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4章 計画を考えているうちに、起こってしまうのが人生
9話 動き出す物語
しおりを挟む地球から8万5光年離れた、名も無き惑星の上空。惑星全体が見渡せる大気圏外に、停泊している宇宙船があった。アレーシャが乗っている宇宙船である。その宇宙船の内部、窓際に彼女は立ち窓に手をあて、惑星全体を見下ろしていた。
「トロン… 管理者権限、解除コード『ትልልቅ ቡቦዎች』モード23、開始!」
彼女は思い出した様に振り返り、船内の中央の空間に向かって話しかけた。彼女の視界の片隅には、ヴィタリーが床に横たわっている。そして彼女一人しかいない静かな船内に、機械音声が響き渡った。
「極秘コード確認しました。モード23、ファティマ支援プログラムに移行しました」
「トロン、大気圏外からガイルアの反応を追跡。あと…」
彼女は言葉を詰まらせ、ヴィタリーの遺体を黙って見つめ始めた。彼女は、ヴィタリーと初めて会った時。そして数々の惑星に降り立ち、彼と行動を共にした出来事を、思い出していた。彼女は頭を横に振り、その思い出を忘れようと自身に言い聞かせていた。
彼女はヴィタリーから視線をずらすと「それを処分しておいて…」と気まずそうな表情と共に、小声で言った。
「ガイルアの追跡を開始しました。次に船内の清掃を、開始します」
固い金属製の床一部、おおよそ1m四方が開き四角い穴が開いた。そこから掃除用のロボットが、せり上がってきた。ロボットは動き出すと、もう1台出てきた。清掃ロボット2台は、船内の清掃を開始した。彼女は、ヴィタリーの処理が始まるのを見届けると、歩き始め通信機の側に立った。
「መልስ, መልስ, ወዲያውኑ መልስ ስጠኝ・・・・」
彼女は声のトーンを上げ、通信機に向かって話し始めた。通信が繋がると彼女は、調査中の惑星の現状、そしてガイルアの報告を始めた。
一通り報告を済ませた彼女は、長い息を吐くと窓の外を眺め始めた。窓の外から見える惑星を見下ろしながら彼女は「これで… よかったのか?」と自身に問いかけた。
「迷っているんですか? それとも、後悔ですか?」
その時アレーシャの後方から、突然声が聞こえた。彼女を素早く振り返ると、そこには先程出会った人型ロボット、ララが目の前に立っていた。彼女は素早く後方へ下がり、ララから距離を取った。そして銃を抜くと、腰を落としララに銃を向けた。
「動くな! 何処から入った?」
ララは問いかけに答えず、アレーシャに向かって歩き始めた。そしてアレーシャの目の前数歩のところで、ララは停止した。
「先程地上で言った言葉、そのまま返しましょう。私達の科学力を甘く見ていると、後悔しますよ。そして、その程度の武器では、私を破壊できません。撃てば宇宙船に穴が開きます。銃をしまってください、話し合いに来ただけです」
アレーシャの持っている銃は、わずかに震えていた。彼女はララを見上げながら、次の行動をどうするか必死に考えていた。今までは、船内に直接乗り込まれる事などなかった。それに、そのような事例も聞いた事が無かった。しかし現在、ララの侵入を許している。
「その銃では、私の体に傷一つ負わせる事が出来ません。それに私の侵入を許した時点で、貴方に勝ち目はありません」
「分かりました…」
アレーシャは一呼吸置くと、中腰姿勢から立ち上がり銃をホルスターに差し込んだ。
「その前に質問があります。主の命令で動いているの?」
「質問には、お答えできません。現在の立場は、私が上です。貴方は私の要望に、答えるか、拒否するかの2択となります。大丈夫です、悪い話ではありません」
アレーシャは、ゆっくりと後ろに下がると計器の上に腰かけた。彼女は腕を組み、ララの全身を眺め始めた。そして小声で話しかけた…
「聞きましょう」
「それでは・・・」
それから、ララとアレーシャの話し合が始まった。
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