「えー… 飼ってみようかと思いまして(暇だし…)」
「飼う? とは?」
「レッグさん達は、動物とか飼ったりしたりしませんか?」
「アルパなら飼ってますが、それ以外はぁ・・・ 何に使うんですか?」
「使う? いや… 癒しとか?」
「癒し? 家に居ても、役に立たないですよ?」
「そう言う事じゃなくて、ペットですか?」
「ペットとは、何ですか?」
(はは… なぜなぜ攻撃が始まりそうな予感が…)と瑠偉は感じた。そして悩ましい表情で、レッグをしばらく黙って見つめた。
困っている瑠偉の姿を見たレッグは、気まずい表情をすると、話を切り替えた。
「まぁ、今度詳しく聞かせてください。連れて行きましょうか」
「はい」
瑠偉は、笑顔で立ち上がった。その時周辺草を一握り手に取る。彼女は馬車の上で、その動物に食べさせようと考えていた。
瑠偉とレッグは、馬車まで戻ると乗り込むと、目的地に向かって進み始めた。
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